不倫した配偶者やその相手に、後悔を味あわせるため「制裁したい」、「復讐したい」と考える方は少なくないと思います。
しかしやり方を間違えると、むしろ制裁を加えた側が不利になってしまう可能性があります。そのため、今回は配偶者や不倫相手にやってはいけない制裁について解説していきたいと思います。
不倫調査編は以下のリンクをご確認ください。
【不倫した配偶者に制裁?】不倫した配偶者や不倫相手にやってはいけないこと(不倫調査編)
- 制裁は法律の範囲内で行わないと不利になる
- 配偶者や不倫相手の個人情報を拡散する
- 不倫相手の情報をSNS等を使って周囲にバラす
- 不倫したことを職場等に伝えると脅して慰謝料交渉をする
- 不倫した配偶者や不倫相手に制裁を加えたいのなら弁護士に相談するべき
- まとめ
制裁は法律の範囲内で行わないと不利になる
配偶者に不倫された場合、慰謝料という制裁だけでは腹の虫がおさまらないとお考えの方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。自分の家庭を壊されたのだから、「不倫したふたりに社会的制裁を加えたい」と思ってしまうのは無理もありません。しかし、法律の範囲を超えた制裁は、現代の日本では許されていません。復讐や制裁したことでかえって不利な立場に置かれてしまう可能性も十分考えられます。
法律に触れてしまう恐れのある制裁として、以下のようなものが考えられます。
- 配偶者や不倫相手の個人情報を拡散する
- 不倫相手の情報をSNS等を使って周囲にバラす
- 不倫したことを職場等に伝えると脅して慰謝料交渉をする
これらの行為により、反対に相手から損害賠償請求されたり、最悪の場合刑事罰を受けたりする可能性があります。怒りの感情のあまり制裁を行うと、その場はすっきりするかもしれませんが、後で取り返しのつかないことになりかねません。
具体的にどのような点が問題なのか、それぞれ確認していきましょう。
配偶者や不倫相手の個人情報を拡散する
不倫の制裁としてよく見かける行為には、大きく以下の2つのパターンがあります。
- プライバシー権の侵害
- 守秘義務違反
それぞれどのような行為を指すのか、詳しく確認していきましょう。
プライバシー権の侵害
不倫調査や話し合いの中で知った配偶者や不倫相手の情報を拡散することにより、プライバシー権の侵害で、訴えられる可能性があります。
具体的なプライバシー権の侵害にあたる行為として、インターネットに実名、住所、電話番号をさらしあげることが考えられます。また、名前を一部伏せ字にしていたり、イニシャル表記等を使って実名をさらしていなくても、記載された内容によって容易に個人が特定できると推認される場合には、プライバシー権の侵害が成立するケースもあります。
ちょっとした制裁のつもりが、反対に相手方から損害賠償請求されてしまうという事態を招きかねないのでご注意ください。
【不倫調査は慎重に】不倫調査は方法を間違えると、犯罪行為になるかも!?
守秘義務違反
慰謝料を取り決めた離婚協議書や不倫相手との示談書を結び、そのなかに「守秘義務」の条項があるにも関わらず、個人情報を拡散してしまうと債務不履行で損害賠償請求される恐れも否定できません。
離婚協議書や示談書は、契約書の一種です。お互いがそこで取り決められた内容を守る必要がありますのでご注意ください。
当然不倫した配偶者や不倫相手が加害者ですが、加害者だからといって、プライバシー権がなくなったり、双方が納得して結んだ契約を一方的に破ったりしていいという理由にはなりません。
不倫の制裁を考えるのであれば、プライバシー権の侵害や守秘義務違反等の法律違反しないような方法で行う必要があります。
不倫相手の情報をSNS等を使って周囲にバラす
不倫の事実をSNS等を使って周囲にバラすことは、次のようなトラブルが起こりえます。
- プライバシー権の侵害
- 債務不履行
- 民事上の名誉毀損
- 刑事上の名誉棄損罪
プライバシー権の侵害と守秘義務違反については、前章で解説いたしましたので、今回は名誉毀損について考えていきましょう。
最近、SNS上での有名人への誹謗中傷で話題になっているので、「名誉毀損」という言葉を聞いたことがある方も多くいらっしゃるのではないかと思います。名誉毀損は、バラす内容が嘘か本当かは関係なく、相手の名誉に関わることを公然の場で指摘し、社会的地位を低下させるような行為を指します。意外と思われるかもしれませんが、例え事実だったとしても、相手の名誉を汚すような行為はしてはいけないのです。
不倫をSNS等でバラした場合、民事上での名誉毀損、刑事上での名誉毀損とふたつの意味で制裁される可能性があります。
民事と刑事の名誉毀損の違いは以下のとおりです。
■民事上の名誉毀損と刑事上の名誉毀損の違い
損害賠償請求(慰謝料) | 刑罰 | 前科 | |
民事上の名誉毀損 | あり | なし | なし |
刑事上の名誉毀損(※) | なし | 3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金 | あり |
※刑事上の名誉毀損は、親告罪となります。親告罪とは被害者側が告訴する必要のある罪のことです。
不倫を周囲にバラすと、このような不利益を被る可能性があります。民事上の名誉毀損で訴えられて、損害賠償金を支払ったとしても、相手方に強い処罰感情があると、告訴されて刑事上の名誉毀損の責任も負うリスクが生じます。
刑事上の名誉毀損で有罪となった場合、それが罰金刑だったとしても前科がつきます。
前科があることは今後の人生に大きな不利益をもたらす可能性がありますので、ご注意ください。
不倫したことを職場等に伝えると脅して慰謝料交渉をする
不倫したことを職場等に伝えると脅して、慰謝料交渉を行うのは、場合によって脅迫罪や恐喝罪に当たることがあります。また、脅迫や恐喝によって結んだ示談書や離婚協議書等は、相手の意思に関係なく無理やり取り決められたものとして、その内容は無効となります。
脅迫罪と恐喝罪には、以下のような違いがあります。
■脅迫罪と恐喝罪の違い
罪になる行為 | 罰則 | |
脅迫罪 | 生命や身体、名誉や財産等に対して害を加えることを告知し、畏怖を与えること | 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
恐喝罪 | 暴行や脅迫を用いて怖がらせて、金品等を奪うこと | 7年以下の懲役 |
上記を確認いただくとお分かりのとおり、脅迫罪は、暴力等が無くても、「示談書にサインしないと、会社や家族にバラしてやる」といった言動でも成立する可能性があります。一方で、恐喝罪については、「示談書にある金額を支払わないと、会社や周囲にバラしてやる」といった言動を相手に対し行い、実際に金銭を脅しとった場合、成立する可能性があります。
不倫した配偶者や不倫相手との示談等の交渉の場では、「裏切られた」という思いが大きくなり、感情的になってこのような言動をとってしまいたくなるかもしれません。特に、話し合いが難航していたり、相手の態度が悪いと脅しのような発言をしたくなったりするのも無理はありません。
しかし、脅迫や恐喝めいた発言をしたことが露見した場合、今まで不倫の被害者であったのに、加害者の立場になってしまうことがあります。
怒りや憎しみ等の感情が湧くのは仕方ないですが、相手方と話し合いや示談交渉を行う時には、発言に十分ご注意をください。
不倫した配偶者や不倫相手に制裁を加えたいのなら弁護士に相談するべき
不倫した配偶者や不倫相手に制裁を加えたいと思うのであれば、まずは弁護士に相談するべきです。「不倫したんだから当然これくらいの制裁は受けるべき」という考えで、不倫の事実をSNS等に拡散したり、脅迫めいた示談交渉等を行ったりすると、かえって不利な立場になりかねません。
しかし、弁護士に相談すれば、自分が望んでいる制裁にどのようなリスクがあるのか等しっかり答えてくれ、どのようにすべきかアドバイスをしてくれます。
また、配偶者や不倫相手に対する話し合いも、弁護士がご自身の代わりに交渉を行ってくれることによって、感情的になって不利な発言をするリスクも回避できます。
まとめ
今回は、不倫した配偶者や不倫相手に対してやってはいけない制裁について詳しく解説していきました。「不倫は心の殺人」といわれるほどの最低な行為で、制裁したいという感情を覚えたとしても致し方ないと思います。しかし、いくら被害者といえども、法律で許される範囲を超えてしまうと大きなリスクが生じます。
したがって、制裁を加えたい場合には、具体的にどのような範囲であれば許容されるかを弁護士に相談した方が良いでしょう。
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