推し活はストレス解消になったり、幸福度が上がったりと、生活に潤いをもたらしてくれます。
自分の状況に見合った推し方をすれば自分にとってプラスのことばかりです。
一方で推しにのめりこみすぎるあまり、金遣いが荒くなったり、周囲に対して攻撃的になったりとマイナス面もあります。
今回は推しを育てるために破産寸前まで投げ銭をした妻と離婚したい夫の相談事例と弁護士の見解について紹介していきたいと思います。
【動画配信者のために破産寸前】スパチャという名の投げ銭でお金を使いまくったので離婚したい!
主人公:進(仮名)35歳
妻:美緒(仮名)35歳
妻の美緒とは学生の頃とある漫画の同人活動を通して知り合いました。
私たちが中高生のころ、同人活動は個人サイトがメインでした。
今では個人サイトの文化が廃れ、Pixivのような投稿サイトやX(旧Twitter)などのSNSでの交流がメインですが、私たちの時代はBBSやサイトやブログに設置してあるコメント、DMなどで交流していました。
美緒は当時バリバリ二次創作にハマっており、精力的に同人活動をしていました。
私は彼女の描く漫画やイラストのファンだったので、投稿があるたびにコメントや拍手などを残していました。
美緒はサイト運営と一緒にブログも更新しており、その内容に中間テストや期末テスト、受験などの話題があったので、「多分同じくらいなんだろう」と思っていました。
美緒との交流がはじまって3か月ほどたったころ、私のPCのメールアドレスに、「冬のコミケに行くからよければ一緒に行かないか」と誘いがありました。
学校や家族には同人にハマっているなんてことはいえず、隠れオタクでした。
親や友達とは共有できない話題で会話ができるひととぜひリアルで会ってみたいと二つ返事で了承しました。
とはいえネットで交流したひとと現実で会うのは初めてのことだったのでやっぱり不安でした。
「高校生じゃなかったらどうしよう」とか、「アニメプリントの服装で来られたらどうしよう」など諸々心配していましたが杞憂に終わりました。
小柄でちょっと恥ずかしそうに笑う美緒に一目ぼれ。
お互い住んでいる場所が近いこともわかり、しばらくして僕から告白し付き合うようになりました。
高校2年生の終わりころから、28歳になるまで約10年付き合い結婚しました。
進路の違いからすれ違いになったり、私の転勤で遠距離になり、何度か別れて他のひとと付き合ったりという時期もありましたが、最終的には「このひとしかいない」と思い夫婦になりました。
10年の付き合いもあったので夫婦になってギャップに苦しむことはないと信じていました。
実際、結婚して4年間はけんかがあってもお互いがお互いを尊重し合える夫婦でいられたと思います。
私たちの夫婦関係にひびが入り始めたのは、美緒がある配信者にハマってからでした。
配信者はアイドル系の感じの男性3人組の音楽系のひとたちです。
美緒は、3人組の中のひとりに対して、すごい熱量でハマりだしました。
推しができたことや、推し活すること自体には問題ありません。
実際、美緒が動画配信者にハマり、Xでそのひとの投稿に対しコメントをしたり、休みなど家にいる間中、その配信者の過去の動画を見ていても不快には思いませんでした。
私自身、何かにハマり始めると、寝ても覚めてもそのことばかりで、できうる限り、ハマっているものやひとについて知りたいと思うからです。
また、ハマり始めの熱量がずっと継続するわけではなく、一定期間を過ぎればある程度落ちつくことを経験上知っていたのであまり心配していませんでした。
おかしいと思ったのは、今までの美緒の推し方と違うと思ったところです。
今まで美緒はさまざまな作品に推しを作って創作活動をしていました。
推しに対する愛情は創作活動というかたちで表されていました。
今回もそんな風に落ち着くのかなと思っていたのですが、創作を始める気配はまったくなく、配信を見て、スパチャいわゆる投げ銭をするばかりでした。
推しの対象が現実には存在しない人物と実際に存在する人物では勝手が違ったのかもしれません。
また、お金の使い方に関しても違和感を覚えます。
今までは推しにお金を落とす場合には、公式グッズを購入したり、アニメなどのDVDや映画を繰り返し見に行ったりなどでした。
しかし、今回は公式グッズが少ないのもあるかもしれませんが、スパチャでお金を消費することがメインです。
スパチャとはスーパーチャットの略で、ライブ配信のときチャットでコメントをする機能で、自分のコメントを目立たせるために行うそうです。
美緒と話したところ、「スパチャは配信者にいくから直接の支援になるし、いろいろ画期的だよね」と。
その時は納得したのですが、美緒の様子をみるとどうやらそれだけじゃなさそうでした。
というのも、このスパチャという投げ銭機能は金額によってコメントの目立ち方が異なるようです。
金額が高いほど、目立つので配信者に認知されたり、配信者がそのコメントを紹介されたりするチャンスが増えるそうです。
つまり、「自分が推しに認知されていること」や「自分がいかに推しに対して貢献しているのか」を他のファンに示せるツールでもあるのです。
美緒は推しの配信者や他のファンに対して自分の存在を知らしめたいという思いでスパチャをしているのだということがわかりました。
正直なところ、直接お金を支援するような行為は、なんとなくホストなどにハマりこむようなものと似ていると個人的に思うので、あまり賛成できません。
しかし自分が稼いだお金ですし、家庭に支障が出ない範囲ならば好きにすればいいと思いました。
その配信者が推しになる前よりも夫婦仲は少しドライにはなりましたが、別に仲が悪くなったわけでもないし、何より美緒を信用していたので特にいいませんでした。
今思えばこの時点でキチンと投げ銭について話せばよかったのだと思います。
仕事が早く終わり、美緒よりも先に帰ったときにポストに手紙が届いていました。
その手紙には督促状と書かれており、差出人は有名な消費者金融からでした。
内容を確認すると、200万円ほど借りており、しかも返済が滞っているという内容でした。
まさに寝耳に水の出来事だったので、美緒の帰りを待ち問いただすと、なんと投げ銭するために使ったそうです。
しかも、夫婦の貯金にも手を出したようで、150万円あった口座の残高はわずか13円でした。
更にいうと、かなり私が発見した消費者金融以外にも、クレジットカードなども限度額いっぱい使い、借金の総額は250万円でした。
それもほぼスパチャで使い切ったようで、正直その金銭感覚が信じられません。
私が問いただしたとき、美緒が心から反省してくれたなら私自身許せたかもしれません。
しかし、美緒は謝るどころか、「これじゃ破産するしかない。でも推し活は続けたい。人生に推しの存在がどんなに大切なのかは進もわかっているはず。返済も推し活も協力してほしい!」といわれました。
あまりの言い分に怒りを通り越して呆れました。
確かに推しは人生を豊かにしてくれます。
でも、自分の金銭状況にあった推し方をすべきだし、自己顕示欲のために投げ銭するなんて私の理解を超えています。
美緒と一生を共にしたいと思いましたが、その気も完全に失せたので離婚を考えています。
そこで教えてほしいのですが、離婚する場合の財産分与は、マイナスの財産も夫婦でわけなければならないと聞きました。
推し活のために相手がした借金についても私が負担しなければならないのでしょうか。
また、これから離婚の話し合いを進めようと思うのですが、離婚が成立する前に美緒の破産が決まった場合、私にも何か不利益がでるのでしょうか。教えてもらえると幸いです。
【趣味への投資は散財?】推し活が原因で夫に離婚を切り出された弁護士の見解
今回の相談者である進さんは、妻が配信サイトの投げ銭機能を使うために借金し、また借金したことに反省の態度を見せないことを理由に離婚を考えています。
離婚するうえで進さんが不安に思う点は次の2点です。
- 自分の欲を満たすためにした借金でも進さんが負の財産を背負わなければならないのか
- 離婚前に美緒さんが自己破産した場合進さんは不利益を被るのか
それぞれ解説していきたいと思います。
自分の欲を満たすためにした借金でも進さんが負の財産を背負わなければならないのか
離婚する場合、財産分与といって夫婦が協力して婚姻期間中に築いた財産をそれぞれの貢献度に応じ分けます。
貢献度に応じてというと、なんとなく収入が高い方に比率が偏るようなイメージを持つ方もいらっしゃるかと思いますが、基本的には半分ずつ分け合います。
財産分与の対象となる財産は、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含まれます。
そのため進さんは自分勝手に美緒さんがした借金の一部を背負わなければならないのかと心配されているのだと思います。
進さんが美緒さんの借金を背負わずに済む方法としては、大きく2つ考えられます。
1つは、美緒さんがした借金は夫婦生活で利用したのではなく、美緒さん自身の欲を満たすために使われたということを立証することです。
基本的に、結婚してから得た資産や負債は夫婦のものとしてみなされます。
しかし例外もあり、夫婦の身分に関係なく取得した財産、または負った負債は、そのひと個人のものになります。
そのため、美緒さんが自己目的のために借金したことを立証できれば、支払わずにすみます。
2つめの方法としては、財産分与をあえてしないという選択です。
財産分与をしない場合、財産は夫婦それぞれの名義どおりのひとのものになります。
そのため財産分与をすると、自分の負債が大きくなるときには、財産分与をしないという選択もあります。
ただし、今回紹介した2つの方法は基本的に美緒さんから同意を得る必要があります。
当事者同士での話し合いでは解決が難しい場合には弁護士に相談したほうが良いと思います。
離婚前に美緒さんが自己破産した場合進さんは不利益を被るのか
離婚の話し合いの最中に美緒さんが自己破産した場合、進さんが不利益を被るケースはあるのでしょうか。
結論からいうと、個人情報は個々に紐づいているため、美緒さんの自己破産によって進さんの信用情報に傷がつくということはありません。
ただし、美緒さんが進さんの同意を得ず保証人に設定している場合には注意が必要です。
というのも美緒さんが自己破産すると、消費者金融から進さんに請求がいくからです。
そのため、借金の保証人に進さんが設定されている場合には、すぐに美緒さんが借入している消費者金融に連絡をとり、「同意なく保証人にされた」ということを伝えてください。
ただし進さん本人が連絡しても、会社側が相手にしてくれない可能性もあるので、そのような場合には弁護士に相談してください。
まとめ
今回は推し活の一環で、高額な投げ銭をした妻と離婚したい男性の相談事例を紹介しました。
夫婦の一方の散財が原因でできた借金は、散財した者が支払うものです。
しかし借金した理由が自己目的であったことを証明するのは難しいですし、勝手に保証人の立場にされた場合の対応も自力では解決できない可能性があります。
そのため妻や夫の借金癖などを理由に離婚したい場合には弁護士に一度相談してみると良いでしょう。
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