養育費を請求したい~その方法とは…~

子どものいる夫婦が離婚を決めたとき、一番の問題は親権や養育費になると思います。
また離婚当時には、事足りていた養育費が、離婚後、収入が減ったり、子どもの教育費がかさんで足りなくなるということもあるでしょう。
今回は、そんな大切な養育費に焦点を当ててお話をしていければと思います。

養育費の取り決めとは…

養育費とは、その字面のとおり、子どもを育て教育するためのお金です。
子どものいる夫婦のあいだで、離婚の話し合いをおこなううえで、親権に並ぶ重要事項になるでしょう。
当社で20代から50代の女性を対象に離婚に関するアンケートを実施したところ、定期・不定期問わず養育費の支払いを受けている家庭は、全体のおよそ3割程度という統計結果が出ました。
養育費の支払いがないと聞くと、支払いがとどこおっているイメージをいだく方もいるかと思いますが、実際は離婚したときから取り決めていない方の方が多いです。
離婚理由によっては、相手と関わりを持ちたくないため、あえて養育費の取り決めをしない方もいます。
ある程度の収入があり、また貯蓄に余裕がある方であれば、大変でしょうが養育費の支払いが無くても生活をしていけるかもしれません。
しかし、中には子どもが幼く、育児に手がかかってしまい、なかなか思うように働けない方もいるのです
実際、当社で末子の年齢別に、シングルマザーの年収の統計を取ったところ、子どもの年齢が高くなるにつれて、平均年収は上がっていくという結果が出ました。
養育費は子どもの年齢が上がるにつれて高くなるというデータがあります。
したがって、相手と関わり合いを持ちたくない場合でも、養育費の取り決めをしておいた方が良いでしょう。
しかし、すでに離婚をしている方の中には、養育費の支払いがされておらず、困っている方もいると思います。
次章では離婚後におこなう養育費の取り決めについて説明させていただきます。

【養育費について考えてみよう】養育費の基本知識

養育費の取り決め方~離婚前、離婚後なにがちがう?~

養育費は、「離婚する前に決めておかないと、貰えない」と考える方は少なくないでしょう。
確かに、離婚後に養育費の調停を申し立てるなどによって、養育費の取り決めをおこなう人よりも、離婚する前に養育費の取り決めをする人の方が多いものと思われます。
しかし、離婚後に養育費を取り決めることが出来ないのかといえば、決してそうではありません
例え、離婚したとしても、親である事実には変わりなく、親は、子どもが離婚前とかわらない水準の生活を維持できるように、それに必要となる費用を負担する義務があります。
したがって、離婚後であっても、養育費の取り決めをおこなうことは可能です。
ただし、注意していただきたいのは、離婚後に養育費を取り決めると、離婚したときから取り決めるまでの期間に発生した、養育費については、請求できない場合があります
あくまで調停や裁判上での話しですが、養育費の請求は、請求意思が明確になった時点を基準とする考え方が一般的です。
請求意思が明確になった時点というのは、「内容証明を送った」「養育費の調停を申し立てた」などを指します
請求される側にとっても、過去分の養育費をさかのぼって請求されると、支出が過大となってしまうことから、こういった判断がなされているものと思われます。
そのため、できるだけ離婚前に養育費の取り決めをしておいた方が良いのです。

【離婚したいけどお金が心配!】離婚前や離婚後のお金についてよくある疑問について①

公正証書?~養育費をとりっぱぐれしないための対策とは~

養育費の取り決めは、契約です。
意外に感じるかもしれませんが、口約束でも契約は成立します。
そのため、養育費の取り決めをおこない、その後支払いに滞りがあった時には、書面が無くても相手に滞った分の養育費を請求することが出来ます。
ただし、お金のトラブルでありがちなのは、「言った」「言わない」の押し問答になることです。
養育費の取り決めが口約束のみの場合、元パートナーから「支払うなんて約束していない」などと主張されると、こちら側にも養育費の支払いについて契約したことを証明できるものがなく、踏み倒されてしまう可能性があります。
「離婚の取り決めは、離婚協議書などの書面にして残しておくべき」ということを耳にしたことがあると思います。
書面として残しておけば、元パートナーが後になって、主張をひるがえしたとしても、契約した内容をあきらかにする物的証拠があるため、容易に否定できます
したがって、離婚協議書を作成しておくことが推奨されるのです。
書面で残していなくても、素直に支払いをしてくれる誠実な人ばかりであれば良いのですが、現実はなかなかそうもいきません。
また、「離婚協議の内容を公正証書にしておいた方が良い」ということも良く耳にすることだと思いますが、具体的に公正証書と自分たちで作った書面とでは何が違うというのでしょうか

公正証書と私署証書の効力の違い

私署証書とは自分たちで離婚協議書を作成した場合の書面を指します。
養育費の支払いが滞った場合、パートナーに契約があることを伝え、養育費の請求をすることが可能ですが、実際に支払ってくれるかどうかは相手次第になります。
対して、公正証書で離婚協議書を作成すると、多少の手間や費用が掛かりますが、養育費の支払いに相手が応じない場合、裁判所へ申し立てることで、給料差し押さえなどの強制執行が比較的容易におこなえます。
当社の調査によると、養育費の支払い率は離婚から時間が経つほど低下する結果が出ました。
婚経過後5年以内の養育費支払い率が3割から4割程度に対して、6年以降は2割をわって、1.5割程度になります。
つまり養育費を継続的に受け取っている人よりも、まったく受け取っていない人あるいは、途中で支払いが止まった人の方が圧倒的に多いということになります。
したがって、後々の回収を考えて養育費の取り決めを公正証書として残すことを推奨しているのです。
ただし、一見いいことづくめの公正証書にも、利用しにくいというデメリットもあります。

公正証書のデメリットとは?

①          費用が意外とかかる
公正証書は、公証役場という国の機関で、公証人に作成してもらう必要があります。
公証人は、判事や検事を長く務めた法律実務が経験豊かな人から、法務大臣によって選出されます。
法律に長く携わってきた人に作成してもらうのならば、お金がかかるのもうなずけますね。
そして肝心の料金に関してですが、実は離婚協議書に盛り込む内容によって変わってきます。
そのため、子どもが1人で、養育費の総支給額が低い場合には10,000円から15,000円程度で作成可能ですが、子どもが複数人いた場合や、養育費のほかにも財産分与・慰謝料・年金分割の内容が盛り込まれる場合には、金額が上がります。
また、公正証書1枚につき○○円とお考えの方もいるかと思いますが、実際は1契約につき○○円になるので、契約の数が多かったり、養育費の総支給額や財産分与の金額、慰謝料の額が高かったりすると、手数料も高くなるのです。
②          夫婦一緒に作成しなければいけない
弁護士や、行政書士などの専門家に公正証書の作成を委託する場合をのぞき、公正証書は夫婦一緒に作成しなければなりません
公正証書をお互い合意できる内容で作成するため、当然双方の打ち合わせが必要ですし、公証役場に提出する書面の内容が、真実に双方が同意した内容であることを、公証人の面前で宣する必要があるからです。
したがって、夫婦のどちらか一方が、公正証書を作成したくとももう片方が同意をしてくれないと、作成は難しいといえます。
③          即日発行でないことが多い
多くの場合、公正証書は、公証役場に赴いた日に発行されるわけではありません。
というのも、公正証書は思い立った日にすぐ作成できるわけではなく、予約期間を設けていることが多いからです。
公正証書を作成する場所にもよりますが、大体1週間から3週間程度が目安だとされています。
そのため公正証書の作成をお考えの方は、ある程度時間に余裕を持っておいた方が良いでしょう。
以上が、公正証書を作成するにあたってのデメリットでした。
①や③にかんしては事前に知っておけば備えようもありますが、②に関してはパートナーの気持ちの問題なので、最も高いハードルだといえるでしょう。
とはいえ、諦めてしまうと後々の後悔につながるので、根気強く説得していくことをおすすめします。

【離婚するなら必須?】自分で書いた離婚協議書と公正証書の違いについて

体験談

ここまでは、養育費や、離婚協議書の公正証書についてお話をしてきました。
今回は、離婚した方の体験談について触れていきたいと思います。

みかこさんの場合

妻:みかこ(37)職業:広告会社 年収:400万円
夫:みきたか(32)職業:鉄道会社 年収:530万円
娘:みずき(2)

夫のみきたかとは、旅行先で出会いました。
私は、神社仏閣が好きで、よく一人旅と称し、休みがあれば全国をてんてんと旅行していました。
京都に赴いたときにユースホステルで仲良くなったのが、彼でした。
出会った当時、私は25歳で、彼は20歳。
年の差にややしり込みしていましたが、連絡を取り合ううちに彼の朗らかな人柄に抗いきれず、好きになってしまいました。
振られるのを覚悟で、告白したところ、彼は笑って了承してくれました。
「こんなにフィーリングの合う人はもう出会うことがないだろう」と感じ、彼が大学卒業をするのを待って、逆プロポーズし、結婚しました。
以降、多少のいさかいはあるものの、夫婦二人の生活を満喫していました。
私が、30歳を過ぎたころから、妊活をはじめ、35歳のとき妊娠。
なかば子どもを諦めていた部分があって、娘のみずきの誕生は人生で一番うれしい出来事でした。
夫もはじめこそ、娘の誕生を喜んでくれましたが、子ども中心の急激な生活の変化についていけなかったのか、だんだんとふさぎ込むようになりました。
「子どもを育てていく自信がない」「みかこを子どもに取られているようで嫉妬している」と弱音を吐くようになりました。
私も初めての育児で大変でしたが、彼の落ち込みようが気がかりだったので、育児の合間を縫って二人の時間をつくるようにしました。
しかし、1年経っても2年経っても、彼の様子は変わらず、しまいには「父親として生きる自信がない」と言い出すようになりました。
さすがに限界でした

そこで、離婚を切り出し、2人で財産分与や養育費などの取り決めを半年ほどの時間をかけて進めました。
また、彼が今後、経済的に父親としての義務を果たしてくれるか不安だったので、「養育費の取り決めは公正証書として残したい」と伝えたところ、意外にあっさりと了承してくれました。
私が住んでいる場所の公証役場では、公正証書を作成するための相談が出来たので、何度か相談をした後、公正証書を作成しました。
内容は、20歳になるまでの養育費の取り決めと、滞った場合のペナルティです。
また、大学費用などの養育費が発生する場合に備えて引っ越しをした場合、10日以内に引っ越し先の住所を教える通知義務も盛り込みました
彼と別れることはとても悲しいですが、彼以上に大切なのは娘です。
今後は、父親がいない分も含めて私が愛情を注いでいきたいと思います。

まとめ

今回は養育費や公正証書についてお話をしてきました。
養育費を継続的にもらうためには、公正証書が必要になります。
しかしながら、離婚を考えている中には、パートナーと話し合いが難しい状態の方もいるでしょう。
どうしても話合いにならない場合には家庭裁判所に調停を申立てする手段もあります。
ただ、子どもに両親の争う姿を見せるのは、精神的な負担を生じさせます。
そのため、できるだけ話し合いで解決できるような方向を目指すべきでしょう。

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