【夫が罪を犯し刑務所に】配偶者が服役中でも離婚はできるのか?

夫が、罪を犯して刑務所に…。もう我慢できない…。

すぐにでも離婚したいけど、相手は刑務所。夫が刑務所にいる場合、どうやって離婚すればいいの?

配偶者が刑務所に収監されている場合の離婚の手続き

獄中結婚という言葉を聞いたことはありますでしょうか。刑期中に受刑者が結婚することを言い、しばしばニュースや週刊誌などで話題になることがあります。

結婚が出来るのであれば、当然離婚できると思いますよね?しかし、「具体的に」と言われると分からない方が多いのではないでしょうか。実際、どのような手順で離婚すればよいのでしょうか。

 

双方の合意があれば、離婚できる

配偶者が刑務所にいる場合でも、双方の合意があれば離婚することが可能です。これは、通常の離婚の手順と同じです。

ただし、以下の点で通常の離婚と異なる場合があります。

 

  • スムーズに離婚協議を進められない可能性がある
  • 配偶者が離婚届に押す認印を持っていない

 

スムーズに離婚協議を進められない可能性がある

離婚は、離婚届を出して、「はい、おしまい」とはいきません。離婚届を出すまでに取り決めしなければいけないことが多数あります。

特に、夫婦に子どもがいる場合、最低限養育費の取り決めは行いたいですよね。しかし、配偶者が刑務所にいると、話し合いの頻度や時間が制限されます。

というのも、刑務所の面会には時間制限があるからです。更に言えば、刑務所は土日祝日に面会できないことがほとんどで、基本的に平日の昼間(8:30~16:00)が面会可能時間として設定されているところが多いです。

ご自身が働いている場合、面会のために仕事を休んだり、時間をずらしたりと、調整を行う必要があります。

そのため、財産分与や養育費等の取り決めを行いたくても、なかなか話し合いが出来ないことがあるのです。

なお、相手方が刑務所にいる場合、収入が0の状態なので、養育費を取り決めしても、すぐに支払ってもらえる可能性はとても低いです。

そのため、相手方の親族が立て替えてくれるのかどうかや、出所後の養育費についての取り決め等を話し合う必要があります。

また、刑務所ではスマホなどの連絡ツールは利用できません。連絡手段は、手紙に限られます。メールやLINEの連絡手段は使えず、また電話についても限られた人しか使えないので、早く取り決めしたい場合は、面会回数を増やすほかありません。

また、受刑者と面会する場合、基本的に職員の立ち合いがあったり、会話が録音・録画されたりします。これは、証拠隠滅等の不正が行われないようにするための措置です。

離婚は非常にデリケートな話題ですので、たとえ刑務所の職員であっても聞かれたくないこともあると思います。しかし、立ち合いや録音・録画は不正防止策なので、多少の不便さは致し方なしと飲む必要があります。

 

配偶者に記入してもらった離婚届を手にするのに時間がかかる

離婚届には、署名欄と押印する箇所があります。この欄は、原則として本人が署名押印をする必要があります。署名に関しては、原則として配偶者が刑務所に収監されていたとしても、本人に記入してもらわなければなりません。

離婚届を受刑者に渡す方法は、郵送か刑務所に設置されている窓口で引き受けてもらうことが出来ます。面会するのなら、直接手渡しできるように思えますが、面会時に受刑者へ直接手渡すことはできません。

例え離婚届であっても、直接手渡すことができません。というのも、受刑者に渡される手紙や差し入れは、刑務官が検閲する必要があるからです。

なお、離婚届の認印については、拇印でも認められています。基本的に署名のみでも受理してもらえますが、不安な方は事前にお住いの地域の戸籍課に問い合わせても良いかもしれません。

※2021年9月以降、デジタル改革関連法関連によって行政手続きの押印が任意になるようです。そのため、押印無しで離婚届を出すことが出来るようになります。

 

離婚届を出すうえで絶対にやってはいけないのは、刑務所にいる配偶者の署名・押印欄を勝手に記載して、役所に離婚届を提出することです。

有印私文書偽造罪、偽造有印私文書行使罪、電磁的公正証書原本不実記録罪などに該当し、処罰される可能性があります。そのため、署名欄は極力、本人に書いてもらうようにしましょう。

なお、相手方の同意を得られれば代筆する可能です。その場合、後になって相手方が意見を翻してもいいように、口約束でなく手紙などでエビデンスをしっかり残したうえで、行った方が良いです。

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合意が取れない場合、調停を経ず訴訟が可能?

配偶者が刑務所におり、離婚の合意が取れない場合、どのような対処を行えばいいのでしょうか。

通常の離婚では、夫婦同士の話し合いで折り合いがつかない場合、調停を行うことになります。しかしながら、刑務所にいる場合、調停を申し立てても、相手方が調停に出席できないことがほとんどです。

この場合、調停の手続きを経ずに離婚訴訟を行えるケースがあります。

ただし、服役中であれば、調停をすっとばしていいわけではなく、しばらく出所の見込みがない場合に限ります。

それ以外は、形式上でも調停を申し立てる必要があります。調停の申し立てを行うと、裁判所から刑務所へ呼び出し状を送ることになります。

受刑者が離婚調停を行う場合、付き添いとして刑務官が必要です。

呼び出しのかかった刑務所が、「付き添いの刑務官が、派遣できないため調停には出席できない」と返答した場合、調停は1回で終了し、訴訟を行うことが出来ます。

 

服役中は夫婦の義務を果たしていない状況にある

配偶者が犯罪者になった場合、犯罪を行ったことがただちに有責行為になるわけではありません。しかし、配偶者が服役している場合、民法752条で定められている、夫婦の同居・扶助・協力の義務違反をしている状態になります。

刑務所に入れば、同居も出来ませんし、給料を渡すことも出来ません。このような状況は民法770条で定められている、その他婚姻を継続し難い重大な事由(1項5号)に相当します。

これを理由にすれば離婚が成立するかと言われれば必ずしもそういうわけではありません。上記の理由の他に別途、離婚しなければならない理由が必要となる可能性が高いです。

 

離婚が認められやすい犯罪の内容とは

服役中の配偶者を相手に離婚訴訟を行う場合、犯した罪の内容が重要になってきます。

次のような理由である場合は、離婚が認められやすい傾向にあります。

 

  • 被害者が自分自身や子ども
  • 性犯罪を行った
  • 重大な犯罪を行った

 

被害者が自分自身や子ども

被害者がご自身やその子どもである場合、離婚が認められる可能性が高くなります。なお、被害内容が、DVや虐待等である場合や離婚後元配偶者が、怒鳴り込みや暴行を行うなどのリスクがある時には保護命令を申し立てることが出来ます。

保護命令が行われた場合、出所後の被害者やその子どもへの接見禁止、電話での連絡の禁止などの措置が取られることとなります。

 

性犯罪を行った

配偶者が性犯罪を行った場合、離婚が認められる確率が高くなります。

特に、強制性交等や強制わいせつの場合、その行為内容によっては不貞行為に該当する可能性があり、離婚できる可能性が高まります。

 

重大な犯罪を行った

配偶者が行った犯罪が、殺人や放火である場合、離婚できる確率が高いです。

重大な犯罪は刑期が長く、また加害者家族として受ける精神的苦痛が大きなものと判断され、離婚が認められやすくなります。

 

その他、軽微な罪でも繰り返し行っていた場合には離婚できる確率が高くなります。

 

配偶者が服役中の離婚訴訟は1回で終わる可能性が高い

通常、離婚訴訟は原告と被告、それぞれが用意した証拠や証人を用いて、自身の主張の正当性を訴えます。

裁判所はそれぞれの主張を聞き、どちらがより説得性のあるものなのかを判断し、判決を下します。判決が下るまで、口頭弁論を何度か繰り返すことになります。

しかしながら、被告である配偶者が服役中の場合、欠席裁判になるケースが多く、1回の審理で判決が下る可能性が高いです。

原告側は裁判所に、夫婦関係が破綻している状態であることをしっかり伝え、離婚が妥当であると判断してもらわなければなりません。

離婚の可否は、原告の主張に説得性があるのかで大きく左右されます。裁判所に離婚を認めてもらうには、説得性のある答弁書を作成しなければなりません。

しかしながら、答弁書は自力で作成するのはとても困難です。そのため、離婚訴訟を検討しているのであれば、弁護士へ依頼した方が良いでしょう。

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まとめ

今回は配偶者が刑務所に服役した場合の離婚について解説してきました。

離婚訴訟を申し立てる場合、お金も時間もかかります。そのため、出来るだけ相手の合意が得られるよう、協議離婚を目指した方が良いでしょう。

仕事や育児などの理由で、なかなか時間が取れない場合は、弁護士に希望を伝え、代理人として交渉してもらった方が良いかもしれません。

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