とがった言葉が胸を突く~不妊を理解してくれないパートナーとの離婚~

「子に過ぎたる宝なし」と言う言葉があります。
多くの女性は自身の好きな人と子どもをもうけることが出来たら、と望むのではないでしょうか。
しかし、いくら望んでいても、子どもを授かることが出来ないこともあります。
そんな時に、頭によぎるのが「不妊治療」。
ただ、不妊治療には肉体的負担に加え、精神的、経済的な負担を伴います。
今回は、不妊離婚について考えていきたいと思います。

不妊治療のリアル~メンタルケアは必須~

お子さんを望む夫婦が、避妊をおこなわないで性行為をおこなったばあい、65パーセントの夫婦が1年以内に妊娠する確率は80パーセント、2年以内に妊娠する確率は90パーセントと言われています。
2年以内に妊娠しなかった夫婦を不妊であるとされています。
また、夫婦で不妊治療をおこなうと決めた場合、血液検査や、ホルモン検査などの基本検査や追加検査等を実施しなければなりません。
妊治療では健康保険の適用外なので、基本的に自費治療です。
したがって、検査を受けると平均して50万円程の費用がかかり、加えて通院費も加算されるので、長期的に続けるとかなりの金額がかかることになります。

不妊治療で受ける苦痛とは…?

不妊治療や検査には、筋肉注射などの注射を打たねばならなかったり、採卵(※)をおこなうときに大きな痛みを伴うことがあります。
個人差はあれど、痛みは肉体的負担となり、ストレスがたまる原因になります。
加えて、経済的負担ものしかかってくるのです。
更に、治療をしても妊娠や出産に至らなかったときの、心の痛みは言葉にしようがありません。
不妊治療には、常に期待と落胆、不安が付きまといます。

心が不安定な状態になると、今までほほえましく思っていた「子どもの声」や「親子連れ」の姿をいとわしく思ってしまうことがあるのです。
そんな時、精神的な支えがあると、いく分か落ち着けるのですが、頼みの綱であるパートナーに心無い態度をとられた場合、更に心の痛みを負うことになります。
不妊治療は、夫婦のうち片方が頑張るものではなく、二人三脚で考えていくものです。
互いの気持ちがすれ違ったまま、治療を重ねると夫婦の関係にほころびが生じ、離婚につながることは大いに有り得るのです。
※採卵とは体外受精などをおこなう際に卵巣から卵子に取り出すことで、方法や個人差もありますが、かなり身体に負担をかけます。

不妊を理由に離婚を切り出された~私に責任があるの?~

前章では不妊治療の問題点について、お話をさせていただきました。
お伝えしたとおり、不妊治療には夫婦間の協力、メンタルケア等が必須です。
しかし、パートナーの配慮が足らず、自責の念に駆られてしまったり、気持ちがジェットコースターのように上がり下がりすることによってうつ病などの精神疾患を患ってしまうケースも珍しくありません。
また残念ながら、不妊を理由にパートナーから離婚を切り出される可能性も、否定できないのです。
では、不妊が判明し、離婚を切り出された場合、相手の要求をのまなければいけないのでしょうか。

不妊は法定離婚事由として認められない

法定離婚事由とは、民法に定められた裁判で認められる理由のことです。
法定離婚事由のあるひとのことを有責配偶者といい、以下の理由が挙げられます。

不貞行為(性行為を含んだ異性との不倫のこと)
悪意の遺棄(相手の了承を得ず別居することや、経済的DV等)
3年以上生死不明
配偶者が重度の精神病を患い、回復が見込めない場合
その他婚姻を継続し難い重大ない事由

不妊に関しては。上記のうちどれにも当てはまりません。
したがって、離婚をするには夫婦間の話し合いで合意する協議離婚か、家庭裁判所に申し立てをしておこなう調停にてお互いの主張のすり合わせをし、離婚を成立しなければならないのです。

不妊で離婚は×…でも例外も…?

パートナーが離婚を望んでも、自身が了承しなければ、基本的に離婚が成立することはありません。
とはいえ、どんなことにも例外はあります。
不妊を原因で離婚は成立しませんが、不妊を理由に夫婦が5年以上別居をしたケースですと、離婚が成立する可能性が高くなります。
夫婦には特別な事情をのぞき、基本的には同居する義務があります。
したがって、長期間の別居は夫婦関係が破綻しているとみなされ、離婚の可能性が高まるのです。
また、別居理由が不妊に限らず、DVやモラルハラスメント、不倫などでも長期間別居をしていれば、同じく離婚の確率は高まります。

不妊治療をしたくない~思いやりのないパートナーと離婚したい~

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前章では、「不妊」を理由にパートナーから離婚切り出された場合について考えていきました。
今回は、自らが不妊治療を望んでいないのに、パートナーが治療を強いるケースについて掘り下げていきましょう。

夫婦の形はそれぞれ~必ずしも子どもを産み育てる必要はない~

不妊であることが判明したとき、不妊治療するか否かは夫婦の選択にひとつです。
子どものいる家庭は幸せの象徴になりがちですが、すべての家庭がそれをなぞらえることが良いことではありません
という存在が世界に一つしかないように、夫婦のかたちもまた、三角でも四角でも、星形だっていいのです。

不妊治療を強いられたらどうすれば良い?

パートナーと自身の気持ちが折り合わず、不妊治療を強要された場合、どうすれば良いのでしょうか。
まず、先ほども申し上げたとおり、不妊治療の可否は夫婦次第です。
また、「不妊治療のリアル~メンタルケアは必須~」の章でもお伝えしましたが、精神的負担、肉体的負担のほかに、経済的負担が非常に大きいです。
対外受精とひとくちに言っても、様々ですが一度につき30万円から50万円程度かかることもざらにあります。
不妊治療をおこなったため、マイホーム資金用の貯金が無くなったという話もあるくらいです。
そのため、いくらパートナーが不妊治療を強いたとしても、実際問題として難しいこともあるのです。
したがって、まずは精神面、身体面はもちろんのこと、経済面についてもパートナーとしっかり話し合うことが大切です。
加えて、「不妊治療をしなければ離婚」と言われたとしても、前章でお伝えしたとおり、それだけでは自身の合意なく、勝手に離婚出来ないのでご安心ください。

無理解な夫と離婚したい…

「不妊治療しろ」「子どもを産んでくれ」とパートナー側に言われ続けたら、うんざりして離婚したくなることもありますよね。
しかし、繰り返しお伝えしているとおり、「不妊」を原因で離婚することは互いの合意が無いと成立することが出来ません。
例外は、「長期間の別居」によって成立することがあるくらいです。
とはいえ、不妊が原因によって、他の法定離婚事由が派生するケースもあり、以下が考えられます。

①不妊治療を拒否したためセックスレスになり、夫婦仲が険悪になった。
②不妊を理由に、パートナーが他の異性と不倫(性行為を含む)した。
③不妊を理由に、暴言や暴力を振るうようになった。

①不妊治療を拒否したためセックスレスになり、夫婦仲が険悪になった
長期間にわたるセックスレスは、法定離婚事由のひとつである婚姻を継続し難い重大な事由に相当する可能性があります。
法定離婚事由にあたるのかどうかは期間の長さや、拒否された回数など、さまざまな要因を考慮されるので、ケースバイケースですが、離婚が認められるケースもあります。
セックスレスによって精神的苦痛を受けた場合には、慰謝料が認められることもあるのです。

②不妊を理由に、パートナーが他の異性と不倫(性行為を含む)した
妻がいるのにも関わらず、他の異性と不倫した場合には、不貞行為にあたり、離婚することが可能です。
ただし、キスやハグなどでは認められません。
また、パートナーが他の異性と性行為をした、もしくは性行為を匂わせる言動をおこなったなどの証明する必要があります。

③不妊を理由に、暴言や暴力を振るうようになった
不妊がきっかけで、自身をおとしめる言動や、暴力をふるわれた場合には、DVやモラルハラスメントとして離婚することが可能です。
しかし、こちらも②と同じく無条件で離婚が認められるわけではなく、暴言、暴力行為があったという事実を証明しなければなりません。
証明になる物は、暴言、暴力行為を撮影した動画や、音声です。
加えて、日付の入った暴力行為などが記載されている日記帳や怪我の診断書等も証拠として、有効になることもあります。

以上が不妊を原因として派生する可能性のある離婚事由でした。

まとめ

今回は不妊による離婚についてお話をしてきました。
不妊は離婚の直接的原因にはなりません。
しかし、前章でお伝えしたとおり、間接的原因にはなり得るのです。
離婚を回避したいとお考えの方は、まず夫婦で納得がいくまで「不妊」について話し合うことが大切です。
し合いでどうしても解決できず、またパートナーから不当な扱いを受けていた場合には、ひとりで悩むのではなく、誰かに相談するということが大切です。
デリケートな問題なので、周囲に話しにくい話題かもしれません。
そんな時は一度、弁護士などの専門家に相談するのも手段のうちです。
どうしていいのか分からなくなったら一度、相談してみてはいかがでしょうか。

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