離婚って夫婦が同意していれば、案外簡単にすることができます。
例えば夫婦双方が離婚に納得してるなら、極論婚姻届を提出した次の日に離婚することだってできます。
しかし、相手が離婚に同意してくれなかった場合はどうすればいいのでしょう。
今回は、離婚の同意が必要なときと必要ないときの離婚について深く考えていきましょう。
離婚は相手の同意を得て成立するのが基本
はじめに、離婚は夫婦の話し合いによって成立するのが基本です。
離婚は原則として、夫婦どちらかの一方の意思だけでは離婚することができません。
例えば、
- 夫が洋服や靴下を脱ぎっぱなしにする
- 食器の洗い方が雑
- 洗面台を汚くする
上記のような理由の場合、基本的には相手の同意を得なければ離婚することができないことを頭に入れておく必要があります。
これらは、一見くだらない理由にも見えるかもしれません。
しかし、夫婦生活を続けているうえで、何度注意しても改善しない場合、ささいなことでもうんざりして嫌気が差すこともあるでしょう。
このようなケースでは、まず夫婦の話し合いで離婚を成立させることを目指しましょう。
話し合いの中で、生活に対する価値観や考え方が違うということが浮き彫りになれば、相手方から離婚の同意を得やすくなります。
困ってしまうのは、相手の同意を得られず離婚できないことです。
相手に対しての日々の不満が溜まっている場合、「シロクロつけたいから、裁判で決着つけましょう」と思ってしまう方もいるでしょう。
しかし、日本の法律では離婚に関してのトラブルを、すぐに裁判で決着つけることはできません。
ということは、相手が離婚を認めてくれるまで、根気よく伝えるしかないのでしょうか?
相手方に理由ない場合は離婚調停を利用する
夫婦の双方に離婚の原因となる理由が無く、夫婦の話し合いでもうまくいかない場合、家庭裁判所にいって離婚調停を申し立てる方法があります。
離婚調停は、正式名称だと、「夫婦関係調整調停(離婚)」と言います。
離婚調停は、裁判所が夫婦のトラブルを仲裁してくれる制度です。
調停委員という役目のひとが夫婦それぞれから事情聞き、妥協案を提案し、話し合いによって夫婦のトラブルの解決を目指していきます。
離婚調停を申し立てるにあたって、「不倫した」とか「DVを受けた」と言った理由は必ずしも必要ありません。
夫婦の性格が合わない、価値観が合わないと言った理由でも調停することはできます。
ただし、裁判所に調停を申し立てる手数料を支払う必要があります。
また、裁判所は土日祝日等がお休みなので、平日に時間をとって調停を行う必要があります。
更に言えば、調停が初回で終わる確率はかなり低く、開かれる頻度は1か月~2か月に1度くらいのペースです。
調停を申し立てれば、必ず離婚できる時期が早まるとは言えません。
かえって、夫婦の話し合いを行ったときのほうが、離婚時期を早めることができるケースもあるので、調停を行う必要があるのかしっかり考えておくと良いと思います。
【調停離婚】離婚を調停で成立させるメリットとトラブルについて確認しよう
相手の同意を得なくても離婚が成立する場合
相手の同意を得ず、離婚を成立させるというのは、イコール裁判を起こして離婚の可否を問うということになります。
前述しましたが、離婚裁判は誰でも起こせるものではありません。
離婚裁判を請求できる条件として、下記のような理由が必要になります。
- 離婚調停を行い不成立になった
- 民法770条で定められている裁判上の離婚の理由に当てはまること
離婚調停を行い不成立になった
日本の法律では、離婚裁判を請求する前に、離婚調停を行う必要があります。
日本では、夫婦のトラブルはなるべく話し合いで解決すべきという考えを採用しています。
このような考え方を調停前置主義と言います。
そのため、離婚裁判を請求するには、離婚調停を行い、かつそれが不成立であることが条件となります。
民法770条で定められている裁判上の離婚の理由に当てはまること
離婚裁判を請求するには、民法770条で定められた、下記の理由のいずれかに当てはまる必要があります。
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
といっても、ぼんやりとした表現でわかりにくいかもしれません。
下記にそれぞれ具体例を挙げてみましたのでご確認ください。
■配偶者に不貞行為があったとき。
例:夫が会社の同僚とホテルにいき、肉体関係を持った。
不貞行為とは、肉体関係のある不倫のことを指します。
肉体関係とは、挿入行為だけでなく、口や手等を使った前戯も対象です。
■配偶者から悪意で遺棄されたとき。
例:夫の稼ぎで生活をやりくりしているのにお金を渡してくれない。
悪意の遺棄の悪意とは、一般的な意味である、悪い感情をもって、相手を害すという意味とは少し違います。
法律用語での悪意とは、「ある事実や事情を知っている」という意味で使われます。
今回の例の場合、家計は夫の稼ぎによって成り立っており、夫はお金を渡さないことで生活が成り立たなくなることを知っています。
このように生活が破綻することを知っていながら、お金を渡さない、勝手に別居する等を行ったとき、悪意の遺棄とみなされるケースが多いです。
■配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
例:妻が3年前に旅行へいき、そのまま音信不通となった。当時旅行先で事故があり、巻き込まれた可能性がある。
3年以上生死不明とは、単に連絡が取れない状態というような生存が分かっているときには該当しません。
文字通り、配偶者が3年以上生死不明の状態が続いた場合のことを指します。
■配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
例:妻が重い統合失調症にかかってしまい、意思疎通がとれない。医師には回復の見込みがないと言われた。
配偶者が重い精神病等をわずらい、回復が見込めない場合のことを指します。
この事由に当てはまるには、精神病によって夫婦間の意思疎通が取れないことと、この先回復が見込めないということが重要になります。
したがって、回復の見込みのある病、例えば依存症等は、この事由に含まれる可能性は低いです。
■その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
例1:妻が買い物依存症で生活が破綻しそう。
例2:夫から「死ね」等の暴言を吐かれている。
例3:夫と離婚前提に10年以上別居を続けている。
例をご確認いただければお分かりの通り、その他婚姻を継続し難い事由には、さまざまなものが考えられます。
離婚の請求イコール離婚できるわけではない
離婚調停が不成立で、民法770条の5つのいずれかの離婚事由に当てはまっていた場合、離婚裁判を請求することができます。
しかしながら、離婚裁判の請求ができるイコール必ず離婚できるというわけではありません。
裁判では、相手方が離婚原因となる行為をしたという立証を行わなければ、勝訴することはできません。
例えば、妻が夫の不貞行為を理由に離婚裁判を起こしたとします。
妻は不貞行為を理由に離婚したいと主張するでしょう。
しかし夫も裁判で不利な立場になりたくないので、当然妻の主張に対し、反論してきます。
その反論を覆すためには、不貞行為があったという立証、つまり証拠や証人が重要になります。
仮に妻側が何も証拠を用意しない状態で不貞行為を主張し、夫が証拠を用いて不貞行為がなかったと反論すると、裁判所側は証拠のある夫の主張を聞き入れる可能性が高いです。
したがって離婚裁判の請求が通った場合には、勝訴するために、証拠等を準備する必要があります。
裁判の請求が通ったからと言って、必ずしも裁判を有利に進められるわけではないことを念頭に置いておきましょう。
【裁判離婚は時間がかかる】離婚訴訟になった場合の3つの終結の仕方
相手の同意を得ず離婚をすること、つまり裁判で離婚を成立させるにはたくさんのプロセスを経なければなりません。
裁判離婚というと、なんとなくすぐに決着がつくというイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、実際は協議や調停で離婚するよりも時間がかかる可能性が高いので注意しましょう。
まとめ
今回は、夫婦の話し合いでの離婚や相手の同意を得なくても良い離婚について解説していきました。
夫婦の話し合いで離婚を成立させるのが、早い時期に離婚できる可能性が高いです。
しかし当事者同士の話し合いだと、感情的になり進まない場合もあるので、早く離婚したいという方は、弁護士に相談しても良いかもしれません。
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