夫を介護…~限界を感じ、離婚がしたい~

「神は乗り越えられる試練しか与えない」
「どんなに苦しい状況でも一緒に乗り越えていくのが夫婦のかたち」

無償で与えることのできる「愛」はとても素晴らしいものです。
けれど、パートナーが病気や怪我をきっかけに、日常生活もままならなかったらどうでしょう…?

成人男性を介護することは想像を絶するほど大変です。
誰にでも乗り越えられる試練ではありませんし、夫の障がいの状態によっては一生涯付きまとう問題になります。
今回は、何かしらの理由で夫に介護が必要になった場合の離婚についてお話したいと思います。

病気や怪我が理由の離婚は認められる?~法律で決まった離婚事由~

一生を添い遂げると誓ったパートナーが事故や病気で障がいを負ったときの絶望感は筆舌に尽くしがたい感情でしょう。
「好きな人を支えたい」と献身的な気持ちから、介護を懸命にする方がほとんどだと思います。
しかし、次第に先の見えない不安や介護による肉体的、精神的な疲労の蓄積によって離婚したいと考える方もまた、少なくはないのです。
では、怪我や病気を理由にして離婚は認められるのでしょうか。

民法に記載されている、「法定離婚事由(裁判で認められる離婚理由)」の項目の中には、「強度の精神病を患い、回復が見込めない場合」というものがあります。
具体的に言うと、重度のうつ病や、統合失調症などが挙げられます。
しかし、パートナーがいくら回復の見込みがない強度の精神病を患っていたとしても、夫婦の取り巻く環境や、経済状況によって離婚が認められない場合もあるのです。
つまり、ケースバイケースなので、「○○ならば、絶対離婚できる」といった指標はありません。

また身体的な障がいに関しては「法定離婚事由」のその他婚姻を継続し難い重大な事由にあたるケースがあり、離婚が認められる場合もあります。
ただしこちらも、精神障害と同じように、夫婦間の意思疎通が出来ない状態であるのか、また離婚後夫が生計を立てていけるか等が考慮され、必ずしも離婚できるとは限りません
したがって、パートナーの障がいを理由に離婚するには、話し合いである協議離婚でおこなわれるケースが多いです。

夫の介護するのは限界…~介護を放棄した場合のトラブル~

前章では、パートナーの障がいを理由に離婚できるかどうかに加え、法定離婚事由について説明いたしました。
今回は、障がいを持ったパートナーの介護を放棄した場合のトラブルについて掘り下げていきたいと思います。

介護放棄は違法行為?

介助が必要なレベルのパートナーを放置し、介護しなかった場合には、民法で定められている同居の義務等に違反している可能性があります。
同居の義務等とは「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」のことです。
上記に違反した場合、離婚成立時にパートナー側から損害賠償を請求される恐れがありますので気を付けましょう。

放っておくのは犯罪?

介護放棄で、離婚時に損害賠償請求をされる可能性があるとお伝えしましたが、最悪の場合、自身が犯罪者になってしまう場合もあるのです。
パートナーが食事や排泄などを自身の意思でおこなえない等のケースで、誰かの保護が無ければいけない状態の時に、介護などの行為をなにもしないと、わざとでなくても「保護責任者遺棄罪」にあたることもあるのです。

長期間、ひとりでパートナーの介護をおこなっていると、疲労などで判断を誤ったり、うつ病を発症したりすることがあります。
また追い詰められて自殺するケースや、心中といった最悪の事態も想定されます。
したがって、パートナーの介護に疲れた場合には、家族や友人に相談し、場合によっては支援団体などに頼って、介護を代わりにしてもらうことを検討した方が良いでしょう。

障がいのあるパートナーと離婚 ~慰謝料・養育費はどうなるの?~

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

パートナーの障がいを理由として離婚した場合、慰謝料や養育費について気になる方が多くいらっしゃると思います。
では、早速項目別に確認していきましょう。

慰謝料は請求される?

障がいのあるパートナーと離婚する場合、パートナーや相手方の家族の合意を得ることが出来れば離婚できます。
婚姻関係にあるあいだ、献身的な介護やサポートをしていれば、基本的に慰謝料を請求されることはありません

また、先ほどお伝えしたとおり夫婦には扶助や協力の義務があるため、介護を理由に慰謝料を請求することは出来ないと思われます。
ただし、前章で説明したとおり、介護を放棄した場合にはケースによって、パートナー、もしくはパートナーの家族、成年後見人等(※)から請求されることがあります。

養育費は支給できる?

養育費は通常、生活水準が多少下がっても支払いが優先されるお金です。
したがって、パートナーにある程度の収入がある、また今後収入が見込まれるのならば、支払ってもらえる可能性が十分にあり得ます。
ただし、パートナーの障がいが重い状態で、収入が0の場合には養育費が支払われないケースも多々あります。

※成年後見人等…怪我や病気等で障がいが原因で認知能力が下がったときには、補助・保佐・後見人を認知能力によって立てる必要があります。

体験談

ここまで、障がいを負ったパートナーと離婚が出来るかどうかのお話をしてきました。
今回はある女性の体験談を紹介したいと思います。

しょうこさんのケース

妻:しょうこ(29)職業:会社員 年収:320万円
夫:れいじ(32)職業:映像系ディレクター 年収:500万円
私と夫であるれいじは、友人の紹介がきっかけで出会い、26歳のときに結婚しました。
結婚後1年は、夫婦で旅行に行ったり、デートをしたり、新婚生活を満喫していました。

ある日、彼が出かけ先で、交通事故に遭い半身不随になってしまいました。
腕や頭などは動かせますが、下半身は全く動かなくなり、言語に障がいが残ってしまいました。
半身不随になってしまった彼に、かなりのショックを受けましたが、愛情には変わりなく、彼を一生支えようと心に誓いました。

しかし、彼は思うように動かない自分の身体にイライラするようになり、些細なことで怒るようになってきました。
私も私で、彼の生活のサポートが思った以上にハードで、精神的・肉体的に疲れ果ててしまいました。
仕方ないことですが、言語に障がいがあるためなかなか意思の疎通が取りにくく、だんだんと愛情も薄れてきました。
薄情だと思われるかもしれませんが、このままでは共倒れになってしまうと感じ、離婚を切り出しました。

最初のうち、彼は怒りをむき出しにし、私をののしりました。
その後、子どものように泣き出し、「いやだ」と何度も言いました。
私は、それでも離婚する意思が固まってしまったこと、このままでは自分も心が病んで、夫にひどいことをしないか心配であることを話しました。

話し合いに2年ほどを費やした結果、同意を得ることが出来、離婚が成立しました。
共同財産は引っ越し代を引いてすべて彼に渡しました。

彼を嫌いになったわけではないので、彼を彼の両親に託したときにはひどく動揺し、泣いてしまいました。
「血も涙もない」と言われてしまうかもしれませんが、それでも彼と離婚したことは後悔していません。
どんなに好きでも、愛していても、その感情だけでは乗り切れないこともあるとつくづく感じました。

まとめ

今回は障がいを負ったパートナーとの離婚についてお話をしました。
パートナーが障がいを負った場合、その介護などを理由に離婚を成立させることは非常に難しいです。

しかしながら、介護をし続け、ストレスがたまった結果、うつ病になったり、パートナーに虐待をしてしまったりすることがあります。
そのため、「きつい」と感じた時には、必ず誰かに相談することが大切です。
また、離婚を考えることは決して、非人道的でも、ひどいことでもありません
パートナーと離婚をしたい場合には、弁護士などの専門家に頼ることも手段のうちです。
「自分がどうしたいのか」をよく考えて、より良い選択が出来るといいですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。