その夫、不良債権につき~なにもやらない夫と離婚したい~

夫婦になってはや10年。子どもは2人を抱えて、ワーキングマザー。
毎日毎日、仕事に家事に育児にと走り回ってもうしんどい!
なのに、夫は「家事や育児は女がやることだろ」と協力してくれない…
え、今令和ですけど昭和からタイムトリップですか、タイムトラベラーですか?
もうだめ、この食っちゃ寝の不良債権と離婚したい!

家事に育児は女性の仕事の考えはいつから定着したの?

厚生労働省では、2010年に「イクメンプロジェクト」を開設し、男性の育児参加を推進しています。
とはいえ、男性は外でお金を稼ぎ、女性は育児等、家のことをになうという考えは、年齢層が高い方を中心にまだ根強く残っています。
家事や育児は女性の仕事という固定観念は、古くからある考えだという印象を持たれがちですが、決してそうではありません。

250年くらい前の江戸時代には、子育ての責任は男性にありました。
今でいう、イクメンたちが幼い子どもを背負って井戸端会議なるものをしているという記録もあります。
江戸時代というと、鎖国や武士道というイメージが強く、なんとなく男尊女卑という印象が先行しますが、庶民の暮らしは、かなり開放的でした。
江戸後期にあたる天明年間には「父兄訓」という育児指南書まで発刊されています。
また、江戸の末期に訪れた欧米人は、父親が育児に参加している日本の姿をみて、とてもおどろいたという記述も残っています。
家事や育児は女性の仕事だという考えは、江戸時代にはなく、明治後期から大正時代にかけて、じょじょに浸透したものだという説があります。
恐らく、その後第1次世界大戦や第2次世界大戦といった、大きな戦争が重なり、兵隊として招集される男性の発言権が上がったのではないかと思います。
つまり、現在のイクメン推進の社会は、原点回帰ともいえる現象なのかもしれませんね。

何もやらない夫を理由に離婚は可能?

前章では、「家事や育児は女性の仕事」のルーツについて考えてきました。
今回は、「育児」や「家事」をしない夫と離婚できるのかを考えていきたいと思います。

育児・家事を理由に離婚したい

厚生労働省が発表した平成30年度の「厚生労働白書」では、専業主婦の割合がおよそ3割でした。昭和年間は6割くらいで推移していたので、平成、令和と共働き世帯が増えているといえそうです。
共働き世帯が増加していく中で、家事や育児の比重が女性に偏りすぎていると、当然家庭に不和が生じる可能性が高くなります。
役割分担が偏った状態がしばらく続くと、諍いが増え、最終的に離婚につながってしまう恐れがあります。
とはいえ、夫が家事や育児に非協力的ということで、一方的に離婚を成立させることが出来るのでしょうか。
夫の同意なく離婚するためには、民法で定められている法定離婚事由に当てはまる必要があります。
法定離婚事由は以下になります。

  1. 不貞行為
  2. 悪意の遺棄
  3. 3年以上生死不明
  4. 配偶者が重度の精神病で回復が見込めない場合
  5. その他重大な継続をし難い重大な事由

夫が家事や育児に非協力的であることは、「その他重大な継続し難い重大な事由」にあてはまるのでしょうか。
民法では、夫婦に扶助・協力・同居の義務を定めています
家事や育児をしないということは、扶助協力の義務違反に該当する可能性があります。
とはいえ、法定離婚事由に当てはめるためには、「家事や育児をしなかった」ことが婚姻関係の破綻につながったということを証明しなければなりません。
これを証明するのはとても難しいです。

というのも、夫婦の役割分担は、それぞれの事情で異なるので、「これが正解だ」と言うものがありません。
定義が夫婦によって違うあいまいなものなので、調停を経て訴訟を起こしたとしても、法定離婚事由に相当しないと裁判所に判断され、離婚を棄却される可能性もあります。
そのため、なにもしない夫と離婚したい場合には、夫婦の話し合いで成立する協議離婚を選択した方が現実的と言えると思います。

一度夫婦で、役割分担について話合いをおこない、それでも折り合いがつかない場合には家庭裁判所に調停の申し立てをしても良いかもしれません。
夫の行動に改善がみられる場合には、夫婦関係調整調停(円満)というものもありますので、一度検討してみてはいかがでしょうか。

こんなときは離婚できるかも?~何もやらない夫へ離婚届を突き付ける~

前章では、夫が家事や育児をしないだけでは、一方的に離婚を成立させるのは難しいとお伝えしました。
とはいえ、何ごとにも程度と言うものがありますよね。
「夫の何もしない具合」が離婚事由になることもあります。
では具体的にどのようなケースなのでしょうか、考えていきましょう。

  • 妻が体調を崩しているのにもかかわらず、家事や育児に協力せず、暴力や暴言を吐く
  • 長いこと仕事をしていないのに、育児や家事をしない
  • 夫が家事や育児に協力しないことを理由に、別居し、長期に渡った

妻が体調を崩しているのにもかかわらず、家事や育児に協力せず、暴力や暴言を吐く

普段、家事や育児をになっている妻が、体調を崩したときに、家事や育児をやらずに、不機嫌になり暴言を吐くことはモラルハラスメントにあたります
更に、子どもに手をあげたり、いら立って妻をたたいたりすることはDVです。
モラルハラスメントのケースでは、暴言を言った動画や音声があると、有力な証拠になり得ます。
また、暴力に関しては、傷やあざなどの写真とともに、医師による診断書があると証拠性が増すでしょう。
モラルハラスメントやDVは両方とも、法定離婚事由の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当し、離婚することが可能です。
なお、暴力はエスカレートして日常的におこなわれる可能性もあるので、別居を視野に距離を置いた方が良いかもしれません。

何も理由がなく長いこと仕事をしていないのに、育児や家事をしない

夫婦には扶助協力の義務があります。
夫が病気や怪我などで、止むを得ず仕事や育児や家事をしない場合は別として、仕事も育児も家事もしない状態は、法定離婚事由のその他婚姻を継続し難い重大な事由に該当し、離婚することが可能です。
加えて、夫が働かないと生活が困窮するのがわかっているにもかかわらず、仕事をしないのは悪意の遺棄にあたることもあります。
夫の収入がないと証明できる通帳や、日付入りの日記、メモなどが有効な証拠になることがあります。
ただし、夫の働いていない状態が短期間ですと、認められない可能性もあるので注意が必要です。

夫が家事や育児に協力しないことを理由に、別居し長期に渡った

夫の行動に我慢できず、別居し、長期間にわたった場合には「婚姻関係が破綻している」と判断され、比較的スムーズに離婚できることが多いです。
ただし、1,2年では認められにくく、5年以上の別居が目安だと思います。
別居においての注意点は、腹立たしいとはいえ夫に黙って出ていかないことです。
夫の了承なしに別居を開始すると、「悪意の遺棄」ととられ、こちら側が有責配偶者になる可能性があります。
責配偶者になると、自身の意志で離婚することができなくなるので注意しましょう。

以上が、夫が何もしないことを理由に離婚出来る可能性が高いものでした。

体験談

前章までは何もしない夫についてさまざまな観点から、解説をしてきました。
今回は、ある女性の体験談をご紹介したいと思います。

私は家政婦?おかあさん?~靴下も片付けない夫との離婚~

妻:かなめ(38)職業:会社員 年収:500万円
夫:しょうい(45)職業:会社員 年収:800万円
娘:まりや(12)小学6年生
息子:いつき(11)小学5年生

夫だったしょういとは、会社の上司のすすめでお見合いし、結婚しました。
結婚時、「働く女性でいてほしい」と彼に言われ、また私も仕事をするのが好きだったので、了承し、共働きとなりました。
結婚からほどなくして立て続けにまりやといつきを産みました。
年子の育児は想像以上に大変で、まりやが5才になるくらいまでは、それこそ猫の手も借りたいくらいの忙しさでした。
夫に少しくらい協力してくれても良いのに、と伝えていましたが、「俺はお前の倍以上稼いでいる」と返され、猫の手にもなりませんでした。
そのくせ、スーパーで惣菜を買ったり、ルンバを購入し、掃除の手間を減らすと、「女として情けなくないのか」と怒ってきます
そういう本人は靴下を玄関に脱ぎ散らかし、ごみの分別もできない男です。

こんな男とはそうそうに別れたいと、常々思っておりましたが、当時、私は契約社員として働いており、収入が安定しておらず離婚を口に出すことが出来ませんでした。
また、子どもたちに、主にお金の面で苦労を掛けさせたくないことも相まって、ずっと我慢してきました。
しかし、まりやが小学3年生の頃に、正社員として雇用されることが決まりました。
仕事は忙しくなりましたが、その分収入も増えました。
また、子どもたちが小学校高学年になると、洗濯の取入れや、お風呂掃除、お米を炊くことなんかを率先して手伝ってくれるようになり、とても楽になりました。
私の誕生日には、姉弟でカレーを作ってくれ本当に嬉しかったです。
先日、夫がいないときに、「もう無理」とひとりごとをいったところ、聞いていた子どもたちが、「ママについてくから離婚してもいいよ」と言われました。
子どもたちは私の様子をずっと見ていてくれていたようで、「ママの負担を減らしたい」と言う気持ちでお手伝いをしてくれるようになったとのことでした。
真剣に考えてくれた子どもには、離婚したらどうなるかを伝えないといけないと思いました。
そのため、名字が変わること、学校を転校しなければいけないこと、家計が厳しくなるので我慢させてしまうかもしれないことを伝えました。
すると、若干の不安を覚えたようですが、それでも「ママの好きにしていいよ」と言ってくれました。

私が夫に離婚を持ちかけたところ、夫にとって離婚は寝耳に水だったようで、話し合いは拒否されました。
そこで家庭裁判所に調停を申立て、離婚を成立させました。
共同財産は折半で、夫は自宅だった賃貸マンションに住み続ける代わりに、私たちの引っ越し代を捻出してくれることになりました。
子どもたちの親権については、彼らが「私と住みたい」と言ってくれたので無事取得することが出来ました。
養育費は月々10万円という取り決めもおこないました。
現在私は、一時的に実家に身を寄せて子どもたちと暮らしています。
結果的に学校を転校させる結果となってしまいましたが、これからは子どもに苦労させないように仕事と育児を両立できるよう頑張っていきたいと思います。

まとめ

今回は何もしない夫との離婚についてお話を進めてきました。
ワンオペ状態の育児はとても苦しいです
今回の体験談のように、子どもがある程度大きくなり、家事などの手伝いをしてくれ、軽減される可能性もありますが、幼い子どもですと、なかなかうまく行かないことがあるかもしれません。
そういうときは、ひとりで思いつめずにまずは、周囲で信頼できるひとに相談して見ると良いと思います。
ご自身の実家に頼れるならば、頼っても良いのです。
ワンオペ育児で追い詰められて、心の病になり、育児放棄をしてしまったり、虐待をしてしまったりする可能性もあります。
子どものために我慢するのではなく、子どものために離婚を決断することも必要かもしれません。
自分自身の状況を冷静に把握して、より良い選択をしていただければと思います。

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