養育費は案外支払われない~少しのぞいてみるみんなの事情~

子どものいる夫婦が離婚を選んだときに、必ず取り決めをしなければならないのは親権をどちらが持つかです。
離婚届の項目にも親権を記載する欄があり、子どもがいるのに親権欄を記載していないと、役所で受理されませんし、そもそも離婚が成立しません。
また、親権の取り決めと同様に大切なことは養育費の取り決めです。
しかしご存じでしょうか?
養育費を貰っていない人って実は多いのです。
今回は、養育費についてお話していきましょう。

もう会いたくない ~元夫と関わりたくないひとは結構いる~

当社では20代から50代の女性を対象に離婚についてのアンケートを実施しました。
そのなかで、離婚を経験し、子どもの親権(もしくは監護権)を持っている方に対して「元パートナーから養育費を貰っているか」という質問をしたところ、金額の多寡を問わず、もらえている方は全体の31パーセントにすぎませんでした。
思ったよりも、かなり低いと感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに驚きの数字ですよね。
ングルマザーに限って言えば、49パーセントで、全体での割合よりは高いのですが、それでも半数にも満たない結果でした。
養育費が支払われていないと聞くと、取り決めをしたのに相手側が支払ってくれないというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかも知れませんが、実際はすこし違います
養育費を受け取っていない方で最も多かったのは、「離婚の話し合いで養育費を取り決めていない」方なのです。
厚生労働省が平成28年度に行った調査によれば、56パーセントの方がこれにあたります
また、シングルマザーの方で、養育費を受け取っていない理由の中で最も多かった回答は、「相手と関わりたくないから」でした。
当社がおこなった調査によると全体の約44.8パーセントでした。
加えて、前述の厚生労働省のデータに戻ると、養育費を継続してもらえる割合は26.1パーセントで、子どもが独り立ちできるまで養育費を貰える人は、わずか4人に1人という驚くべき結果です。
誰しもが、結婚をするときには、別れることなんて想像もしていないことでしょう。
仕方がないことなのかもしれませんが、好き合っていた男女が、顔も合わせたくないほどの状態になって離婚を選択したと考えると少し切なくなりますね。

養育費を貰わない理由って?

前章では、養育費を貰っていない方の割合や、理由について触れました。
今回は、「理由」に焦点をあて、さらに深堀してお話していきたいと思います。
先ほど、シングルマザーが養育費を受け取っていない理由の1つとして、「相手と関わりたくない」という回答がかなりの割合を占めているとお伝えしました。
他にどんな理由があるのでしょうか。5位までを子どもの末子年齢別にまとめて表にしてみましたので、以下を確認ください。

1位 2位 3位 4位 5位
全体 支払う意思が無い(46.3%) 相手とかかかわりたくない(約44.8%) 支払う経済的な能力がない(28.9%) 身体的・精神的な暴力を受けた(約14.6%)%) 養育費の請求はしないと取り決めた(約13.3%)
末子0~6歳 支払う意思が無い(47.4%) 相手とかかかわりたくない(約40.6%) 支払う経済的な能力がない

(26.8%)

取り決めの交渉がわずらわしい(16.7%) 取り決め交渉をしたがまとまらなかった(13.9%)
末子7歳~12才 支払う意思が無い(51.3%) 相手とかかかわりたくない(約51.1%) 支払う経済的な能力がない(22.2%) 身体的・精神的な暴力を受けた(約19.8%) 取り決めの交渉がわずらわしい(17.5%)
末子13~18歳 相手とかかかわりたくない(約42.8%) 支払う意思が無い(40.2%) 支払う経済的な能力がない(37.7%) 養育費の請求はしないと取り決めた(10.2%) 取り決め交渉をしたがまとまらなかった(8.1%)

※複数回答有

上記のランキングを確認すると、「支払う意思が無い」と「相手とかかわりたくない」と回答する方が、末子の年齢層問わず圧倒的に多いですね。
また「支払う経済的な能力がない」という理由は全年齢層において3位という結果を得ました。
「支払う経済的能力がない」のであれば、ある意味致し方ないと言えますが、実際には「支払う意思が無い」「相手と関わりたくない」という感情的な理由から養育費が支払われないという問題が起こっていると言えます。
離婚する際の状況によっては感情に流されるケースが在ることは充分に理解できます。
しかし、子どもの年齢が上がるにつれて、養育にかかるお金は増えていきます
その時に、取り決めなかったことを後悔するかもしれません。
そこで次章では離婚後でも養育費の取り決めが可能なのかを考えていきたいと思います。

離婚したら終わり?~離婚後に養育費の取り決めは可能なの?~

自分のパートナーに問題があって離婚を決める場合、「早く別れたい」と考えて後の取り決めをしないまま離婚してしまうことがあります。
しかし、子どもの養育に関する支出が増えるにつれて、「養育費を取り決めておけばよかった」という声をよく耳にします。
そこで離婚後でも養育費の支払い請求ができるのかどうかをお話していきたいと思います。
両親は、自分の子どもが経済的に自立するまで扶養する義務があります。
これは民法にも記載されています。
つまり、離婚をしたとしても、自分の子どもである事実は変わらないわけですから親権者でなくても養育費を支払わなければいけません
そのため、離婚した後に養育費を請求することが可能です
離婚後に養育費を請求したい場合には、まず元パートナーとの話合いをおこないます。
具体的な金額は、双方の収入、子どもの人数、進学状況、健康状態などが考慮され、決定します。
口頭のみの約束ですと、客観的な証拠がないため「言った」「言わない」の押し問答になってしまう可能性があります。
そこで、その合意した内容を公正証書に残すと支払いが滞った場合にスムーズに強制執行が出来ます。
また、元パートナーとの協議がうまく行かなかった場合には、家庭裁判所に調停の申し立てをおこなうのも手段のうちです。
調停では調停委員が当事者双方から収入の状況や、子どもの状況などに関してヒアリングを行い、解決策を提示します。
ここで当事者がどちらとも納得し、合意すれば調停証書が作成され、調停は終了しますが、合意ができなかった場合には審判に移行し、裁判官が判断をおこなうことになります。

みんなの体験談

これまで養育費の支払い状況や、離婚後の取り決めなどについてお話をしてきました。
ここでは、実際の体験談をあげてお話させていただきたいと思います。

ケース①

妻:せいこ(42)職業:映像制作会社 年収:500万円
夫:せいや(42)職業:Webデザイナー 年収:700万円
息子:まさみ(11)

元パートナーであるせいやとは、好きなアニメが同じなことから交際に発展し、結婚しました。
私は、映像制作が好きで、息子のまさみが産まれてからも、仕事を続けていました。
さいわい会社も融通をきかせてくれ、産休や育休のほか、まさみが小学生に上がるまでは、時短勤務やリモートでの作業などで対応してくれていました。
しかし、夫とは育児についての意見が合わず、離婚を考えるようになりました。
まさみが小学生に上がるのを待って、親権は私が持つことになり離婚しました。
離婚する際の話し合いでは、当時夫がフリーランスのデザイナーであったため収入が安定しておらず、また私の方が稼ぎも多かったため養育費は、無理して支払わなくてもよいと約束して離婚しました。
そのから、まさみが10歳になるまで女で1つで育ててきました。
まさみは、英語の勉強が大好きで他の教科や友達の誘いには目もくれず、勉強に没頭していました。
そこで、11歳になった時、試しにTOEFULを受けさせたところ、海外留学の基準をクリアしているレベルだったそうです。
まさみは口癖のように、「インターナショナルスクールに行って、いずれは海外留学をしたい」といっています。
とはいえ、公立であれば、私の稼ぎでもまさみのことを養っていけるでしょう。
しかし、インターナショナルスクールに海外留学となると話は別です。
お金を理由にまさみの希望を聞き入れられないのは心苦しくて、駄目元で元パートナーのせいやに連絡を取りました
離婚してからというもの、月に一度の面会ではまさみを託すだけで、彼とはあまり会話をしていませんでしたが近況を聞いてみると、デザインの仕事が入るようになり、それなりの収入を得ているようでした。
そこで、まさみの抱いている想いを伝え、援助をお願いしたところ、快く受け入れてくれました。
念のため取り決めたことを、書面にしてお互いの署名を残しました。
一度は私の方から支払わなくても良いと伝えたのに、なんで養育費を出してもいいと思ったのかと尋ねると、「まさみが高校卒業したときにでも渡そうと思っていた」と言ってくれました
お互いに、男女の関係には戻るつもりはありませんが、まさみの親として、良好な付き合いをしていきたいと思いました。

ケース②

妻:しおん(33) 職業:保育補助 年収:150万円
夫:げん(35)職業:プログラマー 年収:500万円
娘:あおい(4)

元夫のげんとは、街コンで意気投合し、勢いのまま交際6か月でスピード結婚しました。
充実した結婚生活を1年ほど経た後、娘のあおいを授かりました。
当時、私は保育士として、私立保育園につとめておりましたが、妊娠を機に退職しました。
産まれてきたあおいの世話は大変でしたが、今まで見てきた子どもの誰よりもかわいく、いとおしい存在に思えました。
しかし、そんな毎日も束の間。夫は育児優先で、他の家事がおろそかになった私に不満を覚えたらしく、離婚を切り出してきました。
「あおいはちいさいからひとりじゃ生きていけないけれど、げんは立派な大人なんだし、少しくらい我慢してほしい」と何度も伝えました。
しかし彼は自分が優先されないと気がすまないらしく、いつも不機嫌さを隠そうとしませんでした。
そんな彼の姿を見せられて、次第に嫌悪感がつのり、ついには離婚を受け入れました
離婚直前は、話し合いなどを避け、養育費などを取り決めはおこないませんでした。
けれどある程度時間が過ぎて、冷静になると元夫は十分な収入があるのだから、養育費を支払うべきだと思いなおしました。
現状、私は実家に戻っているので衣食住の心配はありませんが、今後あおいを育てていくうえでお金がたくさんかかります。
そこで、彼の携帯に電話し、養育費の件を切り出しました。
彼は、「金がない」といって取りつく島もありませんでした。
その後は何度電話しても留守電につながってしまい、しばらくすると「この電話番号は現在使われておりません」のアナウンスに変わりました。
調停を申し立てようと思いましたが、彼はすでに一緒に暮らしていた住まいを引き払っていて、今住んでいる場所すらわかりません。
私が途方に暮れていると、両親から「まだ引っ越してまもないのだから、戸籍から調べられるかもしれない」と言われ、役所に相談しに行きました。
役所で必要と言われた証明書類を提出することで、彼の戸籍を取得でき、無事に調停の申し立てをすることが出来ました。
元夫はしぶしぶ呼び出しに応じ、今後について月々4万円の養育費の支払いを取り決めることが出来ました
いくら嫌いになったとはいえ、養育費を取り決めずに離婚したことは浅はかだったと反省しました。
これからは、感情的に行動しないという教訓になりました。
近々、私は保育士に復帰することが決まりました。
これからは娘のことを第一に考えていきたいと思います。

まとめ

今回は養育費が支払われていない問題や、その理由、また養育費の取り決めに関してお話をさせていただきました。
こちらでも紹介しましたが、離婚の際に、養育費を取り決めていない場合であっても、元パートナーも扶養する義務を負うので、養育費の取り決めをおこなうことは可能です。
実際、体験談のケース①、せいこさんのように円満なかたちで養育費を支払ってもらえる場合もあります。
一方で、ケース②のしおんさんのように音信不通になるケースをしばしば耳にすることがあります。
調停を申し立てるためには、相手方の現住所を記載する必要がありますが、離婚後の住所を把握していなくて泣き寝入りするしかない場合もあります
今回のケースのように、元パートナーの所在地が不明でも、離婚時の戸籍から、相手方の現住所が判明することもあるので、音信不通になったとしてもすぐに諦めないことが大切です
養育費は子どもの将来にかかわってくる問題なので、離婚したいと思っている方は、一度冷静になって、より良い選択が出来たらよいですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。