子育てに関する夫婦間のトラブルは、放置しておくと離婚にまで発展する重要な問題です。
とはいえ子育てに関する意識の違いには男女差があり、夫としてはきちんと果たしていると思っても、妻からしたら役目を果たしていないということもあります。
また育児方針をめぐって夫婦間で争いになり最終的に離婚まで発展してしまうというケースも少なくありません。
今回は子育てが離婚事由になる5つのケースについて解説していきたいと思います。
子育てや家事に関する意識と実際の分担率は大きく違う
日本では働き方改革や少子化政策、また共働き世帯の増加によって、男性の育児や家事の参加に関する意識が高まっているように思えます。
実際、「男性は外で働き、女性が家事や育児を担うべき」と考える方は、平成4年(1992)の調査では、賛成が60パーセントほどありましたが令和4年(2022)の調査では33.5パーセントと約半分に減っています。
このことから、子育てや家事が女性のものであるという考える方が少なくなったといえます。
しかし意識が変わったからといって、現実がそれに追いついているとはいいがたいのが現状です。
実際に、令和3年(2021)に国が行った社会基本調査の男女別週平均の子育てや家事などに充てる時間を確認すると、男性が51分に対し、女性は204分と依然として女性の方が多く行っているのが分かります。
また、育児休暇の取得率に関しても大きく男女差があります。
令和4年(2022)に行った調査によると、男性の育児休暇の取得率が17.1パーセントに対し、女性の取得率は80.2パーセントと大きく上回っています。
これらを踏まえて考えてみても、依然として子育てや家事は女性がメインであることが現状です。
【参考文献】
『新たな生活様式・働き方を全ての人の活躍につなげるために~職業観・家庭観が大きく変化する中、 「令和モデル」の実現に向けて~』13,14ページ参照
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/zentai/pdf/r05_tokusyu.pdf
『男女共同参画社会に関する世論調査(令和4年11月調査)』家庭生活等に関する意識について参照
子育てを理由に離婚問題に発展!?トラブルになりがちな5つのケースを紹介
夫婦間の子育てに関するトラブルは、さまざまなケースが考えられます。
今回は、その中でもトラブルになりがちな5つのケースについて紹介していきたいと思います。
ケース①子育ての参加に関する夫婦間の認識の違い
夫婦間で起こり得るトラブルとして、「子育てへの参加」に対する認識に違いがある場合が考えられます。
当然のことですが、子育てに対する考え方はひとそれぞれ異なります。
そのため夫婦の一方が、「充分子育てに参加している」と感じていたとしても、もう一方が、「全然子育てに参加してくれない」と考えていると、すれ違いが生じます。
子育てへの参加が不十分だと感じた時点で、話し合いをして認識のズレを修正できればトラブルが大きくなる前に解決できるのですが、なかなかそううまくはいきません。
「夫婦なんだからいわなくてもわかるだろう」、「不満に思っていることを察してほしい」、「相手が自分で気づかないと意味がない」などと思い、不満を伝えないでいると相手を信頼できなくなり、夫婦仲が悪くなることが少なくありません。
ずっと認識がズレたまま、夫婦の一方が我慢した結果離婚に発展することがあります。
<H3>ケース②夫が子育てに協力してくれない
夫婦間の子育てトラブルとして、「夫が協力してくれない」ということがあります。
子育てに対して夫婦がどう協力し合っていくのかは、夫婦の状況によって異なります。
夫婦が納得のうえ、妻が子育てを多く負担するのであれば問題ないです。
しかし、妻が納得していないのに、「母親だから」「収入面で協力しているから」と子育ては妻がやって当然のような態度を取られたら不満を覚えてしまうのも無理はありません。
特に子どもが乳幼児の場合、授乳や食事、お風呂、寝かしつけだけでなく、子どもが危険な行為をしないよう四六時中目が離せず、神経を使います。
そんな状態なのに、夫が子どもの相手をせず自分のやりたいことばかりやっていると、妻の堪忍袋が切れ、最終的に離婚に発展するトラブルになることもあります。
ケース③子育て方針をめぐり夫婦が対立する
夫婦間のトラブルとして、子育て方針をめぐって対立してしまうというものがあります。
子育ての方針に関するこだわりは、大なり小なり夫婦それぞれが子どもの頃に受けていた教育が影響します。
そのため当然夫婦のあいだも、子どもに受けさせたい教育が異なります。
「勉強のことは考えず、子どものうちはのびのび遊ばせたい」と考える方もいらっしゃると思いますし、「将来の選択肢が広がるように幼いうちから学ばせたい」と考える方もいらっしゃるでしょう。
子育て方針は、虐待やネグレクトにあたるような行為をのぞき、どれも正しく、1つの正解がありません。
子育て方針の違いは、夫婦どちらも子どものためを思っているため、相手の意見を取り入れたり、妥協したりすることが難しい問題です。
ケース④子育てに関するトラブルはすべて妻任せにする
夫婦の子育てのトラブルとして、子どもの体調不良や学校行事などに関することはすべて妻任せにすることです。
現在結婚している夫婦の多くは、共働き世帯です。
夫婦が同じ条件で仕事をしているのであれば、妻だけが子育てに関するトラブルの対応をするのは不公平といえます。
もちろん、夫婦がお互い納得していれば話は別ですが、漠然と保育園や学校行事、子どもの友達間のトラブルは妻の役目と押し付けるのは違います。
ケース⑤義理の実家が子育てに干渉しすぎる
夫婦間のトラブルとして、義理の実家が子育てに干渉しすぎることがあります。
義両親との関係性にもよりますが、子育ての経験者だからとケチをつけたり、教育方針にそぐわない言動をされたりするとありがた迷惑と感じる方も少なくないでしょう。
とはいえ、夫や妻が義両親をいさめるのであれば、過干渉であっても我慢できる方もいると思います。
問題は、夫や妻が義両親の考えに同調し責めてきたり、「なんとかしてよ」と苦言を呈しても「まあうまくやって」と取り合ってくれなかったりするケースです。
この場合、義理の実家の過干渉と夫や妻の対応が許せず、離婚に発展してしまう可能性があるでしょう。
子育てを理由に離婚する場合「法的な離婚事由」にあたるのか?
子育てに関する夫や妻の言動に我慢ならず、離婚を考えた場合、法的な離婚事由にあたることはあるのでしょうか。
結論からいうと子育てに対する考えの違いなどが法的な離婚事由として認められることは難しいです。
法的な離婚事由に該当するという状態は、「夫婦関係が壊れてしまい修復ができない状態」のことを指します。
夫や妻の態度が子育てに非協力的であったり、教育方針の違いで夫婦仲が悪くなったりという場合であっても、そのこと自体がただちに夫婦関係が破綻している状態とはいえません。
また子育てに協力するとは、子どもを養育することだけでなく、金銭的なサポートも含まれます。
つまり、夫や妻が子どもの養育に非協力的な態度をとっていても、家計にきちんとお金を入れていれば、法的な離婚事由に該当する行為ではないのです。
そのため、夫や妻と子育てに関する言動で離婚したい場合には、相手の合意を得て離婚の成立を目指すことになります。
家事や育児に協力してくれない夫との離婚が成立する条件とは?子育てを理由に離婚したいときに注意すべき5つのポイント
夫や妻の子育てに関する言動を理由に離婚したい場合、注意すべきポイントが大きく5つあります。
ポイント①感情的にならない
離婚の話し合いをする場合、できるだけ感情的にならないことが大切です。
相手が挑発してきたとしても、同じ土俵に上がらず平静を保つことを努めましょう。
離婚の話し合いを感情的に進めても、相手との溝が深くなり争いが大きくなってしまう可能性が高いです。
離婚を早く成立させるには争いをできるだけ避けることが重要になります。
もちろん争いを避けたいからといって、相手が提示する離婚条件すべてに同意する必要はありません。
相手の提示した条件に納得いかないときには、真っ向から否定するのではなく、具体的に相手の条件の問題点を挙げ、自分の正当性を論理的に主張することが大切です。
ポイント②離婚したいと思った相手の言動をまとめておく
子育てをめぐり夫や妻と離婚したいときの事前準備として、相手の言動を時系列でまとめておくと良いでしょう。
また、その言動が会話ベースではなくラインなどのSNSやメールでのやりとりのときには、信ぴょう性を挙げるために、やりとりを画像にして残しておくことが大切です。
ポイント③子どもの前で相手を罵らない
子育てを理由に離婚したい場合、子どもの前で夫や妻の悪口をいうことは避けてください。
子どもが幼いから相手を罵っても理解できないだろうと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、子どもは言葉の意味を理解していなくても、その言葉の裏に悪意があることは理解している可能性があります。
両親の不和を子どもが感じることは、精神に大きな悪影響を及ぼすことがあるため、注意しましょう。
ポイント④養育費の取り決めは必ず行う
離婚する場合、養育費の取り決めは必ずしてください。
子どもの養育にはお金がかかります。
早く離婚したい一心で養育費を取り決めなかった場合、金銭面の問題で子どもの将来の選択肢を狭めてしまう可能性があります。
そのため、最低限養育費の取り決めは書面で残し、できることなら養育費の条件は強制執行のできる公正証書にしておいてください。
養育費は子どもの年齢によって支払い期間が10年を超えることもざらにあるため、途中で不払いになることが少なくありません。
養育費の取り決めを強制執行のできる公正証書にしておけば、不払いになったときに給料差し押さえなどの手段を講じることができますので検討してみてください。
ポイント⑤離婚後の面会交流を設定しておく
子どもの親権者となり離婚する場合、相手が面会交流を望むのであれば、子どもの負担にならないよう設定してください。
面会交流は、子どもと別々に暮らす非同居親の権利です。
もちろん子どもの気持ちが最優先なので、嫌がっているのに無理やり交流させる必要はありません。
非同居親と会わせたくないからといって、相手の悪口を吹き込んで子どもの気持ちをコントロールしようとしたり、子どもが望んでいるのに会わせなかったりするような行為は、ある意味精神的虐待ともいえるので避けましょう。
まとめ
今回は子育てを巡り離婚トラブルになりがちな5つのケースと注意点などについて紹介していきました。
子育てに関する相手の態度が原因となって離婚を考えた場合、冷静に話し合って自力で離婚ができればよいのですが、実際のところ難しいです。
夫婦間での話し合いがうまくいかないときには、離婚の交渉を弁護士に任せることもできます。
弁護士に依頼した場合、あなたの望む条件で離婚できるよう尽力してくれますので、自力での解決が難しいと感じたときには検討してみてください。
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