【配偶者からの暴力】DVから逃れるための離婚の前に行うべき手続きを弁護士が解説

DVは家庭内で起こるので、なかなか周囲に知られることがありません。

また、夫婦内のことはなかなか相談しづらいことなので、ひたすら我慢しているという方もいらっしゃるでしょう。

今回はDVを受けている方が離婚を考えた場合に行うべきことについて解説していきたいと思います。

身体的DVを受けたらすぐに逃げる?逃げる前にやっておきたいこと

内閣府男女共同参画局が運営しているDV相談プラスに寄せられた令和3年度の相談件数は54,489件、配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談は122,478件でした。

これは国が認知した件数なので、DV被害に遭っている方はまだまだいると予想されます。

実際に配偶者からDVを受けた場合、身の安全を確保するために別居することが先決です。

DVの程度や緊急性にもよりますが、別居する前に行っておくべきことを考えていきましょう。

 

周囲に根回しを行う

暴力から逃れるために行うべきこととして、周囲に根回しを行っておくことです。

別居後、配偶者があなたを探すために、家族や共通の友人や知り合いに聞きまわる可能性があります。

周囲に根回しをしておかないと、配偶者が誰かから居場所を聞き出して突き止められてしまうケースは少なくありません。

相手に見つかってしまい連れ戻されると、逃げ出す前より更に激しい暴力を受けたり、監視の目が厳しくなってしまう可能性があります。

そのため周囲から居場所が漏れないように十分注意しましょう。

なお配偶者のあなたに対する執着の度合いなどによっては、手段を選ばず、暴力に訴えて居場所を聞き出す可能性もあります。

このようなリスクに備え、具体的な居場所についてはあえて伏せるということも選択肢のひとつです。

 

配偶者暴力相談支援センターに相談する

DVから逃れるために別居するときには、その前に配偶者暴力相談支援センターに相談すると良いでしょう。

配偶者暴力相談支援センターは、DVに悩む方が相談できるだけでなく、さまざまな支援を行ってくれます。

事案によって「配偶者からの暴力の被害者の保護に関する証明書」を発行してくれます。

この証明書をお住まいの地域の自治体に提出すると、住民票の閲覧制限をかけることができます。

また、警察と連携して配偶者が被害者の方に接近できないように、裁判所に「保護命令」の申し立てを行うためのサポートをしてくれます。

保護命令とは、裁判所が被害者本人や子ども、家族を保護することを目的として、加害者に対し接近禁止命令を出したり、退去命令を出したりすることです。

これ以上DVを受けないためにも公的機関の制度を最大限使ってご自身の安全確保をしましょう。

 

離婚届不受理申出を提出する

DVで別居を検討した場合、事前に離婚届不受理申出を役所に提出しましょう。

提出する先は、別居前の市区町村を管轄する役所です。

離婚届不受理申出を提出しておけば、配偶者が勝手に離婚を成立させようとしたときにふせぐことができます。

「一刻も相手から離れたいので、離婚が成立するならそれでもいい」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、お子さんの親権者が配偶者になってしまうリスクもあります。

また、財産分与や養育費などの取り決めを行わずに離婚すると、あなたの生活やお子さんの生活が苦しくなってしまうこともありますのでしっかり手続きを行っておきましょう。

 

当面の生活費を確保しておく

DVから逃れるために別居するときには、ある程度まとまったお金を下ろしておきましょう。

「お金を勝手に持って行って出ていくと反対に有責配偶者になってしまうのではないか」と考える方もいるかもしれません。

確かに勝手にお金を持ち出して別居することは、状況によっては有責行為に該当する可能性があります。

しかし、DVを受けている事情をしっかり説明することができれば、有責行為とはみなされません。

別居先の銀行などでお金をおろすと、居場所が特定されてしまうケースもあるため、現金を持って行った方が良いかもしれません。

 

健康保険を切り替える

配偶者の勤め先の健康保険に加入している場合、国民健康保険に切り替えを行った方が良いでしょう。

相手の健康保険を利用して通院すると、病院から別居先を突き止められたり、病院で待ち伏せされてしまうリスクがあります。

リスクを下げるためにも、健康保険は切り替えておくべきです。

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DVが原因でも離婚の取り決めはしておくべき

DVが原因となって離婚したい場合、「とにかく何でもいいから相手と離婚したい」と強く望む方が多いと思います。

しかし、離婚の取り決めをしておかないと、後々になって「あの時取り決めておけばよかった」と後悔するケースも少なくありません。

具体的に取り決めておくべき内容について考えていきましょう。

 

財産分与

DVが原因で離婚したい場合、早く相手と離れたいという思いから離婚条件の取り決めせず、離婚を成立させたいと考えることもあるでしょう。

しかし、財産分与は行っておくべきです。

財産分与とは、夫婦になってお互い協力して築いた共有財産を貢献度合いに応じて分けることをいいます。

貢献度は、経済能力で判断されるわけではなく、家事や育児などで家庭を支えてきたことも

含まれるので、特別な事情がない限りあなたには財産の半分は受け取る権利があります。

離婚後、生活が落ち着くまでに金銭面で困らないためにも取り決めておきましょう。

 

養育費

養育費は子どもを養育していくうえでとても重要なお金です。

法律上子どもの親であれば養育費を支払う義務があり、また親権者や子どもには受け取る権利があります。

現在あなたが「お金をもらわなくても良い」と思ったとしても、中高の部活動、受験、大学に進学した場合にはたくさんのお金が必要です。

お子さんの将来の為にも養育費は取り決めておくべきでしょう。

 

慰謝料

DVは、不法行為といって他人の権利を侵害する行為です。

DVを受けた場合精神的苦痛を理由として慰謝料を請求することができます。

慰謝料を得るためには、訴える側が「DVを受けていたこと」を立証することが必要なので、決して簡単なことではありません。

しかし、DVによってできた精神的な苦痛は相手と離婚した後もトラウマとなって残り続ける可能性があります。

お金であなたの心の傷がすべて癒されるわけではありませんが、相手に対して「制裁したい」と考えたときには慰謝料を請求することもひとつの手段です.

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配偶者と顔を合わせたくない場合の対処法

DV被害で離婚したいと考えた場合、相手と実際に顔を合わせて話し合うことは難しいと思います。

相手と顔を合わせずに離婚の交渉をしたい場合どのような方法があるのでしょうか。

 

弁護士に離婚交渉の一切を代理してもらう

相手と顔を合わせずに離婚条件の交渉を行う手段として弁護士に依頼することが考えられます。

弁護士は依頼者の代理人となって交渉を行ってくれます。

離婚交渉についてはすべて弁護士を通して行うことで、配偶者と顔を合わせずに離婚できる可能性が高くなります。

また、配偶者があなたに直接連絡してきた場合にも、弁護士が配偶者に対して、あなたに直接連絡をとらないように警告してくれます。

あなたの代理人となって配偶者と離婚交渉を行えるのは弁護士だけです。

 

離婚調停を申立てる

相手と極力顔を合わせずに離婚交渉を行う手段として、離婚調停が挙げられます。

離婚調停とは、家庭裁判所が仲裁役となって、話し合いで離婚の成立を目指す方法です。

通常の離婚調停の場合でも当事者同士の主張を調停委員という調整役が交互に聞くので、顔を突き合わせて話し合うわけではありませんが、初回に行う調停の説明や調停成立時に行う読み合わせなどでは夫婦が顔を合わせることになります。

しかし、事前に家庭裁判所へDVを受けているので顔を合わせたくないという事情を伝えておけば、できるかぎりの便宜を図ってくれます。

相手と極力顔を合わせたくないときには離婚調停を検討してみると良いかもしれません。

 

まとめ

今回は、DVで離婚したいと考えた場合、事前に行っておくべきことや、配偶者と顔を合わせずに離婚交渉を行う方法などを解説していきました。

離婚する場合、「相手に暴力をふるわれてしまうのではないだろうか」となかなかあなたが望む離婚条件を配偶者に伝えられないと思います。

だからといって諦めてしまうと、離婚後の生活が苦しくなったり、この先ずっと後悔し続ける結果になりかねません。

そのため、自力での解決が難しいと感じた場合には、まずは弁護士に相談することを検討しましょう。

 

 

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