夫との子どもを妊娠したとき、これからの育児や生活などに不安はあるものの、幸せを感じる方がほとんどでしょう。
しかし、妊娠中は男性が不倫しやすい時期でもあるのです。
今回は、妊娠6か月のときに夫の不貞行為が発覚し、離婚を検討している女性の相談事例と、弁護士の見解について紹介していきたいと思います。
妊娠中に不倫した夫と離婚したいけど将来が心配
相談者:弘子(32)
夫:匠(32)
私は夫の匠と結婚して4年になります。
現在、お腹には子どもがおり、妊娠6か月です。
妊娠初期はつわりが酷かったのですが、安定期に入り体調も落ち着いてきました。
お腹が大きくなる前に、服やベッドなどベビー用品を購入したり、産まれてくる子どもの名前を考えたり、早く生まれてこないかなとワクワクしていたのですが、とんでもないことが発覚しました。
というのも匠が会社の同僚の女性と不倫していたことがわかったのです。
不倫が発覚したのは、匠の不倫相手の女性から、「匠は奥さんにうんざりしているから、離婚してあげて」という連絡がきたからです。
夫婦関係は良好だし、はじめのうちはイタズラ電話かなとも思ったのですが、たびたび「離婚して」という連絡がくるので、私も不信感を覚え夫のスマホを確認することにしました。
夫が寝ているあいだに、こっそりスマホのロックを解除してみてみると、LINEで性行為をにおわすようなやり取りや性行為そのものの写真などがありました。
おまけに私を悪くいうやりとりはないものの、「今の妻とは別れて一緒になりたい」、「君と出会って本当の愛を知った」などなど、赤面もののメッセージのやり取りをしていて失笑ものでした。
本当の愛かなんか知らんが、普通に結婚していて妻が妊娠中なのに、性行為とか性器とかの画像をメッセージでやり取りしていてドン引きです。
とりあえず、夫の不倫の証拠としてメッセージのやり取りとおぞましい写真を私のPCに送信して保存しました。
匠が不倫した理由としては、おそらく私が妊娠のため体調が悪く夜の生活を断っていたことかなと思います。
実際に、欲求不満であることはちょいちょいいわれていたのですが、つわりもひどく安定期にも入っていない初期段階で性行為なんかしたくありませんでした。
「つわりで満足に食事もできないのに無理」とはっきり伝えたので、理解してくれたのかなと思ったのですが、性欲には勝てなかったのですね。
我慢できず性欲を優先する匠を信頼できるとは思えません。
とはいえ、後数か月で出産することになりますし、離婚を切り出すにしてもどうすればいいのかわかりません。
仮に妊娠中に離婚が成立したとして、産まれてくる子どもの親権や養育費についてはどうなるのでしょうか。
父親は匠になりますが、産まれてくる前に離婚していたら父親ではないのでしょうか?
また匠は私よりも年収が高いです。
もしも彼がお腹の中の子どもの親権を主張してきたとして、相手に親権をとられてしまうことはありますか?
私よりも夫の方が妊活に積極的だったので、親権をとられてしまわないか心配です。
ご教示いただけると幸いです。

弁護士の見解
相談者の弘子さんは、夫の匠さんが不貞行為を行ったことを理由に離婚を検討しています。
まず前提として、配偶者以外の異性と性的行為を行うことは、法律上定められている離婚事由の「不貞行為」です。
不貞行為は法律上の離婚事由になるとともに、不法行為といって夫婦が双方に持つ義務に違反する行為なので、弘子さんは匠さん、相手の女性に対して慰謝料を請求できる権利があります。
なお、不貞行為の慰謝料は請求する相手の支払い能力などによって異なりますが、一般的には100万円から300万円が相場です。
これを踏まえ、弘子さんが不安に思っている以下の点について考えていきましょう。
- 離婚は出産前・出産後どちらの方が良いのか
- 出産前に離婚した場合子どもの父親は誰になるのか
- 出産前に離婚した場合の養育費について
- 年収を理由に親権が取れないことはあるのか
離婚は出産前・出産後どちらの方が良いのか
離婚成立を出産前にすべきなのか、また出産後に行うべきかはケースバイケースです。
とはいえ、夫の匠さんが不貞行為を認め、弘子さんの提示した条件をすべて受け入れるのであれば、出産前に離婚しても良いでしょう。
しかし、不貞行為の有無や慰謝料、その他の条件について折り合いがつかないときには出産までに離婚できない場合もあります。
また、あえて離婚を成立させず、婚姻費用を請求して、出産後落ち着いた環境になってから離婚を目指す方法も考えられます。
夫婦が離婚する場合、相手が有責配偶者だとしても、いきなり裁判で離婚することはできません。
当事者同士の話し合いである離婚協議、家庭裁判所を仲裁役にした離婚調停でもまとまらない場合に訴訟を提起することになります。
「精神的負担から早く離婚を成立させたい」と思われるかもしれませんが、離婚を急ぐあまり条件の取り決めをおざなりにすると、後々になって悔いが残るかたちになります。
匠さんが離婚に同意しないときや離婚条件が合わないときには無理に出産前にまとめようとせず、まずは別居をすることも考えてみてください。
出産前に離婚した場合子どもの父親は誰になるのか
女性が妊娠中に離婚した場合、嫡出推定というものがあるので、法律上の父親は元夫になります。
男性側に認知をしてもらうなどの特別な手続きは必要ありません。
仮に弘子さんが「父親を匠さんにしたくない」と希望したとしても好き勝手に変えることはできません。
また弘子さんが結婚したときに戸籍筆頭者が匠さんの戸籍に入っている場合、子どもは離婚前の戸籍に入ることになります。
子どもの戸籍を変更したい場合には、家庭裁判所に「氏の変更許可」の手続きをする必要があります。
なお出産前に離婚した場合、子どもの親権者は母親になります。
出産前に離婚した場合の養育費について
養育費は法律上子どもの親であれば、必ず支払うべきお金です。
出産前に離婚したとしても、嫡出の推定があり、離婚後300日以内に生まれた子どもは元夫の子どもになります。
弘子さんの場合、現在妊娠6か月で、すぐに離婚したとしても、出産時期は離婚後300日以内になります。
そのため、匠さんには養育費を支払う義務があります。
また、お話を聞く限り、夫婦双方の合意のもと性交渉を行い、妊娠していると考えられるので、出産費用に関しても負担してもらうことができます。
養育費の支払いに関しては、法律上義務付けられていますが、実際は支払わない方も少なくありません。
夫婦間で取り交わした離婚協議書だけでは、強制的に給料を差し押さえるなどの手段が使えないため、今後のことを考えるのであれば離婚協議書を強制執行のできる公正証書としておいた方が良いでしょう。
年収を理由に親権が取れないことはあるのか
夫婦が離婚する場合、子どもの親権は必ずどちらかが持つことになります。
親権は基本的に夫婦の話し合いでどちらが持つかを決めます。
当事者同士の話し合いで折り合いがつかず争いになった場合、離婚調停に進むことになります。
離婚調停で親権を争うとき、多くの場合家庭裁判所調査官という役目のひとがどちらの親と暮らした方が子どもにとって利益となるのかを調査します。
子どもの利益とは、単にお金の問題ではありません。
要約すると、どちらの親と暮らした方が子どもにとって幸せなのかということです。
そのため、経済力だけではなく、養育環境だったり、養育に協力してくれるひとがいるのか、現実的に子どもの養育をできる時間を確保できるのかなど、さまざまな観点から調査を行います。
子どもの年齢が幼い場合、母親が必要と考えられるので弘子さんのケースでは、親権争いになったとしても、親権を取得できる可能性が高いといえます。
とはいえ、離婚調停などで親権争いをすると精神的にも負担になり時間がかかってしまうため、できるだけ離婚協議で取り決めることが理想です。
まとめ
今回は、妊娠中に夫が不倫して、離婚を検討している女性の相談事例と、弁護士の見解を紹介しました。
妊娠中、出産後は身体の負担やなれない育児などの対応に追われ、なかなか離婚を決めることができないと思います。
自力で行うには負担がかかりすぎるので、弁護士への相談を検討してみると良いと思います。
弁護士に依頼した場合、相手方との交渉を一任できますので、困ったときには相談してみてください。
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