LINE、Twitter、Instagram、TikTok、Discord等、スマホの普及とともに、SNSを利用する方が増加しました。
SNSの用途は共通の趣味を見つけたり、情報を収集したり、日々感じる喜びや不満を発信することができます。
しかし、一方で使い方を誤ると実生活にも支障が出るトラブルに発展することがあります。
今回は、SNSをきっかけに夫から離婚を切り出された妻の相談例とそれに関する弁護士の見解を紹介していきたいと思います。
【夫にかまってほしい】SNSの投稿で夫から離婚を切り出された
妻:祥子(33)
夫:仁(33)
私は昔から結婚に夢がありました。
多分両親が結婚しても恋人同士みたいな関係であったからだと思います。
両親は子どもの前でも、「好きだよ」とか「愛してるよ」とか平然と伝えていたし、私が中学生に入ると、毎月デートの日を作って2人で出かけたりしていました。
私は、そんな2人が憧れで、自分が結婚する相手は父のように、きちんと愛情表現してくれるひとがいいと思っていました。
私の夫の仁との結婚の決め手は、愛情をストレートに表現してくれるひとだったからです。
プロポーズのときは、「手がしわくちゃになって年をとっても手をつないで歩きたい」と私の理想の結婚像に近い結婚観を持っているのでこのひととなら理想の夫婦生活が送れると思っていました。
実際、結婚してしばらくは毎月デートに行ったり、手をつないだり、恋人のときと変わらない生活をしていて幸せでした。
けれど、そういう幸せな時間て長く続かなくて、夫は私より仕事を優先するようになりました。
だから、私は憂さ晴らしにTwitterで夫に対する愚痴や、夫婦生活の不満、日常のことなんかを頻繁に呟くようになったのです。
私のTwitterアカウントは、学生の頃から使ってるやつで、フォロワーにはリアルの友人や夫の友人も含まれています。
でも、みんな自分の生活に忙しいだろうし、私のつぶやきなんか大したことないと思っていました。
夫との生活を円満に過ごすため、憂さ晴らしをするツールとしてTwitterを使ってたら、夫から「投稿内容がひどい」といわれ、やめてくれないなら離婚も視野に考えているといわれました。
あり得ない…。
夫的に一番許せない投稿は、性生活のことらしいです。
でも、性生活のことなんて高い頻度で書いているわけじゃありません。
「仲良し日だから、きわどい下着装着中」とか写真を投稿したり、「若いころは朝までだったけど、現在の夫は1回でギブアップ」とか、「自己処理してるくせに私の相手をしてくれない」とか誰でも投稿しているようなことです。
実際に検索すれば、私よりきわどい写真なんていくらでも出てきます。
後は、最近性生活の頻度が月イチとかなので、「さみしい」とか、「仲良くしてくれるって言ったのに」と愚痴る程度。
こんなのみんなやってると反論すると、「みんなって誰だよ。というかこういう不満を投稿するなら、自分の顔出してる写真とか見るひとが見たらわかるような写真とか個人が特定できるようなものと一緒にするなよ。アカウント分けるなり愚痴吐き出したいなら鍵アカにするなり、やりようがあるだろ」といわれました。
「そんなこといわれたって、どうせ誰もみてないでしょ。本名だしているわけじゃないし、気にしすぎ。そんなことでいちいち離婚しようと思ってるの?大体私がTwitterで愚痴投稿するようになったのって、仁のせいじゃん。私のこと大切にしてくれるっていったのに、全然大切してくれないから、愚痴ったんじゃん。私に謝ってよ!」と怒ると夫は呆れたように、「逆ギレかよ」といわれました。
私は夫の態度が私の理想とする夫婦像じゃないから愚痴るようになったんです。
最初だけ優しくて後は、態度が普通になるなんてひどいです。
夫が悪いのだから、有責配偶者になるはずです。
ネットで調べたら有責配偶者から離婚することはできないはずです。
それなら夫は離婚を切り出せないですよね。
仮に離婚するにしても、結婚したときに「幸せにする」という誓いを破ったのだから、慰謝料貰えますよね?
私の考えはおかしいのでしょうか。
弁護士の見解
相談者の祥子さんは、SNSの投稿内容を理由に夫の仁さんから離婚を切り出されました。
今回は、以下の2つに焦点をあてて考えていきたいと思います。
- 祥子さんの投稿内容は裁判上の離婚事由にあたるのか
- 結婚の誓いを破ったら慰謝料が発生するのか
祥子さんの投稿内容は裁判上の離婚事由にあたるのか
はじめに祥子さんのSNS内容が、裁判上の離婚事由にあたるのかどうかを考えていきましょう。
裁判上の離婚事由とは、以下のような内容を指します。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 3年以上生死不明
- 配偶者が強度の精神疾患で回復が見込めない場合
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
SNS上で夫婦の性生活がわかるような内容を投稿することが上記の離婚事由にあたるかといえば、その可能性は低いと思います。
一方で、祥子さんの「夫の態度が私の理想とする夫婦像じゃない」という理由で夫の仁さんが有責配偶者になることもありません。
有責配偶者とは、先程紹介した裁判上の離婚事由に該当する言動を行ったひとのことを指します。
仁さんの態度が、祥子さんの理想像に当てはまらないからといって、ただちに夫婦関係を破綻させるような行為とはいえません。
また、祥子さんは有責配偶者が離婚を切り出すことができないといいますが、正確には有責配偶者から離婚裁判の提起を起こせないのであって、離婚を切り出すこと自体は可能です。
また、切り出すことだけではなく、離婚調停についても有責配偶者側から家庭裁判所に申し立てることもできます。
【判例からみる】有責配偶者からの離婚は絶対に認められないのかを考えよう
結婚の誓いを破ったら慰謝料が発生するのか
離婚における慰謝料は不貞行為やモラルハラスメント等によって精神的苦痛を受けたときに請求することができます。
祥子さんがいう、「結婚の誓いを破った」ことで離婚した場合、仁さんに対して慰謝料を請求できるのでしょうか。
一般的に結婚の誓いとは次のような内容で、結婚式で取り交わされます。
あなたは○○を妻(夫)とし、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、妻(夫)を愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?
結婚の誓いも口約束であれ、公序良俗に反さない限り契約としてみなされるとは思います。
しかしながら、結婚の誓いを破ったことを理由に慰謝料を請求するのであれば、具体的に結婚の誓いのどの部分を仁さんが破り、婚姻関係が破綻状態になったのかを証明する必要があります。
お話を聞く限り、仁さんは結婚してしばらくしてから祥子さんの理想とする夫婦とは異なる行動をとっています。
しかし、Twitterに投稿した内容を聞く限りだと、夫婦内で日常的な会話や性行為もあったと思われるので、仁さんの行動の変化によって夫婦関係が破綻状態にあったかというと、ないとみなされる可能性が高いです。
夫婦関係が破綻するとは、夫婦関係がもはや修復しようもないほど壊れている状態をいい、そう簡単に認められるものではありません。
そのため、仮に祥子さんが離婚に同意し、慰謝料を請求したとしても認められない可能性が高いでしょう。
【離婚の慰謝料をわかりやすく解説】離婚で慰謝料をもらえるケースを考えよう!
まとめ
今回は、SNS上で夫婦生活の愚痴をいった女性が夫に離婚を切り出された相談例について紹介しました。
SNSは容易に自分の言葉を発信できる一方で、発信内容をしっかり考えないと離婚に発展する可能性がありますので注意しましょう。
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