フルータリアンという言葉を知っていますか。
フルータリアンとは、動物性の食物を食べないヴィーガンより、更に厳格なベジタリアンのことを指し、果物やナッツ等、植物の命に関わらない実しか食べないひとのことをいいます。
今回は、妻がフルータリアンになってしまい離婚したい男性の相談例と見解について解説していきたいと思います。
【果物かナッツだけ】肉だけじゃなく野菜も食えない結婚生活とオサラバしたい
夫: 多果志(たかし)28歳
妻:奈津(なつ)28歳
妻の奈津とは、23歳のときにいちご狩りを目的に栃木にツアーへ行ったときに出会いました。
僕はいちご狩りの他にも、ブドウやベリー系、桃、梨やスモモ等、住んでいる東京から近い関東近県でできるフルーツ狩りには必ず参加しているというくらい、果物が好きです。
給料日には、高級フルーツ店に行って、旬の果物を使ったパフェやケーキを食べるのが好きでした。
奈津はいちご狩りに僕と同じようにひとりで参加していたため、バスの座席がちょうど隣になりました。
お互い果物が好きであることもあり、会話が弾んだのでツアー中も一緒に行動しました。
一緒に行動してみて、彼女の明るい性格や行動力のある姿、何より話しやすいという点に心惹かれ、勇気を振り絞って連絡先を聞きました。
果物がおいしいカフェやケーキ屋さん巡りをしたり、フルーツ狩りをしたりして、仲を深め、ツアーから半年後に付き合うことになりました。
付き合うまでの期間が割と長かったこともあり、恋人になってからはトントン拍子で話しが進みました。
付き合って1年でプロポーズしたところ了承をもらい、籍を入れました。
結婚したときがちょうどコロナ禍だったので、お互いのライフワークであるフルーツ狩りに行けなかったのですが、その代わりにちょっと高級な果物を取り寄せたりして、仲良く生活していきました。
フルーツ好きではありましたが、この時点では肉も魚もたまごも牛乳も普通に食べていました。
妻が変わったはっきりした理由は謎です。
コロナ禍で心境の変化があったのか、動画サイトやネットで感じるものがあったのかわかりませんが、次第に環境問題に傾倒するようになりました。
初めに変わったのが、化粧品と服装です。
化粧品は動物実験をしていないメーカーのものを選ぶようになり、服装は動物由来の繊維を使わないものに変化しました。
夫婦といえども、主義主張がすべて同じである必要はないこと、この時点では僕に思想の押し付けをしなかったので静観していました。
そのうち食事にも影響が出るようになりました。
初めは、鶏・豚・牛等の肉類が食卓から消えました。その後少し経ってから、魚介類も姿を消し、大豆肉やテンペ(インドネシア発祥の食べ物)が代替肉として登場しました。
実際に口にする食物だけでなく、出汁に関しても、今まではかつおぶしやにぼし、鶏ガラスープの素などを使って料理してくれていたのですが、「動物性は受け付けない」といって、昆布出汁、野菜くずの出汁、きのこ出汁等、植物由来のものしか使わなくなりました。
また、以前はカフェやケーキ屋さんでパフェやクッキー、ケーキ等のお菓子を食べていたのですが、「卵やバター、生クリームみたいな乳製品は食べない」と宣言され、私も食べられなくなりました。
環境問題を改善したいという欲にかられたのか、奈津の行動は時間を経るごとにエスカレートしてきて、「植物だって生きているのだから粗末に扱えない」とか「きのこは会話をしているから生き物」といって、食卓に出る食べ物が限られていきました。
今では、果物とナッツ、玄米等の穀物だけです。
しかも調味料も添加物が入っていたり、動物性のものが少しでも入っていたりするものは食べることができません。
更にいうと、奈津は「私も好きなものを我慢しているんだから、夫のあなたも私と同じ食生活をしなくちゃだめ」といい、弁当として玄米の塩にぎりと果物を持たされ、自宅外で私が食べないようにカード類やお金は最低限しか持たしてもらうことができません。
また電子マネーで購入していないかどうかを確認するため、毎日購入したものをチェックされます。
25円の駄菓子すら変えない状態は非常にきついです。
また、玄米が健康に良いことは重々承知ですが、毎回毎回塩にぎり。それから果物…。
いくら果物が大好きだとはいえ、毎回バナナを食べるのは正直苦痛です。
また、食材についてもオーガニックスーパーを利用するので食費も以前より高くなりがちです。
環境問題を真剣に考えることは良いことだと思います。
しかし世界が破滅する前に、僕たち夫婦の破滅が先になりそうです。
最近家に帰りたくなくて仕方がありません。
お金もないので帰りに公園に寄ってブランコに乗るくらいしかメンタルを立て直す手立てがないです。
この状態を打開するためには、奈津が環境を重視する前の生活に戻してくれるか、離婚するしかないと思っています。
こんな理由で離婚できるのでしょうか。教えてください。
弁護士の見解
価値観の違いによって離婚する夫婦は少なくありません。
価値観の違いがあるなら、そもそも結婚しなければ良いと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ひとの持つ価値観は、年齢や環境等によって変化します。
また、実際に夫婦として一緒に生活して初めて知る、夫や妻の価値観もあります。
今回の相談者である多果志さんは、妻の奈津さんが環境問題に重きを置き、フルータリアンになったこと、また奈津さんの価値観を押し付けられたことによって離婚を考えていると思います。
離婚自体は夫婦が話し合って双方合意のうえであれば成立させることができます。
そのため多果志さんが、「奈津さんが行動を改めないので離婚したい」と決意を固めたときには、まず夫婦の話し合いで離婚を成立させる方法があります。
ただし、当然のことですが奈津さんが離婚をまったく考えていない場合、合意を取ることがなかなかうまくいかないケースもあります。
よしんば、離婚の同意を得られても、財産分与等の離婚条件が合わず、話し合いがうまくいかないこともあるので、そういったときには弁護士への相談、家庭裁判所に離婚調整調停(離婚)を申し立てることも検討してみると良いでしょう。
【調停離婚】離婚を調停で成立させるメリットとトラブルについて確認しよう
離婚は、通常夫婦双方の合意のうえ成立しますが、夫婦の一方の言動が法律で定められている裁判上の離婚事由に当てはまる場合、最終的に相手の合意なく裁判の判決によって離婚することができます。
奈津さんが多果志さんにとった言動は、有責行為に当てはまる可能性があります。
有責行為とは、夫婦関係を修復できないほど破綻させるような行為を指し、その行為をしたひとのことを有責配偶者といいます。
有責行為に当たる行為として配偶者以外と肉体関係を持つ不貞行為や、DV行為等があります。
有責行為になる可能性がある奈津さんの言動として、「多果志さんから現金やカードを没収し、十分な金額を渡していない」という点が挙げられます。
また成人しており、仕事をしている男性が、「25円」のお菓子を購入できないほどの制限をかけている点についても、有責行為として認められる可能性があります。
夫婦の一方に対して、過度な制限をかけ、管理することはモラルハラスメントに当たります。
とはいえ、単に証拠もなく「モラルハラスメントを受けました」といっても認められません。
奈津さんの日々の発言を録音したり、モラハラ発言になりそうなLINE等のやり取りを保存したり、奈津さんの言動を日付の入った日記やメモで残したりする等、「モラルハラスメントを受けた」と推認できる証拠が重要です。
多果志さんは、現状奈津さんと離婚するかどうかを迷っておられるかもしれませんが、いざ決心したときに備えて、証拠を集めておいた方が良いかもしれません。
【離婚の法律用語】離婚に関するモラハラ知識について知ろう
まとめ
今回は、環境問題に対する意識の高さが講じて、フルータリアンになった女性と離婚したい夫の相談事例を紹介してきました。
結婚後、配偶者がフルータリアンになってしまったということは、中々起き得ないことかもしれません。
しかし、配偶者の価値観の変化によって生じたズレが原因で離婚する夫婦は一定数います。
夫婦間の価値観の違いは、できれば譲り合い、妥協しながらすり合わせていくのが理想です。
しかし中には許容できないこと、また場合によっては受け止めている言動が、有責行為であることも考えられるので、耐えられないと感じたときには離婚を考えてもよいかもしれません。
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