【共働き夫婦の相談事例を弁護士が解説】家事分担がおかしいことを理由に離婚できる?

2021年のデータによると夫婦がふたりとも働いている共働き世帯は全体の7割近くの数です。

共働き世帯が増えたら家事分担は夫婦公平に、同じくらいの負担率であってほしいですよね。

しかし残念ながら、共働き世帯の場合であっても女性の負担率が高いのが現状です。

今回は、家事分担をおかしいことを理由に離婚を検討している女性の相談事例と弁護士の見解を紹介していきたいと思います。

共働き夫婦でも妻が家事をしなくちゃいけない?家事分担がおかしいことを理由に離婚したい

 

主人公:亜里沙(34)

夫:達也(35)

子ども:なし

 

夫の達也と結婚して1年程です。

結婚して1年で考えるのも微妙かもしれませんが、離婚したいと思っています。

離婚の理由は家事分担です。

共働きにも関わらず、家事分担の負担率があきらかにおかしい…と感じちょっと無理だなと考えています。

 

妻の亜里沙が家事分担をきちんとしたい理由

私は結婚前、達也に家事分担について、「どちらも働いているんだから、どっちかに家事の負担が重くならないようにしようね」と伝えました。

伝えた理由は、私の両親をみて、「こうはなりたくない」と思ったからです。

私の家庭は、当時には珍しく父親、母親ともにフルタイムで働く共働き世帯でした。

子どもは私を含め3人いる状況で、母親は家事と育児をほとんどワンオペ状態で担っていました。

朝早くから夜遅くまで仕事も家事も育児もする母親を間近にみてきていた私は、「父親みたいな非協力的な男性とは絶対結婚しない」と早い段階から思ってきました。

そのため、達也には少ししつこいくらい家事分担について伝えていました。

達也は、一人暮らしが長く、掃除洗濯のような家事が苦じゃないこと、また公平な家事分担を約束してくれました

達也が一人暮らししているマンションに何度も行っていたのですが、部屋はきれいだし、キッチンも自炊をきちんとしているようでした。

一人暮らしでできるなら、結婚後も大丈夫と思っていたのですが…。

 

家事分担の負担率がおかしい!家事をほとんどしない夫に限界

結婚前、家事分担は公平にと約束した達也と私でしたが、その約束は残念ながら1か月しないうちに破られました。

いや、正直なところ2,3週間がせいぜいといったところです。

家事分担がおかしくなったきっかけは、達也の繁忙期。

達也の仕事は、通常の時期であればほぼ在宅勤務で残業もないといった割とゆるい感じなのですが、年2回ある繁忙期のときは早朝から深夜まで、その期間だけは休日出勤もあるといったようなかなり忙しいものです。

対して私は、繁忙期という繁忙期はありませんが、出勤が必須の仕事のため平日は8時前に出勤、帰宅は21時ごろです。

勤務時間は9時半なのですが、出勤時間がドアトゥドアで片道1時間半かかるので出勤時間や帰宅時間がどうしても遅くなってしまいます。

残業時間は大体月平均して25時間から30時間ほどあります。

生活が落ち着いてすぐ達也が繁忙期に入ったため、「まあこの期間は家事ができなくて仕方ない」と思い私の方で家事の一切をしていました。

その後、1か月ほど経って繁忙期が終わり、それまで私が行っていた家事の半分を達也に負担してもらうようにしました。

繁忙期以外の期間に関しては私の方が必ず出勤しなくてはならないし、残業が多いので、掃除や洗濯、ごみ捨てをお願いしました。

料理などの台所仕事は、達也がかなり苦手としていたため私の方で請け負いました。

また、トイレ掃除や風呂掃除など面倒な水回りの掃除、買い物全般は私がしていたので大変さを加味すれば、私の方がやや多いかなという感じでした。

繁忙期後、達也は家事をしていたものの、わずか1週間ほどで雑になり、3週間すぎたころにはほとんどやらなくなりました

私は家事をするように伝えたのですが、「俺が忙しいときにできたんだからできるだろ」といわれました。

繁忙期はあくまで達也が忙しいから厚意で家事をしていたのであって、通常のときは共働きなんだから公平に家事分担しなきゃおかしいと伝えました。

すると、「俺だって掃除や洗濯できるけど、得意ではない。こういうのは得意なひとがすべきだ。仕事だって適材適所だっていうじゃないか」と反論してきました。

「家事分担を公平にすることを納得済で結婚したのに、約束したことを破るのは人間としてどうかと思う」と私がいうと、後は「いったいわない」とか「結婚前は~」とかというような水掛け論の喧嘩になってしまいました。

喧嘩をしても家事分担の割合については平行線だったので、極力洗濯や掃除をしないようにしていました。

が、在宅勤務で達也が散らかした部屋や、洗面所に溜まっていく服をみて私が我慢できなくなり、結局私がやっています。

こんな生活になってもうすぐ1年です。

達也の性格自体は嫌いじゃありませんが、家事分担を一貫してしない態度に堪忍袋の緒が切れそうです。

共働き夫婦である以上、家事分担が私に偏りすぎているのはほんとおかしいし、今後もこの生活が続くと思うとストレスでしかありません。

結婚生活1年と短いですし、結婚式で祝福してくれた家族や友達には申し訳なく思ってはいますが、それでももうこんな生活はいやなので離婚しかないと思っています。

家事分担をしない夫と離婚するときの悩みや疑問

再三お願いしても、怒っても喧嘩しても、一向に家事をしない達也に対し、これ以上一緒にいてもストレスになるだけなので、離婚一択と考えているのですが…。

正直なところ悩みというか疑問もあります。

不安を解消するために、いろいろネットで調べているのですが、結局何がなんだかわからなくなってきます。

離婚をネットで調べると法律で決められた離婚事由があるということがわかりましたが、正直なところ私の場合、どれにあてはまるかわかりません。

またなんか矛盾しているような気もするのですが、夫婦がお互い離婚に合意すれば離婚できるという記事もありました。

ということは、達也が離婚を拒否した場合、私は離婚できないのでしょうか。

そもそも達也の言動が原因で離婚するのに、おかしな気もします。

最後に、夫婦の期間が1年と短いので何ともいえないですが、家事分担の負担率がおかしいことを理由に達也から慰謝料を請求することはできるのでしょうか。

結婚生活はかなりのストレスだったので慰謝料を取れるなら取りたいです。

家事や育児に協力してくれない夫との離婚が成立する条件とは?

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【弁護士の見解】共働き夫婦の家事分担がおかしいことは離婚事由になるのか

今回の相談者である亜里沙さんは、夫の達也さんとの家事分担の負担がおかしいことを理由に離婚を希望されています。

お話を聞く限り、亜里沙さんは達也さんと離婚する意思が固まった状況であるかと思いますが、離婚するにあたりインターネットで情報を収集したところ以下3つの不安や疑問を覚えました。

  1. 家事分担の負担率がおかしいことを理由に離婚できるのか
  2. 達也さんに離婚を拒否された場合どうすればいいのか
  3. 家事分担の負担率を理由に慰謝料を請求することができるのか

それぞれ確認していきましょう。

1.家事分担の負担率がおかしいことを理由に離婚できるのか

亜里沙さんは、達也さんと離婚理由として家事分担の負担率がおかしいことを理由に挙げています。

離婚は、離婚理由に関係なく夫と妻が離婚することに合意すれば成立します。

日本の離婚制度は、「なるべく当事者同士で話し合って解決するべき」という考えがあります。

そのため、当事者同士で話し合って離婚を成立させることが大前提です。

一方で法定離婚事由というものも民法という法律で定められているのも事実です。

法定離婚事由を簡単に説明すると、話し合いで折り合いがつかない場合に離婚裁判を起こすために必要な理由のことをいい、次のようなものが定められています。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上生死不明
  • 配偶者が強度の精神病で回復を見込めない場合
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由

法定離婚事由として認められるには、上記の理由によって夫婦関係が修復できないほど破綻してしまった状態である必要があります。

「夫婦喧嘩」、「家事分担」などを理由に夫婦関係の破綻が認められることはかなり難しいです。

亜里沙さんのケースが法定離婚事由にあたる可能性は低いと思われるため、基本的には夫婦間の話し合いで離婚を成立させる方向で進めることになるでしょう。

2.達也さんに離婚を拒否された場合どうすればいいのか

亜里沙さんは達也さんに離婚を拒否された場合の対応について不安を感じていらっしゃいます。

日本では基本的に当事者同士の合意のもと離婚が成立することをお伝えしました。

つまり、いいかえると夫や妻のどちらかが離婚を強く希望していたとしても、相手の了承が無ければ離婚できないともとれます。

相手から離婚を拒否されたときの対応として、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて、話し合うという方法があります。

離婚調停では、家庭裁判所が仲裁役となってくれるので当事者が2人で話すよりもまとまりやすい傾向にあります。

また離婚に同意するかどうかの話し合いの他にも、財産分与や親権、養育費など離婚に関するさまざまな話し合いを並行して行うことができるのでとても有用な手段といっていいでしょう。

その反面、離婚調停では感情任せで自分の主張を展開すると、裁判所側に「このひとは根拠も示さずに、ただ自分の感情のまま自分の通したいことだけ主張している」と判断されてしまい、不利な状況になってしまいかねませんので注意が必要です。

亜里沙さんの場合、達也さんは離婚を切り出されると想定されていないと思いますので、はじめのうちは離婚を拒否する可能性が高いと考えられます。

そのため、何回か離婚の話し合いをしてみて達也さんの様子を確認してみましょう。

複数回話をしてみて離婚の話し合いを一切拒否する態度だったり、話し合ってみるものの論点がずれて話が進まなかったりなどした場合には離婚調停を検討してみると良いかもしれません。

ただし、先ほどもお伝えしたとおり離婚調停は根拠もなく自分の主張を繰り返すだけでは、自分の思うような結果につながりにくいです。

そのため、亜里沙さん自身では手に負えないと思った段階で弁護士に相談することもひとつの手段なので考えてみてください。

3.家事分担の負担率を理由に慰謝料を請求することができるのか

亜里沙さんは達也さんの家事分担の負担率を理由に慰謝料を請求したいとお考えです。

結論からいうと、亜里沙さんが達也さんから慰謝料を得ることは難しいです。

というのも、慰謝料の請求権は「離婚するから」という理由で発生するわけではありません。

離婚の慰謝料は、相手の言動によって権利を侵害されて受けた精神的苦痛に対する賠償金のことをいいます。

つまり、慰謝料を請求する条件として、「自分の持つ権利を侵害されたこと」が無ければなりません。

達也さんが家事をしないということは亜里沙さんの持つ権利を侵害しているとはいえないため、慰謝料の請求権は生じないと考えられます。

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まとめ

今回は共働きなのに家事分担の負担率がおかしいことを理由に離婚を考えている女性の相談事例と弁護士の見解を紹介していきました。

今回の相談事例では、「家事分担の負担率がおかしいことが法定離婚事由に当たらない」「慰謝料は難しい」とお伝えしましたが、状況よっては法定離婚事由になったり、慰謝料を得られたりすることもあります。

法定離婚事由にあたるかどうかや慰謝料を得られるかどうかは自力での判断が難しいので、お困りの際には一度弁護士への相談を検討してみてください。

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