「推し活」とは、自分の好きな芸能人やキャラクター、スポーツ選手を応援する活動のことを指します。
誰を推すのか、何を推すのかはひとによってそれぞれです。
しかし、夫や妻に「推し活」が理解されなかったり、また家庭を顧みず「推し活」に専念してしまったりすると、夫婦仲が悪くなったり、最悪の場合、離婚問題につながりかねないものでもあります。
今回は妻の推し活によって、離婚問題に発展してしまった夫婦の体験談を紹介したいと思います。
推しは人生そのもの!夫が私と離婚したい理由
妻:ゆかり(32)
夫:拓(34)
私は結婚する前から、とある舞台俳優のファンである。
ファンクラブは当然入っているし、コンサートや舞台があれば、初日と千秋楽は必ず行く。
全国ツアーとなれば遠征(遠方の舞台に行くこと)の予定を組んで、必ず参戦しているほど好きだ。
「推しの幸せはファンの幸せ」、「推しへのお布施(チケット・グッズ代等を支払うこと)は最上の幸福」。
結婚前は、給料・ボーナスはほぼ推しにつぎ込むという生活を送っていた。
今の夫になる拓には、付き合う前から自分が重度のオタクであることは伝えていた。
「今時、オタクだからって、嫌いになるわけないじゃん」と笑ってくれた。
男性経験も少ない私は、推し活に理解を示してくれる姿勢にフォーリンラブ。
土日祝日、イベントごとすべて推しに捧げていた私の生活は、夫との付き合いによって大きく変化した。
付き合いから1年ほどして、プロポーズされたので二つ返事で受けた。
それから半年。両親への挨拶、結婚式、新婚旅行とイベントが目白押しだったためか、推し活をすることを忘れて生活した。
結婚すると引退(推し活を辞めること)するひとが多くなるというけれど、夫という生涯の推しがいれば納得だなと思ったし、結婚生活は順風満帆だった。
転機が訪れたのは、結婚記念日だ。
一緒にディナーにいって、お腹も心も満たされているとき、夫がプレゼントをくれた。
「以前はあんなに好きだったのに、無理させているのかな」と前置きして、私にくれたのは何を隠そう、推している俳優が主演する舞台だった。
一気にテンションがあがり、思わず夫に抱き着いた。
けっこう値段のはるチケットで良い席なことや久々に推しに会えるという嬉しさもあったが、一番嬉しかったのは夫が私の趣味を理解してくれ、気遣ってくれたこと。
そう、このときは本当に推しへの愛よりもずっと夫に対する愛情の方が強かった。
なのにどうしてこうなった…。
当日、いつもよりも仕事を早くあがって、気合入れてメイクをして舞台を見に行った。
…久々に見た感想は、「推しが尊い」。
後光が差しているんじゃないかっていうくらいの輝き。
夫と付き合って以来、下火だった推しへの愛が一気に戻ってきた。
そっからは、もう坂道をくだるようにまた沼にはまった。
それでもDVD買ったり、グッズ買ったりしても何も言わず、月に1,2回舞台に行くくらいであれば、夫は快く「行ってらっしゃい」と送り出してくれていた。
そんな夫の優しさに完全に甘え切っていた私は、どんどんエスカレートしていった。
Twitter、Instagram等、SNSのチェック、出演イベントへの参加。
とどめになったのは、遠征である。
ちょうど全国で公演される舞台で、仙台・名古屋・大阪・東京・福岡と舞台を見に行ってしまったのだ。
さすがに夫も「ここ1か月全然家にいないよね?」と言ってきたけれど、「私の給料を好きに使って何が悪いの?」と最悪の返し。
温厚な夫もかちんときたのか、「チケットなんか渡さなければよかった」と言い返してきて、後はさんざんな大喧嘩。
その次の日、夫から「理解しようと思ったけど、やっぱり無理じゃない?」と離婚を切り出された。
夫の言い分としては、「今までは生活費をいれてくれていたのに推し活を再開してからはいれてくれなくなった」「家事も折半だといったはずなのに、現状ほとんど自分がやっている」「将来子どものための貯金もしたいけど、その金銭感覚では無理」。
正直ぐうの音も出なかった。
私としては、これからは推し活は適度にすることを約束して離婚を回避したいけれど、「一度世界に入り込むと全然話も聞いてくれないし、その言葉はもう遅い」と言われた。
虫がいい話かもしれないけど、それでもやっぱり夫とは離婚したくない。どうすればいいの。
見解
離婚した夫婦の離婚原因が、「性格の不一致」や「価値観の不一致」であることは少なくありません。
今回の場合、ゆかりさんの推し活が拓さんの許容範囲を超えてしまったということが原因でしょう。
このようなケースでは、まず夫婦双方の合意がなければ離婚することはできません。
つまり、拓さんはゆかりさんの合意を得ずに離婚することは許されていません。
というのも、相手の合意を得ないで離婚するということは、裁判によって離婚が認められる必要があるからです。
日本の離婚裁判は、前提として離婚調停を経なければならず、また離婚原因が民法に定められている法律上の離婚事由にあてはまる必要があります。
今回、拓さんはゆかりさんの行動に対して次のような点を指摘しています。
- 今までは生活費をいれてくれていたのに推し活を再開してからはいれてくれなくなった
- 家事も折半だといったはずなのに、現状ほとんど夫がやっている
- 将来子どものための貯金もしたいけど、その金銭感覚では無理
これらの行動が、法律上の離婚事由にあてはまるのかといえば、難しいといって良いでしょう。そのため、ゆかりさんが拒否していれば離婚自体は先延ばしにできるかもしれません。
しかし離婚を拒否し続けたとしても、拓さんが諦めてくれ、離婚を回避できるということにはならないでしょう。
拓さんが、「当事者同士の話し合いではらちが明かない」と判断した場合、離婚調停を申立て、離婚の話し合いを進めようとする可能性は否定できません。
また離婚調停で拓さんがしっかり自分の主張をする準備を行った場合、調停委員を味方につけることができ、ゆかりさんが不利な立場になりかねません。
離婚調停は裁判所を仲介役とし、話し合いで解決を目指す方法ですが、弁護士等の代理人がいない場合、雰囲気にのまれてしまい、自身の望まないかたちで調停が成立する可能性があります。
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また、離婚調停にまで発展してしまうと、夫婦関係が悪化し、関係修復が事実上不可能の状態になることは少なくありません。
そのため、ゆかりさんが離婚を回避したいと希望するならば、夫婦の話し合いで活路を見出す必要があります。
話し合いを行う上で、気を付けなければならないことは拓さんの感情を逆なでするような不用意な発言を避け、謝意を示し、信頼回復に向けた具体案を提案することが挙げられます。
なかなかハードルが高いかもしれませんが、拓さんの感情を逆なでするような言動は極力避けてください。感情的になってしまうと話し合いが成立せず、拓さんに別居されてしまうことも考えられるからです。
短期間の別居が即時に離婚につながることはありませんが、出張等の特別な事情もなく別居が長期間続くと、裁判上の離婚事由である「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあてはまる可能性が高いです。
話し合いに際して、「冷静にできない」、「感情が先立ってしまう」等不安があるようでしたら、離婚事件に精通した弁護士に一度相談してみることも検討してみてください。
まとめ
今回は「推し活」によって夫から離婚を切り出された女性の体験談とその見解について紹介しました。
推し活によって、仕事を頑張ることができたり、生活が豊かになったりというプラス面がある一方で、度の超えた活動を行ってしまうと家族関係等にひびが入ってしまう可能性があります。
自制することができれば良いですが、難しい場合には夫や妻と話し合ってルールを決め、金銭等の管理をしてもらうことも視野にいれた方が良いでしょう。
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