不倫は罪?不倫して離婚した場合に被る不利益とは?財産編

当然ですが、不倫はいけないことです。しかし、だめだと分かっていても、感情が抑えきれず不倫関係に至ってしまうこともあります。

夫の態度が冷たかったり、暴力を振られていたりして、他の男性に愛を求めることは、珍しいことではありません。

今回はご自身の不倫で離婚に至った場合、どのような不利益があるのかを考えていきたいと思います。

不倫は罪なの?過去と現在の法律の違い

不倫という言葉が登場したのは、結構近い時代で、明治のころに日本で生まれたと言われています。倫理に外れた、道徳に反した男女関係のことを不倫と呼ぶようになりました。

なお、それ以前、江戸時代にも不倫と似たような言葉がありました。それが不義密通です。

江戸時代では、不倫はまさに命がけでした。というのも、江戸時代に定められた公事方御定書では不義密通は、死罪だからです。

また、戦前の旧刑法には、姦通罪と言う罪もありました。

姦通罪とは、旧刑法の第183条に記載されていた罪で次のようなものでした。

 

旧刑法第183条

一.有夫ノ婦姦通シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ處ス其相姦シタル者亦同シ

二.前項ノ罪ハ本夫ノ告訴ヲ待テ之ヲ論ス但本夫姦通ヲ縱容シタルトキハ告訴ノ效ナシ

【現代訳】

一.夫のいる女性が姦通(※)をしたときは、2年以下の懲役。また、相手方の男性も同じ刑を科す。

二.前項の罪はその妻の夫が告訴を行って成立する。夫が姦通を許した場合には、効力を発しない。

 

※姦通…男女が不義の交わりをおこなうこと、不倫と同義。

これは、戦後1947年(昭和22年)に廃止された罪です。

戦前は男性優位の社会で、法律も男性優位のものが見受けられました。しかし、日本国憲法で男女平等の権利が定められ、廃止されました。

つまり、過去に不倫は犯罪として定められていたこともあるのです。

 

一方で、現在(2021年)不倫は不法行為であっても、犯罪ではありません。

つまり、不倫をして他人の権利を侵害したとしても、逮捕・起訴され、有罪なんてことはないのです。

当然のことながら不倫をしてペナルティが無いわけではありません。まずは法律上で不倫になる行為について押さえていきましょう。

すべての不倫が法律上の不倫とは限らない

不倫は、民法770条の1項で不貞行為と記載されています。民法770条では、裁判上の離婚ができる事由が記載されているもので、有責事由とか法定離婚事由という風に呼ぶこともあります。

この条文では、不貞行為が裁判で離婚の可否を問える事由として記載されているだけで、具体的な行動については書かれていません。

具体的な行動については、次の裁判例がもととなっています。

 

民法七七〇条一項一号所定の「配偶者に不貞の行為があつたとき。」とは、配偶

者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをい

うのであつて、この場合、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わ

ないものと解するのが相当である。

裁判例:昭和48年11月15日 最高裁判所第一小法廷 事件番号:昭和48(オ)318

 

上記をかみ砕くと、法律上の不倫とは、妻や夫のいる男女が、自分の意思で、夫と妻以外のひとと性的関係を結ぶということです。

つまり、以下のような行為は、法律上の不倫として認められない可能性が高いです。

  • 夫、妻以外と二人で食事したりデートする
  • 夫、妻以外の異性と手をつなぐ
  • 夫、妻以外の異性とキスをする
  • 夫、妻以外の異性とハグする

これらの行為は、性的関係を結ぶというには弱いのです。

したがって、仮にご自身の夫や妻に上記の行動を見られたとして、性的関係の事実が露見しなければ、法律上の不倫と認められない場合が多いです。(といっても、倫理的には問題のある行動ですが…)

夫に不倫がバレた場合、正直に白状するか、しらを切りとおすかのどちらかになると思います。相手方が、性的関係を含まない証拠しか持っていない場合は、しらを切りとおすことができるかもしれません。しかし、相手方が性的関係を立証し得る証拠を持っていた場合、心象は最悪になるので、後々の不利益につながる可能性がありますのでご注意ください。

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不倫と財産分与は関係ない?

ご自身が不倫をして離婚になった場合、心配になるのがお金の問題です。

夫婦が離婚する場合、必ず行うのが財産分与です。財産分与とは、婚姻中に形成した財産を分けることを指します。

なお、財産分与の対象になる財産は、婚姻中に発生した金銭や、購入した家屋などの不動産、自動車などの動産です。個人的にプレゼントされたものだったり、相続した財産は個人の財産に属するものなので、財産分与の対象にはなりません。

基本的に、財産分与は、財産形成に寄与した割合に応じて分けられます。ここでいう寄与とは、収入の高い方というわけでなく、家事や育児等への貢献も含まれているので、通常半分ずつ分けられるケースが多いです。このような財産分与を清算的財産分与と言います。

原則的に共同財産は、清算的財産分与でおこなわれます。たとえ不倫をしていても、基本は、清算的財産分与です。不倫をしていたからと言って、相手方が「財産分与に応じない」ということはできません。

慰謝料と財産分与は同じお金でくくられがちの問題ですが、「精神的苦痛の損害賠償」と「夫婦の財産を分けること」は全く別の性質です。したがって、清算的財産分与を行い、そのうえで慰謝料を請求するのが基本的な流れになります。

とはいえ、前述した通り、同じお金の問題なので、慰謝料と財産分与を明確に分けず、慰謝料分と一括して、財産分与を請求するケースもあります。

このように、財産分与の請求の中に、慰謝料が含むことを慰謝料的財産分与と言います。夫婦が話し合い、双方の合意があれば、慰謝料を含む財産分与をおこなうことも可能です。

とはいえ、基本的に慰謝料と財産分与は別物です。相手方が、「不倫したのだから共同財産は全部もらう」と言ってもそれは違います。不倫したからと言って財産分与をする権利が無くなるわけではないということを覚えておきましょう。

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不倫だと必ず高額な慰謝料をとられる?

不倫が発覚した場合、心配になるのが慰謝料の問題です。不倫においての慰謝料は、その行為によって相手方が負った精神的苦痛に対する損害賠償になります。

気になる相場ですが、大体100万から300万円だと言われています。ただし、不倫の慰謝料は次のような事柄によって、大きく左右されます。

  • 証拠の有無
  • 不倫をしていた期間
  • 婚姻期間
  • 婚姻継続の意思
  • 不倫発覚前の家庭状況
  • 不倫を積極的に行ったかどうか
  • 不倫相手の子どもを妊娠した

 

証拠の有無

不倫の慰謝料は証拠があるかどうかで大きく違ってきます。相手方が、証拠を持っていなかったり、不倫の裏付けには弱い証拠だった時には、慰謝料が減額できたり、そもそも取られないこともあります。

不倫をしていた期間

不倫していた期間が長期間にわたるほど慰謝料は増額される傾向にあります。また、繰り返し行っていた場合も同様、悪質とみなされ高額になる可能性が高いです。

婚姻期間

婚姻期間が長い夫婦ほど、慰謝料が増額される傾向にあります。強い信頼関係が築かれていると判断され、その分精神的苦痛が大きいとされ高額になるケースがあります。

婚姻継続の意思

意外に思われるかもしれませんが、不倫の慰謝料は、離婚しない場合でも請求することが可能です。相手方に婚姻継続の意思がない場合には、慰謝料が高くなる傾向にあります。

不倫発覚前の家庭状況

不倫発覚前の家庭状況や夫婦関係が円満であるほど、慰謝料が高額になることが多いです。「円満」なのに不倫をしていたという事実が、精神的苦痛をより感じさせると判断されるからです。

一方で、不倫発覚前に夫婦関係が破綻している場合には、慰謝料を支払わなくても良いこともあります。不倫の慰謝料は、「不倫によって夫婦関係が破綻し、精神的苦痛を受けた」ときの損害賠償です。

そもそも夫婦関係が破綻していたケースですと、不倫によって精神的苦痛を負わないと判断され、相手方が請求できないこともあるのです。

不倫を積極的に行ったかどうか

ご自身が不倫を主導していた場合、慰謝料が増額される傾向にあります。積極的に不倫を先導しているのを相手方が知ったときに、精神的苦痛をより感じるであろうと判断されるからです。一方で不倫相手が主導し、不倫を行った場合、不倫相手との関係性によって一定の考慮をされることがあります。

例えば不倫相手が、ご自身の上司だとか何かしらの利害関係が絡んでいた場合、断れなかった等の状況が考えられるからです。

不倫相手の子どもを妊娠した

不倫相手の子どもを妊娠した場合、慰謝料が増額される可能性がかなり高いです。配偶者以外の子どもの妊娠や出産は、相手方が受ける精神的ダメージが非常に強いものになるからです。

 

上記のような項目の他に経済力や社会的立場によっても慰謝料の金額は左右されます。

当然ながら、収入が高く、社会的地位が高いほど、慰謝料の金額が高くなる可能性が上がります。

不倫の慰謝料は、その状況によって異なります。

不倫は不法行為ですが、不倫をしたからと言って、相手方の要求をすべて飲まなくてはならないというわけではありません。

例えば、支払い能力がないのに、1,000万円とか1億円とかの慰謝料を請求されても困ってしまいますよね。相手方も不倫をされたことが許せず、現実的に無理な金額を吹っかけてくることがあります。

そのような時は、不倫について謝罪をしつつ、慰謝料の減額を交渉した方がよいです。相手方が感情的になって話し合いができない場合は、弁護士に依頼したり、調停を申し立てたりという手段に踏み切った方が良いかもしれません。

ただし、話し合いのなかで嘘を吐いたり、しらばっくれたりすると、事態が悪化しかねないので気を付けましょう。

【離婚の知識】離婚の慰謝料について知識を深めよう!

まとめ

今回は不倫して離婚を切り出された場合、金銭面でどのような不利益があるかについて確認していきました。配偶者に不満を感じ、他のひとに惹かれたのならば、離婚してから関係を作るのが筋です。

けれども、例えばDVを受けていて相談したひとと不倫をしてしまったとか、夫婦関係が冷え切っていて、他のひとに愛を求めてしまったとか、状況に応じてさまざまです。

また、不倫をしたからといって、すべての権利がなくなったり、相手の要求に応えなければならないわけではありません。

反省は必要ですが、相手が無理な要求を突き付けてきたときには、前述した弁護士や調停等の利用を検討しましょう。

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