離婚協議でとりきめるお金のエトセトラ

「よい結婚はあるけれども、楽しい結婚はめったにない」
この言葉は、フランスの文学者であるラ=ロシュフコーが残した言葉です。
確かに、結婚して「この人で良かった」と感じることは、ありますが、「この人といて楽しい」と感じる結婚は夫婦同士の価値観の違いが関係しているのか、少ないのかもしれません。
夫婦はたびたび、価値観の違いで話し合いをし、離婚を選択することがあります。
今回は、その「話し合い」でどんな取り決めをするのかを考えていきたいと思います。

冷静に話し合いができる?~協議離婚するまでにかかる時間~

協議離婚とは、家庭裁判所をとおさないで、基本的に夫婦間の話し合いによって成立する離婚のことを指します。
ひとくちに協議離婚と言っても状況はさまざまで、第三者をまじえず、夫婦ふたりで協議を進められるケースもありますし、夫婦それぞれが弁護士を立てて争うこともあります。
しかし、家庭裁判所に調停の申し立てをおこなわない限りは、どんな高額な慰謝料が発生しようと協議離婚になります。
現在日本で離婚する夫婦の9割近くが、協議離婚を選択し離婚を成立させています。
では、協議離婚が成立するまでには、平均どれくらいの期間がかかるのでしょうか。
協議離婚の場合、離婚が成立するまでの時間は、平均1年になります。
実際に、協議離婚を選択した夫婦のおよそ80パーセントが、1年以内に離婚を成立させたという統計もあります。
協議離婚で離婚を成立させるためには、夫婦同士の歩み寄りが大切になってきます。
「話し合いの途中で、相手への怒りが抑えきれず、ついつい感情的になってしまう」という声をよく耳にすることがあります。
パートナーの行動が原因で、離婚を考える方もいるでしょうが、話し合いの途中に怒りを爆発させてしまうと、話し合いがなかなか前に進まず、かえって離婚まで期間が延びてしまうこともあります。
そのため、協議離婚を目指すのであれば、頭ごなしに怒らないように努めましょう。

【協議離婚の方がいい?】協議離婚のメリットを確認しよう!

離婚協議で決めるお金①

前章では協議離婚について説明をさせていただきました。
今回は具体的に離婚協議で取り決めをおこなうお金の話をしていきましょう。
夫婦が離婚する場合、子どもの有無かかわらず取り決めておくべきお金は、まず共有財産をどう分けるかが挙げられるでしょう。
共有財産とは、簡単に言うと夫婦になってから一緒に築いた財産のことです。
とはいえ、具体的にどのようなものが共有財産にあたるのか疑問に思う方もいるでしょう。
下記に、主なものをまとめてみましたので確認してみてください。
・現金…婚姻後に取得したものであれば対象です。
・預貯金…銀行口座の名義かかわらず、婚姻関係中に築いたお金の場合には、共有財産としてみなされます。
不動産…戸建てや土地、分譲マンションなどを指します。
・有価証券…株式や国債などの公債のことを指します。対象は婚姻後購入したものです。
・動産…婚姻後、購入した自動車、家具、衣料品、電化製品などが対象になります。
・貴金属…婚姻後に購入した高価な貴金属は共有財産の対象です。
ただし、婚姻前に購入した、結婚指輪や婚約指輪は個人の特有財産になります。
また、婚姻後であってもプレゼントとして贈られたものは、個人の財産としてカウントされます。
・生命保険…婚姻後に契約したものであれば、解約時に発生する返戻金(へんれいきん)が共有財産の対象です。
・ローン…住宅ローンや学資ローンなど、マイナスの財産も共有財産にカウントされます。
有財産であるかどうかの判断基準は、婚姻後に購入、もしくは取得したのかという部分です。
また、ローンを例に挙げていますが、その他にも生活費として借り入れた借金も共有財産とし認められます
ただし、度の越えたギャンブルや分の浪費のために借りたお金は、共有財産として認められません
また、上記の一覧でも繰り返し触れていますが、共有財産の対象になるのはあくまで、「婚姻後」の財産であって、「婚姻前」の財産は含まれません。
加えて、婚姻後に自身、もしくはパートナーの親族が亡くなり、遺産を相続した場合の財産は、個人の特有財産と判断され共有財産としてはみなされません。

共有財産はどのように分与するの?

ここまで共有財産とは具体的にどんなものが含まれるのかをお話してきたわけですが、実際に共有財産はどのように分ければよいのでしょうか。
共有財産の分け方は以下、3つの種類があります

①精算的財産分与…夫婦の話し合いによって、婚姻中に取得した財産の分配を取り決める方法です。
分配の割合は財産形成の貢献度によって異なります。
またこちらの財産分与方法では、離婚事由がどちらにあるかどうかには左右されません
②扶養的財産分与…離婚の時に、夫婦の片方が病気や経済力が低い専業主婦(夫)であった場合、収入の能力が高い方が低い方を扶養する目的で分与することを指します。
③慰謝料的財産分与…夫婦のどちらかの行動が原因で、慰謝料が発生した場合におこなう財産分与方法です。
通常であれば、慰謝料と財産分与の問題は別として扱われますが、請求される側にお金が無かったり、慰謝料と明確に区別をつけずにまとめて請求したりすることを言います。
上記が財産分与の方法になります。
離婚時の共有財産が、現金や預貯金のように分けられるものであればいいですが、不動産や動産のように分けられない財産もあります
1番ポピュラーな財産分与方法である①を選択した場合、離婚した方の多くが共同財産を公平に等分ずつで分けることが一般的です。
ただし、財産分与をするにあたって、場合によってはきれいに分けられないこともあるので、夫婦間の話し合いが大切です。
また、財産分与の取り決めには時効があります。
それは離婚の時から、2年です。
一見、2年という期間は長いように思えますが、話し合いをしていると、意外とあっという間に過ぎてしまいます。
共有財産によっては、財産分与の取り決めに時間がかかってしまうことが、ままあります。
そのため時間にある程度の余裕を持って進めていくことが大切です。

離婚協議で決めるお金②

前章では、「共有財産」の財産分与について詳しく説明を致しました。
今回は、「慰謝料」と「養育費」を掘り下げていきましょう。

慰謝料とは…?

離婚をするにおいて、慰謝料の支払いは必ず発生するものではありません。
夫婦のどちらか一方が離婚の原因となった行動をしたことによって、発生します。
具体的に、「不倫」、「DV」などが挙げられます。
また、慰謝料とは何となく高額のお金を貰えるイメージが先行しそうですが、実際の相場は数十万から、200万円程度とかなりの幅があります。
加えて、慰謝料の原因となった行動によっても異なってきますが、高額な慰謝料を貰う為には、パートナー側にある程度の経済力があることと、離婚の原因である行動があったと証明できるものが必要です。
「不倫」の場合であれば、性行為中の写真や、ラブホテルに出入りしている写真などが当たります。
ただしどんなに証拠をそろえても、請求する側に収入やお金が無ければ、実際に貰えることが出来ません。
そのため、パートナーに慰謝料を請求したいのならば感情的な部分を抑えて、現実的に相手が出せる金額を請求した方が良いでしょう。

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養育費は請求できる?

離婚する夫婦に子どもがいた場合に必ず請求できるのが養育費になります。
当たり前のことですが、養育費を貰えるのは親権(もしくは監護権)を取得し、子どもと一緒に暮らしている親の方です。
養育費を取り決めるにあたって、「○○だからいくら請求できる」や「原因はそちらにあるのだから支払わなくても良い」という決まりはありません
養育費をいくらにするのかは夫婦の話し合いによって取り決められます。
また、離婚の原因が、親権(もしくは監護権)を持っている側にあったとしても、養育費の支払いとは別問題としてとらえられるので、請求は可能です。
しかし、「自由に決められる」と言われると、指標が分からず反対にいくらにすればいいのか困ってしまうこともありますよね。
そういった方には、裁判所で公表されている養育費算定表を参考にすることをおすすめします。
夫婦それぞれの年収や、子どもの年代、人数別で確認が出来るのでとても便利です。
また養育費は離婚後でも取り決めをおこなえますが、できれば離婚前に決めておいた方が良いです。
なぜなら、離婚後に取り決めは、取り決めした時点から将来の養育費の請求は行えますが、離婚後から取り決めまでに発生した養育費を請求できない場合が多いです。

みんなの体験談~話し合いで解決できた!~

ここまでは、離婚協議で取り決めるお金の話をしてきました。
今回は、協議離婚を成立させた方の体験談を聞いてみましょう。

いおりさんの場合

妻:いおり(36)職業:花屋のアルバイト 年収:100万円
夫:いちご(40)職業:システムエンジニア 年収:600万円
子ども:なし

夫のいちごとの出会いは、私のアルバイト先の花屋でした。
花屋なので花束を買いに来るお客様は、大勢いらっしゃいますが、毎週購入してくれる男性のお客様は珍しかったので印象に残っています。
彼が花束を購入するようになって、1年ほどたったくらいでしょうか。
私は彼に告白されました。
突然のことで、びっくりしましたが、いつも花束を買う彼を素敵だと感じていたので、交際を了承しました。
順調に付き合いを続け、私が27歳のころにプロポーズされてゴールイン。
以来、7年間は喧嘩もなく、おだやかに結婚生活を送れていたと思います。
しかし、2年ほど前から彼の様子がおかしくなってきました。
今までは服装や髪形なんかに興味も持っていなかったのに、急に自分で購入しはじめました。
なんとなく嫌な予感がして聞いてみると、彼は少し黙った後、「好きな人ができた」といいました。
彼の言い分では、彼の完全な片思いで、「肉体関係どころか、告白すらしていない」ということでした。
「何もないのであれば、彼の気持ちを取り戻せるだろう」と思った私は、今まで以上に夫婦の時間を増やし、努力しました。
しかし一向に私を女として見てくれない彼の態度にむなしさを覚え、離婚を考えるようになりました。
離婚を切り出したところ、彼も同じことを思っていたようで同意してくれました。
結婚後に購入したものを夫婦で1年間かけて話し合いをして、分けていきました
共有財産を分けた結果、預貯金のおよそ8割を私に、車は彼の取り分となり、そのほかの家財道具や電化製品は私が所有することになりました
私の取り分が多すぎるとは思いましたが、彼が「慰謝料みたいなものだ」といったので素直に受け取りました。
その後、離婚届を2人で役所に提出し、住んでいたマンションを引き払うとき、「これですべてが終わるんだ」と感じ、寂しさを覚えました。
勤めていた花屋を辞めましたが、来月から正社員として働くことになりました。
夫のことが嫌いで別れたわけではないので、彼を思う気持ちはなかなか消えませんが、これからは一人で頑張って生きていきたいと思います。

まとめ

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今回は離婚協議で話し合うべきお金について紹介しました。
離婚協議で取り決めをおこなうお金は、状況によってさまざまです。
夫婦に子どもがいない場合には財産分与や婚姻費用、また慰謝料などが考えられるでしょう。
また子どもがいる場合には、上記に加えて養育費の取り決めをおこなわなければなりません
更にはお金以外にも親権や非親権者(非監護者)の面会交流など取り決めごとはいっぱいです。
こうした取り決め事を、時間をかけないで適当にすると、後悔のもとになります。
そうならないように、慎重にことを進めていくことが大切です。

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