【弁護士の見解は?】不妊を理由に夫から離婚を切り出された!子どもができないことは法的な離婚事由になるの?

2022年4月から不妊治療の保険適用の範囲が広がり、今まで高額な費用がかかる治療でも負担額が低くなりました。

とはいえ費用負担は減ったものの、体力的、精神的な負担はなかなか減るものではありません。

そんなときこそ夫婦がお互いに支え合っていければよいのですが、不妊治療が長く続くことによって仲が悪くなってしまうこともあります。

今回は不妊を理由に夫から離婚を切り出された女性の相談事例と弁護士の見解について解説していきたいと思います。

1年にわたる不妊治療の結果夫から「子どもができない」という理由で離婚を切り出された

樹里(仮名)34歳

力(仮名)35歳

夫の力から離婚を切り出されており困っています。

力と私は31歳のころに参加した婚活パーティーがきっかけで結婚しました。

20代の前半は、「結婚するなら運命的な出会いをして大恋愛の末ゴールインしたい」と脳内お花畑理論を展開していた私でしたが、当然そんな運命のひとやら大恋愛やらという経験がそうそう簡単にできるはずもなく、あっというまに30歳を過ぎていました。

今までの結婚観は恋愛前提でしたが、周囲の結婚した友達に聞くと、「一緒に暮らしていると恋人のときの感情が薄れて家族になる」というような話をしてくれました。

彼女らの話は、私の目からうろこが落ちるようなもので、運命のひとでなくても、大恋愛がなかったとしても、家族になれるようなひとを探せばいいんだと思いました。

また、私には子どもを産みたいという希望もありました。

子どもを産むのに必ずしも結婚する必要はないと思う方もいるかもしれませんが、私にとって子どもを産むことはイコール結婚でした。

医療が発達したといっても、妊娠には身体的なタイムリミットがないわけではないので、さっそく婚活を始めました。

アプリなどを使ってゆるく始めることもできましたが、結婚を求める意識に差があると感じたため、結婚相談所に行ってはじめることに決めました。

私自身相手に求めることで妥協ができない条件があったので難航しましたが、本腰を入れて婚活を始めて1年で力と出会うことができました。

力と私の結婚観はかなり近いものがあり、また初めから結婚前提であることも相まって、とんとん拍子で話が進んでいきました。

およそ出会って半年で婚姻届をだし夫婦になりました。

私たちが結婚した大きな目的のひとつとして子どもを授かることがありました。

そのため結婚後すぐに妊活を開始しました。

結婚前に受けていたブライダルチェックの結果では、お互い問題がなく自然妊娠できる可能性が高かったので、はじめの1年は普通に夫婦生活を送っていました。

結婚して1年が経ち、妊娠できないことに不安を感じた私は、力に相談のうえ一緒に病院に通い、不妊治療を始めました。

基礎体温などを付け妊娠しやすい日にしてみたり、カウンセリングを受けたり、人工授精を試してみたりとさまざまやってみたのですが妊娠には至らず…。

不妊の原因なども夫婦で検査してみたのですが、特定できませんでした。

もともと子どもがほしいという望みが合致して結婚したようなものなので、妊娠できない状態が2年以上続いたことで夫婦仲が悪くなってきました。

夜の生活も夫婦仲が悪くなる前はスキンシップも多く妊娠するためだけの行為ではありませんでした。

しかし今では事務作業のような感じで、そこに愛情というものがまったく感じられません。

そんな状態に嫌気がさしたのか、力から離婚を切り出されました。

「子どもができないなら夫婦でいる意味がない。また大切な2年半を浪費したので慰謝料ももらう」と。

子どもができないことを理由に離婚すること自体は理解できます。

私自身このまま夫婦でいても、お互いのためにならないと感じていましたから。

けれど離婚原因が私で、慰謝料を請求するというのであれば話は別です。

子どもができないことの理由は夫婦どちらが原因なのかわからないし、仮に私が原因だったとして慰謝料を払わなければならないことなのでしょうか。

というか、2年半の浪費ってかなり辛辣ですし、何なら私だって浪費してるっていえますよね?

離婚に同意した場合私は慰謝料を支払わなければならないのでしょうか。

【弁護士の見解】不妊は法律上の離婚事由にあたるのか?慰謝料は支払わなきゃいけない?

今回の相談者である樹里さんは、夫の力さんから不妊を理由に離婚を切り出されている状態です。

不妊は法律上離婚が認められる事由にあたるのか、また樹里さんが離婚を受け入れた場合慰謝料を支払う必要があるのかについてそれぞれ考えていきたいと思います。

不妊は法律上の離婚事由にはあたらない

不妊であること自体は、民法という法律で定められている離婚が認められる事由にあたりません。

樹里さんは離婚すること自体は仕方がないと同意されていますが、仮に婚姻継続を強く希望し離婚の申し出を拒否したとしても問題ありません。

基本的に離婚するには当事者同士の合意が必要であり、力さんの一方的な意思で離婚することはできないからです。

また力さんの離婚に対する意思が強く、一方的に離婚したいと思ったとしても、そのためには離婚裁判で認められる必要があり、離婚裁判を起こすには法律上の離婚事由がなければなりません。

法律上の離婚事由は夫婦関係が破綻しているとみなされるような理由でなければならず、現段階では樹里さん夫婦にそのような理由がありません。

樹里さんが同意しない限り離婚は成立しないので、条件に納得がいくまで話し合った方がよいです。

感情的になって財産分与などの取り決めを行わずに離婚すると後悔しかねませんので、慎重に判断することが大切です。

慰謝料請求に応じる必要はない

不妊が原因で離婚をする場合、慰謝料を求められたとしても応じる必要は基本的にありません。

離婚の慰謝料とは、人権や夫婦として法律で保護されている権利を侵害されたことで精神的苦痛を受けた場合に請求できるお金です。

不妊そのものは、人権や夫婦として法律で保護されている権利を侵害している行為とはいえません。

子どもが生まれないことを理由に慰謝料を請求できるケースとして、セックスレスのように相手が性交渉を望んでいるのにもかかわらず、理由もなく断るような場合です。

樹里さんの場合、お話を聞く限りは不妊のため夫婦双方が治療に協力していますし、自分勝手な理由で性交渉を断るというような状況ではありません

力さんは子どもができないことを理由に慰謝料を請求されていますが、樹里さんは力さんの持つ権利を侵害していないため、そもそも慰謝料の請求権自体が生じません。

そのため、慰謝料を支払えといわれたとしても応じる必要はありません。

それどころか、力さんが不妊の原因を一方的に樹里さんのせいにし、過剰な暴言など吐くなどの行為が継続的にあった場合には、樹里さんが力さんへ慰謝料を請求することもできます。

いずれにしても樹里さんは、離婚条件などをきちんと取り決めしたうえで離婚を成立させた方が良いでしょう。

夫婦間で冷静に話し合いができず、自分で解決が難しいと感じた場合には早めに弁護士へ依頼することによって早期の解決が望めることもありますので検討してみてください。

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まとめ

今回は、不妊治療をしても子どもができないことを理由に夫から離婚を切り出され、慰謝料の請求もされている女性の相談事例と弁護士の見解を紹介していきました。

勘違いされている方もいらっしゃるかもしれませんが、離婚をするからといって必ず慰謝料の請求権が生じるわけではありません。

慰謝料請求権がないにも関わらず、相手が慰謝料を請求してきたとしてもそもそも権利がないので拒否しても問題ないのです。

とはいえ相手の態度などが強硬で、半ば無理やり同意させられそうな状況にある方もいらっしゃるかと思います。

そのような場合には自分でどうにかしようとせず、弁護士に相談することを考えてみてください。

 

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