【慰謝料は絶対もらえるわけじゃない】離婚における精神的苦痛とは

結婚して分かった。私、このひととは全然合わないわ!価値観も違うし、趣味も違う。

結婚したのは、なんたらマジックにかかってたとしか思えない。幸い子どももいないし

早いうちに慰謝料もらってサッサと離婚したい。

でもどうすればいいのかなあ…。

慰謝料をもらうには理由が必要

「離婚を切り出せば、慰謝料をもらえる」「女性だから慰謝料がもらえる」

こんな風に考える方が少なからずいらっしゃいます。しかしながら、それは幻想です。

夫側から慰謝料をもらうには、夫の行動が原因となって夫婦関係が破綻したという事実が必要です。

そもそも離婚自体は、特に理由がなくとも、夫婦が合意さえすれば成立することが出来ます。しかし、慰謝料をもらって離婚となると、夫の行動が法律で定められている法定離婚事由に当てはまらなければいけません。具体的な内容は以下のようなものです。

  1. 不貞行為
  2. 悪意の遺棄
  3. 3年以上生死不明
  4. 配偶者が強度の精神病で回復の見込みのない場合
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由

上記に当てはまらない場合、つまり相手に離婚原因がないときには、慰謝料の請求権は発生しません。妻側の収入が低く、共同財産を妻側に多く分配するケースもありますが、それは慰謝料とは違います。

慰謝料をもらう前提として、法定離婚事由が必要であり、それが原因で妻側が精神的苦痛を味わったということを証明する必要があります。

【離婚の慰謝料をわかりやすく解説】離婚で慰謝料をもらえるケースを考えよう!

慰謝料をもらうには「精神的苦痛」を証明する必要がある

前章の最後でもお話したとおり、慰謝料は夫の行動によって精神的苦痛を受けたことを証明しなければなりません。

とはいえ、精神は目に見えないものです。具体的にどのようなものが証拠として有力なのか。ケース別に確認していきましょう。

  • ケース① 夫が妻以外の女性と肉体関係を持っていた場合
  • ケース② 夫の収入が無いと生活していけないのに、家計にお金を入れてくれない場合
  • ケース③ 夫が暴力をふってくる

ケース① 夫が妻以外の女性と肉体関係を持っていた場合

夫が妻以外の女性と肉体関係を持っていた場合には、法定離婚事由の不貞行為に該当します。不貞行為の場合、その行為を証明する=慰謝料を請求できると考えても良いかもしれません。

不貞行為を証明するものとして、以下のようなものが挙げられます。

  • 不倫相手との性行為中の写真や動画
  • 不倫相手との射精をともなう行為の動画
  • 不倫相手とふたりでラブホテルに入った写真や動画
不倫相手との性行為中の写真や動画

性行為中の写真や動画は、当然のことながら有力な証拠になりえます。不貞行為は、異性との性行為およびそれに準ずる行為と定義されているので、言わずもがなですね。

不倫相手との射精をともなう行為の動画

前述のとおり、不貞行為=異性との性行為及びそれに準ずる行為です。過去の判例から射精を伴う行為は、性行為に準ずる行為に等しいとされています。

 

不倫相手とふたりでラブホテルに入った写真や動画

 

ラブホテルは、利用目的が「性行為をする場所」と明確になっていますそのため、夫が妻以外の女性とラブホテル利用している際には、有力な証拠となりえるのです。

なお、ビジネスホテルは、利用目的が多岐にわたるので、出入りしている写真だけでは有力な証拠とは言えません。ビジネスホテルの利用で有力な証拠になりえるものは、「夫と女性が同じ部屋に入った」時の写真や動画などです。探偵や興信所などを雇わない限り、撮影は困難を極めると言っても良いでしょう。

ケース② 夫の収入が無いと生活していけないのに、家計にお金を入れてくれない場合

妻の収入が低い、もしくはない場合、生活を営むにおいて、夫の収入は必要不可欠です。そういった状況にもかかわらず、夫側が生活費を渡していなかった時には法定離婚事由の悪意の遺棄に相当します。

「生活の困窮」は人間の精神におおきな苦痛を与えます。ただし、経済DVの証明は難しく、長期間受けていないと認められにくいものでもあります。具体的な証拠として以下が挙げられます。

  • 生活費の入金が止まったことがわかる通帳
  • 故意に生活費を入れていないと分かる暴言
  • 少ないお金でやりくりしていることが記載された家計簿

経済DVでの悪意の遺棄は、その行為が「故意」であることを証明しなければなりません。心当たりのある方は、スマホの録音機能などを利用し、夫との会話を録音して見ても良いかもしれません。

ケース③ 夫が暴力をふるう

暴力は精神を摩耗させます。そのため、暴力の証拠=精神的苦痛を受けたといってもいいです。実際、長期的に暴力をふるわれたかたの脳は、理性や記憶の部分をつかさどる、前頭前野という部分が委縮していたと言う記録もあります。

夫に暴力をふるわれていた場合、以下のような証拠が有力とされます。

  • 暴力をふるっている場面の動画や写真
  • 暴力の内容を記載した日付入りの日記やメモ
  • 暴力で受けたけがの写真と診断書
  • 精神疾患をわずらった診断書

暴力を受けている場合、ご自身の身の安全を第一優先にしてください。慰謝料ももちろん大事ですが、精神的、性的をふくめ、暴力は時間が経過するにつれ、その行為がエスカレートする傾向にあります。

加えて、証拠を得ようという行動を悟られると、逆上し暴力が激化する恐れがあります。命あっての物種です。

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【慰謝料はどうやって決められる?】金額は悪質さや期間によって異なる

前章では、慰謝料を得るための証拠について、ケース別に確認していきました。

今回は、法定離婚事由を証明できた場合、どれくらいの慰謝料をとれることが予想されるのか、考えてきたいと思います。

慰謝料を多くもらうには、夫の支払い能力等がさまざまな要素が考慮される

離婚で慰謝料の発生した場合、「慰謝料の相場ってどれくらいなのかな」と考えられる方が多いと思います。離婚の慰謝料に関して、「○○されれば、○○万円もらえる」といった明確な基準はありません。

離婚の慰謝料は、下記のような事柄を考慮し、決められます。

  1. 夫の支払い能力(年収)
  2. 婚姻期間(同居期間)
  3. 有責性
  4. 子どもの有無
  5. 社会的地位の高さ
  6. 実際の結婚生活の状況

一般的に1が高い夫である場合、慰謝料が高くなる傾向にあります。支払い能力が無いと、そもそもお金が支払えないので当然と言えば当然かもしれませんね。

その他も、有責行為が悪質であるほど、金額が高くなりますし、婚姻期間(同居期間)が長いこともポイントのうちに入ります。

反対に、有責行為以前に6が、破綻状態だと判断されると、慰謝料の減額、もしくは請求が認められないこともあります。

具体例を挙げると、「長期間の別居で、その期間中に不貞行為をおこなった」というような状況などです。

なお、一概には言えませんが、弁護士に依頼し、協議離婚を成立させた方が調停や裁判に比べ、慰謝料を高額にできることが多いです。

と言うのも調停や裁判の慰謝料は、算定表を利用し算出しているので、自ら望んだ金額に及ぶことがあまりありません。

一方で、協議離婚は裁判所を介しませんので、高額な慰謝料を提示しても、交渉の余地が残されているのです。

ケース別にみる慰謝料の平均金額

離婚といっても、離婚原因はさまざまです。今回は、裁判所が発表している離婚原因で上位3位までの理由の場合、平均どれくらいの慰謝料をもらえる見込みがあるのかを考えていきましょう。

裁判所の発表している、令和元年度「婚姻関係事件数  申立ての動機別申立人別  全家庭裁判所」によると、離婚の原因は、下記のような理由が上位になりました。

1位 性格の不一致

2位 暴力をふるう

3位 異性関係

 

1位 性格の不一致

 

性格の不一致による離婚の慰謝料は0円~50万円程度と推測されます。通常、性格の不一致は、双方に原因が無いと考えられ、慰謝料は発生しません。

しかし、性格の不一致によって、夫婦関係が破綻してしまい、相手方が不貞行為に当たる行為をおこなった場合、50万円くらいを上限としてもらうことが出来るかもしれません。

なお、その他、法定離婚事由に当たる行為を相手方がおこなった内容によっては、金額が高くなる可能性もあります。

 

2位 暴力をふるう

 

暴力をふるわれ、離婚した場合の慰謝料は大体、50万円~500万円程度とされています。

証拠の可否や暴力を受けていた回数、期間などが加味され、金額が増減します。

 

3位 異性関係

 

異性関係が理由で離婚した場合の慰謝料は肉体関係を持っていたか否かで大きく違います。

肉体関係を持っていた場合には、不貞行為なので、50万円から300万円程度とされています。

肉体関係が無いケースでは、基本的に不法行為として認められませんが、状況によっては、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、慰謝料をもらえることがあります。

繰り返しになりますが、離婚の慰謝料には明確な基準は設けられていません。

ケース別の慰謝料の平均をお伝えしましたが、あくまでも指標として頭に入れておいていただければと思います。

【離婚の知識】離婚の慰謝料について知識を深めよう!

まとめ

今回は離婚の慰謝料について掘り下げていきました。

ポイントとしては以下の3点です

  • 離婚を切り出した側が必ず慰謝料をもらえるわけではない
  • 慰謝料をもらうためには精神的苦痛を受けた証明が必要
  • 慰謝料に明確な基準はない

慰謝料は独力で勝ち取ることは難しいかもしれません。そういった場合には、弁護士への依頼を検討しても良いかもしれません。

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