夫がお金をくれない ~婚姻費用のススメ~

離婚や別居をするときに誰しもが考えること。
それは、離婚や別居後、生活できるかという不安です。

最近は夫婦の共働きが増えましたが、現状、まだまだ男性の収入の方が高いのはいなめません。

今回は、別居する際に請求できる婚姻費用について、詳しくひも解いていきましょう。

婚姻費用ってどんなもの?

結婚をして夫婦になると婚姻費用というものが発生します。
普段は、あまり口にしない言葉なので、耳慣れない方もいらっしゃるかもしれません。

結婚をした夫婦には基本的に2つの義務を課せられます
それは、「貞操義務」と「同居、協力及び扶助の義務」です。
分かりにくい言葉もあると思いますので、以下のように分けて説明をします。

【貞操義務】
貞操義務…民法で明文化はされていませんが、日本が、一夫一妻制を適用していることから、配偶者以外の異性と性行為をおこなうべきでないと考えられます。
【同居、協力及び扶助の義務】
①同居の義務…原則として夫婦は単身赴任や療養などの特別な理由をのぞき、夫婦で同居することを前提としています。
②扶助の義務…夫婦は収入の格差を配慮して、収入が多いパートナーが、少ない方を支える義務があります
③協力の義務…夫婦で、家事や育児などを協力しておこなうことを言います。

民法では、法定離婚事由が設定されています。

理由は5つあり、配偶者が以下に当てはまった場合、離婚することができるのです。

  • 配偶者に不貞行為があったとき
  • 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  • 配偶者の生死が3年以上不明なとき
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  • その他婚姻を継続し難い重要な事由があるとき

なお、貞操義務違反は、不貞行為にあたり、同居、協力及び扶助の義務に違反する際には、悪意の遺棄などに抵触する恐れがあります。

さて、話を婚姻費用に戻します。
婚姻費用とは夫婦が共同生活を送るうえで、発生する費用のことです。
つまり、会社で言えば経費にあたるようなものです。
そのため、収入の多いパートナーが、家計にお金を入れないといった行動をとった場合には、②でお話した、扶助の義務に違反し、
少ない方は婚姻費用を請求することができます

では、一体何が婚姻費用に当たるのかを次の章で説明したいと思います。

婚姻費用として請求できるもの

婚姻費用とは、夫婦として生活する際に発生するお金であるということを、前章でお話をいたしました。

けれど請求するにしても、一体何が婚姻費用に当たるのかがわかりませんよね。
そこで、婚姻費用とは具体的にどんな用途で使われるお金なのかを下記に、一覧にしてみました。

  • 夫婦の衣食住の費用…食費・衣服代・家賃など
  • 子どもの監護に関する費用…夫婦の子ども(※1)に必要な養育費
  • 子どもの教育費…塾代や、習い事の費用、私立学校の学費など
  • 出産費…夫婦のあいだで出来た子どもの出産にかかるお金
  • 医療費…病院にかかった費用など
  • 葬祭費…葬式代や埋葬費など
  • 交際費(※2)…ある一定額の娯楽費

※1 夫婦の子ども…法律上、夫婦の子どもであること。実子だけでなく、養子も対象。
※2 程度を超えた散財やギャンブルなどの娯楽費は認められません。

以上が、婚姻費用として請求できる、費用となっています。
生活費や養育費は納得できますが、交際費や娯楽費も対象であると、ご存じなかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

婚姻費用を請求できないとき

婚姻費用とは、夫婦であればどんな状況であっても、請求することができるのでしょうか。

残念ながら、答えは「NO」です。
夫婦であっても、次のようなケースの場合は請求できません。

別居の理由が自分自身にある場合

夫婦が別居していたとして、理由が自分自身にある際には、婚姻費用を請求することは出来ません。

例えば、不倫相手に本気になり、家出したときが挙げられます。
ただし、子どもと一緒に暮らしている際には、教育費や養育費を請求することができます。

なお、何の理由もなしに連絡なく家出することは、法的な離婚事由の「悪意の遺棄」に当たる可能性があり、相手方から慰謝料を請求される場合がありますのでご注意ください。

離婚前提の別居の場合

正当な理由なく、離婚前提で別居をした場合には、婚姻費用を請求しても、受理されないことが多いです。
また、別居中に新しくパートナーができて同居している際には、婚姻関係が破綻しているとみなされ、婚姻費用は支払われません。

ただし、DVやモラルハラスメントを受けたなどの、やむを得ない理由で別居をしたときには、婚姻費用を請求できることもあります。

婚姻費用の請求額の計算方法

ここまで、婚姻費用について、請求できるものや、請求できないときなどをお話してきました。
次に実際、婚姻費用を請求する際に、どうやって金額を計算すればいいのかを説明したいと思います。

婚姻費用は、支払う方を義務者、貰う方を権利者と言います。
権利者が貰える婚姻費用は、自身の年収や、義務者の年収、子供の人数、年齢によって違います。

言葉で説明しても、わかりにくいと思いますので、実際に例を挙げて確認してみましょう。

ケース①

義務者:夫 仮名:アスト(33歳)職業:会社員 年収600万円
権利者:妻 仮名:ワカナ(29際)職業:パート 年収50万円
子供:無

夫である、アストさんと妻であるワカナさんは、意見の不一致により、一時的に別居をしました。
理由は、ワカナさんが、「フルタイムで働きたい」と希望を伝えたところ、アストさんが「家事をおろそかにするから嫌だ」、と承諾しなかったためです。
このケースですと、権利者であるワカナさんが、アストさんへ請求できる婚姻費用の相場は大体月額で、8万円から10万円となります。
配偶者がフルタイムで働いており、子どももいない時には、婚姻費用の相場は下がります。
しかし、今回はワカナさんの収入が低いことや、アストさんの年収が大きいことから、比較的多めの婚姻費用を請求することができるのです。

ケース②

義務者:夫 仮名:イリヤ(37)職業:会社員 年収:720万円
権利者:妻 仮名:ヨシコ(35)職業:会社員 年収:320万円
子どもの有無:有 人数:1人 性別:男(6)

夫であるイリヤさんと妻であるヨシコさんは、イリヤさんの実家で、彼の両親と同居をしていました。
しかし、ヨシコさんと義母の折り合いの悪さにより、子供を連れて別居しました。
今回のケースで、ヨシコさんが、イリヤさんへ請求できる婚姻費用の相場は、およそ、6万円から8万円です。
子どもがいるのにも関わらず、①よりも婚姻費用の相場が低い理由は、ヨシコさんの年収が多いためとなります。

ケース③

義務者:夫 仮名:ウイチロウ(45)職業:公務員 年収:800万円
権利者:妻 仮名:ユカリ(44)職業:専業主婦 年収:0円
子どもの有無:有 人数:1人 性別:女(16)

夫である、ウイチロウさんと妻ののユカリさんは、ウイチロウさんの異性関係が原因で別居しました。
ユカリさんは子どもとともに家を出ました。
彼女が得られる婚姻費用の相場は、月々、16万円から、18万円になります。

家族構成が同じ、②のケースよりも婚姻費用の相場が多くなった理由は、2つ考えられます。
1つ目は、権利者であるユカリさんが専業主婦で収入が無いことが挙げられます。
2つ目は、子どもの年齢が16歳であることです。
婚姻費用は14歳未満の子どもと、15歳以上の子どもで相場が異なります。
理由は、15歳以上の子どもの方が教育費など養育にかかるお金が多くなるからです。

以上が例となります。
上記の婚姻費用の相場は、裁判所が発表している、婚姻費算定表に基づき算出しております。
気になる方は、ぜひこちらをご参考ください。

婚姻費用の請求方法

婚姻費用の請求方法については、基本的に、夫婦間の話し合いから始まります。
別居をしていることから夫婦の関係が悪く、話し合いにならなかったり、まとまらないケースもあるでしょう。
そんな時は、家庭裁判所に申し立てをおこない、婚姻費用の分担請求調停(※1)を申し立てることができます。
調停では、まず調停委員(※2)が夫婦の共同財産や、それぞれの収入・支出を聞いて、2人の状況を把握します。
そのうえで、調停委員が夫婦の状況にあった解決策を提示したり、アドバイスをし、2人を和解に導くのです。

なお、調停は必ずしも合意しなければならないというわけではありません。
調停で双方の合意が取れない場合は、自動的に審判手続きに移行し、裁判官による審理を経て、審判が下されます。

※1 調停…調停とは争っている人の間に入って、解決策や妥協案を提案し、争いをやめさせることを指します。
※2 調停委員…調停に一般市民の良識を反映するために、専門知識を持つ人・地域社会に密着し貢献した人・豊富な経験知識を持った人などから選出されます。

まとめ

今回は、婚姻費用についてさまざまなお話をさせていただきました。
婚姻費用は、正当な理由がある別居であれば、請求可能です。
たとえ、その後夫婦のあいだで折り合いがつかず、離婚したとしてもさかのぼって請求することができるのです。

「別居を考えているけれど、収入が無いので踏み切れない」とお悩みの方は、婚姻費用の相場などを調べてみてはいかがでしょうか。

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