子どものいる夫婦が離婚した場合、男性が親権を主張したとしても、8割以上は女性が親権を持つことになります。
とはいえ、一緒に暮らしていないからといって生涯子どもに会えないわけではありません。
非親権者には面会交流権といって、子供と会ったり、連絡とったりする権利があります。
今回は、離婚後妻から面会交流を拒否されて子どもに会えない男性の相談例と、弁護士の見解を紹介したいと思います。
養育費を支払い続けているのに元妻が子どもに会わせてくれない
主人公:豊(42)
元妻:まどか(40)
娘:なぎさ(8)
私は5年前、元妻のまどかの二度に渡る不倫が原因で離婚しました。
1度目の不倫は、私が福岡に単身赴任しているときでした。
不倫した理由は、「子育てで不安だったこと」、「さみしかったから」ということでした。
当時、娘のなぎさは2歳。
また、まどかが本当に反省している様子だったので、「もう二度と不倫をしない」「不倫相手と連絡を取ったり、会ったりしない」という約束をして許すことにしました。
2度目の不倫が発覚したのは、1度目の不倫から1年後のことでした。
1度目の不倫相手と同一人物でした。
スマホを提出させると、1度目の不倫からすぐに関係を復活させて、「夫はちょろい」といっている履歴がありました。
もう我慢ならないと思い、まどかと私の両親立会いの下、慰謝料150万円を支払ってもらい離婚しました。
不倫女に娘の親権を渡したくはありませんでしたが、仕事が忙しく子どもの養育が現実的に難しかったので、月に1回以上の面会、月2,3回程度のテレビ電話を取り決めました。
養育費は月々8万円と決めて、現在まで一度も支払いを滞らせたことはありません。
面会交流は、なぎさが小学生になるまでは、月イチの面会、週に1度LINE電話などでビデオ通話をしていました。
しかし、ここ2年程、「小学校の行事がかぶっている」、「仕事が忙しい」という理由で面会させてくれません。
LINE電話の頻度も月に1度あるかないかです。
なぎさは、LINE電話のとき、「パパに会いたいなー」といってくれ、「お仕事忙しいから前みたいに電話できないのさみしいね」と悲しそうにいいます。
なぎさがそういうことをいうと、まどかが「電波が悪いから」とかなんとかいって、会話を強制的に終わらせます。
なぎさの様子から、私の悪口こそいっていないようですが「忙しい」と嘘をついて会わせないようにしているようです。
私の希望として取り決め通りに面会交流をしてもらえればよいのですが、おそらく話をしても真剣に取り合ってくれないような気がします。
これは定かではありませんが、元妻の共通の友人の話によると、元不倫相手と再婚して、なぎさの新しい父親になってほしいから、私との交流を徐々に減らしていくといったようなことをいっていたようです。
このまま面会交流の頻度が落ち、なぎさとのつながりが薄くなっていくのは耐えられません。
最終手段で「なぎさと会わせてくれないなら、会わせてくれるまで養育費を止める」と伝えようかなとも思ってもいます…。
ただ、養育費を支払わなくなることでなぎさの生活に支障をきたすのは本意ではないので踏み切れずにいます。
どのように対処すればいいのでしょうか。
弁護士の見解
離婚や別居が原因で子どもと一緒に暮らせなくなった場合、非同居親には面会交流の権利が保障されます。
子どもに暴力を振るっていた、暴言を吐いていたなど、面会交流が子どもの利益にならないというケースを除き、基本的に同居親は非同居親からの面会交流を拒否することはできません。
今回の場合、離婚後5年程度は面会交流を行っていたため、豊さんの言動に問題があったとは考えにくいでしょう。
面会交流は非同居親の権利でもありますが、子どもの権利でもあります。
民法では、面会交流について子どもの利益を優先して取り決めを行うと定められています。
お話を聞く限り、なぎささんは父親である豊さんに「会いたい」といっていたり、LINE電話の頻度が減ってさみしく思っていることが伺えます。
非同居親との交流は、子どもの養育にとって利益である考えられますので、まずはまどかさんと話し合って、面会交流の調整をした方が良いでしょう。
とはいえ、まどかさんと面会交流について話そうとしてもかわされてしまい、そもそも話し合いの場が持てないだろうと豊さんは危惧されていると思います。
そういった場合には、面会交流調停を申し立てて話し合うことを検討してみても良いかもしれません。
面会交流調停とは、離婚後面会交流で折り合いがつかない場合に行う手続きで、相手方が住んでいる地域を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。
豊さんの場合、まどかさんが住んでいる地域の家庭裁判所に申し立てをすることになります。
申立書には、申立人、元配偶者、面会交流を求める子どもの情報、現在の面会交流の状況や、申立てした理由などを記載します。
また申立書とは別に、申立人の戸籍謄本や、面会交流を求める陳述書なども提出します。
陳述書は、豊さんの希望を伝える重要なものなので、これまでの経緯や面会交流で希望することなどを細かく書きましょう。
豊さんの場合、「いつまで取り決めどおり面会交流が行われていて、いつの時点から行われなくなったのか」、「希望する面会交流の回数、方法」など具体的に状況を伝え、そのうえで希望する面会交流の内容を記載すると良いと思います。
面会交流調停は、離婚調停と同様、調停委員というひとが仲介役となって、話し合いで面会交流の条件を取り決めることになります。
面会交流が調停で解決できないときには、そのまま審判に移行し、調停を担当していた裁判官が面会交流の頻度などを判断します。
調停や審判で取り決めてもなお面会交流が行われない場合、豊さんはまどかさんに対して損害賠償を請求できる可能性があります。
また、調停調書や審判書は債務名義となるので、場合によって面会交流の強制執行をすることもできます。
面会交流の強制執行とは、非同居親の訴えによって、裁判所が親権者(同居親)に面会交流の命令をくだします。
親権者(同居親)が命令されている期間のあいだに面会交流が行わなかった場合、裁判所は一定金額の罰金のようなものを科すことができます。
面会交流の強制執行は、調停調書や審判書などの債務名義が必要で、夫婦で取りきめた離婚協議書では行うことができません。
なお、豊さんは最終手段として、養育費の支払いを止めて面会交流を求めようか迷っているとお話していますが、養育費を盾にすることは絶対にやめましょう。
養育費は親としての義務で面会交流の権利とは別問題なので、混同しないようにしましょう。
【面会交流って何?】離婚後、元配偶者と面会交流を取り決めるべき理由とは
まとめ
今回は、離婚後の面会交流について相談事例をまじえて解説していきました。
面会交流は非同居親の権利ですが、現実問題として離婚協議で取り決めた内容どおりに履行されていないケースは少なくありません。
面会交流や養育費が正しく履行されるよう、民法が改正されましたが、なかなかうまくいっていないのが現状です。
実際に、厚生労働省が行ったひとり親世帯等の調査結果によると、面会交流が取り決め通りに行われている割合は半分を満たしていません。
今回の豊さんのケースのように離婚後面会交流が行われなくなった、そもそも取り決めをしていないというような場合には、できるだけ早く調停を申し立てるなど行動することが大切です。
ただし調停では感情的に自分の希望をいうのではなく、理論立てて自分の主張に正当性があると調停委員や担当の裁判官などに印象付ける必要があります。
自力で行うには困難な場合もありますので、困ったときには一度弁護士に相談してみると良いでしょう。
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