りこんのとどけ ~意外と知らない離婚届のあれこれ~

通称緑の紙とも呼ばれる離婚届…
テレビドラマでは見ることのある離婚届ですが、実際に何度も書いたという方は少ないと思います。
今回は離婚届の書き方や、離婚届を提出する前の準備についてお話していきたいと思います。

離婚を決めた ~離婚届を出す前にやっておくこと~

パートナーと不仲で離婚を決めた場合、「一刻も早く別れたい」と、勢いで離婚届を出してしまいたくなりますが、ちょっと待ってください。
勢いで離婚が成立すると、後になって後悔する場合があります。
したがって、離婚する前には以下のことを決めておいた方が良いでしょう。

1.共同財産の分け方
2.婚姻費用の請求(別居していた場合)
3.親権
4.養育費

1.共同財産の分け方

共同財産とは、結婚してから夫婦が共同で築いた財産のことです。
現金や預貯金だけでなく、家や土地などの不動産、車や家具、冷蔵庫などの電化製品なども共同財産に含まれます。
ただし、婚姻前の預貯金や株などの財産や相続財産、個人的に貰ったプレゼントは共同財産ではなく個人の財産としてカウントされます。
また共同財産を分けることを財産分与と言い、互いに離婚の原因が無く、ある程度安定した収入がある場合には、折半で分けることが通常です。

【共有財産はお金だけじゃない】離婚時にもめる可能性のある財産分与

2.婚姻費用

婚姻中に別居をしていた場合(もしくは、家計にお金を入れてくれてなかった等)、互いの収入に応じて支払われる費用のことです。
婚姻費用はパートナーよりも収入が低いときに請求できます。
詳細につきましては裁判所が公表しております婚姻費用算定表で相場をご確認ください
また、別居理由がご自身にある場合(不倫、理由なく勝手に出ていった等)は、婚姻費用は請求出来ない可能性があるのでご注意ください。

3.親権

後に詳しく説明させていただきますが、婚姻中は夫婦共同で親権を持っている状態です。
離婚届に子どもの親権欄があるので、必ず決めなくてはいけない事項です。

4.養育費

子どもの衣食住や教育にかかるお金のことです。
養育費は離婚後でも決められますが、離婚後から養育費の支払いの契約が結ばれるまでの期間の費用が請求できない可能性があります。
したがって、お子さんの養育費は離婚届を出す前に取り決めした方が良いです.

上記を夫婦のあいだだけで話し合うことを離婚協議といいます。
1から4の条件が夫婦で折り合いがつかない場合は、協議に弁護士などの第三者をいれるか、家庭裁判所に調停の申し立てをすることをおすすめします。

また、パートナーに離婚事由がある場合には、慰謝料の取り決めもした方が良いです。
4の養育費と同様、離婚後でも慰謝料を請求できますが、時効があります。
時効は、離婚原因とされる行為を知ってから3年、もしくは不倫などの離婚事由にあたる行為があってから20年間のどちらか期間が短い方になります。
短い方が採用されるので、大抵は3年の方が適用されることが多いと思います。
3年は長いようで短い期間ですので、しっかりと確認しておきましょう。

【養育費について考えてみよう】養育費の基本知識

離婚届を書く前に知っておくこと

前章では離婚届を出す前にやっておくことをご紹介しました。
今回は、離婚届に記載するために知っておくべきことをお伝えしたいと思います。
以下が必要になります。

①証人を決めておく
②離婚後の姓について
③親権

①証人を決めておく

離婚協議で離婚を決めた場合には、証人の署名がないと受理されません。
証人は成年者(2022年4月1日までは20歳以上、それ以降は18歳以上)が2人必要です。
離婚する夫婦の親族でも友人でも続柄には特に指定はありません
なお、調停離婚や裁判で離婚が決まった場合、証人は必要ありませんが離婚の裁定がくだってから、10日以内に提出しなければならない決まりがあります。

②離婚後の姓について

離婚後、必ず旧姓に戻さなければならないようなイメージがあるかもしれませんが、絶対ではありません。
パートナーの姓を名乗り続けるか、旧姓に戻るか選択することが出来るのです。
そのため、仕事上の関係や、お子さんがおり、親権を持つ時にはどちらが良いのか考えておきましょう。

③親権

お子さんがいる場合、親権者を決めなければ離婚届を受理することが出来ません。
離婚届の欄には、「夫が親権を行う子」「妻が親権を行う子」の項目があり、そこにお子さんの氏名を記入するはこびになるので、親権をどちらが取得するかを話し合っておきましょう。
パートナーと親権について揉めた場合には、家庭裁判所に「夫婦関係調整調停(離婚)」を申し立てることも手段のうちです。
調停では、親権のほか、非親権者の養育費や面会交流についても取り決めすることが可能になります。
なお、収入などの関係によって親権取得が難しいとお考えの方は、監護者指定調停を申し立てることによって、監護権(子どもと一緒に暮らし、養育する権利)が取得できることもあります。

以上が、離婚届を書く前に知っておくことでした。

離婚届の作成時の注意点

ここまで、離婚届を書く前のやっておくべきことなどをご紹介させていただきました。
今回は、離婚届作成時の注意点についてお話させていただきたいと思います。
注意点はおもに以下が考えられます。

・離婚届の大きさ
・書くものについて
・署名について
・届出日について
・本籍や住所について

離婚届の大きさについて

現代の日本では、様々な申請書がダウンロードして自宅で印刷することが出来ます。
離婚届もまた、お住いの自治体によっては役所のホームページからダウンロードすることが可能です。

しかし離婚届はA3サイズでないと受理されません
家庭用のプリンターの多くがA4であることや、A4サイズの申請書も多いので注意が必要です。

書くものについて

離婚届を記入する際、鉛筆を使う方は少ないかもしれませんが、フリクションペン(※)でも書くことは出来ません
ボールペン、もしくはインクペンを使用し、色は黒で記入するようにしてください。
※フリクションペンは消すことが出来たり、月日が経つと消えてしまうため

署名について

意外に感じるかもしれませんが、離婚届の記入は本人の署名と押印以外の場所は、本人でなくても記入可能です。
ただし、相手の署名などを偽造して離婚届を提出すると、「有印私文書偽造罪」、「有印私文書行使罪」に処される可能性があります。
これにより3か月以上5年以下の懲役刑になることがありますので、くれぐれも注意しましょう。
なお、相手の同意を得ず勝手に離婚届を出した際には、「電磁的公正証書原本不実記録罪」にあたり、5年以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金を科される可能性があります。

届出日について

届出日は離婚届を作成した日にちではなく、実際に役所へ届出をする日にちを記載しましょう。
なお、郵送の場合には、到着日がはっきりとわかりませんので、郵送した日にちでも受理されます。
また、調停や裁判で離婚の場合には必ず調停成立・判決確定後の10日以内(※)に提出するようにしましょう。
10日以内に提出をしないと、5万円以下の過料を支払いが必要になる可能性があるので注意しましょう。
※ここでの「調停成立判決確定」は、異議申立期間や控訴期間である2週間が過ぎた日から10日間のことを指します。調停成立・判決が下った日、そのものではありませんのでご注意ください。

本籍や住所について

本籍や住所は「-」を使用せずに、正式名称で記載するようにしましょう。
少し想像しにくいかもしれませんので、下記をご参考ください。


〇 東京都千代田区千代田〇丁目〇番地〇号
× 東京都千代田区千代田〇-〇-〇
「×」の方は受理されず、書き直しを求められます。
したがって、戸籍抄本などに記載されているとおりに記入するようにしましょう。

以上が離婚届の作成時、注意するおもな点でした。

体験談

これまで離婚届の注意点についてご紹介をしてきました。
今回は離婚した夫婦の体験談を紹介させていただきます。

りこさんのケース

妻:りこ(42)職業:パート 年収:150万円
夫:じん(37)職業:新聞記者 年収:800万円
息子:そうじ(5)

夫のじんとは、結婚前に私が勤めていた会社の取引先の担当者で、仕事の付き合いから交際に発展しました。
そのころ、私は忙しい部署におり、仕事に辟易していて「結婚を前提に付き合ってほしい」という彼の申出に渡りに船だと感じ飛びつきました。
交際期間9か月を経てスピード結婚。
結婚を理由として、10年以上勤めていた会社を退社しました。
年齢は5歳離れていますが、彼は落ち着いた性格だったので、それほど年齢差を感じず、結婚生活を楽しんでいました。

結婚後2年ほどして、息子のそうじを妊娠。
まさに順風満帆でした。
しかしそうじが1歳になるころ、夫は政治部に配属され、当時総理大臣の大きなスキャンダルも発覚し、何か月も会社に缶詰め状態でした。
私が家事や育児を一手に引き受けることになり、次第に夫婦仲が希薄になっていきました

そうじが3歳になるころには、ほとんど会話のない状態になり、このまま結婚している意味があるのか疑問に思い離婚を切り出しました。
彼も同じことを考えていたようで、あっさりと離婚に対して同意を得ることが出来ました。
ただ、彼がかなり忙しいので、話し合いに充てる時間が少なく、共同財産の分配や養育費などの取り決めに2年を要してしまいました。

夫の欄をすべて彼に記入してもらい、役所へ行ったところ、「住所欄に不備があるので訂正してほしい」と言われました。
「夫が忙しいので後日来庁する」と伝えると、署名欄や押印以外は本人でなくても修正が可能であることを伝えられ、私が修正をしました。
また、届出日が作成日だったので、こちらも二重線と訂正印を押して修正し受理してもらいました。
彼の多忙さが離婚の理由で、嫌いでわかれたわけではないので、一抹のさみしさを覚えました。しかしそうじもいるので心機一転、今後は息子とふたりで頑張っていきたいと思います。

まとめ

今回は離婚届について詳しく説明させていただきました。
結婚するときに提出する婚姻届と同様、離婚届を書く機会はほとんどないと思いますので、実際の書き方や、離婚前の準備などに戸惑いを覚える方もいらっしゃると思います。
ただ、誤ったまま記載してしまうと、何度も役所に足を運ばなければならず、ご自身にとってもパートナーにとっても二度手間になってしまいます。
また、離婚方法が夫婦間だけで成立したのか、家庭裁判所の申立てをおこなったかでもルールが若干異なる部分もありますので事前確認をして、役所に提出しましょう。

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