あなたはひとがいれば優しい夫~仮面夫婦の家庭内別居からの離婚~

「女はいくつもの顔を持っている」というけれど、それは女に限ったことじゃない。
私の夫はとても冷淡。家の中では全然会話もない。
けれど玄関を一歩出れば、「優しい旦那さん」を演じている。
周囲に「別れたい」と相談しても、私の我慢が足りないと言われる。
でもでも、だって、こんな冷たい家庭、耐えられない。
一体、離婚するにはどうすれば良いの。

夫婦の不仲が原因?それとも…~家庭内別居は意外と多い~

結婚した多くの方は、恋愛を経て夫婦になっていると思います。
国立社会保障・人口問題研究所が発表した2015年度のデータによると、夫婦のおよそ87.9パーセントが恋愛結婚であるという結果も出ています。
家庭内別居の話題に移る前に、少し掘り下げていきましょう。

時代はすでに恋愛結婚へ完全移行?~お見合い結婚との違いとは~

出会いのきっかけの統計が取られ始めたのは、まだ日本が帝国であった、1935年。
第2次世界大戦がはじまる前ですね。
当時、恋愛結婚の割合は非常に低く、わずか13.4パーセント(※)です。
対して、お見合い結婚の割合は69パーセントと、約7割近い数字を誇っていました。
しかし、戦争が終わり1945年を過ぎると、ゆるやかに下がりはじめ、            1960年代の高度経済成長を契機に、お見合いと恋愛結婚の割合が逆転します。
現在では、お見合い結婚の割合は1割を切って、わずか5.3パーセントの割合になりました。
お見合い結婚の割合が減った理由の一因として女性の社会進出があるのではないかと考えられます。
※恋愛結婚とお見合い結婚を合わせて100%にならないのは、「その他」と回答があったためです。夫婦が出会ったきっかけについて「見合いで」および「結婚相談所で」と回答したものを見合い結婚とカウントしています。それ以外の「学校で」、「職場や仕事の関係で」、「幼なじみ・隣人関係」、「学校以外のサークル活動やクラブ活動・習いごとで」、「友人や兄弟姉妹を通じて」、「街なかや旅行先で」、「アルバイトで」を恋愛結婚と分類して集計しました。出会ったきっかけが「不明」・「不詳」は数にカウントしておらず省略しています。

結婚相手に求める条件も変わってきている?

結婚のきっかけが移り変わったように、結婚相手に求める条件についてもじょじょに変化していっています。
年代をとおし、女性が結婚の条件として重視している項目は、「人柄」です。
対して、昭和や平成初期に比べ、現在、求められてきているのは、「家事・育児の能力」でした。
共働き家庭が増えていくなかで、家事や育児が女性の役割という価値観が「家事や育児は男女で協力するもの」と変わってきているのかもしれませんね。

結婚への価値観が変動するなかで起こる家庭内別居

あらゆる環境が移り行くなかで、結婚に対する価値観もまた変化していくのは自然なことです。
さらに、2020年に発生した新型コロナウイルスの流行で、変わらざるを得なくなった働き方によって、夫婦のかたちの在り方も変わっていくのではないかと予想されています。
とはいえ、変化が起こす効果はなにもポジティブなものばかりではありません。
共働きであった夫婦がお互い在宅勤務になり、顔を突き合わすことで夫婦仲に不和が生じるケースも増えています。
コロナ禍が発生する前、家庭内別居の割合はおよそ全体の2割ほどと言われていました。しかし、今回の「在宅勤務」の割合が高くなったことで、更に増加することになるかもしれません。
家庭内別居の原因のひとつとして、先に挙げた結婚の条件が夫婦間で合っていないことがあげられるのではないでしょうか。
例えば、夫側は従来通り、女性が家事や育児をおこなうものだと認識しているのに対し、妻側は積極的な家事や育児への参加を求めていたとすると、両者はかみ合いませんよね。

更に、結婚のきっかけの違いについてもちょっと面白い話があります。
というのも、恋愛結婚が主流になった今日において、お見合い結婚の方が、離婚しにくいというものです。
恋愛の延長線上に結婚があると考えがちな、恋愛結婚に対して、お見合い結婚は「恋愛」ではなく、結婚を目的として男女が出会います。
したがって、恋愛で気持ちが高ぶっていないので、わりと冷静に相手のことを見られるという利点があります。
そのため、離婚にいたる割合が、恋愛結婚の3分の1ほど低いと言われているのです。
もちろん、結婚のきっかけは、ひとそれぞれですし、「正解」も違います。
しかし、恋愛はある種、興奮している状態だともいえるので、「なるほど」と感じる部分があるというのが個人的な感想です。

仮面夫婦とは?~体面と実情の差異~

前章では家庭内別居や結婚の価値観について深く考えていきました。
本章では、仮面夫婦について考えていきたいと思います。

そもそも仮面夫婦って?

仮面夫婦とは、周囲に他人がいるときは、仲の良い夫婦を演じ、その実夫婦仲が冷え切っている状態のことを指します。
仮面夫婦の状態になると、相手との関係性が悪くなっているので、家庭内別居になっている方が多いと思います。
仮面夫婦に至る過程としては、相手への愛情が薄れたり、嫌悪感を覚えたりすることから始まります。
愛情が希薄になることや相手に対する嫌悪感は、夫婦のどちらかの行動によって引き起こされると思われがちですが、小さなズレが積み重なって修復が難しい状態になることもあります。
また、仮面夫婦の状態になると、必ずしも即離婚につながるというわけではありません。
相手方に明らかな非があるのであれば別ですが、一緒に生活をするにおいて生じたズレでは、一方的に離婚することは出来ないのです。
民法には、以下のような法定離婚事由が定められています。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上生死不明
  • 配偶者が重度の精神病で回復を見込めない場合
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由

上記の理由に当てはまらない限り、相手の同意なしには離婚が出来ません。
日々の共同生活で生じたズレによって仮面夫婦になり、家庭内別居になったときには、まずは夫婦の話し合いによって解決を目指すことになります。
夫婦で話し合いがまとまらない時には、家庭裁判所に調停を申立て、離婚や夫婦関係の不和を解消することも可能です。

仮面夫婦の状態は、精神衛生上決して良い状態ではありません。
ましてや夫婦のあいだにお子さんがいた場合、お子さんの恋愛観や結婚観がゆがんでしまう可能性があります。
したがって、相手に不満を覚えたときには、まず顔を合わせて直接話し合うことをおすすめします。

家庭内別居や仮面夫婦で有責になる理由とは?

前章では、仮面夫婦についてさまざま論じてきました。

理由が、小さなズレの積み重ねならば、早めの段階で話し合うことが重要であることをお伝え出来たと思います。
とはいえ、もうすでに夫婦関係が完全に冷え切っている方もいるでしょう。
また、仮面夫婦状態で、家庭内別居になってから長い時間が経っていると、修復しようという気が起きないかもしれません。
前章でもお伝えしましたが、家庭内別居や仮面夫婦になった理由が明確ではないときには、基本的に協議や調停で離婚が成立します。
また、明確な理由があったケースでも、相手方の行動で「婚姻関係が破綻した」という証明をしなければなりません。
夫側の行動が法定離婚事由に該当していても、その行動があったという事実を証明できないと、なかなか離婚の判定はくだりません。
では具体的にどういったものがあれば、証拠として有効で離婚できる可能性が高くなるのでしょう。
ケース別にまとめてみましたので、確認してみてください。

夫が不倫をして家庭内別居になった

性行為をふくんだ不倫は、法定離婚事由の不貞行為に該当します。
不倫を証明するには以下のような証拠が有効になります。

  1. 性行為をしている動画や写真
  2. ラブホテルにふたりで出入りしている写真
  3. ラブホテルを利用した領収書やレシート、クレジットカードの明細
  4. LINEなどのSNSやメールで性行為を匂わす内容のやりとり

上記で一番有効な証拠になり得るのは1や2の動画や写真です。
3や4に関しては、言い逃れされてしまう可能性があるので、夫や不倫相手からの自白など、抱き合わせで利用した方が良いかもしれません。
なお、不倫の自白などの録音は、相手に隠しておこなっても違法にはならないのでご安心ください。

家庭内別居で生活費を渡してくれない

夫婦には扶助協力の義務があり、両方が同じくらいの生活水準を保たねばなりません。
結婚生活に必要なお金のことを婚姻費用といい、基本的に収入が高い方が多く支払う必要があります。
家庭内別居で、家賃や光熱費代などを含め、夫が一切お金を支払っていない場合には、悪意の遺棄として離婚出来る可能性があるのです。
ただし、悪意の遺棄を認められるためには、家計簿や生活費を入金している通帳などが必要です。
また、妻側が先に不倫などをして夫婦関係を破綻させたケースでは、支払わなくても良いと判断されることがありますので注意しましょう。

セックスレスで仮面夫婦に…

理由もなく、夫婦の一方が性行為を拒否し、セックスレスになった場合には、法定離婚事由のその他婚姻を継続し難い重大な事由に相当し、離婚できる可能性があります。
とはいえ、夫婦の性行為のトラブルは、デリケートな問題で、証明しにくいです。
セックスレスで夫婦関係が破綻した証明になり得るものは、日付入りの日記やメモなどです。
しかしながら、日記やメモは主観が入ってしまうことが多いので、セックスレス単独の理由での証明はかなり難しいと言えるでしょう。

以上が、家庭内別居や仮面夫婦で離婚できるおもな理由でした。
今回、シチュエーションを3つご紹介しましたが、それ以外にも離婚が認められるケースもあります。
また反対に同じようなケースでも、夫婦の事情によっては認められないこともあるのでご注意ください。

体験談

前章では、仮面夫婦や家庭内別居で離婚できるケースを紹介しました。
本章では、ある夫婦の体験談についてご紹介したいと思います。

仮面をかぶるのがうますぎる~冷淡な夫との15年間~

妻:かなえ(45)職業:派遣社員 年収:320万円
夫:れいじ(48)職業;会社員 年収:800万円
息子:あきら(17)高校2年生

夫とのれいじとは、彼のナンパがきっかけで結婚しました。
付き合っている当時は、明るく、喜怒哀楽がはっきりしている人で、ちょっと考えなしだけれど、一緒に生きていけたら一生楽しいだろうなと思っていました。
しかし、いざ結婚してみると、楽しいのは2年くらいで、だんだん家庭内での会話が無くなっていきました。
息子のあきらが産まれれば、少しは変わるかなと思っていましたが、そんなことは無く、夫婦の会話はまったくと言ってなくなりました
私だけにしゃべらないのではなく、息子に対しても自分から話しかけることはほとんどなく、幼いころは、「パパは僕が嫌いなの?」と言うほどでした。
その頃から離婚を考えていましたが、息子と二人で生活していくのは難しいと感じ、踏み切れませんでした。

完全に冷え切った夫婦仲であるのにもかかわらず、夫の会社では愛妻家だと言われているらしく、他人がいるときだけは仲良し家族を装っていました。
しかし、息子が思春期を迎えるにつれ、彼には私たちの家族の在り方がどうしても我慢できないらしく、たびたび私たち夫婦に離婚を迫るようになりました。
息子の真摯な言葉は、私のにぶっていた感情を動かし、このままではいけないという気分にさせました。
そこで、現状を打開しようと話し合いをおこなうことにしました。

今さら遅いかもしれないですが、息子にとって家が苦痛を感じる場所のままいたくなかったのです。
は意識的に夫と会話をするようにし、コミュニケーションを取ろうと努力しました。
しかし、夫は息子の言葉に心は動かないようで、会話をしようという努力をしてくれませんでした。
これ以上は歩み寄れないと感じ、離婚を切り出したところ、「愛妻家のイメージで通っている俺が離婚するのは体面が悪い」といって、取り合ってくれません。

そこで、私は家庭内別居をおこなうことにし、息子にも努力したが修復は無理だったことを伝えました。
また、私は体面を気にする必要はないので、周囲に愛妻家を演じていても、その演技にのらないことにしました。
共通の友人からは、「もっと夫を大事にしろ」と言われましたが、実情を知らない、表面だけを見ていわれても、響かないので無視しました。
私は、夫に離婚したいこと、親権を取りたいこと、これから息子にかかる学費の援助を伝え続け、はじめに離婚を切り出してから4年経って、ようやく夫から同意を得ました。
私の希望通り、親権は私、養育費は8万円と取り決めました。
加えて、息子が大学の進学を希望したため、予備校の費用や将来発生する授業料についても援助してもらうことを約束し、書面にしました。

今は、15年住んでいたマンションをはなれ、私の実家に身を寄せています。
息子はもう大きいので手はかかりませんが、これからお金はかかるので仕事を頑張りたいと思います。
息子も私に負担をかけないよう、大学の受験費用くらいはバイトで何とかすると言ってくれています。
苦労をかけてしまい心苦しく感じますが、これからは親子ふたりで仮面をかぶらずに生きていこうと思います。

まとめ

今回は仮面夫婦や家庭内別居について考えてきました。
相手の嫌な部分を見て見ぬふりをしていると、愛情が薄れ、嫌悪感が増してきます。
体面を繕うために仮面夫婦になると、「あることないこと言って」とますます夫婦の心の距離が空いてしまいます。
そのため、夫婦の仲がぎくしゃくしたときには、すぐ話し合いをおこなうことが大切です。
仮面夫婦になると次第に、家庭内別居状態になり、果ては熟年離婚となってしまう可能性があります。
離婚を回避したい場合には、できるだけ歩み寄りをみせ、コミュニケーションを取った方が良いと思います。
とはいえ、体験談で紹介した夫婦のように、一方がコミュニケーションを拒否するケースもあります。
そんなときには、離婚したいのか婚姻を継続したいのか、自分の気持ちや子どもの気持ちをしっかりと把握したうえで、専門家に相談してみても良いかもしれませんね。

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