毎日、毎日、毎にち、まいにち、酒飲む夫。文句を言えば、「俺が稼いできた金を自由に使って何が悪い?」だって。
お酒の飲みすぎは健康に悪い。だから、注意したり、話合ったりして頑張ってきたのに…。
でも本当にもう無理…。離婚したいけれど、お酒の飲みすぎなんていう理由で離婚出来るの…?
飲みすぎはビョーキ!?~放置はやばいアルコール中毒~
アルコール中毒こと、アルコール依存症の潜在患者数は、日本国内で50万人とも100万人とも言われています。
指標となるのは、世界保健機関(WHO)でも利用されている、「AUDIT(オーディット)」というセルフチェックシートです。厚生労働省のホームページにも載せられており、点数が16点以上の方は、アルコール依存症の傾向があります。
アルコール依存症になると、以下のような症状がみられるようになります。
- 不眠や倦怠感、吐き気などの離脱症状がおきる可能性がある
- 自制が利かないため、周囲に暴力や暴言を吐くことがある
- 生活や人間関係よりもお酒を優先し、家庭環境などが悪化する
アルコール依存症を患っているひとと暮らす家族としては、いつトラブルを引き起こすか気が気でないと思います。特に夫がアルコール依存症であった場合、生物学的に女性は男性よりも力が弱いわけですから、止めさせようと行動をすることは、難しいかもしれません。
アルコール依存症は精神疾患の一種なので、本人の意志に任せ、良くなることはあまりありません。薬物、性依存、ギャンブルなど依存症はさまざまありますが、一般的なイメージとして、「意志の弱いひとがなる甘え」という考えがあると思います。
そのため、当人も、うすうす「アルコール依存症かもしれない」と思っていたとしても、病院へ行き、診断を受けると「確定」する可能性があるので、行きたがりません。別名、「否認の病」と呼ばれているほどです。
離婚を考えているけれど、「アルコール依存症」が治るなら、夫婦関係を継続したいと考えている方は、夫を病院に連れていき、診療を受けさせることがカギになってくると思います。家庭内の問題なので、誰にも頼れないとひとりで頑張ってしまう方も少なくないと思いますが、頼ってください。アルコール依存症は正式に疾患として認められており、依存症対策全国センターから、相談することが出来ます。場合によっては、離婚せずに夫婦関係を修復できる可能性もあります。
ひとりで悩むこと自体がストレスになってしまいますので、「誰かに相談すること」。これがトラブルを解決するための一手になるかもしれません。
アルコール中毒を理由に離婚出来るの!?
前章では、アルコール依存症の概要やリスクなどについて解説していきました。夫がアルコール依存症だった場合、行動が酷くなる前に、治療をおこなうことが一番です。一番ですが…治療を行う上で大切になってくるのが家族のサポートになります。
既にサポートを行ってきても一向に改善が見られない、夫のサポートをしたいと思う情や愛が既にないという方もおられると思います。アルコール依存症を理由に離婚することは可能なのでしょうか。
夫の意志関係なしに、離婚を成立させるためには、法定離婚事由という民法で定められた離婚理由に当てはまらなければいけません。その理由とは、下記5つのようなものになります。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上生死不明
- 配偶者が強度の精神病で回復を見込めない場合
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
アルコール依存症は、心の疾患ですので、一見すると4に当てはまるような気がしますが、実際のケースは5に該当することが多いです。というのも、アルコール依存症は、「回復を見込めない」疾患に当てはまらないからです。
また、5に関しても、夫がアルコール依存症であれば、必ず当てはまるというわけではありません。アルコール依存症が原因で、夫婦関係が破綻したことを証明する必要があります。加えて、夫側に反省が見られるなど、改善の余地があるケースでは、思うような条件で離婚が出来ないこともあります。
では、アルコール依存症を理由として離婚できるケースとは一体どのようなときなのでしょう。次章で確認していきたいと思います。
アルコール中毒+離婚できる可能性が高いこと!
前章でも触れましたが、アルコール依存症を原因に離婚するためには、夫婦関係が破綻したことを証明しなければなりません。つまり、アルコール依存症自体ではなく、それに附帯する症状で離婚の可否を問うということですね。
「飲みすぎはビョーキ!?~放置はやばいアルコール中毒~」でお伝えしたとおり、アルコール依存症になると、症状のひとつに自分をコントロールすることが出来ないというものがあります。理性というブレーキが利いていない状態なので、以下のようなアクションを起こすことがあります。
- 酔い任せに暴言を吐き、暴力をふるう
- お酒を飲みたいばかりに、散財する
酔い任せに暴言を吐き、暴力をふるう
アルコール依存症になると、適切な飲酒量を守れないどころか、周囲の人に暴言、暴力をふるうようになることが多々あります。家族に暴言、暴力を振った場合には、法定離婚事由に相当し、離婚することが出来ます。暴言や暴力があった証明として、動画や音声データがあるといいかもしれません。また、暴力によって怪我をした場合には、病院で診断書をもらった方が良いと思います。更につけくわえると、暴力や暴言を受けた時のことを記した、日記やメモについても、ある程度、証拠性が認められるでしょう。
お酒を飲みたいばかりに、散財する
アルコール依存症が長期になればなるほど、アルコールへの耐性が出来、酒量が増える傾向にあります。生活費を渡さず、お酒につぎこんだ時には、「悪意の遺棄」に該当し、離婚できることもあります。証拠として、給料の振り込み口座や、生活費管理のために利用している口座の通帳などを用意すると良いでしょう。生活費の振り込みが無いという事実が証明できると思います。また、夫がお酒を購入したレシートや、家計簿も証拠として有力になることがあります。
以上が、アルコール依存症を理由として離婚できる可能性のあるシチュエーションでした。なお、アルコール依存症の夫から、離婚の同意を得られた場合には、上述したものに当てはまらなくとも、離婚が可能です。
とはいえ、繰り返しになってしまいますが、相手方がアルコール依存症であった場合、自制が利かず、離婚の話し合い中に暴力沙汰になる可能性もあります。逆上した相手は何をするか分かりません。したがって、夫婦二人だけで話し合いをおこなうのは、止めておいた方が良いかもしれません。自分の身の安全を確保してから、話し合いにのぞんだ方が良いでしょう。
体験談

I don’t want to talk about this
前章まではアルコール依存症の夫との離婚について考えてきました。本章では、夫のアルコール依存症によって、崩壊してしまった家族の体験談をお伝えしたいと思います。
豹変する夫~我慢したわたしの10年間~
夫:たいし(46)
妻:まゆみ(39)
息子:ゆうすけ(12)
大学のころ、入社予定の会社でインターンをしました。その時、教えてくれたのが夫のたいしでした。私は、家庭環境があまりよくなく、いつも母に対し横柄な態度を取っている父をみて育ってきたので、こんなにやさしい男性がいるのかと、すぐに好きになってしまいました。妹としてしか見られないといった、彼をどうにか口説き落として、付き合うことが出来たのは出会いから3年後のことでした。紆余曲折。そんな経緯もあって、妊娠が発覚し、プロポーズされたときには、本当に嬉しかった。嬉しかったんです。
息子のゆうすけを妊娠していたため、式は挙げず、代わりに分譲マンションを購入しました。妊娠中、夫は常に私を気遣ってくれ、掃除や料理など、たくさんサポートしてくれました。
しかし、息子が生まれ、ほどなくしたころ。夫は人事部から、省庁に出向することになりました。初めは出世コースとよろこんでいましたが、官僚特有の人間関係で苦労し、また大きなプロジェクトにかかわることになり、ストレスを溜めていきました。出向前は、お酒はたしなむ程度、とお酒の失敗をしたことのなかった夫でしたが、ストレスが溜まるにつれ酒量が増えていきました。
私が、「仕事を辞めてもいいから、お酒の飲みすぎはやめよう」といっても、「ここで辞めたら俺はただの負け犬だ」と話しを聞いてくれませんでした。そのうちにどんどんお酒の量は多くなり、休みの日は1日中お酒を飲むようになり、息子が遊んでほしそうにしていても、無視。
息子の教育のためにも、夫の健康のためにもこの状況は良くないと感じた私は、「病院へ行こう」と提案しました。その提案は、彼にとって相当癪に障ったようで、思い切り平手打ちをされました。
それが引き金となり、私への暴力は日常化されました。「引きずり倒される」「頭を足で押さえつけられながら、彼が満足するまで謝り続ける」。初めは夫をおかしいと思っていた私ですが、次第に私がすべて悪いのだと思うようになり、彼の言うがまま、なすがままになりました。
さすがに息子に手を上げないだけの理性はあったようで、私は、「我慢すればいつか終わる」と願いつつ、夫のお酒を諫めることが出来ませんでした。
離婚を意識したきっかけは、小学4年生になった息子の一言。「僕はお父さんが居なくてもいいよ。お母さん、我慢しなくていいよ」。私は、久しぶりに大泣きしました。
そこで、実家に我が家の事情を話し、援助を求めたところ、「夫なんてみんなそういうものよ。我慢していれば、生活できるんだから。あんたの我慢が足らない」と言われました。私は、母のあまりの言葉に、一瞬心が折れそうになりましたが、「息子の一言」を糧に、あらゆる施設に連絡し、相談を続けました。すると、あるDV相談の職員さんが、親身になってくれ、親子で入れるシェルターを紹介してくれました。シェルターに入所する準備とともに、独身時代の貯金を使いDV相談センターで紹介してくれた弁護士さんに依頼しました。依頼した弁護士さんは、私の代わりに夫と交渉をしてくれ、協議で離婚が成立することになりました。親権は私。DVに対しての慰謝料は200万、購入したマンションは夫が住み続ける代わりに、貯金を8割もらいました。また、養育費は月々10万円を支払いと取り決めをおこないました。また、協議で決めたことを、代理人を立て公正証書にすることもできました。
今は、慰謝料などを元手に、アパートを借り、新しい生活を始めています。夫とは、家を出てから一度も会っていません。お酒がきっかけだったのか。もう、どうすれば良いのか分かりませんが、これからは息子と二人の生活です。10年にわたる、お酒と暴力の記憶はなかなか消えてくれませんが、弱いばっかりではだめなので、頑張りたいと思います。

まとめ

Cracked gold wedding ring — divorce or infidelity concept
アルコール依存症の夫との離婚について、深く掘り下げてきました。お酒は、適量であれば、リラックス効果もあり、ストレスを軽減させることが出来ると思います。しかし、依存症ともなると、まゆみさんのように、壮絶な体験をしかねませんし、最悪生死にかかわるトラブルに巻き込まれることになります。
したがって、現在アルコール依存症によって、夫に問題があるときには、先に紹介した依存症対策全国センターや内閣府で紹介されているこちらの相談窓口に連絡することを検討してみてください。
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