離婚したい原因はさまざま。夫婦の数だけ理由があるでしょう。
けれども、離婚したい夫婦のあいだに子どもがいたら…
簡単に離婚を決められないと思います。
「一緒に暮らすには親権が必要なの?」 「収入が少ないと親権は取れない?」
「どうすれば子どもと一緒に暮らすことが出来るの?」
今回は離婚後に発生する、親権の問題についてお話していきたいと思います。
そもそも親権とは
親権とは、簡単にいうと20歳未満の子どもの教育や、財産管理、子どもの代わりに法的な行為をおこなうといった権利であり、義務でもあります。
もう少し、くわしくお話すると以下のように、分けられます。
子どもを教育し、しつけをする権利
子どもの財産を管理する権利
子どもの代わりに契約をむすぶといった法律的な行為をする権利
基本的に夫婦でいるあいだは、父親と母親が共同で親権を持ちます。
しかし、離婚をすると、父親か母親、どちらか一方が親権を所持しなければいけません。

親権と監護権について
先ほどまで、親権は子供を育てるための権利であり、義務でもあるとお話をしました。
今回は、親権の3つの性質について、もうちょっと、くわしく説明したいと思います。
「そもそも親権とは」の項目で、親権には3つに分けることが出来るとお伝えしましたが、法律上は以下のように2つに定義されます 。
①身上監護権…子どもの日常の世話をして、教育やしつけをすることです。
②財産管理権…子どもの所持している財産(預貯金など)を管理することを指します。
また、子どもが交わす契約などの財産管理上の法律行為に対する代理や同意権なども財産管理権の中に含まれます。
親権はどちらか一方の親が持つとお伝えいたしましたが、上記の①で説明した身上監護権と、②でお話した親権は、場合によって分けることができます。
どんなケースが当てはまるのかというと、親権を持つ親(以下親権者)が、海外勤務や仕事の事情で子どもと同居や教育が困難な場合などです。
監護権とは…?
身上監護権とは言いにくいので、略して監護権と呼ばれることが一般的です。
では、①で挙げた監護権に含まれる権利、義務について説明したいと思います。
権利とは、それぞれ 身分法上の行為の承認・居所指定権・懲戒権・職業許可権の4つです。
やや、わかりにくい言葉もあると思いますので順を追って説明していきましょう。
①身分法上の行為の承認…身分法とは、家族の生活関係に関する法律や、相続に関する法律のことを指します。
具体的に言うと、未成年である子どもの結婚や養子縁組は、監護権を持つ親の承認が無いとできません。
また、未成年の子どもに遺産の相続が発生した場合、代理して監護権を持つ親が対応します。
②居所指定権…子どもの居どころを指定する権利です。これは事実上、子どもと一緒に暮らす根拠となる権利です。
③懲戒権…子どもが悪いことをしたときに、罰を与える権利です。
④職業許可権…子どもが職に就くことを許可したり、取り消しできる権利になります。
つまり、親権が取ることができなくても、監護権を得ることができれば、
子どもと一緒に暮らすことができるのです!
親権について相談のあった事例
これまで、親権の性質について詳しく説明をさせていただきました。
次に、親権が取れるかどうか、悩んでいる方の事例を2つ紹介したいと思います。
≪ケース①≫子どもと暮らしたいけれど、収入が少ない
相談者:まみ(33)
職業:スーパーでパート
年収:100万円ほど
子ども:5才
25歳の時に結婚し、27歳で子どもを産みました。育児に追われている毎日で夫とは喧嘩ばかり。
「忙しい」と言って、育児に協力してくれず、休日もゲームをしてばかりです。
子どもと遊んでほしいと頼んでも、「育児と家事はお前の仕事」「俺が稼いでやっているんだから、つべこべ言うな」と、取りつく島もありません。
現在、離婚をして、子供と2人で暮らしたいと考えているのですが、収入面が心配です。
また、金銭的な余裕もないので、親権を取れるか不安を覚えます…
収入が少ないと、子どもと暮らせない?
専業主婦やパートタイムで働いている方の中で、離婚後の金銭面で、親権を取れないのではないかと心配される方は少なくないです。
確かに今回のケースのように、収入が少ない場合には親権が取れないこともあります。
しかしながら、親権をどちらが取るかで調停や裁判になった場合、通常、裁判所はどちらの親と居た方が、子供は幸せか、という観点で考えます。
そのため、常日頃、子どもの育児をおこなっていたケースでは、
収入が少なく親権が取れなくても、監護権を取得できる可能性はおおいにあるでしょう。
また、監護権を取った親に対して、もう片方の親は、原則として養育費を支払う必要があります。
更に、国や自治体でシングルマザーやシングルファーザーを対象に、いくつかの助成金制度があります。
子どもが小さく、なかなか長時間働けないといった場合は、公的な助成金制度を利用するのも手段のうちでしょう。
≪ケース②≫離婚の原因は私。だけど子どもと暮らしたい
相談者:まり(40)
職業:商社の事務
年収:400万円程度
子ども:7歳
社内の上司と不倫をしていることが、夫にばれてしまいました。
離婚を前提に話し合いをしています。
不倫のきっかけはお恥ずかしながら魔が差したとしか言いようがありません。
夫は忙しい仕事に就いており、育児はほぼワンオペ状態…
私の職場はほぼ定時で上がることができますが、仕事の後に保育園の迎えや、家事をしなければなりません。
そんな疲労もあって、ついつい誘いに乗ってしまいました。
夫は「不倫をするような女に、子供は任せられない」と言います。
けれど、今まで子どもを育ててきたのは、ほぼ私です。
自分が悪いことは重々承知ですが、親権を取れる可能性はあるのでしょうか…
不倫をしてしまっても子供と暮らせるの?
不倫とは法律の用語で言うと、不貞行為に当たります。
不貞行為は法律で定められている離婚事由に当てはまり、どんな理由であっても婚姻関係を結んでいる以上許される行為ではありません。
ただし、不貞行為をおこなったとしても、親権を取れる可能性はあります。
というのも、不貞行為と親権を取ることというのは、法律的に別問題だからです。
親権は、原則として子どもの幸せを重視して決められます。
そのため、子どもを虐待したり、放置したり、ないがしろにした事実がない限りは、基本的に子どもの面倒を見ていた親に親権がわたるケースが多いです。
なお、子どもが15歳以上であった際には、通常、子どもの意思が反映されます。
離婚後、モメないために決めておくこと
子どもを持つ夫婦が離婚する場合、かならず決めなければいけないのは、どちらが親権を持つのかということです。
親権と同じく、以下のことを取り決めておくと後々、役立つ可能性があります。
月々の養育費を決める
親権を持たない親が支払う養育費の取り決めをしておきましょう。
養育費をいくら支払うかについては、特に決まりはありません。
しかし、収入に合った金額でないと、支払いの遅延や延滞につながる可能性があるので、現実的な金額を決めた方が良いと思います。
なお、裁判所のページに子どもの人数や年齢、また親の収入別に、養育費の相場を算出したものがありますので、参考にしてみてください。
養育費が不払いになった時の対応を決める
親権を持っていない親に、新しく家族ができたり、収入が下がったりすると、養育費の不払いが発生するケースがあります。
そのため、不払いの場合の対応方法をあらかじめ決めておきましょう。
付け加えると、離婚協議書を公正証書にしておくと、養育費の不払いがあった時に、給料差し押さえなど、強制的に徴収することも可能です。

まとめ
子どもがいるときの離婚は、夫婦2人の問題ではありません。
ですので、「嫌いだから離婚をする」といった、一時の勢いだけで離婚すると、のちのち、後悔する恐れがあります。
子どもの未来はもちろんのこと、自分自身の今後を考え、離婚の取り決めをおこなえると良いですね。
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