【相談事例】子どもが夫と暮らしたいといっている場合でも親権は取れる?

子どもがいる夫婦が離婚する場合、必ず決める必要があるのが親権です。

子どもの親権は一般的に女性の方が取得しやすいといわれていますが、子どもが母親ではなく父親と暮らしたいと主張した場合どうなるのでしょうか。

今回は親権取得にあたり子どもの意思がどれくらい反映されるのか、また有責行為をした場合、親権取得に影響があるかなど相談事例を交えて解説していきたいと思います。

【夫が原因で不倫したのに】子どもが夫についていくといっても親権は取れるの?

 

相談者:幸恵(43)

夫:孝則(45)

娘:芽衣子(15)

 

夫の孝則とは17年ほど前に結婚しました。

結婚してから娘の芽衣子を妊娠するまでは、夫婦仲も良好でした。

しかし、妊娠6か月のとき、夫が風俗に行ったことが発覚。

風俗にいった理由は、会社の付き合い。

先輩から「一度は経験した方が良いから」といわれて行ったそうです。

安定期とはいわれているものの、身体の変化になかなか対応しきれなかった私は、倦怠感や身体が重く感じ、精神的にきつかった時期でもありました。

そんな私を差し置いて、風俗に行った夫が許せず、当時は離婚するかどうか悩みました。

しかし、金銭的な問題やこれから生まれてくる子どものこと、夫が十分反省していることもあり、離婚しない選択をしました。

 

子どもが生まれてから、夫は育児を率先してやってくれたと思います。

保育園や小学校のイベントは、仕事を調整し必ず参加していました。

また土日は娘を連れて、釣りに行ったり、虫取りに行ったりしていました。

私はもともとアウトドアが好きではないことや、虫が苦手なこともあって、釣りや虫取りには参加しませんでした。

娘は、休みのたびに一緒に遊んでくれる夫が大好きになり、すっかりお父さん子です。

平日は私が育児を担っていたのに、私よりも夫のことの方が好きなようでした。

妊娠しているときに風俗に行った父親になつくのかと思うようになってしまい、娘に対してもちょっとあたりがきつくなりました。

それもこれも夫のせいです。

私が怒りっぽいと感じた娘は、ますます父親になつくようになり、次第に家庭内で疎外感を感じるようになりました。

疎外感から逃れるため、娘が小学4年生になったときにスーパーでパートをするようになりました。

結果としてスーパーで働き始めたのは正解でした。

というのも、副店長の岩井さんという男性がすごくかっこよかったからです。

優しく仕事を教えてくれたり、職場で悩んでいたときは親身になって相談に乗ってくれたりする岩井さんの姿に次第に惹かれていきました。

岩井さんは私をひとりの女性として扱ってくれました。

はじめはLINEで日々連絡を取り合うくらいだったのですが、夫は私の変化に全然気が付かない様子だったので、一緒に出かけるようになりました。

娘と夫が出かけている土日にランチへ行ったり、お茶したりしていました。

一緒にいる時間が増えるにつれ、ますます岩井さんを魅力的に思い、平日もたびたび飲みに行くようになりました。

お互い好意があることはもうわかっていましたが、既婚者である自覚はあったので一線は超えないようにしていました。

私の糸が切れてしまったのは、娘と喧嘩したときにいわれた、「お母さんよりお父さんと一緒にいる方が楽しい」という一言でした。

娘が私よりも夫といる方が良いということにショックを受けた私は、気持ちを落ち着かせるために以前よりもいっそう岩井さんを頼るようになりました。

娘との喧嘩前は、家族を大切にしなくちゃという気持ちを持っていたので、岩井さんへの恋愛感情も抑えられていましたが、ストッパーが外れたことで肉体関係を持つようになりました。

岩井さんと関係を持つことでひさびさに満たされた気分になり、家族のことを忘れることができました。

 

岩井さんとは娘と夫がいない昼間や、夫が出張で家を空けているとき夜中に家を出て会ったり、「友達と旅行に行く」といって宿泊したりして関係を続けていました。

夫も娘も私の行動に対し、特に何も言わなかったので次第に行動が大胆になっていったことは否めません。

娘も思春期を迎えている15歳なのに相変わらず夫とべったりだし、高校卒業するまで待って離婚しよう。そして、岩井さんと再婚して新しい家庭を作って行こうと思っていた矢先でした。

夫から私の不倫を理由に離婚を切り出されました。

正直、「お前が言うか?」と思いました。

だって、そもそも夫婦仲がこじれたのは、夫が私の妊娠中に風俗に行ったからです。

そう反論すると、「15年以上前、1回いった風俗と4年間も不倫していた君とは違う」と言われました。

しかも、娘の親権も夫が持つというのです。

別室にいた娘を呼んで、「私たち離婚するかもしれないけど、どっちについていきたい?」と聞いたところ、「不倫がバレていないと思ったの?夜中に不倫相手の家に行くようなひととは絶対一緒に暮らしたくない。釣りが嫌、虫が嫌、人混みが嫌といって土日家族ででかけないで、不倫相手と会うようなひとは母親だと思いたくない。お父さんと一緒に暮らす」と言われてしまいました。

確かに岩井さんと不倫をしていたのは私です。

でも、私たちの夫婦関係は妊娠したときに夫が風俗に行ったことで終わっています。

娘の将来のために離婚を避けただけです。

絶対私と一緒に暮らした方が娘のためになるはずです。

夫は養育費も慰謝料もいいから、娘のためにも離婚してくれといいます。

こんな状態なのですが、離婚した場合、私は親権をとることができますか?

仮に親権は難しくても、娘と面会交流することは可能ですよね?

夫のことはもうどうでもいいですが、娘を失いそうになって大切だと実感しています。

どうにかならないでしょうか。

【不貞行為の損害賠償請求】配偶者の不倫相手に慰謝料の支払いを拒否された場合どのような対処法があるの?

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弁護士の見解

夫婦の一方の行動が原因で関係が悪化した結果、不倫してしまうケースは少なくありません。

配偶者が離婚原因となるような言動をして、夫婦関係がすでに破綻した後に、配偶者以外の異性と肉体関係を持ったとしても不貞行為とはみなされません。

今回の場合はどのように判断されるのでしょうか。

幸恵さんの場合、妊娠中に夫の孝則さんが風俗に一度行ったことがきっかけで、夫婦仲に不和が生じました。

とはいえ、幸恵さんは金銭面や子どもの将来などを考え、離婚しないという選択をしました。

また、孝則さんも娘の芽衣子さんが生まれてからは家事や育児などを積極的に行い、家庭が維持できるよう協力しています。

このことから、幸恵さんの心情はどうであれ、孝則さんを宥恕(ゆうじょ)したとみなされる可能性が高いです。

そのため、幸恵さんと不倫相手である岩井さんは不貞行為をしたといえるでしょう。

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不貞行為を理由に子どもの親権を取得できないケースはあるのか

不貞行為も親権も離婚のトラブルなので一緒に考えてしまう方も多いかもしれません。

しかし、それぞれが別個の問題なので、不貞行為をしたからといって親権の取得ができないわけではありません。

親権者はどちらの親といる方が子どもにとって利益となるかという観点で決められます。

そのため不貞行為をして夫、妻という立場では問題があったとしても、育児を率先して行い、子どもの養育を担ってきた場合には、不貞行為をしたとしても親権をとることができます。

では、幸恵さんの場合はどうでしょうか。

親権者は子どもにとって利益になるのかどうかを判断する重要な点として、子どもがどちらの親と暮らしたいのかという意思が挙げられます。

子どもの年齢が高いほど、その意思が親権取得に大きく反映されます

娘の芽衣子さんは15歳なので、ある程度の判断能力を有していると判断されます。

そのため、芽衣子さんが父親である孝則さんと暮らしたいという希望は、親権争いになった場合、尊重される可能性が高いでしょう。

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面会交流は行えるのか

面会交流とは離婚後、非同居親と子どもが連絡を取り合ったり、会ったりすることを指します。

面会交流は子どものための権利です。

そのため面会交流の頻度や交流の仕方などは、子どもの利益となるような方法がとられます。

子どもの年齢が高いと面会交流の可否を自分で判断することができるとみなされ、子どもの意思が尊重される傾向にあります。

今回の幸恵さんの場合、芽衣子さんは幸恵さんが不貞行為をしたことを知っており、それに対し不快感を覚えています。

そのため、芽衣子さん自身が面会交流を拒否した場合、幸恵さんが望んだとしても面会できない可能性が高いです。

幸恵さん自身の考えを押し通すような姿勢ではなく、まず日々メールやSNS、電話などを使って親子関係の修復をはかった方が良いかもしれません。

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まとめ

今回は、妊娠中に夫が風俗に行ったことによって夫婦仲が悪くなってしまった女性の相談事例を紹介していきました。

親権は女性の方が取得しやすいことは事実ですが、離婚するときの子どもの年齢によって、子どもの意思が尊重されるケースがあります。

子どもが大きい場合の親権の取得は、子どもとの関係性がとても重要になるので注意しましょう。

 

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