【裁判離婚は時間がかかる】離婚訴訟になった場合の3つの終結の仕方

裁判というと、裁判官が判決を下して、終わるというイメージがありますよね。しかし、離婚裁判においては、裁判になったとして、必ずしも判決で終わるとは限りません。今回は裁判離婚について紐解いていきましょう。

裁判離婚を行うための2つの条件

夫婦が離婚する場合、大ざっぱにいうと3つの方法があり、以下の通りになります。

■協議離婚

夫婦の話合いによって離婚を成立させる方法

■調停離婚

家庭裁判所に夫婦関係調整調停(離婚)を申し立てて、裁判官(調停官)、裁判書記官、2人以上の調停委員を交え、離婚成立を目指す方法

■裁判離婚

家庭裁判所に離婚の訴訟を申し立てて離婚を成立させる方法

 

日本では、離婚した夫婦の大半が、協議で離婚を成立させています。次いで調停離婚と続き、裁判で離婚を成立させた夫婦の割合は、全体の数パーセントです。

さっさと離婚の可否を問うなら、裁判で白黒はっきりさせるのが一番だろうとお考えの方もいるかもしれませんが、離婚裁判は簡単に起こせるわけではありません。

離婚裁判を行うには、原則として以下の条件を満たしている必要があります。

 

  • 条件①離婚理由が、民法770条で定められている『裁判上の離婚』の事由に該当している
  • 条件②調停を行い不調に終わった

 

条件①離婚理由が、民法770条で定められている『裁判上の離婚』の事由に該当している

民法770条では、離婚で裁判を起こす条件を以下ように定めています。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上生死不明
  • 配偶者が強度の精神病で、回復が見込めない場合
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由

 

不貞行為

不貞行為とは、配偶者以外と性交渉することを言います。詳細に言うと挿入行為や射精を促す行為のことです。

悪意の遺棄

悪意の遺棄とは、配偶者を正当な理由なく、夫婦の義務である同居・扶助・協力の義務を怠ることを言います。具体的に言えば、勝手に別居したり、生活費を渡さなかったり、健康上問題ないのに働かないといった行為が考えられます。

3年以上生死不明

配偶者と3年以上音信不通で、生死がわからない状態のことを指します。

配偶者が強度の精神病で、回復が見込めない場合

配偶者が重度のうつ病等の精神疾患を患い、夫婦間の意思疎通が取れず、またその状態から回復の見込みがない場合のことを言います。

その他婚姻を継続し難い重大な事由

上記以外で、夫婦関係の破綻を招くような行為のことを言います。具体的にはDV、ハラスメント行為、虐待等が考えられます。

 

離婚裁判を起こすためには、5つの条件のうちひとつに当てはまる必要があります。なお、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」以外の4つの理由については、申立てを行っても、夫婦の事情によっては訴えが取り下げになることもあります。

 

条件②調停を行い不調に終わった

日本では、家庭に関するトラブルについて、いきなり訴訟を起こすことが出来ません。裁判する前に、調停を行う必要があります。

離婚も家庭に関するトラブルなので、調停で話し合って双方の意見が合わず、調停が不調になって初めて、離婚裁判を起こすことが出来るのです。このように裁判を起こす前に調停を開くことを調停前置主義と言います。

離婚裁判は協議、調停と話し合いを重ねられるので、離婚が成立するまでのトータルの時間が他の方法に比べて長いと言われています。いわば、離婚裁判は離婚するための最終手段なのです。

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離婚裁判は、必ず判決で事件が終了するとは限らない

裁判というと、なんとなく刑事事件の裁判のイメージがあり、判決によって事件が終了すると考えている人が多いかもしれません。

確かに刑事事件の場合、被告人が有罪か無罪かを問う裁判なので、選択肢が二つしかありません。しかし、離婚を含め、民事訴訟には、裁判の過程で、原告と被告が和解して裁判が終了することもあります。

離婚においては、以下のような種類があります。

  • 認諾離婚
  • 和解離婚
  • 判決離婚

 

上記がどのようなものなのか、それぞれ考えていきましょう。

認諾離婚

認諾離婚は、耳慣れない言葉かもしれません。

認諾を国語辞典等で引いてみると、「認めてよしとすること」と載っています。裁判上の認諾も同じような意味を持っています。

転じて、被告側が原告側の主張を全面的に認めて、離婚が成立することです。たとえ裁判途中であっても、被告側が原告の主張を認めれば、認諾離婚が成立し、裁判が終了になります。

認諾離婚は、2004年に4月に制定された、比較的新しい離婚方法になります。とはいえ、離婚訴訟は協議、調停と双方の妥協点を模索してなお、折り合いがつかなかったときに行う方法なので、認諾離婚の数は非常に少ないと思われます。

また、認諾離婚が成立した場合に、10日以内に役所へ離婚届を提出しなければいけません。提出の際には、裁判所が作成する認諾調書の謄本を添付する必要があります。

和解離婚

和解離婚とは、裁判中に繰り返される審理の中で原告と被告が和解することを指します。

和解離婚が成立するケースとしては、次のようなシチュエーションが考えられます。

■当事者同士がそれぞれの主張に対し歩み寄りを見せ、和解になる場合

裁判で原告と被告が審理をとおして、それぞれの主張に歩み寄りの余地があると当事者同士が判断し、和解した場合、裁判が終了となります。

■裁判所が和解案を出し、和解勧告を行う場合

離婚訴訟では、原告が自身の主張が正しい論拠を挙げながら裁判官に対し、答弁を行います。対して、被告は裁判官に対し、原告の答弁の認否と自身の主張を証拠を挙げながら、抗弁します。裁判所は双方の主張や証拠書類等を鑑みて、和解が妥当だと判断した場合、和解勧告を行います。和解勧告を受け入れた場合、裁判官が両者の仲裁をしながら和解を進めていきます。

原告と被告双方が、裁判所の和解案を了承すると和解が成立し、裁判が終了します。

裁判が和解になった場合、和解調書というものが作成されます。認諾離婚と同じように、離婚届を出す際、役所に和解調書の謄本を添付する必要があります。

意外に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、離婚訴訟において和解によって離婚が成立する割合はとかなり高い数値です。

日本では、民事事件に関して、訴訟に発展したとしても、事件終了が和解になるケースが多いと言われています。

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判決離婚

判決離婚とは、文字通り裁判官が判決をくだして成立する離婚のことです。原告と被告が、それぞれ証拠を用いながら、答弁と抗弁を行います。

両者の主張のどちらが、より説得性のあるものかを裁判官が判断し、判決をくだします。判断材料となるのは、それぞれが提出した証拠書類、証人による証言等さまざまに考慮し、判決を下します。

判決がくだると、裁判所から判決書がそれぞれのご自宅に送達されます。裁判所から判決書が送達された日から2週間は、敗訴した側が控訴をする可能性があります。

したがって、控訴の申立期間の2週間が過ぎた後、10日以内に離婚届を提出する流れになります。

判決離婚では判決書の謄本とともに、確定証明書というものも提出する必要があります。

認諾・和解・判決等、すべてをふくめた裁判離婚の平均審理期間は、13.4

つまり、判決離婚を選択した方が、審理に長い時間がかかり、離婚が成立するまでの期間が長くなると予想されます。また、裁判所が被告の主張の方に正当性があると判断された場合には、離婚が成立しない可能性もあります。

「とことん争いたい」「白黒はっきりさせたい」という強い気持ちは十分わかりますが、実利を考えて和解で離婚を成立させた方が良い場合もあります。

さらに付け加えると、裁判にはお金がかかります。裁判を行う場合、多くの方が弁護士に相談し、自身の代理人として法廷に立ってもらうことになると思います。

しかし、当然ながら、弁護士費用は無料なわけではなく、有料です。着手金や報酬等以外にも、法廷への出張日当も別途で発生する可能性があります。

また、裁判に勝訴したとしても、原則として弁護士の費用は原告・被告それぞれが負担することになります。したがって、審理が長引くと、弁護士費用も高くなる傾向にあります。

たとえ勝訴したとしても、全面的に原告が請求した損害賠償金がとおるとは限りません。

そのため、裁判離婚を行うためにはご自身の経済状況等も加味して考える必要があるのです。

どうしたって別れたい…~離婚話が裁判へ進んだら~

まとめ

今回は、訴訟で離婚の可否を争った場合の、裁判の終結方法について解説していきました。離婚裁判は、上述した通りお金がかかる可能性があり、また精神的負荷もかかります。

したがって、離婚を早期に解決したい場合には、おすすめできない方法です。しかし、相手方が有責行為をしているのにもかかわらず、離婚を拒否したり、調停を欠席したりして、話がつかない場合には、まさに離婚する最終手段として有効です。

ただし、自力でご自身の望む結果を得るのは、非常に困難ですので、離婚訴訟を決意した場合には一度弁護士に相談した方が良いでしょう。

弁護士に相談することで、ご自身が離婚訴訟を起こすしかないと思っていたとしても、他の手立てを提案してくれるかもしれませんので一度検討してみてはいかがでしょうか。

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