離婚というと、夫婦同士のドロ沼の争いを想像するかもしれません。
しかしながら、実際の離婚は、両者の心中はどうであれ、裁判で離婚の可否を問うまでに至る夫婦は全体の2.4%程度に過ぎません。
今回は、裁判離婚の難しさやデメリットについて確認していきましょう。
離婚裁判を起こすには条件がある
日本では、夫婦仲が悪くなったからといって、「裁判で決着付けましょう」とはいきません。離婚したい理由が、たとえ配偶者の不倫や暴力等、明確な原因があったとしても、離婚訴訟の申立てをするまでには段階を踏む必要があるのです。
日本で離婚裁判を起こすには原則として、次の2つの条件をクリアする必要があります。
- 条件①訴訟を起こす前に調停を行う必要がある
- 条件②法律で定めのある離婚事由に該当する必要がある
条件①訴訟を起こす前に調停を行う必要がある
離婚訴訟を起こす条件①として、訴訟の前に調停を行う必要があります。日本では、離婚等の家族に関する紛争(以下家事事件)は、原則として訴訟を起こす前に調停を行う必要があります。
このような仕組みを調停前置主義と言い、裁判ではなく当事者の話し合いによって家族同士のトラブルを解決させましょうねという狙いがあります。
離婚訴訟を起こす前に、裁判所で裁判官(調停官)、調停委員(離婚の場合は、男女2人以上)を交え、互いの主張の妥協点を見つける努力が必要になります。
離婚訴訟を起こすには、まず双方の妥協点を見出すことができず、不調に終わることが前提です。
条件②法律で定めのある離婚事由に該当する必要がある
離婚訴訟を起こす条件②として、離婚原因が、法律で定めのある離婚事由に該当している必要があります。
法律で定められている離婚事由とは、民法770条に定められおり、次のような内容となります。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上生死不明
- 配偶者が強度の精神病で回復を見込めない場合
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
離婚裁判を起こすには、まず、上記の1から5のいずれかの理由に当てはまらなければなりません。
とはいえ、離婚原因が1から4の場合、裁判所の判断で訴えが棄却される可能性があるので注意が必要です。
なお、3に限っては、配偶者が3年以上生死不明の状態である証明、例えば捜索願の受理証明書や事故や災害に遭ったという証明書等があると、条件①の調停を経ずに裁判訴訟を起こし、離婚を成立させることができます。
このように、離婚裁判を起こすには、条件①と条件②をクリアする必要があり、裁判を起こすまでに時間がかかるということを頭に入れておいていただければと思います。

離婚裁判のデメリットを知ろう
離婚裁判を起こすことができれば、確かに「勝訴」「敗訴」という形で、離婚の可否を問える可能性は高くなるでしょう。
しかしながら、ひとによっては、離婚の可否を裁判で判断してもらえる以上のデメリットが発生するケースもあります。
離婚裁判の主なデメリットとして、次のようなものが挙げられます。
- 時間がかかる
- お金がかかる
- 必ず勝訴できるとは限らない
裁判離婚のデメリット①時間がかかる
裁判離婚のデメリット①として、離婚の成立までに時間がかかることが予想されます。
ほとんどの場合、裁判が1回で終了することはありません。
裁判官が原告と被告の主張を聞き、どちらの主張により説得性があるのかを審理し、判決を下します。(※)
1度の口頭弁論で審理が終了するのはほとんどないことで、判決まで行くのに平均して1年ほどの時間がかかります。その他、訴訟を起こす前に調停をしなければならないので、離婚が成立するまでに年単位の時間がかかる可能性が高いです。
離婚裁判は、早く離婚を成立させたいひとにはあまりお勧めできない方法と言えるかもしれません。
裁判離婚のデメリット②お金がかかる
裁判離婚のデメリット②は、お金がかかることです。
裁判を有利に進めるためには、担当の裁判官を納得させるに足る答弁が必要です。
そのためには、論理的で説得力のある答弁書を提出し、また口頭弁論な等でも感情論で話を展開するのではなく、相手の主張のほころびを指摘し、自身の主張に正当性があるということをしっかり伝えなければなりません。
自身の正当性を主張するには、多くの法知識が必要となります。一般の方が自力で答弁等を行うのは困難なので、ほとんどの場合弁護士に依頼します。
弁護士に依頼すると、次のようなお金が予想されます。
- 着手金
- 成功時の報酬
- 裁判立ち合いのための日当
- 交通費
依頼する法律事務所によって料金設定は異なりますが、概ね上記の金額がかかると予想されます。なお、報酬については、パーセンテージ等で設定されている事務所も少なくないので、事前に確認しておくとよいかもしれません。
ただし、お金がかかるからといって、弁護士に依頼しないと相手方の主張が通り、離婚が成立しなかったり、慰謝料等の請求が棄却されてしまったりする可能性が高くなります。
そのため、離婚裁判を起こすのであれば、弁護士への依頼費用は必要経費として初めからかかるものとして考えておきましょう。
裁判離婚のデメリット③必ず勝訴すると限らない
裁判離婚のデメリット③は、原告側が必ず勝訴できるとは限らないところです。
当たり前と言えば当たり前のことなのかもしれません。
相手方の言動に耐え切れず、調停を経て訴訟を起こし、原告となるとなんとなく裁判所は原告の味方になってくれると思いませんか?
確かに原告側は被告側の不法行為に耐え切れず訴訟を起こすわけですから、自分の主張が正しいし真実だと感じている方が多いと思います。
しかし裁判は、訴訟に至る原因となった相手方の言動、夫婦の関係性等を審理し、フラットに判断を下します。そのため、何の用意もなしに、原告有利で裁判が進むことはありません。
裁判で勝訴を得るためには、自分の主張を論理的に展開し、それを裏付ける証拠や証人を準備する必要があります。
なお、裁判官は、判決を下すだけでなく、夫婦に和解の余地があると判断した場合、和解勧告をすることもあります。
また、裁判によっては、裁判官にその紛争に対する率直な意見を述べ、解決に導く役目を負う参与委員が立ち会うこともあります。
裁判離婚ではなく他の方法で離婚を目指すべき
結論から言って、離婚裁判で離婚の可否を問うことは時間やお金、また精神的負担が増えるので、あまりお勧めできる方法ではありません。
訴訟を起こす前に協議や調停で離婚を成立させた方が時間的にも経済的にも、精神面でも良いことの方が多いと思います。
したがって、訴訟を考える前に、弁護士に相談し、自分の望む離婚は、裁判をしないと達成できないことなのかを考え、検討していただければと思います。

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