母親思い?それともマザコン?~決められないパートナーとの離婚~

母親とは、人の出生において切っても切り離せぬものです。
フランス語では広大な海を「mer」と言い、母親にあたる単語を「mère」と言います。
母とは、海を包み込むほどの存在と解釈があるほど大きな存在だと言えるでしょう。
とはいえ、結婚したパートナーが母親の影響を受けすぎていたら…。
妻としては「たまったもんじゃない」という状況の方もいらっしゃると思います。
今回はマザコンのパートナーを持つ方に向けてお話をしていきたいと思います。

母親思いとマザコンはイコールじゃない

誤解されがちですが、母親思い=マザコンでは決してありません。
そもそも、母親を大事に、ひいては家族を大切にする男性はとても魅力的です。
家庭を大切にしない男性と結婚を想像してみると、あまり幸せな結婚生活は想像できないように思います。

マザコンとは?~似た言葉のエディプスコンプレックスとの違い~

マザコンとは、英語ではなく和製英語で「マザーコンプレックス」の略です。
意味は、母親や母親に似た女性に固執することを指します。
混同されがちな言葉で、「エディプスコンプレックス」という言葉がありますが、こちらは母親を慕うあまり、父親を憎むことを言います。
余談ですが、「エディプスコンプレックス」の「エディプス」とは、ギリシャ神話に登場する「オイディプス」という人物が語源です。
かいつまんで概要をお話すると、物語の主人公であるオイディプスが、父親と知らず国の王を殺し、母親と知らずにその王妃と結婚するものです。
かなり悲惨な終わり方をするので、一概におすすめは出来ませんが、興味がある方は読んでみるのも良いかもしれません。

マザコンと母親思いの違いは…?

マザコンと母親思いの違いとは、ずばりパートナーの決断に、自分の意志があるかどうかです。
また、経済的、精神的に自立しているということもあるでしょう。
母親を大切にしているからといって、「マザコン」と決めつけるのは尚早かと思います。
パートナーのことをよく観察し、「経済的」「精神的」に自立しているかどうかを見極めることが大切です。

マザコン傾向にある男性の特徴とは…?

前章で、マザコンと母親思いの違いは、「意志の有無」であるとお伝えしました。
しかし抽象的過ぎてイメージが湧きにくい方もいるかと思います。
そこでマザコン傾向にある男性の特徴を挙げてみましたので、パートナーに当てはまるか確認してみてください。

① 妻でなく母親を一番に優先する
② 母親に依存している
③ 妻と母親を比較する
④ 頻繁に連絡を取り合う
⑤ 実家に頻繁に帰る

① 妻でなく母親を一番に優先する

言わずもがな、マザコンの最大の特徴ですね。
当たり前のことですが、結婚すればたとえ両親といえども別家庭です。
したがって、通常であれば夫は妻、また二人の間の子どものことを第一優先にするでしょう。
ただし、パートナーの母親が病気であったり、日常生活に支障のある怪我をしたときに、第一優先になるのは仕方がないと思います。
特別な事情があった場合には、必ずしもマザコンとは言えません。

② 母親に依存している

夫婦間の決めごとを母親の考えに沿うようにすることは、健全とは言えません。
①でもお伝えしましたが、結婚した時点で別家庭です。
ひとつの意見として参考にしたり、妻が納得した上で、母親の意志を反映することは、問題ないと思いますが、過度に頼っていた場合には要注意です。
また、金銭面での依存もトラブルの元になります。
持ち家を購入するときや、夫婦のどちらかが事故にあったりするときにお金を工面してもらうことはあるかもしれません。
ただし、家族のためではなくパートナー自身のためだけに、その両親からお金を借り、また返済をしなかったりすることは、経済的に依存している可能性があります。
また他方で、収入に見合った支出が出来ないと、金銭感覚の違いなどで夫婦仲がより険悪になることも考えられるでしょう。

③ 妻と母親を比較する

「パートナーの母親と比較される」ことは多くの女性にとって、最も許せないことのひとつかもしれません。
そもそも、母親でなくても他の女性と比べられるのは嫌ですよね。
ましてや義母と比べられることは、またひとしおです。
育った環境は家庭ごとに異なりますので、各家庭によって習慣はさまざまです。
パートナーから自身の慣れ親しんだ味や行動を「母親とは違う」と否定し、比較されたときにはマザコンである疑いがあります。
ただし、ケースによっては「習慣」が一般的に見て「悪癖」であることもあります。
そのため、パートナーをマザコンと断定する前に、自身の習慣が他人から見ておかしなところがないかどうか、第三者に相談してみるのも良いかもしれません。

④ 頻繁に連絡を取り合う

パートナーが用事もないのに、母親と週2以上連絡を取り合っていたなら、ややマザコンを疑ってみても良いでしょう。
メールやLINE等のツールで毎日連絡を取り合っているよりも、電話の方が、より可能性が高いと言えます。

⑤ 実家に頻繁に帰る

別居しているのにも関わらず、毎週末実家に帰っていた場合、マザコンである確率が高いです。
ただし、夫婦に子どもがおり、妻を連れずに、実家へ子どもと一緒に帰っていた場合、パートナーは次のような意図があるかもしれません。
自分が子どもを実家に連れていくことで、妻が育児から解放され、羽根を伸ばせる時間をつくっている
このように、良かれと思って行動していることもあるので、パートナーの意図を確認しておいた方が良いでしょう。

上記に複数当てはまる場合は、パートナーにマザコンの傾向があるかもしれません。
とはいえ、すべてのマザコンが、離婚につながるわけではありません
例えば、パートナーが母親と頻繁に連絡を取り合っていたとして、妻側に害が無ければ、「ちょっとおかしいけど、人それぞれかも?」と割り切れる場合が多いと思います。
次章では、離婚につながるかもしれない「マザコン」について考えていきたいと思います。

こんな時は離婚になり得るかも…?~行き過ぎたマザコンにはご注意を~

パートナーが、母親を大事にしている姿は、ちょっと複雑な気分を覚えつつも、ご自身の許容範囲であるならば、離婚までは考えませんよね。
では、離婚を考えるような「マザコン」の姿とはどんなものなのでしょう。
2つの類型を挙げてみました。

1.モラハラ型マザコン
2.超依存型マザコン

1.モラハラ型マザコン

モラハラ型マザコン」の男性は、非常に厄介です。
というのも、自分自身が「マザコン」だと考えたこともないケースが多いです。
どういうことかというと、家事の方法や「妻」としての在り方を自身の母親を理想としている場合です。
具体的に言うと、「料理の味」「掃除の仕方」「仕事に対しての姿勢」など母親に近づけさせたがります。
このタイプは、結婚前(もしく子どもの頃等)家事の一切を母親が担っていた家庭に多く見られます。
「ご飯はだまっていても出てくるもの」「掃除や洗濯は妻の仕事」と考えている方の場合は要注意です。
妻側が、仕事をしていたとしても「だって俺の母親もやっていたんだから当たり前だろ」と取りつく島が無いこともあります。
このように男性側が家事や育児に協力してくれず、夫婦関係が破綻した場合には離婚事由にあたることがあります。
また、「妻が母親と同じではない」ということを理由にして、人格否定や暴言を吐いた場合には、モラルハラスメントに該当する場合もあります。

メンヘラでモラハラな夫と離婚したい!~夫婦は支え合いとか言うけれど、あいつは私におんぶにだっこなんだが…!~

2.超依存!寄生型マザコン

「寄生型」というとかなりイメージが悪いですが、この手のタイプの男性は「責任を持ちたくない」と思っていることが多いです。
つまり、とにかく自分で決めたくないのです。(あるいは幼少の頃、自分の意志で何かを決めるといった機会が少なかったかもしれません)
自分主体で決定するということは、その決断が正しかろうが間違っていようが、ある程度の責任を持たねばなりません。
ただし、「母親の意向が子どもの意向である」といった環境で育つと、自己決定ができず、結局絶対的強者に依存してしまいます。
この場合は、絶対的強者である「母親」に対してですね。
自分で意見が無いので、母親の意見が絶対で、夫婦のどんな決め事にもパートナーの母親が見え隠れすることになるでしょう
こういった方は、「母親の意見が正しいから(だって強者の意見だもの)」といって、妻の意見に耳を貸さなかったり、母親の肩を持ちたがる傾向にあります。
結果、嫁姑の関係が悪化したとしても、「自身の責任ではない」と放置して事態を更に悪化させる可能性があります。
嫁姑の関係が非常に険悪であるのにも関わらず、何もしなかった場合には、夫婦の扶助協力義務違反として、離婚が成立するケースもあります。

以上が離婚につながる可能性のあるマザコンのタイプでした。
パートナーのマザコン自体が離婚事由にはなり得ませんが、マザコンを理由に夫婦関係の維持の努力を怠った場合には、相手方の有責で離婚することが出来るかもしれません
また、今回紹介したマザコンのタイプのような方と接していると、精神的に疲弊してしまい、うつ病などの心の病気になる危険性があります。
したがって、自身が限界を感じる前に第三者へ相談することをおすすめします。

体験談

これまで、マザコン男性についてお話させていただきました。
今回は、パートナーのマザコンに悩んでいた女性の相談と相談に対する専門家の見解をご紹介したいと思います。

決めつけばかりのマザコンのパートナー~だから離婚を決断したの~

相談者(妻):ゆいこさん(34)職業:派遣社員 年収:220万円
夫:まさひこ(36)職業:官公庁職員 年収:700万円
娘:ひな(8)
息子:みきたか(4)

私の夫、まさひことは物心つく前からの幼なじみでした。
幼いころの約束、「大きくなったら結婚しよう」を現実にして、私が24歳の頃にゴールインしました。
長い時間一緒にいたので、夫がマザコン気質であることは当初から気づいていました。
ただ、子どもが生まれれば父親の自覚が産まれ、落ち着くだろうと楽観視していたので特に話し合うこともしていませんでした。
しかし、娘のひなや息子のみきたかが産まれても、彼はことあるごとに母親を頼り、治るどころかひどくなっていきました。
子どもの育児の悩みや相談をすれば、義母に筒抜け状態
「家族のことなんだから、夫婦で意見を出し合おう」と言っても、「大丈夫。母さんに間違いはないから」と取り合ってくれません。
また、私に用事が出来、彼に子どもたちの面倒を見るように言っても、自分の実家に預けて、当の本人は外出してしまいます。
更には、「お前は俺の家にはいったのだから、こちらの作法に従ってくれ」と、いちいち自分の母親と同じように行動するよう、強要してきます。

きわめつきは、私が留守中に、息子が怪我をした時の対応です。
息子はコンクリートに頭を打ち、けっこうな流血をしていたのですが、夫は母親との電話を打ち切らず、私が帰ってくるまで放置しました。
結局私が病院に連れていき、脳に異常は見られませんでしたが4針縫う大けがでした。
もう、信じられません。
一刻も早く離婚したいのですが、可能でしょうか。
夫の年収は私よりかなり高いので、親権が取れるか心配です。
ご教授いただければ幸いです。

見解

マザーコンプレックス、いわゆるマザコンが原因で離婚する方法は、通常協議による離婚が多いと思います。
と言うのも、過度のマザコンが理由で、夫婦関係が破綻したという証明が難しいからです。
今回のゆいこさんのケースでは、夫のまさひこさんが「母親を頼っている」ことを理由に離婚することは難しいと思います。
しかし、息子のみきたかさんが、怪我をしたときに病院に行くなどの適切な対処をしなかったことは問題です。
今回は、事なきを得たということですが、子どもの大けがを放置した場合には、保護責任者遺棄罪で逮捕されることもあります。
したがって、こちらを理由に離婚できる可能性は大いにあると思います。
なお、ご心配されている親権についてですが、親権を決める基準は収入のほか、健康状態や養育実績などさまざまなことが考慮されます。
また、子どもがどちらの親と暮らした方が幸せなのかで判断されるので、高い確率で、ゆいこさんが親権を取得できると思います。

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まとめ

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今回は、マザコンのパートナーについて深く考えていきました。
母親とは、とても大切な存在ですから、大きな区分で言うとほとんどの男性(もちろん女性も)がマザコンだと思います
ただし、別家庭になったのにも関わらず、パートナーが母親に過度に依存し続ける状況はよくありません。
また、母親への愛は異常なレベルで夫婦関係にも支障をきたしているのにも関わらず、我慢し続けてしまうと精神的な傷を負ってしまう可能性も否めません。
そんな時には一度、家族や親しい友人に相談したり、状況を紙に書いたりして、情報を整理してみましょう。
その上で、やはり異常だと思ったときには専門家である弁護士に相談してみるのも良いのではないでしょうか。

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