どうしたって別れたい…~離婚話が裁判へ進んだら~

裁判離婚では、協議離婚・調停離婚と違い、最終的に裁判所が、離婚を認めるかどうかの判断をくだします。
訴訟にまでもつれ込む方は、およそ全体の3.9パーセントで、相対的にみると非常に少ない数です。
しかしながら、確率が低いとはいえ、裁判に至らないとは限りません。

備えあれば憂いなし
今回は裁判離婚についてお話をしていきましょう。

知っていますか?≪裁判離婚の条件とは≫

離婚裁判とは、離婚調停でも折り合いがつかず、不成立になった場合におこなう、いわば離婚するための最終手段です。
現在の日本の法律では一部例外を除いて、調停不成立でなければ、離婚の裁判はおこなえません。
つまり、まず離婚の裁判を行う前提条件として、調停不成立があげられます。

また、裁判上の離婚は下記、5つの理由のうち、どれかに当てはまらないと申し立てをすることが出来ません。

①    配偶者に不貞な行為があったとき…配偶者以外の異性と複数にわたり性行為、もしくは性行為に準ずる行為をすること。
② 配偶者から悪意で遺棄されたとき…配偶者が連絡もなく突然いなくなったり、反対に追い出されたりすること。また、生活費を家に入れないことも悪意の遺棄に当たる。
③ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき…配偶者の生死が不明なため、この場合は調停を経ることなく裁判をおこなうこができます。
④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき…相手方の離婚後の生活などを考慮して、離婚が認められないケースが多い。
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき…①から④に当てはまらない理由で、婚姻関係を続けられない場合のこと。

以上の事柄は、民法770条にも記載されており、法定離婚事由とされています。

【裁判離婚は時間がかかる】離婚訴訟になった場合の3つの終結の仕方

裁判離婚は何を争うの?

前章では裁判離婚の条件についてお話しました。

今回は、離婚の裁判で争点になる事柄を確認していきたいと思います。
判離婚というくらいですから、まずは離婚の可否が問われます。
しかしながら、裁判までもつれこんだ離婚の大部分は、離婚が認められます。
というのも、
日本の裁判所は婚姻関係が破綻されているかを重視するからです。

離婚の争いが裁判にまで及んだ場合、夫婦の関係はもはや修復不能だと判断され、婚姻関係が破綻していると考えられます。

なお、夫婦のどちらか一方に収入が無い場合、その配偶者の保護を目的としてあえて離婚を認めないこともあります。
どういうことかというと、夫婦には同居及び、協力・扶助の義務があります
収入のない側が、ある一定の収入を得て、ひとりで暮らしていけるようになるまで、扶助の義務を利用するために婚姻関係を継続させるのです。

もう1つの争点 附帯処分とは

裁判離婚は、婚姻関係の取り消し、もしくは離婚の訴えが容認された判決が下された場合には、附帯処分についても裁判しなければならないと法律で決められています。

附帯処分とは、以下のような事柄です。
①子の監護者の指定その他の子の監護に関する処分…子どもを養育する親(監護者)を決めることと、養育費などの子どもの養育に関する取り決めのことを指します。

②財産の分与に関する処分、または厚生年金保険法に規定する処分…夫婦の共同財産の分け方に関する取り決めや、年金分割について決めることをいいます。

上記の2点を附帯処分というのです。
ただし、こちらの附帯処分は、自動的に裁判所が議題にしてくれるわけではなく、当事者の申立てが必要になります。
①・②で説明した附帯処分の申立ては、口頭弁論(※)終結時までおこなうことができます。
なお、親権をどちらの親が持つかは、離婚の際に必ず取り決めなければならない事項ですが、裁判所が職権でかならず判断する事項のため、申立てはいりません。
上記で説明した附帯処分①②に、親権をどちらが持つかの決定を加えて、付帯処分等と言います。
附帯処分の申立ては、離婚後の生活設計を考えるうえで、非常に大切な事項です。。
裁判離婚を考えているなら、子どもの養育にいくら必要か、ご自身の今後の収入、二人で築いてきた財産などを冷静に考えて、後悔しないように、事前に準備しましょう。
※口頭弁論とは、裁判官の前で原告・被告、もしくはその代理人が事前に裁判所へ提出した書類に基づいて主張を述べ、主張が正当であることを証明する行為をいいます。

裁判離婚の手続きについて

ここまで、裁判離婚の争いについてお話をさせていただきました。
ここからは、裁判離婚の手続きに必要な書類や流れについて確認していきたいと思います。
まず、裁判離婚の大まかな流れから把握していきましょう。

裁判離婚の流れ

①  離婚調停不成立…調停の不成立をうけたのち、訴訟の申立てをおこなえます。
(例外的に離婚審判に移行することがあります。)
②  訴状提出…夫婦のどちらか一方が、離婚調停をおこなった家庭裁判所へ訴状の提出をおこなえます。
③  第1回口頭弁論通知…訴状が不備なく受理されたら、相手方に訴状と呼び出し状が送付されます。
この時点で、訴えを起こした側を原告、訴えを起こされた方を被告と呼ぶようになります。
ちなみに、原告というと被害者、被告は加害者というイメージをもたれがちですが、
これは刑事事件で登場する原告人、被告人のイメージからきています。
離婚裁判のような民事事件では、原告が訴えをおこした側、被告が相手側を指しているだけなので、どちらかが悪者ということではありません。

※第1回口頭弁論通知から、実際に口頭弁論が開かれるまでの間に、被告側の反論を記している答弁書が提出されることがあります
提出された答弁書にたいして、反論と主張を考えなければなりません。
このくり返し作業が、とてもわずらわしいく、裁判が長引く原因となっていますが、被告側に弁護士がついている場合には、ほぼ提出されると思って良いでしょう。

④ 第1回口頭弁論…裁判所へ訴状を提出してからおよそ1か月後におこなわれます。
ここで話される事柄は、以下のような内容です。
1.争点は何か
2.原告側の証拠提出
3.被告側の証拠提出

2,3の証拠の提出のほか、離婚原因の事実を原告や被告、また両名の代理人が法廷で述べることもあります。※2. 3.の書面で提出した証拠のことを、書証と呼びます。
また、1回の口頭弁論で判決がくだされるケースはほとんどなく、およそ1か月ごとに、第2回、第3回と口頭弁論をおこなうのが一般的です。
その結果、通常、離婚裁判は結論が出るまでには、大体1年から2年位かかります
裁判官が審理する事柄は、まず第1回口頭弁論で提出した2や3の書面の証拠(書証)を確認します。
それから、実際に原告や被告への尋問がおこなわれます。
この尋問への受け答えの内容を人的証拠といい、これを略して人証と呼びます。
原告や被告への尋問は、それぞれ相手方の代理人となった弁護士から行われることが多いです。
代理人となった弁護士は、依頼者に有利になるように、相手方に落ち度がないかを探るため、厳しい質問を投げかけてくることが予想されます。
そのため、尋問に臨む際には、結婚時の状況、離婚を考えるようになった経緯などをまとめた陳述書を用意することはもちろん、自身の気持ちや、現在の置かれた状況を整理して、よくよく頭に入れておきましょう。

※⑤の離婚裁判の判決がくだされる前に、裁判所から和解勧告をされることがあります。
和解に応じたり、訴えを取り下げる割合は、全体2.4パーセントとなり、裁判離婚の割合である1.3パーセントより多いのです。
⑤ 離婚裁判の判決…書証や人証を受け審理を行い、判決がくだされます。
判決の言い渡し後、判決の正本が送付されます。
判決が不服である場合は、判決の正本が届いてから2週間以内に異議申し立てをおこないます。

以上が裁判離婚の流れでした。

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裁判離婚のポイント

これまで、離婚裁判の流れについて確認をしてきました。
今回は、離婚裁判を有利に進めるポイントについてお話します。
離婚裁判では、離婚の可否、および附帯処分が争点になるとこちらの章で説明いたしました。
まず、離婚の可否は、事実認定がきわめて重要です。
事実認定とは、原告や被告から提出された証拠をもとに判決の基礎となる事実を認定することを指します。
離婚裁判においては、離婚原因が事実であるかどうかが事実認定にあたります。

では、実際どういった証拠が事実認定で有効になるのでしょうか。
項目別に確認していきたいと思います。

不貞行為

写真や動画…性行為をおこなっている、もしくは性行為をうかがわせる内容の写真や動画は不貞行為の事実を証明するための有効な証拠になります。
具体的に言うと、性行為そのものの写真や動画、ラブホテル内で撮影されたものやラブホテルに出入りしているものなどがあげられます。
反対に、ハグやキスの写真や、ビジネスホテルに出入りしている写真や動画では不貞行為の証拠として認められないケースもあります
なぜなら、ハグやキスは直接性行為を示すものではありませんし、ビジネスホテルに関しては宿泊の目的が性行為であると限定できないからです。
その点、ラブホテルは文字通り、性行為を目的とした場所なので、有力な証拠となり得るのです。
性行為をうかがわせるメールやメッセージ…配偶者以外の異性と性行為をおこなったと推測できるメールやメッセージは不貞行為があった事実を証明する証拠となり得ます。
例えば、「○○とすると気持ちいい」「赤ちゃん出来ちゃったかな」のような、内容は証拠として認められる可能性があるのです。
なお、SNSやチャットツールでのやりとりを証拠として保存したい場合には、スクリーンショットではなく、別のカメラ機材で撮影することをおすすめします。
というのも、スクリーンショットは比較的改ざんすることが簡単なので、証拠として認められないことがあるからです。

悪意の遺棄

家計にお金を入れていないと証明できるもの…夫婦には貞操義務のほかに、同居・扶助・協力の義務があります。
収入を多く得ている側が家計にお金を入れないことは、悪意の遺棄に当たります。
預金通帳や家計簿などで、生活費や養育費といった婚姻費用が支払われていないと確認できた場合には、有効な証拠となります。
悪意の遺棄の内容を記した日記やメモ帳…自分の配偶者が、婚姻関係を破綻させると知りながらした事実(生活費を渡さない、暴力をふるう、子育てに協力しない)を記した日付入りの日記やメモ帳は有効な証拠になり得ます。
また、暴力行為を受けた時には、医師に診断書を書いてもらうと、こちらも証拠として認められる可能性があります。
具体例をあげると、自分に対して配偶者から暴力をふるわれたこと、暴言をはかれたこと、また家事や育児に全く無関心な態度をとっていることを記したメモや日記帳などです
なお、配偶者が仕事が忙しかったり、単身赴任であったりする場合には、家事や育児へ参加できないことに関して、一定の慮がなされるケースもあります。
一概に配偶者のそれらへの貢献度が低いことのみで、悪意の遺棄と判断されるわけではないので、その点注意が必要です。
以上が、主な離婚事由での有力な証拠になるものの説明でした。

離婚に限らず、裁判を有利に進めるうえで、事実を裏付ける証拠は非常に大切なものです。
そのため、何が証拠として有効なのか、事前に確認することが重要になるでしょう。

まとめ

今回は、裁判離婚についてさまざまなお話をさせていただきました。
多くの方は、「このひとなら生涯をともにしても良い」と考え、結婚を決めたと思います。
しかしながら、予想だにしない出来事がおこって、「二度と離れたくないひと」だった方が、「二度と話したくないひと」に変化してしまうこともあるでしょう。
離婚の裁判は、「二度と話したくないひと」と別れるための最終手段です。
離婚できるかどうかはもちろん重要ですが、親権や養育費、財産分与といったお金の問題もまた、新たな人生の出発を迎えるにあたり、ほんとうに大切なことです。
協議離婚で円満に別れられることが一番ですが、もしもの時に備え、準備をしておけたら良いですね。

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