不協和音の夫婦~夫に無視され続けた妻は離婚したい~

「家族はひとつの時計のようなものだ」と、夫はプロポーズのときに言った。

「かみ合って、助け合って、針を動かそう」と柔らかく言った夫は、現在私の存在を無視し続けている。

話しかけても無視、話題を振っても無視。

夫の食事も洗濯も私がやっている。同じものを食べ、同じ柔軟剤のにおいをまとっているのに、私は無視され続ける。

子どものことを考え、離婚しなかったけれどもう限界だ。離婚したいけれど、どうすれば良いの…?

透明人間?~存在無視をする夫と離婚することは出来るのか…~

夫婦喧嘩、すれ違い、認識違い。きっかけはなんでも構いませんが、一緒に暮らしている夫に無視し続けられると精神的にきついですよね。

なぜかわからないけど無視されるということもあると思います。夫が妻を無視する心理とはどういったものがあるのでしょうか。

夫が妻を無視する心理とは…?

  1. 虫の居所が悪いとき
  2. 感情を抑えようとしているとき
  3. すねているとき
  4. 興味・関心が無いとき

1~3のときは、思い当たる原因があるかもしれません。ケンカした、意見の食い違いなどがあった場合、「私正しいんで」のスタンスでいると、夫の方もかたくなな態度を取りかねません。強弁な態度は、相手を硬直させ、委縮させる可能性があります。

したがって、夫の無視の原因がわかっているケースでは、「相手の意見を否定しないにつきます。まずは、口を開いてもらわないと話すら出来ません。また、お互いが意見のいえる席に着けたなら「相違点」を探すより、「妥協点」を見つけて折り合いをつけた方が良いと思います。

夫婦といっても別個の感情や心を持った別個の人間です。頭のてっぺんから足の先まで分かり合えるわけじゃないのですから、譲り合いの精神は大切です。

理由がわからず、無視され続けている場合には、まずLINEなどのSNSを利用して「声かけ」をしてみると良いかもしれません。また、夫が仕事をしている場合、平日の朝や出勤前に話しかけると、余計にこじれる可能性があるので避けた方が良いでしょう。

妻側が歩み寄りの姿勢を見せているのに、それでもなお、理由を言わずに妻の声かけを無視しているときにはモラルハラスメントを受けている可能性があります。

1日、2日ならまだしも、数週間、数か月、年単位になったら、心が折れてしまいそうです。長期間、無視され続けた場合、離婚事由になるのでしょうか。

無視はモラルハラスメント?~離婚の原因になるのか?~

一緒に暮らしている夫に、数か月単位、数年単位で無視され続けるのは精神的にきついですよね。モラルハラスメントと言うと、暴言や責任転嫁、周囲へ妻の悪口をいうなどといった、口撃のイメージがあります。しかしながら、大きな物音を出して威かくすることや、舌打ち無視なんかも長期間に渡ればモラルハラスメントに該当する可能性があるのです。

夫婦間のモラルハラスメントは、法律で定められた離婚事由のどれにあてはまるのでしょうか…?

法定離婚事由

  1. 不貞行為
  2. 悪意の遺棄
  3. 3年以上生死不明
  4. 配偶者が強度の精神病で、回復を見込めない場合
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由

今回のテーマである、「無視」は5のその他婚姻を継続し難い重大な事由にあたる可能性があります。無視をされ続けると、夫との信頼関係が築かれることなく、夫婦は破綻状態になってしまいますよね。

とはいえ、「長期間の無視による夫婦の破綻」が事実であっても、客観的な証拠が無いと、相手の同意を得ずして離婚することは出来ません。では、具体的にどのようなものが証拠になり得るのでしょう。

夫からの無視で離婚できる、証拠とは!?

夫から無視を受けた証拠として挙げられそうなのが、下記のようなものになります。

  • 日付入りの日記
  • 無視を受けたことによるメンタルクリニックに通院した記録や診断書
  • 公的な相談機関への相談記録

 

日付入りの日記

 

日記やメモ帳に夫から無視されている期間について記載するのは証拠になり得ます。その際、日付や詳細な状況についても記載すると良いと思います。

 

無視を受けたことによるメンタルクリニックに通院した記録や診断書

 

過剰な無視はモラルハラスメントであり、精神的DVでもあります。したがって、夫からの無視で精神を病んでしまったときには、その通院履歴や診断書は証拠になり得ます。

 

公的な相談機関への相談記録

 

女性センターや女性相談室などの公的な機関への相談記録は有力な証拠になることがあります。ただし、匿名でおこなってしまうと、把握できなくなる可能性がありますので、ご注意ください。

以上が、夫からの無視を証明できるおもな証拠になります。無視は、静かな暴力と呼ばれることがあります。沈黙しているので、証拠を取りづらいですが、長期に渡ると精神的負荷が倍増します。加えて、「無視」を受けている側も、自身がモラハラを受けていると感じにくいものでもあります。

そのため、夫からの過剰な無視は異常であることを自覚することが大切です。

【離婚の法律用語】離婚に関するモラハラ知識について知ろう

離婚の申し入れも無視…?~無視する夫と離婚する方法はあるの?~

妻が意見を言って、自身の異常さに気づき、「直そう」と考える夫は、なかなかいません。というのも、モラハラをおこなっているひとは、自分が「モラハラをおこなっている」という自覚があまりありません。

したがって、妻側が意見をしても、聞く耳を持ってくれないケースも少なくないのです。

他方で、モラハラをおこなうひとは、「自己愛性パーソナリティ障害」や「アダルトチルドレン」といった心の問題を抱えている場合も多いです。そのため、「言えば治る」「時間が経てば改善される」ものではなく、カウンセリング等の治療が必要なこともあるのです。「無視」されている時点で、夫を献身的に支え、病気と向き合っていこうというメンタルを持てる人は多くないですよね。

では、「無視される」ことに耐えかねた、妻が離婚を切り出したい場合、どうすればいのでしょう。

法定離婚事由にあてはまらない(証拠がない)場合、妻が取れる離婚方法は以下のふたつになります。

  • 協議離婚
  • 調停離婚
協議離婚

協議離婚は、日本の90パーセント近くの夫婦が選択する方法です。家庭裁判所を介すことなく、夫婦の話し合いで離婚することを指します。とはいえ、日常的に「無視」をされている場合離婚の話し合いに向き合ってくれる可能性は低そうですよね。

モラハラ夫との離婚を協議で成立させたい場合には、弁護士に依頼した方がことを早く進められる可能性が高いと思います。

弁護士に相談することによって、協議離婚をできるか、調停離婚をした方が良いのかの指標が見えることもあります。

調停離婚

調停離婚とは、家庭裁判所に、「夫婦関係調整調停(離婚)」を申立て、調停委員や裁判官(調停官)の立会いの下、離婚について話し合いをおこなうことを指します。調停と言うと、夫婦そろって、話し合いをするイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際は異なります。

原則として、夫婦ふたりが顔を合わせるのは、初回の調停の説明のときだけで、それぞれの事情については、それぞれに聴取することになります。

長期間にわたって、無視をされている場合には、調停離婚を選択した方が良いかもしれません。ただし、調停委員や裁判所は、必ずしも申し立てた側の味方ではないということを理解してください。

というのも、夫婦の事情を聞くのは、男女2人以上の調停委員の役目となっています。調停委員は、物事を公平に判断し、その夫婦の妥協点を見つけようとします。

したがって、妻側が感情的なことばかりを言って経緯や事情の説明をしなかったときには、心証が悪くなってしまうことがあります。そのため、離婚したいと思った経緯や、日常的に夫から行われている「無視」の度合いを正確に伝えることが大切です。

弁護士に相談したい方はこちら

体験談

これまで、「無視」する夫との離婚について深く考えていきました。今回は、ちょっと後味の悪いある一組の夫婦の体験談をご紹介したいと思います。

透明人間な私と夫の2年間

まりこ(33)職業:エステティシャン 年収:500万円

たかまさ(33)職業:配送関係 年収:600万円

夫のたかまさとは、婚活パーティで出会い、意気投合。1年ほど付き合って、結婚しました。お互いを知るのに、少し時間が短すぎたかなとも思いましたが、私は若いころから30までに結婚したいという夢がありました。そのため、結婚をしました。

しかし、今思えば、その選択が間違いだったのかもしれません。

夫は、美意識が高い男性で、エステや脱毛、ボディメイクなどに力を入れていました。私も、エステティシャンという仕事柄、「美」に関して興味はありましたが、彼ほどの熱意はありませんでした。

すると彼は、「デブ」「痩せろ」「お前の隣を歩きたくない」と言って来るようになりました。私は、家でくらいのんびりしたいという性質(タチ)だったので、「外ではちゃんとするから、家はノーメイクでいさせて」と言いました。

すると、彼はいったん納得したようでしたが、1週間もたたないうちに、また容姿について罵倒してくるようになりました。しかも、結婚式であった美人と言われている私の友達のInstagramを探し出してきて、「〇〇さんは一児の母でこの体系なのに…お前は」「顔のつくりがキライなら整形しろよ」などなど。私も、だんだん自分に自信がなくなり、彼と顔を合わせるのが苦痛になりました。

それくらいのときから、彼の無視が始まったのです。彼曰く、「理想体重になるまでは口をきかない」と言うことでした。家事いっさいは私なのに、彼は私を無視し続けます。まるで透明人間で家政婦をしているような気分でした。

私が話しかけても無視。LINEも既読スルー。「早く痩せなきゃ」と思うと、反動でヤケ食いをしてしまい、吸収されるのが怖くなり吐いたりしていました。

精神的に限界になって、「離婚したい」と申し出ましたが、それも無視。仕方なく、実家に頼り、アドバイスを受け調停をはじめました。

調停では、私の方が感情的になり、なかなか事の経緯を伝えられず、「一度は好きになったひとなのだからもう一度やり直してみたら」と言われてしまう始末で…。申し立てをすれば、みんなが味方になってくれると勘違いしていました。しかも、調停も1回で終わるものだと思っていたのですが、実際は初回で決まることはほとんどないということも初めて知りました。

どうしてもいいのか分からず、2回目の調停を待つばかりだった私に、夫から連絡が来ました。「慰謝料ゼロで、財産分与をきっちり半分にするなら離婚してやってもいい」と。私は疲れ切っており、夫と離婚が一番だと思い、了承し、離婚が成立しました。

しかし、後になって考えるともっと下調べをしていれば、こちらの有利な条件で離婚できたのではないかと後悔する日々です。

もう仕方ありませんが、結婚も離婚も万が一次があるなら、しっかり準備をしておこないたいと思います。

まとめ

今回はモラハラ夫の「無視」について、深く考えてきました。記事内でもお伝えしたとおり、「無視」は他のモラハラ行為に比べ証明がしにくいです。したがって、離婚するにもある程度の準備が必要になってきます。

加えて、調停を申し立てた場合、準備が不十分ですと、なかなか有利にことを運ぶことができなくなる可能性もあります。したがって、ひとりで準備することに不安を覚えた時には、一度弁護士に相談した方が、のちのちのためになるかもしれません。

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