かぶった皮はひつじ?~子どもを虐待するパートナーと離婚したい~

「しつけは愛情のあかしである」と言う言葉があります。
確かに、子どもが「ワルイコト」をしたら、叱るのが親の役目です。
ただ褒め、子どもを肯定し続けることが養育ではありません
しかし、パートナーの「しつけ」が過剰であるとしたら…?
過剰な「しつけ」は、「虐待」である可能性があります。
今回は、子どもを虐待しているパートナーと離婚を考えている方に向けて、お話していきたいと思います。

「虐待」と「しつけ」の違いとは?

「虐待」とは、大人が感情で子どもを身体や心を傷つけることを指します。
日本における虐待の件数は、年々増えてきており、平成30年度、厚生労働省が発表したデータによると、児童虐待対応件数は15万9,850件と過去最多を記録しました。
また、警察庁の最新データによると、虐待が事件化した件数は1,380件で、被害に遭った子供の人数は1,394人…。
うち、死亡した人数は36人で、件数・被害人数ともに過去最多を記録しました。
虐待の怖いところは、家庭内のトラブルのため、表面化しにくく、また子どもが親をかばうケースが多いため、なかなか明らかにならない部分です。
また、「しつけ」と「虐待」の境目が分からず、結果的に虐待をしてしまうケースもあります。
しかし、「虐待」と「しつけ」の境目があいまいに感じる方が少なくないのも事実です。
では、一体「しつけ」との違いは何なのでしょうか。

しつけとの境目は?

先ほどもお伝えしましたが、虐待とは「大人が感情任せで子どもを傷つける」ことです。
対して、「しつけ」とは子どもが自身の言動や行動を制御できるよう、教えることを指します。
全然違う意味を持つように思えますが、どうして混同してしまうのでしょうか。
それは、「しつけ」の過程にあります。
子どもに制御を教えるために、子どもを力で押さえつけてしまうと虐待に発展してしまう可能性があるのです。
自分の気持ちが子どもに伝わらず、イライラしてしまうのは、育児を経験したほとんどの方が感じることだと思います。
子どもを叱るとき、「理由は当然分かっている」として頭ごなしに怒ってしまうと、叱っている意図が伝わらないケースがあります。
意図を説明しないままでいると、子どもが叱る原因になった行動を何度も繰り返し、結果虐待になってしまったという事態になりかねません。
したがって、「当然理解している」ということでも、「説明」し、「なぜ○○をしてはいけないのか」を順序立てて聞かせることが大切です。

暴力だけが虐待じゃない~虐待の種類とは~

前章では虐待としつけについてお話をしてきました。
今章は、虐待の種類について考えていきたいと思います。

虐待の種類とは…?

ひとくちに虐待といっても、いろいろな種類があります。
イメージとして、身体的虐待を考えがちですが、他にも以下のようなものがあります。

・心理的虐待
・ネグレクト
・性的虐待

イメージが付きにくいものもあるかと思いますので、項目別に説明させていただきます。

心理的虐待

心理的虐待とは、暴力を用いらずに言動や態度によって子どもをコントロールすることを指します。
具体的に言うと、「大声を出す」、「子どもの言動や行動すべてに拒否的な態度を取る」、「物にあたって、脅しつけるようなことをする」などです。
また、兄弟(姉妹)間差別も心理的虐待にあたります。
相談件数の中で、最も多い相談になりますが、物理的証拠などが残らないため、事件化しにくい側面があります。

ネグレクト

いわゆる育児放棄のことを指します。
ネグレクトとは、英語で、「無視」という単語のことです。
つまり、養育するべき人(親)が子どもの食事や世話を怠ることです。
なお、ネグレクトによって子どもを死亡させたり、怪我をさせた時には刑法の「保護責任者遺棄罪」にあたり、3年以上20年以下の懲役を科されることがあります。

性的虐待

言葉通り、親が性的な虐待をすることです。
性的虐待は、一見露見しやすそうに見えますが、「親に嫌われたくない」、「性的知識に乏しい」といった理由から、発覚しにくいことがあります。
18歳未満の子どもに性行為等わいせつ行為をおこなった場合には、監護者わいせつや、監護者性交等の罪に当たり、刑事罰を科されます。
以上が暴力以外の虐待についてでした。

意外に思われるかもしれませんが、パートナーが上記で説明した虐待を子どもにしていたとしても、うまく立ち回られ、気づかず発覚が遅れる場合もあります。
温厚な父を演じて、裏では子どもを虐待していることもありえるので、子どもの様子が変だと感じたら、確認することが大切です。

子どもを虐待!~離婚するにはどうすればいい?~

前章では虐待の種類をお伝えしてきました。
では、パートナーが子どもを虐待していると分かった場合、どのような行動をすればよいのでしょうか。

子どもの虐待は離婚事由になり得るの…?

まず、大前提としてパートナーが子どもを虐待した場合、法定離婚事由になりえるのかどうかを考えていきたいと思います。
法定離婚事由とは法律で定められた離婚できる理由のことで、以下のように定められています。

・不貞行為
・悪意の遺棄
・3年以上生死不明
・配偶者が重度の精神病で回復を見込めない場合
その他婚姻を継続し難い重大な事由

法定離婚事由を確認してみても「子どもへの虐待」を示している明確な言葉は見当たりません
え、離婚出来ないの?」と考えてしまうかもしれませんが、ご安心ください。
「子どもへの虐待」は、その他婚姻を継続し難い理由に該当します。
したがって、相手の有責で離婚することが可能なのです。離婚事由になる虐待については、虐待の内容・期間・頻度・虐待を注意されても改善が見られないなどの事情が鑑みられ判断されます。

虐待が発覚したら、用意しておくものとは…?

虐待を理由に離婚するためには、法定離婚事由にあたるかどうかの証拠が必要になるケースがあります。
有力な証拠になりえるものは以下です。

・診断書…暴力による怪我の診断書やPTSDと診断されたものなどです。
・写真…診断書と合わせて、暴力による怪我の写真があると有力性が高まります。
・虐待行為の動画や録音…物理的証拠の残らない、心理的虐待などは動画や、実際の音声データが非常に有力な証拠になり得ます。

以上が、虐待の証拠になりえるものの紹介でした。
なお、虐待は有責離婚事由にあたるので、慰謝料を請求することも出来ます
慰謝料の金額は虐待の内容や事情によってケースバイケースですが、中には100万円以上の慰謝料の支払いが認められた事例もあります。

養育費はどうなるの…?

子どもの虐待を理由に離婚が成立した場合、子どもに近づけたくないといった理由から、養育費の支払いを拒否する、もしくは取り決めをしない方がいらっしゃいます。
しかし、子どもの養育費は高校まですべて国公立に進んでいたとしても500万円以上大学に進学した場合には1,000万円以上、最低でもかかります。
私立を希望したり、進学のために塾などに通った場合には更に金額が加算されます。
したがって、養育費の支払いがないと、生活が厳しくなってしまう可能性があります。
加えて、「お金を稼がないと」と思うあまり身体を壊してしまったり、心に余裕がなくなり子どもにきつく当たってしまう危険性もあるのです。
そのため、虐待が理由で離婚したとしても養育費の取り決めはおこなった方が良いでしょう。
「パートナーと子どもを会わせたくない」とお考えの方は、弁護士などの専門家に相談して見ても良いかもしれません。

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まとめ

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今回は、子どもを虐待しているパートナーとの離婚についてお話をしました。
「虐待」とは、子どもの心に大きな傷を与える最低な行為です。
また、子どもの頃に虐待を受けた子どもは、自身の子どもも虐待する傾向にあるというデータもあります。
したがって、虐待が発覚し、パートナーに改善の余地が見られない場合には、離婚の準備を進めた方が良いでしょう。
とはいえ、子どもを虐待するパートナーですので、離婚にすんなり応じてくれるか分かりません。
そういった場合には、家庭裁判所に調停の申し立てをおこなうことをおすすめします。
また、弁護士に相談しても良いかもしれません。
銭的に余裕がなくとも、初回は無料で相談出来たり、DV等被害者相談援助制度などもありますので、活用してみてください。

弁護士に相談したい方はこちら

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