【弁護士監修記事】離婚後も自宅に妻が住む場合の住宅ローンはどうなる?対応方法を徹底解説

離婚する場合によくあるトラブルとして、住宅ローンの問題があります。

住宅ローンは1,2年で完済できるものではなく、数十年単位で返済していくものです。

そのため、引き続き自宅に妻が住むとなった場合、ローンの名義人などによっては離婚後もトラブルになりえます。

今回は、離婚後も自宅に妻が住むケースについて詳しく解説していきたいと思います。

【弁護士監修】離婚したら財産分与の取り分は?住宅ローンの支払いはどうなるの?

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離婚後も妻が自宅に住むと選択する理由とは?

離婚後、妻が自宅に住む理由の多くは、子どもの養育環境を変えたくないというものだと思います。

両親の離婚によって、引越しした場合、子どもにとって次のようなデメリットがあります。

  • 学校を転校しなければならない
  • 友人関係を新しい場所で構築しなおさなければならない
  • 住環境が大きく変わってしまう
  • 引越し前後の作業が増えてしまう

環境が変わることはその子どもの適応能力によって異なる部分もありますが、ストレスを感じるケースが多いです。

大人であっても転職などによって新しい環境に入り、慣れるまで時間がかかることを考えれば、子どもにとっては更に負荷がかかるものであろうことは想像にかたくないでしょう。

どもの養育環境を変えないことの重要性は、家庭裁判所で親権者の適性を確認する調査などでも考慮されるひとつの要素でもあります。

なお、親の目線で考えたときでも、「通いなれた学校や保育園などの方が配慮してもらいやすい」、「子どもの人間関係を把握しやすい」などのメリットがあります。

離婚後に妻が自宅に住む方法①住宅ローンを元夫に支払ってもらう

妻が離婚後も自宅に住む方法として、元夫に住宅ローンを支払ってもらうことが考えられます。

住宅ローンの支出を考えずに自宅に住み続けることができるのであれば、最善策ともいえそうです。

ただし、「ただより高いものはない」という慣用句があるように、夫が「ローンは支払うから自宅に住んでいいよ」という言葉をそのまま信用して確認を怠ったり、取り決めを書面にしておかなかったりすると、後になってトラブルになることがあります。

具体的に、住宅ローンを元夫に支払ってもらうときのリスクとして次のようなものが考えられます。

  • 銀行など夫が借入している金融機関から告知義務違反とみなされる
  • 元夫が再婚や借金などを理由にローンの支払いをしなくなる
  • 元夫が住宅ローンの返済中に死亡する

それぞれどのようなデメリットがあるのか確認していきましょう。

銀行など夫が借入している金融機関から告知義務違反とみなされる

元夫に住宅ローンの支払いを任せて自宅に住むリスクとして、元夫が離婚時点で行うべき手続きをしないことで、銀行などローンの借入先の金融機関から告知義務違反とみなされるケースです。

住宅ローンは、ローン返済者と銀行などの金融機関のあいだで「住宅ローン契約書(金銭消費貸借契約)」を結びます。

住宅ローン契約書の中に、「契約時の届出が変更になった場合、変更内容を貸主に報告する」という決まりがあります

つまり、婚姻中に住宅ローンを結んだのであれば、離婚する場合、貸主に報告する義務があります。

また、居住地に関しても自宅とは別の場所に住んでいるので、現住所などを報告しなければなりません。

これらの報告を元夫が怠り、またそれを貸主である銀行などの金融機関が知ってしまった場合には、告知義務違反としてローンの一括返済を求められる可能性があります。

「告知義務違反したのは元夫なのだから、そっちに連絡がいくだけでしょ?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、元夫が一括返済に応じなかったり、貸主にまったく連絡しなかった場合には、あなたの住んでいる家を差し押さえされてしまう可能性があります。

また、あなたが住宅ローン契約書の保証人になっていた場合には、あなたに返済義務がのしかかってくるケースもあるのです。

 

元夫が再婚や借金などを理由にローンの支払いをしなくなる

元夫に住宅ローンを支払ってもらうリスクとして、元夫側の事情や金銭状況によって、自宅に住み続けられなくなる可能性がある点です。

まず考えられるのが、再婚です。

再婚すると、新しい家族との生活があるため、ローンの支払いに関してトラブルになる可能性があります。

再婚の場合、新しい家族のことを考えて信用情報に傷をつけるようなローンの支払いを滞納するといった行動をとらないかもしれません。

しかし新しい家族が増えたことで、元夫があなたに対し、「再婚したから今後のローン分は負担してほしい」、あるいは「全額ローンを支払うのが難しいので一部負担してほしい」ということは充分想定できます。

元夫のいうことにあなたが納得できず、ローンの負担をしなかった場合、元夫は最終手段として売却を選択することもあり得ます。

不動産を単独名義で取得していた場合、その名義人の財産となるので、売却など自由に不動産を処分することができます

つまり、元夫はあなたの同意を得なくても、自宅を売却することができるのです。

「自宅に住んでいるのは自分なのに理不尽」と感じるかもしれませんが、このケースの場合、あなたは元夫に対し、主張できる権利がないため出ていかざるを得なくなります。

再婚以外にも、元夫の収入状況が悪くなり、ローンを支払えなくなってしまう可能性もあります。

ローンの支払いが滞ると、銀行など金融機関は担保にしている物件の差し押さえを行うため、自宅に住み続けることができなくなってしまいます。

元夫が住宅ローンの返済中に死亡する

夫に住宅ローンを支払ってもらうリスクとして、元夫が住宅ローン返済中に死亡するケースです。

住宅ローン自体は、団体信用生命保険(団信)に元夫が加入していれば、基本的に免除されます。

ただし理由が、団信に加入してから1年以内の自殺や反社会的行為が原因によって死亡したなどの場合には、支払いが免責されず、子どもが引き継ぐことになるので注意が必要です。

住宅ローン以外にも、元夫が再婚していた場合、トラブルがかなり複雑になります。

というのも、不動産名義が元夫の場合、自宅は法律上元夫の財産としてみなされます。

再婚していない場合、元夫とあなたのあいだに子どもがいればその子が承継することになるので、大きなトラブルにならない可能性が高いです。

しかし元夫が再婚している場合、現配偶者が相続人になります。

また現配偶者とのあいだに子どもがいる場合にはその子も相続人になります。

あなたが「夫が死亡しても引き続き自宅に住み続けたい」と希望したとしても、心情的にいって現配偶者のひとが考慮してくれるとは限りません。

「賃料を支払ってくれるなら子どもが成人するまで住んでもいい」といってくれるのならば御の字で、話し合いにならずお互いが権利を主張し続けると、泥沼の相続争いに発展してしまう可能性があります。

【相談事例】共有財産に不動産が含まれる場合の財産分与はどうすればよい?

離婚後に妻が自宅に住む方法②住宅ローンを妻が支払う

離婚後に妻が自宅に住む方法として、夫が支払っていた住宅ローンを引き継ぎ、自分でローンを支払う方法があります。

自宅に住んでいる人間が、そこで発生した費用を支払うのは非常にシンプルで分かりやすいのでトラブルになりにくいようにも思えます。

妻が住宅ローンを支払うには、自宅の不動産名義を夫から妻にすることと、住宅ローンの借り換えを行うことが必要です。

住宅ローンの支払い義務者を夫から妻に変更することは、言葉にすると簡単そうにもみえます。

しかし実際は、ローンの借り換えの審査に通るかどうかが非常に大きなハードルになります。

婚姻中の住宅ローンを夫単独で組んだ場合、銀行などの金融機関は、夫自身の収入や信用情報などをもとに住宅ローン契約を結びます。

支払い義務者が夫であることが前提で住宅ローン契約を結ぶのですから、当然「離婚するので支払い義務者を妻名義に変更してください」ですむ話ではありません。

ローンの借り換えをする場合、金融機関は妻の年収や信用情報を確認し、住宅ローンを組めるかどうかを判断します。

つまり、収入が低かったり、安定的でなかったり、また信用情報に傷がついていたりという場合には、金融機関から「住宅ローンを組めない」と判断され審査落ちしてしまう可能性があります。

ローンの借り換えは、安定した収入が非常に重要になるので、専業主婦やパートで収入が低いなどのケースでは利用が難しい手段といってよいかもしれません。

そのため、離婚前に収入面についてある程度準備しておいた方がよいでしょう。

離婚後に妻が自宅に住む方法③元夫と賃貸契約を結ぶ

離婚後に妻が自宅に住む方法として、元夫と物件の賃貸契約を結ぶことが考えられます

つまり元夫を貸主、自宅に住むあなたが借主という関係になるということです。

元夫との賃貸契約であれば、住宅ローンの借り換えの審査などは必要ありません。

また、賃料を支払って自宅に住むことは自宅の利用を巡って元夫ともめたときに非常に大きな意味を持ちます。

賃貸借には無料で貸し借りする使用貸借とお金を支払って貸し借りする賃借があります。

使用貸借は、無料で利用できるので一見するととてもお得なように思えますが、相手が自宅を売却したり、相手がローンを滞納したりした場合に、「退去したくない」といっても、法的に保護されていないので、強制退去しなければならないといったリスクがあります。

一方で、賃料を支払って借りた場合、「民法」や「借地借家法」という法律で手厚く権利が保障されています。

賃貸借契約を結んでいると、元夫が「退去」を求めてきたとしても、賃借人の権利を行使できるので、立ち退き料を求めたり、立ち退きの交渉を行ったりすることができます

つまり、相手の都合で家を失うというリスクが低くなるのです。

とはいえ、状況によっては後になって元夫に「賃貸借契約なんて結んでない!」といわれ

トラブルに発展する可能性もあります。

相手が言い逃れされないよう、賃貸借契約を結んで住み続けたいと考えたときには、事前に賃料などの条件を話し合って、契約内容を書面に残しておくと良いでしょう。

まとめ

今回は、離婚後、自宅に妻が住む方法や注意点について解説していきました。

女性は育児や家事などを担う割合が多く、同年代の男性よりも年収が低かったり、フルタイムで働けなかったりというひとは少なくありません。

そのため、離婚して自宅に住む場合、「相手が住宅ローンを支払って無償で住めるならその方がいい」と考える方もいらっしゃるでしょう。

しかし、無償で住むことによって元夫の状況次第で自宅に住めなくなるというリスクもあるので、離婚した後も自宅に住み続けたいと考えている方は、メリットとリスクを考えて対策をしていくと良いと思います。

夫婦の話し合いではなかなかまとまらないこともあるので、お悩みの場合には弁護士に相談することも検討しましょう。

 

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