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離婚から再婚、トラブルになるまで
【登場人物】
妻(主人公):田中 麻里(38)
夫:田中 大司(42)
息子(前夫との子ども):田中 海斗(12)
娘(現夫との子ども):田中 ルミ(5)
前の夫とは、大学卒業当時に結婚した。中学生のころから数えて8年。初めて付き合ったひとと結婚できるなんて夢のようだと思った。
実際、海斗を妊娠するまでは、夫婦のすれ違いもなかったように思う。
ただ、妊娠や出産を経て、私の価値観が変わった。海斗を守って生きていきたいと思ったし、実際海斗が一番大切な宝物になり、優先順位は当然海斗が一番になった。
元夫は私の価値観の変化や、急激に変わった環境に戸惑い、対応しきれなかったらしい。子ども優先の私と、父親になり切れない元夫のあいだには、次第に距離が空き、ケンカが増えた。
何度も話し合いを重ねてきたけれど、結局価値観の違いが浮き彫りになるだけで、どうにもならなかった。
どうしようもないことだけど、このまま仲が悪くなるよりはと、30歳になるとき離婚を決めた。
自分で仕事もしてるし、養育費のこともちゃんと取り決めたし、面会については、元夫と海斗が望んだときにできるようちゃんと話した。一般的に言えば円満離婚だったんだと思う。
シングルマザーとして忙しい毎日を送って1年。会社の人の紹介で、今の夫の大司と出会った。
夫は私のことを好意的に見てくれていたので、シングルマザーであること、子ども優先の生活なので、恋愛に対して比重を置けないことを正直に伝えた。
すると、気持ちは変わらないと言ってくれたので付き合ってみた。
大司は、海斗の気持ちを汲んで付き合いをしてくれた。3人で一緒に出掛けた。そんな風に交流が始まり、1年ほどしてプロポーズされた。
良い夫、海斗の良い父親になりたいと言ってくれたことが決め手となり、私はプロポーズを受けた。
大司は宣言通り、養子縁組の手続きをしてくれて、法的にも親子関係となった。二人の関係は良好で、何も問題ないように思えた。
けれど、しばらくして大司との子、ルミを産んでから二人の関係がおかしくなってしまった。
ルミが産まれてからしばらく、私はルミの世話にかかりきりになった。
そのころ、丁度海斗は小学生に上がった。保育園のときは、甘えただった海斗は、兄になった自覚をしたのか、率先してお手伝いをしてくれるようになった。
息子の成長を嬉しく思いつつも、育児に追われる毎日を過ごし、またたくまに時間が過ぎた。
ルミが3歳になるころ、私にもわかるくらい夫の海斗に対する態度が変わってきた。
夫にどうしたのかと尋ねたところ、何でもないと言うし、海斗に「ケンカしたの?」と聞いても、別に何でもないと言う。
海斗ももう小学校4年生だし、10歳の壁って話も聞く。ちょっとした反抗期なのかもと簡単に考えたのがいけなかった。
次第に海斗は、夫や私と話さなくなった。今まではやってくれてたお手伝いもサボるようになった。
夫は、海斗が反抗的な態度をとると、結構な剣幕で怒鳴るようになった。「ルミの兄ならもっとしっかりしろ」とか、「いつまでも甘えるな」とか。
夫の意見には一理あるけど、なんだかおかしいことになってきたと感じた。今までの夫だったら、海斗の言い分をしっかり聞いていたはずだ。
ルミの育児が大変で、海斗とふたりで話す機会を全然作っていなかった。それに海斗は聞き分けが良かったからと思ったけどそんなの言い訳だ。ちゃんと向き合わなければ、大変なことになる。そう感じた私は、海斗とふたりで過ごす機会を作ることにした。

子どもの扱いの違いで離婚することはできるの?
海斗と向き合うと決めたとき、なんとなく、夫がいるところで話しちゃいけない気がした。そこで、今までなあなあだった学校の宿題や、夕飯の手伝いを近くでしてもらうことで、話す機会を作った。
元来、海斗はとても素直な性格だ。はじめは、つっけんどんで反抗的な態度をとっていたけれど、繰り返すうちに態度が柔らかくなってきた。
やっぱり、会話が足りなかったんだと思い、無理に聞こうとせず、海斗のしゃべりたいことを好きにしゃべってもらった。
学校の授業のこと、友達のこと、サッカーに興味を持っていること。
それから…夫のこと。ルミが産まれてから、一緒に遊んでくれなくなったこと。態度が冷たくなったこと。嫌なことを言われるようになったこと。
小さい身体の中に色々溜まっていたことが分かった。夫はルミには優しいし、私に対する気遣いも変わらない。だから正直、私のいないところでそんな風になってるって分からなかった。
海斗から話を聞いて、夫とも話をしなくちゃいけないと思った。
平日だとゆっくり話せないから、週末子供が寝てから夫と話し合いの場を持った。海斗から聞いた話だということは伏せて、「最近、海斗への態度がきつくないか」と苦言を伝えた。
すると、夫はいつもと変わらない態度で、「海斗も大きくなったし、言うべきことは言わなくちゃダメだろ」と返してきた。
「でも、ルミとの違いがあんまりにもありすぎるよ。何が気に入らないの?」
「両方とも俺の子どもなんだから、気に入るとか気に入らないとかないだろ。しかもルミはまだ小さいし、女の子だ。海斗は大きいんだし我慢できるだろ。てか、何?なんか不満でもあるの?」
「一緒に遊んだり、会話したり。以前は海斗にやってたこと、全部ルミにしかやってないじゃん」
「なんの問題があるの?」
話が通じているようで通じてないように思えた。すっきりしないまま話し合いはお開きになった。
私が行動し出してから、夫は以前よりも更にルミと海斗を区別し始めた。
ルミには良くお土産を買ってくるのに、海斗には買ってこない。ルミのことは良く褒めるのに、海斗がテストで100点取っても、運動会で1位になっても褒めない。
大人にとったら些細なことかもしれない。でも子どもにとったら、大問題だ。
その度私が苦言を呈すのだけれど、彼は空返事ばかりして、海斗と向き合おうとしなかった。
それから2年間ほど経ち、夫は海斗を嫌う態度を隠さなくなった。海斗が夫に何を話しても無視するような態度を取る。
その癖、海斗の小さな失敗を挙げ連ねて暴言を吐くようになった。しかも、ルミは目に入れても痛くない様子でかわいがる。
兄妹間の扱いの格差は、もう区別じゃなくて、差別に近い。大切な自分の子どもをそんな風に扱われるのは限界だった。
海斗の今後を考えれば離婚した方が良い気がする。でも、ここでまた離婚ってできるのかな。
子連れ再婚で離婚を考えるひとは少なくない
子連れ再婚の夫婦のあいだに子どもができた場合、実子と継子のあいだに扱いの格差が生じることは少なくありません。
今回の主人公田中麻里さんは、それぞれの子どもへの格差を問題だと感じ、改善しようと努めていました。しかし、結果はご確認いただいた通り、残念ながら大司さんの意識を変えることができませんでした。
このような状況で再婚相手と離婚することはできるのでしょうか。
今回のような場合、協議離婚、もしくは調停離婚でなら離婚することが可能です。
協議離婚とは、裁判所を介さずに夫婦で話し合いを行い、離婚することを言います。
対して調停離婚は、裁判所に夫婦関係調整調停を申し立てて、裁判官や調停委員を交えて、話し合いを行い、離婚を成立させる方法です。
通常、夫婦間で話し合うことで離婚を成立させることを目指すのが一般的です。実際に、日本のおよそ9割の夫婦が協議離婚で成立させています。
しかしながら、麻里さんの場合、以下のような点で協議が難航する可能性があります。
- 海斗さんの養子縁組解消について
- 養育費
- 親権
再婚で連れ子を養子縁組にしていた場合、再婚相手と離婚しても、その子どもと再婚相手は、養子縁組を解消しない限り、法的に親子関係にあります。
離婚と養子縁組の解消は連動していないので、養子縁組を解消したい場合には、別途手続きが必要です。
しかしながら、養子縁組を解消すると、大司さんと海斗さんは法律上の親子関係ではなくなるため、大司さんに海斗さんの養育費の支払い義務がなくなるので注意が必要です。
また、大司さんは麻里さんと自身の子どもであるルミさんの親権を主張する可能性もあります。
このようなトラブルが考えられるので、夫婦間の協議でうまく折り合いがつかなそうなのであれば、早めに調停を申し立てることをおすすめします。


まとめ
今回は実際の子連れ再婚でトラブルが起きてしまった田中麻里さんの体験談をもとに、法的な部分について考えていきました。
次回は、麻里さんと大司さんが実際に離婚協議へ入ります。
どのような決着になるのか気になる方は下記リンクから確認してみてください。
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