【相談事例】事実婚を解消したいけど慰謝料・養育費は請求できるの?

事実婚とは婚姻届は出していないけれど、事実上の夫婦のことを指します。

例えば、夫婦が別々の姓を名乗りたいときや、「夫婦」という法律上の関係に囚われないで、その人たちの思う夫婦関係を築きたい方等、事実婚を選択したいと考える方は少なくありません。

今回は、事実婚を解消したい女性の相談例と弁護士の見解を紹介したいと思います。

【夫の不倫が発覚】事実婚を解消したいけどどこまでの権利が保障されているの

 

主人公:南(39)

夫:律(40)

息子:道也(14)

 

私と夫の守は20歳のときから同棲し始めてから以来、事実婚の状態です。

何で籍をいれなかったのかというと、私自身が自分の名字を変えたくなかったことと、銀行やら区役所やら保険関係の名字変更の手続きが面倒だと感じたからです。

律に「名字を変えたくないし、入籍してからの手続きが面倒なので事実婚にしたい」と伝えたところ、「ずっと一緒に住んでるし、不便を感じないから」といってくれたので、籍をいれませんでした。

日常生活を送るうえで、事実婚が不便なことはありませんでしたが、道也を妊娠したときの病院での手続きは大変でした。

事実婚の場合、病院によっては療養看護の同意権が無かったり、律や私に何かあったとき、相続権が認められなかったりすることは覚悟のうえで、事実婚を選んだので自己責任だと思いました。

ただ息子の道也に関しては、何か不測の事態が夫に起きてもいいようにと、妊娠が発覚してすぐに胎児認知を行いました。

幸いなことに、何も問題なく生まれてきてくれたので良かったです。

息子の籍自体は、私の方に入れました。

 

息子が生まれてからも私たち夫婦は、平穏に暮らしていきました。

喧嘩はあってもちゃんと話し合いをしてすり合わせながら、我ながら理想の夫婦のかたちなのではないかと思っていました。

私たちの生活が崩れたのは、夫の浮気が発覚してからです。

息子の道也が中学生に上がったときに、それまで育児を理由にセーブしながら続けていた仕事にキャリアアップを目的として本腰を入れるようになりました。

夫も道也も賛成してくれて、残業は増えたものの充実した日々を送っていました。

仕事に本腰を入れるようになってから1年、道也から夫に関しての相談されました。

一体何事なんだろうと思ったところ、私が出張で家を空けているとき、夫の帰りが朝方近くになることがたびたびあるというのです。

月に1,2回のペースで出張をしていたので、具体的にどれくらいの頻度なのかを道也に聞くと、月イチは必ずだそうで、朝方でなくても帰りが0時を回ることがほとんどといわれました。

しかも、口止め料として道也に5000円くらいお金を渡してくるのだそうで…。

そりゃ妻がいなくて羽目を外したい気持ちはわかります。

でも数か月に1回単位でなく、頻繁過ぎるので不審に思った私は、夫に出張と嘘をついて、確認することにしました。

通販で買ったGPSを自宅の自動車に取り付け、後を追ってみると…。

退社後、夫の会社の最寄り駅から2つ離れた駅で女性を乗せ、国道沿いにあるラブホテル、「アバンチュール」に入っていきました。

この時点で、怒鳴り込みたい気分でいっぱいでしたが、証拠を優先し、夫と浮気相手が恋の冒険を終えるまで待ち、出てくるところを写真に収めました。

20時に入って、出てきたのは朝方4時でした。

中学生とはいえ、息子を放っておいてナニしてんだこの野郎!!!ぶん殴りたい気持ちでしたが、ここで修羅場になっても仕方がないと思い、先回りして帰宅しました。

私が帰宅してしばらくして、良人も帰宅してきました。

「お帰りなさい」と玄関で夫に向かっていうと、出張中のはずの私が自宅にいることに驚いた夫は、「ひえ」っと情けない声を出しました。

考える間を与えず、私は夫をリビングに連れていき、「朝帰りってどういうこと?」と聞くと、「友達と飲んでた」と嘘をついてきました。

「朝まで飲んでたの?その割にはお酒臭くないね。てか、飲んでて車乗ったら飲酒運転だよね?そんなモラルないひとだったっけ?恋の火遊びしてたんでしょ??ホテルアバンチュールで!」

この一言で夫は観念したようで、蚊の鳴くような声で浮気を認めました。

「ごめんなさい」

詳細を聞くと、浮気相手は、なんと道也が仲の良い友達の母親だそうで、部活の懇親会で意気投合して浮気関係になったんだとか。

子ども、学校、周囲に知られるリスクを考えない夫の自分勝手な行動に愕然としました。

事実婚解消は当然として、解消の原因はそもそも夫にあるので慰謝料を請求したいと思っています。

なお、周囲にバレるリスクを考えて、泣き寝入りであれですが、相手の女性へ慰謝料を請求することは現状考えていません。

また、今後の道也にかかる養育費についても請求したいのです。

法定婚とは異なる部分もあるのでご教示頂けると幸いです。

 

弁護士の見解

事実婚は、婚姻届を提出する法定婚を公式とすると非公式の夫婦関係といえます。

事実婚の場合、その妻は夫が死亡した場合の相続権がなかったり、警察で保護された時の身元引受人や医療行為における同意ができない可能性があったりします。

しかし一方で、事実婚であっても不貞行為による慰謝料請求や財産分与といった権利については、法定婚の夫婦の離婚と同様、認められます。

これを念頭に、今回も南さんが懸念されている「慰謝料」と「養育費」について詳しく解説していきましょう。

 

夫:律さんの浮気に関する慰謝料について

事実婚の夫婦の一方が、パートナー以外の異性と肉体関係を伴う浮気をした場合、「不貞行為」になります。

ただし、同一生計で暮らしている等、夫婦としての実態がなければ、恋人関係とみなされて慰謝料が請求できない可能性もあるので注意が必要です。

今回の南さんの場合、同居期間は20年、更にお2人のあいだに、道也さんをもうけており、更にいえば律さんは認知もしているので事実婚として認められると思います。

また、お話しを聞く限り、南さんは律さんと不貞行為相手がラブホテルに出入りしている写真を持っているので、不貞行為を立証できる可能性が高いでしょう。

不貞行為の場合の慰謝料は、悪質性や律さんの経済能力等、さまざまな要因で前後しますが、大体100万円から300万円になります。
離婚の慰謝料計算式。増額や請求の仕方もここでわかる【事例付】 夫婦同士で話し合って意見が食い違う場合には、お住まいの地域を管轄する家庭裁判所に内縁関係調整調停を申し立てても良いかもしれません。

内縁関係調整調停とは、法定婚の夫婦関係調整調停(離婚)と同じような制度で、慰謝料の他にも財産分与や養育費といった内容を話し合うことができます。

 

律さんに道也さんの養育費を支払う義務はあるのか

養育費は、子どもと生活を共にしていない法律上の親が、子どもの扶養を目的として支払う義務のあるお金です。

法定婚の場合、婚姻生活中に産まれた子どもの父親は自動的に夫婦の子どもとしてみなされるので、別途手続きは必要ありません。

事実婚の場合、父親がその子どもの認知をしているかどうかで法律上の父親かどうかが決まります。

今回の南さんの場合、道也さんを妊娠したときに「胎児認知」をしています。

そのため、南さんと律さんが事実婚関係を解消したとしても、道也さんが律さんの子どもであることに変わりありません。

そのため、当然律さんは道也さんに対して養育費を支払う義務があります。

具体的な養育費の金額については夫婦の話し合いによって自由に決めることができます。

しかし、律さんの収入に対してあまりに大きすぎる養育費を取り決めた場合、滞納されるリスクがあるので、裁判所で公表している養育費算定表で相場を確認してみると良いでしょう。

なお、養育費の支払い率は非常に低いです。

事実婚の夫婦であっても、法定婚で離婚した夫婦と同様、養育費の取り決めを公正証書として残すことができます。

そのため、取り決めた内容は公証役場で強制執行認諾文言付公正証書にして、万が一滞納があっても強制執行等の手段が取れるようにしておくことが大切です。
【離婚するなら必須?】自分で書いた離婚協議書と公正証書の違いについて

まとめ

今回は事実婚の夫婦が関係を解消した場合の慰謝料や養育費について解説してきました。

事実婚の夫婦は、ある一定の要件を満たせば、法定婚と変わらない権利を持てる一方で、手続きが異なる場合もあります。

そのため、現在の妻、夫と関係を解消している場合にはどんな手立てがあるのか等、一度弁護士に相談してみると良いでしょう。

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