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離婚する際には、扶養控除に関して取り決めを交わしておくことをおすすめします。親権や養育費などに気を取られて、扶養控除について話し合っていないとトラブルになる恐れがあるからです。
「もっとしっかり話し合っておけば良かった……」と後悔しないよう、より良い形で離婚するための方法に詳しい桔梗さんから伺ったお話をもとに
- 扶養控除とはどのようなものか
- 扶養控除の対象となる親族の範囲
- 扶養控除を受けると税金はどのくらい減額するのか
- 離婚したときに扶養控除に関して発生する問題点・トラブル
- 扶養控除についてのトラブルの回避・解決方法
- 双方が納得し利を得られる扶養控除の活用方法
をまとめました。まだ離婚における扶養控除の扱いや、トラブルの対策などがわからない人は、早い段階で確認しておいてくださいね。
扶養控除とはどのようなものか
扶養控除とは、世帯主に養う人がいるときに、所得から一定の金額を差し引ける制度です。そのため、養っている家族がいる場合には、所得税や住民税などの負担を軽くすることができます。
扶養控除は養っている家族(扶養親族)に、16歳以上の人がいる場合にのみ適用されるもの。また扶養控除では、子どもを扶養しているのか、親を扶養しているのかなど、養っている人の年齢によって軽減される控除額が決められています。
扶養控除の対象となる親族の範囲
扶養控除は、親族に適用されるものとして知られています。その一方で、どこまでの親族が認められて、どんな親族は認められないかまで把握している人は意外に多くありません。この機会にしっかりと押さえておきましょう。
配偶者以外の親族
扶養控除の対象は、配偶者以外の親族と定められています。この場合の親族とは、6親等内の血族と3親等内の姻族のことを指します。つまり、子どもや両親、兄弟、祖父母が該当しますが、ほかにも叔父や叔母、配偶者の兄弟姉妹なども配偶者以外の親族となるので、状況によっては扶養控除における被扶養者となる可能性があるでしょう。
ちなみに親等の数え方は、親が1親等となり、兄弟は2親等となります。祖父母は親の親なので2親等となり、叔父・叔母は3親等です。兄弟や叔父などを数える場合は、基準となる親まで数えてから子の代におりるたびに1親等をプラスする数え方になるので、覚えておいてくださいね。
生計を一にしている
扶養控除の対象となる人は、納税者と生活資金を共有して暮らしている人でないといけません。
このとき、生活資金の源が同じであればいいので、同居をしていなくても、生計を一にしていると認められることがあります。たとえば、納税者が単身赴任などをして、別居中の親族に仕送りなどをして養っている場合には、控除対象となり得るのです。
1年間の合計所得が38万円以下
扶養控除は、養っている人がいる場合に、収入から一定金額が差し引かれる制度なので、所得が多い人は対象外となります。具体的には、1年間合計所得が38万円以下でなければ、扶養控除の対象とは認められません。
これは、所得税の基礎控除額である38万円を超える所得がないことを意味しているので、アルバイトをしている場合など給与所得のみで収入を得ている人は、年間103万円以下の所得であれば扶養控除に当てはまるのです。
事業専従者ではない
事業専従者とは、主に自営業を営む人に関する内容で、以下のすべての条件に当てはまる人のことをいいます。
a.白色申告をする納税者と生計を一にしている配偶者・15歳以上の親族
b.1年のうち6ヶ月以上を納税者がおこなう事業で働いている
不当な節税を防止するため、基本的には親族に支払う給料は経費に入れられないとされています。ですが、本当に納税者の事業で働いている場合には、適切な課税額を算出する必要があるので、白色申告の場合には専従者控除を設け、経費にすることが認められています。そのため、扶養控除は受けられないのです。
扶養控除を受ける年の12月31日時点で16歳以上である
扶養控除の対象となる親族は、その年の12月31日時点で16歳以上であることが定められています。そのため16歳未満の子どもに対しては、扶養控除が認められません。ただし、16歳未満の子どもには児童手当が支給されます。
児童手当は、15歳の誕生日を迎える年度末まで対象となるので、途切れることなく利益を受けられるような制度設計がされているといえるでしょう。
扶養控除を受けると税金はどのくらい減額するのか
扶養控除が受けられると、どれくらいの税金が減額がされるか知っていますか?知らないと損することがあるので、今のうちに知っておきましょう。
扶養控除を受けた際に減額される所得税の金額
たとえば所得金額が300万円だとして、16歳の子どもを1人扶養に入れた場合、所得税における扶養控除額は38万円です。所得金額が300万円の場合、所得税の税率は10%。これらをふまえて、所得税と住民税がどれくらい減額されるのかを計算してみましょう。
38万円×10%=38,000円
上記のシミュレーションから、所得税において16歳の子ども1人を扶養に入れた場合、38,000円の扶養控除を受けられることになります。
扶養控除を受けた際に減額される住民税の金額
ここでも、所得金額が300万円で16歳の子どもを1人扶養に入れた場合について、シミュレーションしてみましょう。16歳の場合、所得から差し引ける住民税控除額は33万円です。また、住民税の税率は、所得金額にかかわらず10%と定められています。
これらを考慮したうえで、住民税がどれくらい減額されるのかを計算してみました。
33万円×10%=33,000円
このシミュレーションから住民税に関しては、16歳の子ども1人を扶養に入れた場合、33,000円の扶養控除を受けられることがわかりますね。
離婚したときに扶養控除に関して発生する問題点・トラブル
扶養控除は、同じ扶養親族1人につき納税者1人しか受けられないため、扶養控除をめぐるトラブルが起きる可能性があります。妻が専業主婦だった場合は、働いている夫が扶養控除を受けていたはずですが、離婚をすると元妻も働く必要が出てきて、トラブルにつながりやすいのです。
扶養親族との同居や別居に関係なく、納税者が扶養親族に養育費の支払いをしていたら、扶養控除を受けることができます。そのため、養育費の支払いをしている元夫が扶養控除を受けるのか、親権を得てシングルマザーとして働く母が扶養控除を受けるのかの問題が起こるのです。
扶養控除についてのトラブルの回避・解決方法
離婚後の扶養控除に関するトラブルを回避するには、離婚前に子どもをどちらの控除にするかしっかり話し合いをすることが大切です。そのとき、どちらも損をするようなことがないように、養育費の金額などをふまえて決めることをおすすめします。
【養育費について考えてみよう】養育費の基本知識
決して感情的にならないように注意しつつ、冷静にお互いが納得できる結論を出しましょう。

双方が納得し利を得られる扶養控除の活用方法
扶養控除についてもめたくない場合は、双方にとって有益となる選択をしてください。譲れるところは譲りながらも利益を得られる方法の例は、次のとおりです。
養育費でバランスを調整する
扶養控除は片方の親のみに適用されるもの。原則として申請者が控除の対象になりますが、母親と父親がともに申請すれば、親権とは無関係に所得税が高額なほうが適用されやすいです。
お互いにとって有益な選択をするには、たとえば話し合いで夫が子どもを扶養親族として扶養控除を獲得するかわりに、養育費を増額するという選択肢があります。これにより、妻が離婚後に扶養控除を受けられない損失をカバーすることが可能です。
弁護士の力を借りる
「扶養控除についてのトラブルの回避・解決方法」の項目でも述べましたが、法律のプロをあいだに入れるのも良いです。自分たちだけでお互いにプラスになる結論を導き出せない場合には、中立的な立場から2人にとって納得がいくような利になる選択肢を提案してくれるため、早い解決が見込めます。
まとめ
離婚するときに、「扶養控除の話をしておけば良かった……」と嘆く人は少なくありません。あとになって双方が受けられる利益を取り合うことは、お互いにとってストレスになるもの。そのため、離婚前に扶養控除について学び、じっくりと話し合うことが大切なのです。
お互いに利益を得られる方法を見出せれば、離婚後もしこりを残さずに暮らしていきやすいでしょう。煩わしいことを少しでもなくすために、当記事が貢献できれば幸いです。