離婚を意識し、インターネットで「離婚」について調べると、「有責行為」とか「法定離婚事由」といった言葉を目にする機会があると思います。
しかし、実際どういう行為のことを有責行為や法定離婚事由と言うのでしょうか。
今回は有責行為や法定離婚事由について確認していきましょう。
有責行為と法定離婚事由の意味は同じ
離婚を意識した場合、有責行為と法定離婚事由等の言葉は、良く目にする言葉だと思います。
ふたつの言葉に意味の違いはあるのでしょうか?
- 有責行為
- 法定離婚事由
- 離婚裁判ができる理由
離婚で検索するとこれらの言葉が良く出てくると思いますが、3つの言葉は、同じ意味です。
これらは民法で定められている、「法律上の離婚」を元にしている言葉です。
本記事では、「有責行為」で統一したいと思います。
有責行為とは具体的にどのような行動なのか解説していきましょう。
有責行為に当たる具体的な行動とは?
有責行為とは、簡単に言ってしまえば、その行動によって夫婦関係が破綻した理由のことを言い、離婚裁判を請求できる理由となります。
有責行為は、民法770条で以下のように定められています。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上生死不明
- 配偶者が強度の精神病で回復を見込めない場合
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
少し難しいと思いますので、それぞれ例を交え、解説させていただきます。
1.不貞行為
不貞行為とは、いわゆる肉体関係を含んだ不倫のことを指します。
キスやハグ、2人きりでの食事等は、不貞行為には該当せず、次のような行為が配偶者にあった場合、不貞行為として認められます。
- 妻が夫以外の男性と性行為を行った
- 夫がホテル等にデリヘルを呼び、挿入行為はないが、射精を伴う行為を行った
- 夫が妻以外の女性と不倫関係となり、ラブホテルに行った
不貞行為が認められる行為は、何も挿入だけではありません。
挿入までに至らずとも、射精を伴う行為もまた、不貞行為として認められる可能性が高いです。
また、ラブホテルに行く行為も不貞行為として認められます。
ただし、ビジネスホテルや民宿等の宿泊施設は、含まれません。
というのも、通常の宿泊施設は、利用目的が必ずしも性行為目的ではないからです。
ラブホテルは風営法で営業許可を取る必要があり、主な利用目的が性行為を行うためとなります。
したがって、夫や妻が異性とラブホテルに行った場合は、不貞行為となります。
2.悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、その行動をすれば夫婦関係が破綻することを知っていて、行うことを指します。
かなり抽象的な表現なので、具体例をご確認ください。
- 夫の給料で暮らしているのにも関わらず、夫が突然家を出ていった
- 夫の給料が無いと生活できないのに、生活費を渡してくれない
- 夫の給料で暮らしているのに、相談なしに突然仕事を辞めてそのまま就職しない
悪意の遺棄は、民法で定められている夫婦の同居・協力・扶助の義務に違反した場合、該当するものとなります。
ただし、線引きが非常に難しく、「家事や育児を手伝わないけど、生活費を稼いでいる」、「生活費は稼いでいないけど、家事や育児を行っている」等、役割分担をしている場合には、悪意の遺棄にはならないケースが多いです。
3.3年以上生死不明
配偶者が3年以上生死不明の状態は有責行為となります。
生死不明状態とは、文字通り、生きているか死んでいるかもわからない状態で、「連絡はつかないけど生きていることは知っている」という状態では当てはまりません。
生死不明状態を証明するものとして、警察に捜索願を届けたり、事故や災害が理由の場合には、その証明書が必要となります。
4.配偶者が強度の精神病で回復を見込めない場合
配偶者が強度の精神病で回復を見込めない場合、有責行為となります。
この事由にあてはまるためには、配偶者が以下のような状態である必要があります。
- 精神病が理由で夫婦の意思疎通がまったく取れていない状態である
- 精神病の状態が、快方に向かう見込みがない
なお、これらの条件を満たしていても、離婚後相手方の生活が成り立たないと見込まれた場合には、裁判離婚を請求したとしても、離婚できないケースもあります。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由
その他婚姻を継続し難い重大な事由とは、今まで解説した1~4の理由以外で夫婦関係が破綻に足る重大な事由のことを指します。
かなり広範囲でイメージしにくいと思いますので、下記に具体例を挙げました。
- 夫が暴力をふるってくる
- 妻がモラルハラスメントをしてくる
- 夫が痴漢で捕まり、余罪がかなりあることがわかった
これらのような理由は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として、離婚が認められる可能性が高いです。
なお、双方に理由がない場合でも、別居が長期にわたったケースで、事実上夫婦関係が破綻しているとして、離婚が成立する場合もあります。
有責配偶者になる場合のデメリット
次の理由で有責配偶者となった場合、大きなリスクが発生する可能性があります。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
有責配偶者にはどのようなデメリットがあるのか、具体的に確認していきましょう。
慰謝料が請求される可能性がある
不貞行為や、悪意の遺棄等の理由で、有責配偶者となった場合、慰謝料を請求される恐れがあります。
離婚における慰謝料は、主に有責行為によって精神的苦痛を受けたかどうかが焦点となります。
慰謝料を請求された場合、以下のような状況ですと、慰謝料が高額になる傾向があります。
《不貞行為の場合》
- 不貞行為の証拠を相手方が持っている
- 婚姻期間が長い
- 不貞行為の期間が長い
- 不貞行為の内容が悪質である
- 不貞行為の相手が妊娠している、または子どもがいる
《悪意の遺棄の場合》
- 家計にお金を入れず貯め込んでいる
- 何も言わず家を出て、お金を入れない
- 家計にお金を入れず、高級な自動車や宝石、ブランドバッグ等を購入し、散財している
《その他婚姻を継続し難い重大な事由の場合》
- 暴力をふるい、その診断書を持っている
- 暴力やモラルハラスメントについての詳細な記録がある
- 暴力やモラルハラスメントによって、うつ病等を発症した
これらに当てはまる場合、精神的な苦痛が大きいとされ、慰謝料の金額が高くなる傾向にあります。
また、有責配偶者の収入が多かったり、社会的地位が高い場合も、慰謝料が高くなる傾向にあります。
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離婚調停で不利になる可能性がある
離婚は、夫婦同士の話し合いで折り合いがつかない場合、いきなり裁判をすることはできません。
原則として、裁判の前に離婚調停で話し合いを行う必要があります。
このような仕組みを調停前置主義と言います。
調停は夫婦の一方が家庭裁判所に申立てをすることによって行うことができます。
調停では夫婦の調整役として、調停委員が夫婦の話し合いを取り持ちます。
調停を有利に進めるにあたって、調停委員を味方につけることが非常に大切になります。
ただし、有責配偶者の場合、調停委員からの心象が悪くなる可能性が高いです。
調停委員からの心象が悪いと、調停で自分の望む結果を出しにくくなります。
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離婚裁判を自分から請求することができない
離婚調停が不調に終わり、離婚することができなかった場合、裁判で離婚の可否を争いたいと考える方もいらっしゃると思います。
しかし、有責配偶者は離婚裁判の請求を行うことはできません。
そのため、調停を再度行い、夫婦で話し合いをするか、夫婦関係の破綻が認められるまで別居する等の手段を講じるしかなくなります。
どちらにしても、離婚が認められるまで、かなりの期間を要さなければならないリスクがあります。
このように有責配偶者となった場合、かなり不利な立場になります。
【裁判離婚は時間がかかる】離婚訴訟になった場合の3つの終結の仕方
まとめ
今回は、有責行為について詳しく解説しました。
離婚において有責行為があるかどうかは、離婚を成立させるうえで非常に大切です。
調停や裁判になった場合、有責行為を立証できるかどうかで、有利にことを進めるかどうかが異なります。
一方で、ご自身が有責配偶者となった場合、対応を誤ると更に状況が悪化してしまう可能性があります。
したがって、調停や訴訟等になった場合には、弁護士に相談した方が良いでしょう。
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