「動物好きなひと」というと、優しそうなイメージがあり良い印象を持つ方は少なくないと思います。
また夫や妻が「ペットを飼いたい!」と思った場合、住居環境にもよりますが、あなたが動物が好きな場合、反対する方は少ないと思います。
しかし、配偶者が飼いたいというペットが爬虫類だった場合どうでしょう。
今回は無類の爬虫類好きの夫と離婚したい女性の相談事例と弁護士の見解について解説していきたいと思います。
無類の爬虫類好きの夫!ペットの管理に我慢できないので離婚したい
夫:ただし(31)
妻:さえり(29)
夫のただしとは、婚活パーティで意気投合し交際に発展しました。
交際当初から結婚前提だったので交際期間はおよそ半年を経て結婚しました。
そんなこんなで夫婦となったのですが、結婚して9か月ですでに私は離婚を考えてしまっています。
離婚理由は、ただしの趣味、というかペットです。
ただしは、動物が大好きです。
付き合いに発展したきっかけも、お互い動物園や水族館巡りの趣味で話が合ったからだった方から、彼の動物に対して愛情を持つ姿勢が本当にいいなと思っていました。
また、ただしは動物に対する愛情だけでなく、知識も豊富で、私が知らないことをたくさん知っていました。
私が知識不足でもバカにすることなく教えてくれたので一緒にいてとても居心地がよかったです。
結婚条件として、動物好きで将来ペットと暮らしたいと思っていたので、ただしからプロポーズされたときにはとても嬉しかったことを覚えています。
しかし、実際の結婚生活はというと…。
結婚前、ただしは私に爬虫類のペットを飼っているといいました。
具体的にどんな種類なのか聞いたところ、採集したニホントカゲを飼育しているそうです。
ニホントカゲという種類を知らなかったので、確認したところきれいな色をしているトカゲでした。
1,2年前から飼育しているとのことで、結婚後も飼育したいとただしからお願いされました。
爬虫類は若干苦手であるものの、結婚前から飼育しており、飼育している以上最後まで飼うことの責任があると思ったので、二つ返事で了承しました。
飼育環境の温度などを保つことや私が爬虫類を得意でないこともあり、結婚後に住むマンションの1部屋をニホントカゲの飼育部屋にすることを話し合って決めました。
トカゲだけならと思っていたのですが、ただしはウソをついていました。
結婚して一緒のマンションに引っ越した時に、すでにただしは飼育部屋を整えていました。
いろいろ搬入するものがあったので1人では大変だろうと思い、声をかけたところ、私の目に飛び込んできた飼育ケースには、珍しい色の蛇がいました。
元々爬虫類は苦手でしたが、その中でも蛇は大の苦手でした。
思わず叫んだところ、ただしはバツの悪そうな顔をして「ごめん」といいました。
「トカゲだけって言ったじゃん!」と文句をいいました。
「いやでも、さえりと付き合うより前から飼っていたから」と言い訳をしてきました。
聞けば、北米原産のコーンスネークという種類の蛇だそうでおとなしく温和な性格だそうです。
そのため飼育部屋で飼っていれば問題ないかと思い、隠していたとただしは言いました。
いくら私が蛇を苦手としているからといって、苦手という理由で日本の在来種でない蛇を逃がすことはできないことくらいはわかっています。
事前にいってくれれば、「嫌だ」とは言わなかったでしょうし、事前に心構えもできたと思います。
蛇を飼育することよりも結婚して早々隠しごとをする姿勢にむかつきました。
とはいえ、新婚生活のしょっぱなから怒ってばかりもいられないので、今後爬虫類のペットを増やすにしてもなんにしても、事前に必ず私へ話すことを約束し、仲直りをしました。
が、苦手な動物と暮らすというのはいろいろ想像以上に大変でした。
蛇のお世話は基本ただしが行うのですが、まず宅配で届くトカゲや蛇のエサが、結構くるものがあり…。
というのも、ただしはトカゲに関しては生餌を与えています。
生餌は虫で、デュビアやレッドローチといったゴキブリやジャイアントワームというものを通販で購入しています。
基本受け取りはただしが行うのですが、結構ずぼらなところがあり届いた虫の容器を台所のテーブルに置いたりします。
こんなことをいうのは良くないですが、ゴキブリやワーム系が苦手な私にとっては、トカゲより蛇より、生餌がおぞましく思えます…。
蛇に関しては、生餌ではなく冷凍マウスをエサとして与えています。
冷凍された状態なので、もちろんただしが解凍して蛇に与えているようです。
本当は蛇のエサの冷凍マウスを私たちの食料を保管する冷蔵庫にいれてほしくないのですが、ただしはあまり気にならないようで、新しく保管用の冷蔵庫を購入することは考えていません。
おかげで冷凍食品やアイスを買うことがほとんどなくなりました。
しかも、冷凍マウスの解凍を飼育部屋ではなく、たびたびリビングなどで行うのもほんと気遣いがないです。
いろいろ不満を持ちつつも我慢していましたが、先日本当に許容することはできない事件が起こりました。
私たち夫婦は共働きなので、平日すぐにごはんが食べられるように土日にまとめて常備菜を作って置いています。
常備菜はすべて緑色のタッパーにキンピラゴボウやレンコンの炒め物、ひじきのにものなどをいれて冷蔵庫の中にいれてあります。
その日も会社から帰ってきて夕飯の準備をしていました。
すると、常備菜の入っているタッパーがひとつ増えていました。
多く作ったんだっけ?と中身を確認すると、中にはトカゲの生餌用のジャイアントワームがうごめいていました。
声にならない叫び声をあげて、思わず取り落としそうになったものの、落としたら大惨事すぎると思い、とおさに蓋をしめ事なきを得ました。
それから我に返り、飼育部屋にいたただしを呼んでぶちぎれました。
冷蔵庫に生餌のジャイアントワームをいれたこと、また常備菜を入れるためのタッパーに虫をいれたことに、もう信じられません。
頭おかしいんじゃないの???と切れ散らかしました。
私のあまりの剣幕に、「ごめん」とただしは謝罪しましたが、その後に「でも常温でおくと成虫になるかもしれないから…」と死ぬほど意味の分からない言い訳をしました。
普段自分が口にいれるものと生餌を一緒にする神経がまずありえないし、再三私は虫が苦手といっているのにも関わらず、「ずぼらな性格」を理由に改善しようとしないことにもう無理です。
しかも私は飼育部屋にエサを管理するための冷蔵庫をいれればいいと前々から伝えてきたのに。
もう駄目だと思い、ただしに離婚したいと伝えましたが、夫は「そんなことじゃ離婚できない」と聞く耳を持ってくれません。
我慢できるひともいるのかもしれませんが、私はこんな生活嫌です。
ただしがいうように本当に離婚はできないのでしょうか。
また、2か月後に結婚式を控えているのですが、こちらをキャンセルする場合ただしに多く負担してもらいたいと思うのですが難しいでしょうか。
弁護士の見解
今回の相談者であるちえりさんは、夫のただしさんが飼育しているトカゲや蛇のエサの管理をめぐって離婚を考えています。
まず前提として、ちえりさんは動物好きではあるものの爬虫類、とりわけ蛇を苦手としています。
とはいえ、婚姻前からただしさんが飼育していたため、トカゲや蛇の飼育に関しては理解を示しています。
問題は、トカゲや蛇のエサとなる虫や冷凍マウスの管理の方法です。
ちえりさんは、ひとが食べる食材とトカゲや蛇のエサとなる虫や冷凍マウスを同じ冷蔵庫で管理することに対し、忌避感を感じており、同じ冷蔵庫で管理しないでほしいことを伝え、実際にエサの保管用の冷蔵庫を購入してはどうかと提案しています。
そんなちえりさんの要望に対して、ただしさんは食材の管理とペットのエサの管理を同じ冷蔵庫でしても忌避感を覚えていたいため、要望に応えてくれず、あまつさえ生餌の成長を遅らせることを理由に、生きているワームを冷蔵庫にいれました。
妻がいくら改善方法を提案してみても、一向に受け入れる気のなさそうをは、一見すると夫婦関係の破綻理由になり得る有責行為にもみえます。
有責行為とは夫婦関係の破綻原因となった言動のことを言い、有責行為した者を有責配偶者といいます。
はたして、ただしさんの行為は有責行為といえるのでしょうか。
ただしさんの行為が有責行為といえるかどうかの判断は、非常に難しいといえます。
客観的にみて、ひとの食べる食材の入っている冷蔵庫に多くのひとが不快に思う虫や冷凍マウスを保管することは非常識といえると思います。
しかし、それがただちに夫婦関係の破綻につながるかどうかというと難しいところです。
ちえりさんが早期に離婚を成立させたいと考えているのであれば、ただしさんの有責行為を追求するよりも、離婚の同意を得られるように交渉して、離婚の成立を目指した方が良いかもしれません。
現段階でただしさんは、ちえりさんが離婚を切り出したことに対してまったく本気にしていないような態度をとっています。
話し合いを重ねていくうちに、ちえりさんが本気で離婚を切り出していることを理解するかもしれませんが、理解してもなお、離婚を拒否することもあり得ます。
当事者同士の話し合いで折り合いがつかないと感じた場合には、弁護士に依頼して、離婚交渉を代理してもらったり、離婚調停などで話し合うことを検討してみてもいいかもしれません。
次に、結婚式のキャンセル料について考えていきましょう。
結婚式前に離婚となり式場をキャンセルした場合、自己都合のためキャンセル料を支払う必要支払う必要があります。
一般的に結婚式場のキャンセル料は、結婚式の日が近づくにつれ高くなるので、早い段階で式場にキャンセルの申し込みした方が良いです。
結婚式場のキャンセルは、契約を解除するということなので、式場の契約を行った方が行うことになります。
ちえりさんの場合、契約者がちえりさんなのか、ただしさんなのか、または夫婦両方が契約者なのかわかりかねますが、早めに式場へ契約解除の通知を行った方が良いでしょう。
なお式場のキャンセル料の負担については、夫婦のどちらかに有責行為がなければ基本的に負担の割合は折半になります。
とはいえ、交渉次第で相手に多くキャンセル料を負担してもらえることもありますので、その点も踏まえて弁護士への依頼を検討してみても良いかもしれません。
まとめ
今回は爬虫類が好きな夫と離婚したい女性の相談事例と弁護士の見解を紹介していきました。
爬虫類に限らず、ペットを巡って夫婦間で意見が食い違い、結果離婚のトラブルに発展してしまうことは十分に考えられます。
とはいえ、ペットの虐待しているなどの特別な事情がない限り、ペットを巡る争いが有責行為になることはなかなか難しいです。
また、あなたが有責行為と考えている相手の言動も法律的には有責行為ではないというケースもあります。
有責行為にあたるかどうかは難しい判断なので、自分では手が負えないと感じたときには早めに弁護士へ相談することをお勧めします。
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