【相談事例】婚姻期間が短い離婚|結納金と結婚式代取り返せる?

男女が結婚に至るまでの交際期間は、大体2、3年といわれています。

結婚すると、単身赴任等の特別な事情が無い限り、同居することになります。

そのため、同棲期間を設けて、「このひとと結婚できるかどうか」と判断する方も少なくないと思います。

その一方で、交際期間を経ないで結婚するひとも一定数います。

今回は交際期間0日で結婚した男性の離婚のトラブルを紹介していきたいと思います。

交際0日で夫婦になった妻がとんだ浪費家だった件について

主人公:正道(まさみち)36歳

妻:茜(あかね)28歳

 

妻の茜とは、交際0日婚でした。

茜とはもともと5年来の友人で、趣味や生活の価値観もよく合う女性でした。

お互い他に恋人がいたこともあり、今まで恋愛関係に発展したことはなく、良い友達でした。

しかし、去年私たちは同時期に長年付き合っていた恋人と別れることとなりました。

茜も私も結婚を前提に考えていたのでショックが大きく、その穴を埋めるために2人で飲む回数が増えました。

飲み会を重ねていくうちに親に結婚をせかされていること、生活のスタンスや結婚に求めていることが合致していることがわかりました。

はじめのうちは冗談半分で「結婚しようか」と話していたのですが、「意外とアリだ」と思い、真剣に伝えてみると、「じゃあ気が変わる前に婚約しよう」と了承してくれました。

その日はまだ早かったので、飲み会を切り上げ、婚約指輪を購入。

双方の両親に結婚することを告げ、顔合わせの日にちをセッティングしました。

茜との結婚が決まったことを告げたときの両親の喜びようといったらありませんでした。

電話越しでも伝わる両親の喜びに、茜との結婚を決断して良かったと思いました。

 

交際0日でプロポーズをしてから1か月後、両親の顔合わせをしました。

都心部の出身であれば結納金を支払う風習が廃れているかもしれません。

しかし、私は岡山県の田舎の出身で結納金の文化が残っていました。

私の両親としても、「大切な娘さんを貰い受けるのだから、結納金を渡して当然」という考えでした。

顔合わせは結納式のように仰々しいものではなく、高級ホテルのランチで済ませました。

顔合わせは終始穏やかに進行し、結納金については会の最後に私の両親から茜のご両親に手渡しました。

後でいくら包んだのかを確認すると、200万円を手渡したそうです。

今後の結婚生活が少しでも円滑になるようにという願いから多めに包んだと聞きました。

両親の思いを聞いて、必ず幸せな家庭を築こうと決意しました。

 

顔合わせを済ませてから半年後。

一緒に住む賃貸マンションを決め、同居するタイミングで籍を入れました。

結婚式は籍を入れてから一週間後に執り行いました。

茜が盛大に開きたいという要望があり、400万円をかけました。

茜は奨学金の支払いがあるので貯金ができていないと言いましたが、結婚式は花嫁が主役です。

また一生に一度のことなので、私の貯金から400万円を捻出しました。

お金をかけたこと、茜の頑張りもあって、式は滞りなく進み、招待した茜と私の親族や友人たちから「良い式だった」といってもらえました。

今思えば、この時が一番幸せだったかもしれません。

 

結婚式や方々への挨拶も済ませ、生活も落ち着いたころ。

茜の金遣いの荒さがわかってきました…。

彼女と私は、いわゆるアメコミが好きでフィギュアやプラモデル、グッズなどを集めています。

値段は安いものもありますがピンキリで、プレミアがついているものだと数十万、中には100万円を超えるものもあります。

私は月にグッズを集めるお金の予算を決めており、高い商品は調整しながら購入しています。

一方で、茜の方は…。

よく考えもせず、ポンポン物を買います。

商品1個当たりの単価は数百円から数千円のものですが、10個も20個も許す限り購入するので、計画性がありません。

私たち夫婦は共働きなので、それぞれの収入や家事の割合を考えて負担すると決めていました。

しかし、茜はお金をすべて自分のために使ってしまうので、一度も家計にお金を入れたことがありません。

お金を捻出してほしいといっても、「家事は私が多くやってるし、そもそもの稼ぎが違うのだから、あなたが負担するのは当然」といってきます。

それどころか、自分の奨学金の支払いを滞らせて、私に払えといってきます。

月々2万円くらいの負担額、しかも口座振替なのに、それが引き落とされないって控えめにいってやばいと思いました。

収入が低いといっても月々手取りで20万円は貰っています。

家計に入れなくても最低限自分の使った奨学金は自分で支払うっていうのは筋だと思います。

それなのに、「夫婦は協力し合うもの」とか屁理屈をいってきて、正直うんざりです。

私の稼ぎをあてにして、自分は好きなものを買い漁り、最低限自分に課せられている義務を果たさないその姿勢が許せません。

来月に新婚旅行が控えてはいますが、茜に対して「お金の問題が解決しないなら離婚も考えている」と伝えました。

すると、「別にいいけど貰ったものは返さないし、旅行は他のひとと行くから、その代金は慰謝料としてあなたが払ってね。後、夫婦の財産だからあなたの貯金も折半してもらうから」といわれました。

まるで私をATMか何かのように思っているような言い方が許すことができません。

結納金も結婚式代も半分は返してもらって離婚したいです。

もちろん、慰謝料として旅行代を肩代わりなんてありえません。

また、生活費を一切出さない相手に対しても、財産分与をしなければならないのでしょうか。

 

弁護士の見解

今回の相談者である正道さんと茜さんは、金銭感覚の違いから離婚問題へと発展しています。

茜さんが離婚自体に反対していないので、条件の折り合いがつけば早期の離婚成立が見込めるでしょう。

 

正道さんは離婚条件にあたり、次のような条件を提示しています。

 

  • 結納金と結婚式代を半額は返還してもらいたい
  • 旅行代を肩代わりしたくない
  • 財産分与をしたくない

 

早速それぞれ確認していきましょう。

 

結納金と結婚式代を半額は返還してもらいたい

まず、結納金の法的な性質は、婚姻の成立を確証し、また婚姻後夫婦・親戚関係が円滑になることを願う心づけとして支払うお金(※)です。

正道さんの場合、贈与の目的である婚姻の成立が達成されているため、茜さんとそのご両親は原則として返還に応じる義務はありません。

ただし婚姻期間が短かったり、婚姻したとしても事実上の夫婦関係が無かったりしたような場合には結納金の一部を返還してもらえることもあります。

 

結婚式費用についての返還は、婚姻期間が相当期間ある場合には、返還請求をしたとしても相手方が応じる義務はありません。

そのため、一部費用を返還してもらいたいのであれば、相手方の合意を得なければなりません。

お金の交渉は、当事者同士だとややこしくなりかねないトラブルです。

そのため、相手方が交渉に応じないだろうと予想される場合には、事前に弁護士に相談し、対策を打っておくのも手段のうちです。

※昭和39年9月4日 最高裁第二小法廷 昭38(オ)1124号を参考

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旅行代を肩代わりしたくない

茜さんは正道さんに対して、「慰謝料として旅行代を支払ってもらう」と主張しています。

離婚の原因はお互いの金銭感覚の違いなので、正道さんがその請求に応じる必要はないと思われます。

そもそも離婚の慰謝料とは、精神的苦痛を受け、自身の権利を侵害された場合に請求権が生じます。

精神苦痛といっても単なる夫婦げんかや性格の不一致でのストレスでは認められにくく、肉体関係を伴う不倫やDV等、夫婦関係の破綻が生じるようなものである必要があります。

お話を聞く限り、正道さんは夫婦関係を破綻させるような言動をしておりませんので、茜さんには慰謝料の請求権が生じません。

慰謝料の請求を主張すること自体は自由ですが、実際に訴えが認められるかどうかは別問題ですのでご安心ください。

旅行代に関しては茜さんに「離婚の話し合いをしており、すでに新婚旅行を行う意義がない」と伝え、キャンセルしても良いかもしれません。

 

財産分与をしたくない

夫婦が離婚した場合、必ず発生するのが財産分与の問題です。

財産分与とは、結婚してから夫婦関係が破綻した日(離婚する日、または別居した日)までに形成した夫婦の共有財産を分けることをいいます。

婚姻期間が長かったり、共有財産に不動産や株式などが含まれていると、配分が複雑になり話し合いが進まなくなることもあります。

今回の正道さんの場合、お話を聞く限りでは婚姻期間は数か月から半年程度と短いです。

財産分与の対象となる共有財産は、婚姻期間に形成された財産のことなので、婚姻前の貯金などは原則として含まれません。

というのも、婚姻前の預貯金や相続などで引き継いだ財産は、特有財産といって、夫婦の協力によって生まれた利益ではないからです。

そのため、婚姻期間中に取得した財産を計算して、「この分の範囲内でしか支払いには応じない」と意思表示しても良いかもしれません。
【共有財産はお金だけじゃない】離婚時にもめる可能性のある財産分与

まとめ

今回は、交際0日婚をした男性の体験談を交え、結納金や結婚式代の返還、慰謝料、財産分与について解説していきました。

離婚の話し合いでこじれがちな事柄として財産の問題が挙げられます。

配偶者の性格から、「お金の話はこじれそう」と感じた場合には自力で交渉に臨む前に、弁護士へ相談した方が良いかもしれません。

こじれる前に依頼した方が、弁護士としても提案できる範囲が広がるので確認してみてください。

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