【弁護士監修】夫婦間の性的DVで離婚できる?性的DVにあたる具体的な行為も解説

夫や妻から性的DVを受けていた場合、とてもセンシティブな問題なのでなかなか周囲に相談することが難しいと思います。

真剣に相談したとしても、内容によっては「まあ夫婦なんだからそれくらい我慢しなきゃね」なんて本気で取り合ってくれないこともあるでしょう。

今回は夫婦間の性的DVについて詳しく解説していきたいと思います。

夫婦間の性的DVとは?

夫婦間での性的DV や性暴力といった言葉を耳にしたことがある方も多いと思いますが、実際どのような行為が性的DVにあたるのでしょうか。

性的DVの定義

性的DVの定義は相手の同意を得ないで性行為に及んだり、相手のことを考えずに自分の性的嗜好を押し付けたりするなどの行為をいいます。

性的DVにあたる行為はさまざまですが、すべてに共通している点として「同意がない」ということです。

 

夫婦間の性的DVの特徴

本当に嫌がっている相手や意識がはっきりしない相手に対して性行為を及んではいけないことは多くの方が理解していると思います。

しかし、夫婦や恋人になると「自分がしたいのだから、性行為に応じて当たり前」と相手の立場で考えることが希薄になっていく傾向にあります。

性的同意に関して曖昧になるとともに、夫婦の性的DVには次のような特徴があります。

 

■自宅で発生しがち

夫婦間の性的DVの多くは自宅で起こります。

周囲に性的DVを受けていることが発覚しにくいため助けを求めることが難しいことが特徴として挙げられます。

■家庭内の権力の差によって起こる

家庭内では、夫または妻のどちらかの主導によって方針を決めることが多いです。

庭内で権力を持った方が、「自分に従って当然」と相手の同意を得ず、性的DVをすることがあります

■相手に恐怖を感じて逆らうことができない

配偶者が身体的DVや精神的DVを行っていた場合、被害者の方は「相手に逆らうとひどい目に遭ってしまう」という思いで、本当はしたくもない性行為に応じてしまう可能性があります。

■性的DVを相談するハードルの高さ

夫婦間の性生活に関する話題は、非常にセンシティブな問題なので、仲の良い家族や友人であっても相談することが難しいです。

また、性行為の内容などは夫婦それぞれで異なるため、他の家庭と比べるのが難しいです。

実際は性的DVを受けているのに「自分が我慢すればいい」と被害に気付かないケースもあります。

関連記事のIDを正しく入力してください

性的DVにあたる具体的な行為

性的DVというと、なんとなく乱暴に性行為をするようなイメージを持つ方も少なくないのではないでしょうか。

しかし実際には性的DVにもさまざまな種類があり、夫婦間で起こる次のようなものが挙げられます。

  • 性行為を強要する
  • 性に関して侮辱的な言動をする
  • 避妊をしなかったり、中絶を強いたりする行為
  • 性的嗜好を押し付ける
  • 強制的に動画や写真を撮影する

それぞれ具体的に確認していきましょう。

性行為を強要する

無理やり性行為を行うのは当然性的DVにあたります。

「強要する」とは、まったく性行為に同意していない相手に対して無理やり性行為に及ぶケースに限りません。

嫌がる相手から無理やり性行為の同意を取ったり、物を叩いたり、言葉で威圧したりして同意を得るような行為も性行為を強要することのうちです。

性に関して侮辱的な言動をする

ひとの性的に関することに対して侮辱的な言動は性的DVになります。

例えば、性的な機能に対して揶揄するような言動をしたり、身体的な特徴を悪くいったりして相手を傷つけるようなことが考えられます。

また、性行為中に侮蔑的な発言することも性的DVになりえます。

侮蔑的な言動の難しい点としては、加害者が相手を傷つけていることに自覚がなかったり、性的な価値観の違いで「嫌だ」と伝えても理解してもらえなかったりというところがあります。

避妊をしなかったり、中絶を強いたりする行為

避妊しなかったり、中絶を強いたりという行為も性的DVになりえる行為です。

お互いに子どもを望んでいる場合には避妊せず性行為をするのは当たり前ですが全く問題ありません。

しかし一方で、相手が妊娠を望んでいない状態なのに、相手の意思を無視して避妊しないことは性的DVになりえます。

また中絶は肉体的、精神的に大きな負荷かかるとともに、場合によっては今後妊娠がしづらくなってしまうリスクもある行為です。

そのため、中絶を強いる行為は当然性的DVにあたるといって良いでしょう。

性的嗜好を押し付ける

性的DVとして、自分の性的嗜好を相手に押し付けることが挙げられます。

お互い夫婦の性嗜好を受け入れていれば、犯罪行為になるような嗜好をのぞき、多少アブノーマルであっても問題ありません。

しかし、相手の同意を得ないで性的嗜好を押し付ける行為は性的DVとなりえます。

強制的に動画や写真を撮影する

性行為の動画や写真はひとの羞恥心を煽るものであること、動画や写真の公開、脅迫の材料として悪用される可能性があるものです。

性的行為を相手の了承を得ずに動画や写真を撮影する行為は性的DVです。

なお相手が嫌がっているにも関わらず、ポルノ動画や写真を無理やり見せることもまた性的DVになりえます。

夫の性癖が受け入れられないから離婚したい!異常性癖は有責行為になる?

性的DVを理由として離婚したいときの対応とは?

配偶者の性的DVに耐えられなくなった場合、相手の同意を得ることができれば離婚することができます。

しかし性的DVを行うような配偶者が、離婚にすんなり応じてくれるとは限りません。

このような場合具体的にどのような行動をとればいいのでしょうか。

性的DVは、法的な離婚理由にあたる可能性があります。

法的な離婚理由に当てはまるかどうかは離婚においてとても重要なことです。

当てはまった場合には、最終的に裁判を起こすことができ、またあなたの訴えが認められたときには相手の合意を得ずに離婚をすることができます。

現実的には、離婚の可否を争って裁判で決着をつけるケースは少ないですが、相手の言動が法的な離婚理由にあてはまることは、離婚の交渉を進めるうえで次のようなメリットがあります。

  • 最終的に裁判で離婚の可否を決められるカードがあること
  • 離婚条件などを決めるとき交渉材料になる

実際に裁判まで進むことがなくとも、裁判ができることは離婚の話し合いを優位に進めるうえで非常に重要なカードになります

また、性的DVは法的な離婚理由であるとともに、被害を受けた側の権利を侵害する行為でもあります。

そのため性的DVを理由に慰謝料を請求することもできます。

性的DVが法的な離婚理由になる条件

性的DVは法的な離婚理由になりえますが、「性的DVを受けた」といえば無条件に認められるわけではなく、「性的DVがあった」ことが立証できるような証拠が必要になります。

「性的DVを受けてるのにどうして信じてくれないの」と感じてしまう方もいらっしゃると思います。

しかしこれには理由があります。

性的DVの多くは自宅で夫婦が2人でいるときに起こります。

自宅というのはプライベートの空間なのでひとの目がほとんど届かない場所です。

そのため本当に性的DVがあったかどうかは、その場にいた当事者しか知りません。

そんな状況で証拠もなく無条件で当事者の一方の主張が認められたとしたら非常に不公平です。

あなたの「性的DVを受けた」という主張だけが無条件で認められるのであればまだ良いですが、相手の主張が認められた場合、さまざまな不利益を被ってしまいます。

そのため「自分の主張を通したい」と思ったときには、「性的DVはあった」とみなされるような証拠が必要になるのです。

性的DVの証拠として次のようなものがあります。

【性的DVの証拠になるもの】

  • 性的DVを撮影した動画
  • 性的DVを録音した音声データ
  • 性的DVを受けているとことが分かるようなSNSやメールでのやりとり
  • 性的DVの内容を記した日記

上記のようなものが性的DVを立証する証拠になりえます。

なお、日記についてはパソコンやスマホなどの記録は、書いた後修正することができるので信ぴょう性が低いといわれています。

性的DV以前から継続的に書かれているような日記だと信ぴょう性が高いとみなされる傾向にあるようです。

夫婦間レイプ~こちらの意をくんでくれない夫と離婚したい~

弁護士に相談したい方はこちら

性的DVを理由に離婚を進めるときの手続きと注意点

離婚する場合、次の3段階のステップがあります。

  1. 協議離婚で成立を目指す
  2. 離婚調停で離婚を成立させる
  3. 裁判で離婚を成立させる

性的DVを理由に離婚する場合でも、他の理由で離婚したときと同じような流れで進めることになりますが、状況によっては「話し合いなんてできるはずない」と考える方もいらっしゃると思いますのでそれぞれ詳しく解説していきたいと思います。

1.協議離婚で成立を目指す

性的DVを理由に離婚したい場合、まずは当事者同士の話し合いで解決する協議離婚を目指してください。

「性的DVを受けているのに、夫婦2人で話せるはずない」「夫や妻が離婚に同意してくれるわけない」と思う方もいらっしゃるかと思います。

確かに夫婦2人で離婚を話し合ってもうまくいかないケースが多いと思います。

しかし離婚協議は必ず当事者が2人きりで行わなければならないという決まりはありません。

夫婦2人だけの話し合いで解決しそうにない場合、または相手が威圧的な態度をとって話し合い自体をさせてくれないなどの心配がある場合には、第三者に立ち会ってもらうといった手段があります。

ただし、あなたの両親や友人、相手の両親や友人などが話し合いに同席した場合、かえって場が混乱し収拾がつかなくなったり、ますます話し合える状態でなくなったりといったリスクもあります。

そのため離婚交渉の場に同席を希望するのであれば、弁護士に依頼することも考えた方が良いです。

なお弁護士は離婚交渉を依頼者に代わって行うこともできるので、「相手と顔を合わせたくない」とお考えの方は自分の希望を伝えましょう。

2.離婚調停で離婚を成立させる

当事者同士の話し合いで離婚が成立しなかった場合、離婚調停で話し合うことを考えてみましょう。

離婚調停と離婚協議は「話し合いで離婚を目指す」という点では同じですが、離婚調停には手続きにおいて次のような特徴があります。

【離婚調停の特徴】

  • 基本的に相手の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行う必要がある
  • 家庭裁判所が仲裁役になって話し合いを行う
  • 話し合いの頻度は1か月から2か月に1度の頻度である
  • 離婚調停が成立したら10日以内に離婚届を出す必要がある

 

離婚調停を行う場合、注意していただきたいのは根拠のない主張は認められにくいということです。

そのため自分の望む条件で離婚するには、調停前に自分の主張を裏付けるような証拠を準備する必要があります。

調停日ごとに裁判所から「次回までに○○の資料を準備しておいてください」と追加資料の提出を指示されるケースもあるので、自力で準備を行うのは非常に大変です。

また離婚調停は基本的に当事者本人が出席する必要があり、代理人のみの出席が認められないことがあります。(※1)

裁判所の開館時間は平日(※2)のため仕事上で折り合いをつけたり、子どもの預け先など確保したりなどを考えなければなりません。

※1…裁判所によって代理人のみの出席を認めているところもあるので事前に確認が必要です。

※2…裁判所の平日の開館時間は裁判所によって異なる場合があるので事前に確認が必要です。

 

3.裁判で離婚を成立させる</H4>

離婚調停で話し合いがまとまらない場合、最終的に裁判で離婚することになります。

裁判で離婚を成立させるためには、「受けていた性的DVが法的な離婚理由にあたる」と裁判官に判断してもらう必要があります。

裁判前の準備、裁判中の立ち振る舞い、和解するかどうかの落としどころなどさまざまなことに注意して行わなければなりません。

また裁判に発展すると、離婚成立までに長期間かかる可能性があるので、本当に裁判を起こすかどうか検討も必要です。

【配偶者からの暴力】DVから逃れるための離婚の前に行うべき手続きを弁護士が解説

弁護士に相談したい方はこちら

まとめ

今回は、夫婦間の性的DVについて解説していきました。

性的DVは精神的、場合によっては肉体的な苦痛も受けてしまう可能性があるので、配偶者から受けた場合、離婚したくなるのも無理はありません。

とはいえ、「早く離れたいから」という理由で条件を取り決めずに離婚すると後になって後悔してしまうこともあります。

そのようなときには弁護士への相談を検討してみてください。

弁護士は依頼者の代理人となれるので、顔を合わせずに離婚交渉を進められる可能性があります。

お悩みの際は連絡してみてください。

弁護士に相談したい方はこちら

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です