【離婚後の親権に関する法律が変わる?】共同親権が導入された場合の問題点を解説!

2024年の国会で審議を予定されているものとして、共同親権があります。

共同親権が国会で承認された場合、実に77年ぶりの改正になるといわれています。

今回はそもそも共同親権とは単独親権と何が異なるのか、認められた場合の問題点などを解説していきたいと思います。

共同親権と単独親権の違いとは?

共同親権はドイツやフランスやイタリアなどのヨーロッパを中心に導入されており、近年日本でも度々話題になり、注目を集めています

とはいえ、離婚した子どもの父母の一方が親権を持つことと、共同で親権を持つことで、具体的に何が変わるといわれると、はっきり答えられる方は少ないと思います。

共同親権と単独親権の違いについて確認していきましょう。

 

■親権を持った場合に行使できること

 

①居所指定権

②財産管理権

③法定代理権

④同意権

⑤契約取消権

 

親権者は上記の権利を持つことができます。

共同親権の場合、両親ともにこれらの権利を行使することができますが、単独親権の場合、基本的に親権を取得した者でしか権利を行使することができません

とはいえこれらの権利が具体的に日常生活でどのように関係しているのかわからない方もいらっしゃるかと思いますのでそれぞれ説明していきましょう。

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①居所指定権

居所指定権とは、簡単にいうと子どもと一緒に暮らせる権利のことを指します。

もう少し詳しくいうと、親権者が指定した場所に子どもの居所を定めなければならないという権利です。

共同親権が認められた場合、両親ともに居所指定権を行使できるようになります

単独親権では基本的に親のどちらか一方と暮らしていくことになりますが、共同親権の場合週に〇日は母親、週〇日は父親のもとで暮らすといったことができるようになると予想されます。

実際に共同親権を導入しているドイツでは、裁判所が父母の状況を調査して子どもがそれぞれの親と過ごす比率を決めています。

離婚後の子の養育への父母の関与の在り方に関するドイツの法制度等 ― 共同親権を中心に ― 西谷祐子 8ページ

②財産管理権

共同親権が認められた場合、子どもの財産管理権を両親ともに持つことができると予想されます。

現在の単独親権では、親権がないと子ども名義での銀行口座の開設ができない可能性が高いです。

またどもが祖父母などの相続や贈与によって取得した財産がある場合、管理できるのは親権者のみとなっています。

③法定代理権

共同親権が認められた場合、両親ともに未成年の子どもの法定代理権を持つことができると考えられます。

法定代理権とは、社会経験がなく精神が未成熟な未成年者が、不利益を被らないよう、親権者が本人に代わり契約などの法律行為をすることをいいます。

例えば未成年者の子どもが相続人になった場合、本人が相続人間の話し合いや手続きを行うことができないため、親権者が法定代理人として行うことになります。

また、子どもが他人に怪我をさせられたときに治療費や慰謝料などの損害賠償請求したい場合も、親が法定代理人となって相手と交渉したり、状況によって裁判を起こしたりすることもあります。

法定代理権は、原則として親権者が持つことのできる権利なので、単独親権の場合、非親権者では対応できない可能性が高いです。

④同意権

共同親権になった場合、両親に同意権が付与されることになると思います。

未成年の子どもは、契約などの法律行為を単独で行うことが法律上許されておらず、必ず親権者などの同意が必要になります。

例えばアルバイトについて考えてみましょう。

雇用形態関係なく、仕事をする場合雇用するひとと雇用されるひとのあいだには必ず雇用契約が結ばれます。

子どもが成人の場合、労働条件など契約内容を把握する能力があるとみなされるので、働くために親の同意を得る必要はありません。

しかし未成年の場合、自分だけで契約を結ぶ能力がないと判断されるのでアルバイトをする際には必ず親の同意を得て行う必要があります。

アルバイトの他にも、中学や高校で修学旅行に行く際には旅行会社と旅行契約を結ぶため、親権者の同意が必要となります。

単独親権の場合、非親権者は同意権を行使することが難しいと思われます。

⑤取消権

共同親権になった場合、両親に取消権を付与されることになるでしょう。

取消権とは未成年者の子どもが自分の意思だけで契約のような法律行為を行った場合、親権者がその法律行為を取り消すことができる権利をいいます。

取消権を行使する具体的なケースとして、子どもが無断で高額な買い物をしたときなどが考えられます。

単独親権で非親権者になった場合、取消権を行使できる可能性は低いと思われます。

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共同親権が認められた場合のメリットとは?

日本で共同親権が認められた場合の大きなメリットは、離婚後も子どもが父母との関わりを持てることです。

子どもの精神面の成長には両親に愛情を受けることが重要といわれています。

愛情が不足すると自己肯定感が低くなったり、愛着障害のような状態になったりといった可能性があります。

夫婦が離婚すると、単独親権では多くの場合、両親のどちらかと離れて暮らすことになるので、離れて暮らしている親と疎遠になりがちです。

面会交流という制度が整備されているものの、一緒に暮らしている親の方針によっては子どもが離れて暮らしている親と会ったり、連絡をとったりすることができないこともあります。

しかし共同親権になった場合、双方が子どもの養育に関する責任と権利を持つことができるので、離婚によって子どもが受ける不利益を低く抑えられる可能性があります。

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共同親権を取り入れた場合の問題点とは?

共同親権は子どもの養育を考えた場合、単独親権よりも良い制度だと考える方は多いかもしれません。

とはいえ、どんな制度でも「完璧」というものはなく、共同親権が認められた場合さまざまな問題点が出てくる可能性があります。

具体的にどのような問題点が発生する可能性があるのか考えていきましょう。

離婚協議が長引く可能性がある

共同親権が認められた場合の問題点として離婚協議が長引く可能性あることが挙げられます。

イタリア、フランス、ドイツなどの共同親権を導入している国で離婚する夫婦に子どもがいる場合、原則として共同親権になることが前提です。

一方で日本の共同親権に関する要綱案(※)では、離婚協議の場合、親権を共同親権にするかどうか、また共同親権にした場合の役割分担などは夫婦の話し合いで決めなければなりません。

ドイツやイタリアなどではそもそも協議離婚は認められていないため、子どもに関する取り決めは裁判所がそれぞれの父母の状況などを鑑みて判断します。

一方で日本は夫婦で自由に取り決めが行えるので、離婚後の子どもとのあり方について夫婦に相違があると、お互い納得するまで時間がかかり、話し合いが長引く可能性があります。

家族法制の見直しに関する要綱案2、3ページ参考

かえって子どもにとって不利益になることがある

共同親権の問題点として離婚の理由がDVや虐待などのケースです。

共同親権にするかどうかは基本的に夫婦の話し合いで決まることになりますが、恐怖感で自分の望む条件をいえず、共同親権を認めてしまい、子どもと過ごす比率などを相手がいうままに離婚が成立してしまう可能性があります。

離婚後、子どもが相手と過ごす時間に虐待したり、暴力は振るわれなくても虐待した親と過ごすことによって心理的負担が増えてしまうことが想定されます。

またDVや虐待でなくても、相手に借金癖やアルコール依存、ギャンブル依存など問題行動がある場合、子どもに悪影響を及ぼす可能性があります。

調停や裁判をしなければならなくなり離婚成立まで時間がかかる

共同親権の問題点として、協議で親権や子どもの養育の取り決めができなかったとき、調停や裁判などしなければならなくなり、長期間にわたって離婚を成立させることができないことが考えられます。

夫婦の話し合いが整わない場合、調停を行ったり、最終的に裁判を行ったりすることは子どもの親権に限らず起こりえますが、離婚の成立を優先し、妥協して相手の条件をのむことも少なくありません。

しかし親権や子どもの養育については、今後の子どもの処遇に関する話になるため、意見が完全に食い違ってしまった場合、妥協することが難しくなります。

お互いがお互いの主張を認めず、自分の主張を通そうとして争いが激化すると調停や裁判する期間が長くなり、離婚成立まで相当の時間がかかる可能性があります

調停や裁判を行う場合、調停期日や裁判期日に出席すれば、有利な条件で調停が成立したり、勝訴できたりというものではありません。

自分の主張の正当性を調停委員や裁判官に理解してもらわなければならないので、事前に弁護士と打ち合わせして戦略を練ったり、戦略を成功させるために重要となる情報をまとめたりという時間が必要になります

また、親権や子どもの養育の取り決めを行う場合、調停や裁判を進めていくなかで家庭裁判所調査官という役割のひとの調査に対応しなければならなくなる可能性が高いです。

争いが長く続くと当事者はもちろんのこと、子どもにも精神的な負担がかかると予想されるため、大きな問題点といってよいでしょう。

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まとめ

今回は親権者として行使できる権利や法律が改正され共同親権が認められた場合のメリットや問題になりそうな点について解説していきました。

共同親権が導入された場合、さまざまなトラブルが出てくることが予想される一方で、親権を持っていないことで起こる問題が解消される可能性があります。

共同親権が認められた場合、離婚後の家族のスタンスが大きく変わることも予想されるので注目すべきことといえるでしょう。

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