コロナ禍で夫婦は2人でテレワーク。子どもも休園措置で、家族がそろっている。仕事中に子どもが泣き出して、全然仕事にならない!夫についつい強い口調で接してしまい、感情任せに叩いてしまうこともしばしば。
そんなことがしばらく経って、「君のヒステリーには耐えられない」と離婚を切り出された!たかだかこんなことくらいでと思うけれど、夫は本気みたい。一体どうすればいいの?
コロナ禍によって妻からのモラハラが増加中?
1年以上続くコロナ禍によって、さまざまな生活の変化を余儀なくされてきました。コロナ禍によって、テレワークが増えたり、子どもの休園・休校措置等があったりして、多くの方が家族と過ごす時間が増加したと思います。
家族の時間が増えれば、なんとなく円満になるような気もしますが、そううまくいかず、家庭内不和が生じた方もいます。
家庭内不和は、次のようなものがきっかけで起こっていると考えられます。
- 自粛生活等の行動制限によってストレス発散の場所がない
- 家族が自宅にいることによる家事の増加
- テレワークのため落ち着いた仕事環境が確保できない
自粛生活等の行動制限によってストレス発散の場所がない
2020年4月以降、現在に至るまで(2021年7月現在)緊急事態宣言やまん延防止措置等重点措置等によって、旅行や娯楽がさまざま制限されています。
これにより、ストレスの発散がうまく行えず、内に溜め込んでしまい、気鬱状態になったり、攻撃的になり、家族に当たったりしてしまうことがあります。
家族が自宅にいることによる家事の増加
家族が自宅にいるということは、必然的に家事をする機会も増えます。特に食事の用意や食器洗い等は、1,2食で良かったものが、3食に増えた家庭が多かったのではないでしょうか。
さらに言えば、食事の用意から解放される外食なんかも、飲食店の営業自粛や、新型コロナウイルスの感染リスクを考慮し、控えている方も少なくないと思います。
食事の用意や後片付けは簡単だと思われるひともいるかもしれませんが、買い物も増えますし、意外と手間がかかりますよね。
短期間なら、未だ我慢できるかもしれませんが、この状態が長く続くとやはりストレスが溜まってしまいます。
テレワークのため落ち着いた仕事環境が確保できない
テレワークは住居環境や家族構成によってかなりストレスが溜まる仕事の方法です。
テレワークが始まる前は、出勤時間を取られることなく、また満員電車に乗ったり、自分で車を運転しなくてよくなるので、楽になると思った方もいるかもしれません。
しかし、実際は共働きで、家に十分な仕事スペースが無かったりすると、仕事がはかどらずストレスが溜まってしまうことがあります。加えて子どもが家にいた場合、泣いてしまったり、ケンカしたりと対応に追われ、落ち着いた仕事環境が確保できないことがあります。
これらのようなことが原因で、ストレスのはけ口が無く、うつ病的になってしまったり、家族に対して攻撃的になり、暴言や暴力を振ってしまったりする方は少なくないと思われます。
実際、警察庁が発表した、「令和」では、配偶者もしくは、事実婚をしている方からのDV相談は、DV防止法施行以降(H13/2001年)、過去最多の82,643件でした。
その内、男性被害者からは19,478件、女性被害者からの相談は、63,165件でした。割合にすると男性が23.6%で、女性が76.4%と、女性側の方が比率自体は高いです。
しかしながら、次の表をご確認いただくと興味深いことが解ってきます。
■配偶者からの暴力事案等の被害者の性別件数
令和元年(2019)※ | 令和2年(2020) | |
男性(件数) | 17,815(21.7%) | 19,478(23.6%) |
女性(件数) | 64,392(78.3%) | 63,165(76.4%) |
※令和元年(2019)の割合については、男女ともに小数点第4位を四捨五入して計算しています
上記の表を令和元年と比べてみると、女性の被害件数が減っているのに比べ、男性の被害件数は1,663件増加しています。また、被害件数の総数に占める割合も男性は1.9%伸びています。
コロナ禍との因果関係は断定できませんが、妻から暴力や暴言等の被害を受けている男性が増えたのは確かです。
DV被害者というと、どうしても比重が女性に置かれがちですが、妻(もしくはパートナー)からのDVを受けている男性もいるのです。

DVは女性でも加害者になり得る
DVとは、良くイメージされる、身体的な暴力だけではありません。DVにはいくつか種類があり、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下DV防止法)の第1条では次のように定義しています。
(定義)
第一条 この法律において「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項及び第二十八条の二において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。
長々としてわかりにくいですが、つまり身体的暴力だけでなく以下のような言動も対象となるのです。
- 精神的暴力
- 経済的な制限
- 性的暴力
想像しにくいものもあると思いますので、順を追って解説させていただきます。
■精神的暴力
精神的暴力とは、主に暴言や無視が挙げられます。また、暴力を連想させるような、大きな物音を立てたり、物を壊したりすることも精神的暴力に入ります。
更に言えば、配偶者の交友関係を管理したり、実家への連絡を制限したりすることもあります。
■経済的な制限
経済的な制限とは、生活費を渡さなかったり、配偶者の仕事に制限をかけたりすることを指します。
■性的暴力
性的暴力とは、セックスを強要したり、当人が望まないのに妊娠を強要させるような行為に及ぶことです。また、妊娠時、中絶を強要する行為も性的暴力になります。
これらの中で、加害者意識なく行ってしまうのが精神的暴力です。別の言葉で置き換えると、モラルハラスメントとも言います。
精神的に不安定だったり、ストレスが過負荷だったりすると、無意識に配偶者へ精神的暴力を行ってしまうことがあるのです。
意識なく精神的暴力を行っている可能性がある
先にお伝えした通り、DVの中で無意識的に行ってしまうのが、精神的暴力です。
例えば、イライラして夫に次のような言動をとったことは無いでしょうか?
- 大声でどなりちらす
- 夫の交友関係を執拗に聞き、制限する
- 夫が自分の意に沿わない行動をすると、気がすむまで無視し続ける
- 夫を見下し、常にバカにするような態度を取っている
- 夫の趣味のものを勝手に売ったり、捨てたりして処分する
夫婦げんかをして上記の行動を一時的にとってしまうことはあるかもしれません。しかし、このようなことを日常的に行っていた場合は、DV加害者です。
また、これらの行為は民法770条で定められている、裁判上の離婚の理由にも当てはまっています。つまり有責配偶者となるわけです。
有責配偶者になった場合、夫から慰謝料を請求されたり、最悪の場合、裁判を申し立てられ、離婚されてしまう可能性もあるのです。
精神的暴力は、たとえ無意識だったとしても許されるものではありません。ある日突然、夫が限界を迎え、離婚を切り出されることだってあるのです。
ご自身が精神的暴力の加害者で、夫から離婚を切り出された場合どのような対処法があるのでしょうか。

夫婦間のコミュニケーションをとることが重要
ご自身が夫に対し精神的暴力をしたことが原因で離婚を切り出された場合、まずは謝ることが大切です。
また、本当に離婚しか選択肢がないのか、冷静によく話し合うことが重要になってきます。
ただ、無意識にモラハラのような精神的暴力を相手方に行っている場合、その言動に至っている原因がなんであるのかをしっかり自分で確認する必要があります。
精神的暴力を行うようになった場合、次のような原因が考えられます。
- うつ病
- 適応障害
- アダルトチルドレン
1.うつ病
環境の変化等によって、精神に負荷がかかったときになりやすい精神疾患です。真面目で責任感が強い方がなりやすい傾向にあります。
うつ病と言うと、なんとなく気分が落ち込んだり、やる気がなくなったりと言ったイメージがありますが、うつ病の症状はさまざまあり、家族や周囲の方に攻撃的な言動をとることも少なくないのです。
2.適応障害
適応障害とは、日常生活のなかの事柄がストレスになり、それが原因で心身のバランスを崩してしまう状態のことを指します。症状はうつ病と同じく不安感があったり、頭痛や不眠だったりとひとによってさまざまですが、ストレスの原因が明確である部分が違いです。
コロナ禍の自粛生活や生活スタイルの変化等によって、発症する方が増加傾向にあるようです。
3.アダルトチルドレン
アダルトチルドレンとは、幼少期の家庭内のトラウマによって傷ついたひとのことを言います。アダルトチルドレンの場合、幼少期両親等から受けた虐待行為を、自分が家庭を持ったときにそのまま、子どもや配偶者に同じような行為をしてしまうことがあります。
精神的暴力は、このような原因によって引き起こされることがままあります。また、1,2についてはコロナ禍がもたらすストレスによって発症する方が少なからずいらっしゃいます。
精神的なストレスで夫に精神的暴力を働いてしまった時には、謝罪の後、治療が必要です。
「治療して治すから、一度離婚踏みとどまってほしい」と言って、様子を見る時間をもらえるように真摯に説得しましょう。
精神科や心療内科というとなんとなく足踏みしてしまいがちですが、通院することによって薬で症状を和らげさせたり、カウンセリングで心が安定することもあります。
離婚を回避するために絶対やってはいけないこと
夫に精神的暴力が原因で離婚を切り出された場合、絶対やっていけない言動は次のようなものがあります。
- 精神的暴力を行った原因を夫のせいにして責任転嫁する
- 逆上する
- その場しのぎの嘘を吐く
- 相手の話を聞かず、否定する
上記のような言動をとると、離婚を回避するどころか離婚の決意を強くしてしまう可能性の方が高いです。
自分が精神的暴力を行った加害者であることを自覚し、認めるのはとても難しいことです。しかし、加害者であることを認め、真摯に自分自身の言動を改めようと行動をすれば、離婚を切り出した夫の方も考えを変えてくれるかもしれません。

まとめ
今回は、女性が加害者の場合のDVについて考えてきました。男性女性関係なく、心無い暴言や暴力は心を疲弊させます。
男性だって、精神的暴力等のDVを受けたら苦しいのです。
ご自身が加害者にならないことが一番ですが、実際なってしまった場合には、真摯に相手と向き合い、誠実な対応をすることが最も離婚を回避する確率を高めることだと思います。
とはいえ、精神疾患等が原因でDVを行っていた場合、感情をうまくコントロールできず、冷静に話し合いができないこともあります。
そんなときは、裁判所に夫婦関係調整調停(円満)の申立てを検討したり、弁護士に相談するのも良いかもしれません。
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