娘が生まれてから、性行為をまったくしなくなった。夫との行為は嫌いじゃなかった。
けれど、娘の育児にかかりっきりで、正直1,2時間それをするなら寝させてほしい、ゆっくり食事をさせてほしい。
私が理由を述べ、断ると夫は激情し、無理やりことに及んだ。
気持ちよくないし、痛いだけだし。正直、トラウマになりそう。自分勝手にする彼と離婚したいけれどどうすればいいの?
そもそもセックスって本能なの?
人間の三大欲求は、食欲・睡眠欲・性欲。食欲や睡眠欲については、言及されることも多いかもしれません。しかし、性欲については、若干タブー視されている感が否めないです。
例えば、「おなかすいた」「ねむい」と言う言葉は、時や場所を考えず、口にすることができます。しかし、性欲について、「欲求不満である」と公共の場で口にするのははばかれますよね。
もっと言えば、夫婦間や恋人間で伝えるのも、羞恥を覚え、口に出す方は多くないように思えます。
セックスは、本能的行為であると考えられがちです。しかし、人間同士の行為は、「本能」のみ断定できるものではないです。
セックスは種を残すための行為であり、コミュニケーションでもある
セックスをあらわす言葉は、「性行為」「交尾」「性交」などさまざま、ありますが、いわゆる人間が考えるセックスをする動物は、一部の霊長類(※)をのぞき、存在しません。
つまり、セックスを種の保存以外の理由でおこない、コミュニケーションにするためには、高い知能が必要なわけです。
セックスは、双方向性で成立する行為であり、一方通行でうまくいくわけがないです。特に、セックスは心と身体の反応が密接にかかわってきます。そのため、妻が嫌と言っているのに、夫側が無理やりことに運ぶなんてことは許される行為ではありません。
特に産後、女性の体の状態は大けがしている状態です。出産にあたって物理的に傷ついているほか、免疫力も弱っています。
こういう時に無理やりことに及ぶと、感染症など重大な病にかかる可能性があるのです。
とはいえ、当然ながら男性は妊娠や出産の経験をすることができません。そのため伝えることが重要です。産後すぐに、セックスを求められた場合には、きちん自身の身体の現状を伝え、理解してもらうことが大切です。多くの男性は、理解してくれると思います。
それでも、無理やりことに運ぼうとする男性は、「自分本位」な人間と位置づけして良いかもしれないです。先ほども申し上げましたが、コミュニケーションは独りよがりであってはいけません。
※霊長類とは、ヒトのほかチンパンジーやボノボ、オラウータンなどのことを指します。
ぶっちゃけ、夫婦間の同意なしセックスは離婚事由になるの?
前章で、「セックスは双方向性で成立する行為」であることをお伝えしました。平たく言うと、お互いの合意のうえでおこなわなければいけないということです。
では、本題です。妻の合意なくおこなわれるセックスを理由に離婚できるのでしょうか。
他の記事をご覧になられた方は、すでにご存じの方も多いかもしれませんが、民法には法定離婚事由というものが定められています。
離婚は互いの同意があれば、はっきりした理由がなくとも成立することができます、ただし、夫婦の一方が同意しない場合、離婚するには、下記のような法定離婚事由が必要になるのです。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上生死不明
- 配偶者が強度の精神病で、回復が見込めない場合
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
相手側の望まない一方的なセックスは、上記のうちどれに当てはまるのでしょう。
夫が一方的に自分の願望を押し付け、妻とセックスすることはDVに該当します。夫婦間レイプ、性的暴力と置き換えても良いかもしれません。
性的なDVは、上記で紹介した、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性が高いです。
性的なDVは直接行為だけじゃない
性的なDVに関し、一番わかりやすい例として、「セックスの強要」を上げましたが、該当するのは必ずしも直接行為のみとは限りません。
性的DVと位置付けられる行為として、以下のようなものがあげられます。
- 妻が嫌がっているのにセックスを強要する
- 妻に性嗜好を押し付ける
- 常に避妊をしない
- 中絶を強要する
1~4の事柄は、基本的にすべて同意を得なければならないものです。また、望まぬセックスの身体的、精神的負担は相当なものになります。
夫婦間の性的DVの難しさは、女性側が「拒否を示している」ということを証明することだと考えられます。
日本はハイコンテクスト文化と言われており、同じ言葉で伝えたとしても、文脈や時と場合によってその意味合いが異なることがあります。
拒否の言葉の代表格である、「いやだ」も、額面通りに受け取って良いときと、状況によって「YES」の意が含まれているときとあります。
夫の行為に対して抵抗したか否かを証明するのは非常に難しい問題です。
夫婦間レイプの証明は難しいけど、証明できれば逮捕されることも?
前章では、夫婦間レイプ及び、性的DVについてお話させていただきました。この性的DVというトラブル。実は、民事上だけでなく、刑事的責任を問われることもあるのです。
日本の裁判は大きく分けて、民事と刑事に分けることができます。民事とは、離婚の問題や相続関連、労働問題など会社や個人など、私人同士の争いが挙げられます。対して、刑事裁判とは、犯罪を起こした疑いのあるひとを、検察が起訴して犯罪の有無を問うたり、犯していた場合の刑罰について考えるものです。
夫婦間レイプは、刑法176条の強制性交等罪に該当する可能性があり、以下のように定められています。
第百七十六条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
(強制性交等)
夫婦だと、その関係性からレイプまがいの行為であっても、犯罪にならないのではないかと考えた方も多いのではないでしょうか。確かに、夫婦や恋人間のレイプは、露見しにくく、立件された事例は少ないです。
また、以前は通説として、「夫婦の一方が性交渉を望んだ場合、相手方はそれに応じるべき」という解釈されることがありました。
しかしながら、実際法律上では、法の適用の範囲に、夫婦や恋人は除くという文言はありません。つまり、レイプあったことを証明できさえすれば、夫婦間であっても犯罪になりえるのです。
日本の昔ながらの考え方として、「耐え忍ぶ」ことが美徳とされている部分があります。しかし、望まぬセックスの肉体的負担はもちろん、精神的負担を多大に生み出します。精神が壊れてしまう前に、DV相談センターや専門家に相談することをおすすめします。

体験談
これまで夫婦間レイプや性的DVについて考えてきました。本章では一組の夫婦の体験談を紹介したいと思います
エゴスティック・ラブ~同意なしのセックスは夫婦間であってもレイプ~
夫:シンヤ(30)
妻:マリア(27)
娘:アンナ(1)
娘のアンナはかわいいですが、よく手のかかる子です。まあ、親や友達に聞いても、小さいうちは手のかかるものということなので、そこはあまり問題ありません。
夜泣きや、好奇心旺盛すぎるきらいがありますが、笑顔や寝顔。本当にかわいいです。母親になって、心の底から良かったと思える瞬間でした。
しかし、困ったことがあります。それは夫のシンヤの性欲がひどいところです。正直、彼とのセックス自体が嫌になってしまっています。
娘が生まれてからと言うもの、育児に家事にとてんてこまいです。姿が見えなくなると泣くので、お風呂や食事もゆっくりできたことはありません。また、出産してしばらくは、授乳や夜泣きのため、睡眠すらあまりとれていませんでした。
今は、育児にも少しずつ慣れてきましたが、それでも育児にはたくさん体力を使います。寝かしつけのときに寝てしまうことも珍しくありません。
それでも半月に一度ほどは、夫の希望にこたえ、行為をしていました。しかしその頻度では、大いに不満だったのだと思います。
「一日中家にいるのに何が疲れてるだよ。俺がヤりたいっていったら、応えるのがお前の義務だろ」「脚広げてりゃ、何分かで終わる」などなど。
次第に、ひどい言葉を言ってくるようになりました。寝ていても、無理やり起こされて、準備もなく突っ込まれたこともありました。あまりの痛さに、「やめて」と言ってもやめてくれませんでした。
さすがにこれはないだろうと思い、次の日、夫に「本当にやめてほしい」とお願いしました。すると、彼は「妊娠中も、産後もお前がいいというまで我慢してきた。次はお前が我慢するのが道理だろ。愛してるからこそヤりたいと思うんだ。むしろ夜の店にも行かないし、浮気もしない俺に感謝すべきだ」と。
正直こんなに痛い思いをするなら、風俗でも何でもいって発散してもらった方がよほど良いと思いましたが、火に油を注ぐだけだと思い黙りました。すると、彼は沈黙を肯定と取り、その後もたびたび、無理やりことに及ぶようになりました。
正直苦痛でしかないし、血が出ることもありました。やめてと言っても、やめない。夫の「愛している」は、「自己愛」に違いないと感じました。本当に愛しているというのなら、私が痛がる姿を見て、泣いているのを見て、無理やりするのはおかしいです。
…アンナが生まれたとき、泣いて喜んでくれたときの夫を見て、本当に愛していると幸せな気分になりました。でも、育児につかれている私に強要をする彼を心から愛しているのかと言えば、もうダメでした。
ある日、アンナの昼寝の時間に、夫婦間レイプの記事を読みました。境遇こそ違いますが、似たような体験の女性の話を読んで、最後に紹介されている「DV相談センター」に連絡しました。
女性の相談員が対応してくれ、今までのことをあらいざらい話すと、「それは性的DVです」と言ってくれました。そして、早く別居するべきという助言ももらえました。
今まで、夫の行動をおかしいと思いつつ、「夫婦なら仕方ない」とどこかあきらめていたのかもしれません。
しかし、客観的に異常だと、普通のことじゃないと自覚し、ようやく行動に移せました。早速、実家の母に連絡をし、事の次第を話しました。性的な話題を親に話すのはなんとなく躊躇していましたが、理解してくれました。
夫と顔を合わせたら、また逆戻りになりそうだと感じ、その日のうちに荷物をまとめ、アンナを連れ、実家に戻りました。
その後、一刻も早く離れたい、離婚したいと私は母に訴え、夫にもその意思を伝えました。すると、「お前が悪い。離婚なんかしてやらない。してやるもんか」と言われました。話は平行線で先に進まず、結局調停にまでもつれこみました。
…結局レイプの事実は認められず、慰謝料をとることはできませんでした。けれども、離婚は成立し、月々4万円の養育費をもらうことには成功しました。
いろいろと準備不足で望んだ結果には至りませんでしたが、離婚できてよかったと思います。
現在は、両親のサポートを受けつつ実家に住んでいます。けれど、いつまでも甘えているわけにはいきません。まずは就職先を見つけ、アンナを預けられる保育園を見つけたいと思います。
アンナのためにも、心配をかけた親のためにも精一杯生きていきたいと思います。
まとめ

Young woman looking at urban city view at night
今回は夫婦間レイプや性的DVについてお話を進めてきました。
意に沿わないセックスによる女性の負担は非常に大きいです。たとえ夫婦であっても、許されることではありません。
とはいえ、性的な問題はとてもデリケートなものですので、なかなか誰かに相談できないかもしれません。
そういった時には一度、各地域に設置されている配偶者暴力相談支援センターや婦人相談所に相談するのも手段のうちです。
加えて慰謝料がほしいときや、相手方を法的に処罰してほしいと思うときには、弁護士に連絡した方が良いでしょう。
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