ペットの存在は非常に大きいものです。
家族の一員として一緒に時を過ごすことで、一緒に楽しんだり、命の大切さを知ったり、悲しいときはペットの存在に癒されたりとさまざまな体験をすることができます。
一方でペットに対する家族の思いが異なる場合、場合によっては離婚トラブルに発展するケースもあります。
今回は、ペットが原因となって夫婦関係が悪化してしまった女性の相談事例を紹介していきたいと思います。
【子どもが猫アレルギー】ペットに対する考え方が違うので離婚したい
主人公:真央(36)
夫:玲央(36)
息子:央太(3)
猫:ムギ(8)
夫の玲央とは、大学時代にアルバイトしていた居酒屋で出会いました。
およそ12年間の交際期間を経て31歳の時に結婚しました。
交際期間が長くなった理由は、玲央には10個離れている弟がいたためです。
玲央の両親は、彼が24歳のときに交通事故で他界してしまいました。
当時弟は14歳、また玲央も社会人になったばかりという状況でした。
彼の祖父母は存命中だったので、彼らに弟を預ける手段もあったでしょう。
しかし玲央の弟は彼と一緒に住みたいという希望を持っていました。
弟の希望を叶えるため、玲央は祖父母を説得し、各所に協力をお願いして弟が大学を卒業して、実家を出たタイミングで私と結婚しました。
結婚するとき、玲央が実家で飼っていた猫のムギを「ムギは家族だから、一緒に暮らしたい」といってきました。
ムギは、玲央が大変だったときに癒しになったり、精神的にも支えになったりしていたのだろうと考え、二つ返事で了承しました。
結婚当時、ムギは4歳。
ずっと暮らしていた玲央にはとても懐いていましたが、私には警戒心を持っているようで、一緒に暮らして半年たっても一向になついてくれず、むしろ敵意を抱いているような態度でした。
私自身、産まれて初めてペットを飼ったので、なかなかなつかないこともあるのかなとは考えていました。
しかし一緒に住んで4年経った今でも抱っこさせてくれないし、「シャー」と威嚇されたり、引っかかれたりします。
とはいえ、子猫のころから一緒に暮らしていたわけでもないし、かわいいとは思うものの、ムギに対して玲央が思っているような愛情をもって接していたわけではないので、仕方がないのかなとは思っていました。
私が玲央に対して不満を感じるようになったのは、息子の央太が猫アレルギーを発症してからです。
ムギは私に対してはなついていませんが、央太にはとても優しく、まるで親猫のようにふるまっています。
央太もムギと一緒にいると嬉しいようで、やり取りをほほえましく見ていました。
しかし2歳を過ぎたあたりから、央太はムギと一緒にいるとくしゃみをしたり、せき込むようになったり、発疹がでたりするようになりました。
おかしいなと思い、病院で検査を受けたところ猫アレルギーだったことがわかりました。
私はすぐに玲央に央太が猫アレルギーになったことを伝え、ムギを彼の祖父母や弟に譲ることはできないかと言いました。
すると、玲央は「央太のことはよくわかったけど、ムギをすぐに手放すことは考えられない。アレルギーが出ないように、僕の書斎からムギを出さないようにしたり、掃除もこまめもするからちょっと待ってくれないか」といいました。
アレルギーは猫から遠ざけるのが一番だと思っていた私は、その場しのぎの玲央の提案に不満を持ちました。
しかし、ここで言い争いになっても仕方がないとしぶしぶ了承しました。
央太の猫アレルギーが発覚してから、玲央はムギを書斎から出さないようにしたり、こまめに掃除したり、猫の毛が服について央太の具合が悪くならないような行動をしていました。
何も知らない央太は、「ムギちゃ(ん)は?」と、ムギがいない生活を寂しく思っているようでしたが、「かゆいかゆいになるから会えないんだよ」となんとか説得していました。
不満はいろいろありましたが、できる限りの努力をしている玲央に対し、「やっぱり猫をどっかにやってほしい」とはいえずもんもんとした日々を送っていました。
離婚を意識することになったのは、央太が3歳になりあちこち家の中を歩きまわるようになったときでした。
央太は、ドアを開けたり閉めたりすることが大好きで、家中のドアをあちこち開けては閉めたりをしていました。
私が夕食の準備をしていて少し目を離したすきに、ムギのいる夫の書斎のドアを開けてしまいました。
ドアが開いたことで、ムギは書斎から飛び出しました。
玲央がいないときだったので、ムギを捕まえるのに一苦労。また、央太もくしゃみが止まらなかったりで、これまで我慢していたことが一気に噴き出してきました。
なんとか騒動を収めた少し後に玲央が帰ってきました。
あまりの怒りに、「書斎に鍵かけてっていったじゃん!!猫が部屋から出て大変だったんだから!ちゃんと管理できないなら譲るなり、処分するなりどうにかしてよ!!」
私の言い方も良くなかったのかもしれませんが、玲央も「処分」という言い方に引っかかったのか言い返してきました。
「鍵をかけ忘れて央太に辛い思いをさせてしまったことと、真央に迷惑をかけたことは本当にごめん。でも、処分っていう言い方はよしてくれ。ムギは僕の家族同然なんだ。祖父母も年だし、弟もペット不可のところに住んでる。里親も考えてはみたけれど、実際問題として信頼できるひとを探すのも難しい。今以上に気を付けるから現状維持でお願いできないだろうか」
玲央にとっては大切な愛猫かもしれませんが、央太より私より猫を優先しているのではないかと疑念がわいてきています。
このまま猫を飼い続けるなら、央太のことも心配なので離婚も考えています。
どうすればいいのでしょうか。

弁護士の見解
猫アレルギーなどのアレルギーは、生まれつき持っていた先天性だけではなく、後天的に発症することも少なくありません。
真央さんの場合、央太さんの猫アレルギーに配慮してくれない夫の玲央さんに対し不満を覚え、離婚を考えています。
このような理由は、法律で定められている裁判上の離婚事由にあてはまるのでしょうか。
結論からいうと今回のケースは裁判上の離婚事由に当てはまるとは考えにくいです。
というのも、玲央さんは央太さんが猫アレルギーの症状がでないように配慮していると考えられるからです。
真央さんが玲央さんに求める配慮とは、飼い猫であるムギを他のひとに譲るなどの手放すことだと考えられます。
確かにアレルギーがひどくならないためには、原因である猫を物理的に遠ざけることが、有効な手段でしょう。
しかしながら、実際は飼い猫の引き取り手が見つからない場合もありますし、捨てたりするなどの強硬手段は動物愛護法でも禁じられている犯罪行為です。
玲央さんは、猫を手放してはいないものの、央太さんとムギがなるべく接触しないよう部屋を分け、またアレルギー源になりえる猫の毛が央太さんに触れるリスクを下げるためこまめに掃除したり、服を着替えたりと配慮しています。
仮に、玲央さんがアレルギーに関する自分の考えを真央さんや央太さんに押し付け、過度にムギと接触させるなどアレルギーをひどくさせる行為をしているのであれば、裁判上の離婚事由に該当する可能性もありますが、お話を聞く限りではそのような行動は見受けられません。
そのため、真央さんが玲央さんと離婚したいと考えるのであれば、まずは夫婦間で話し合い、同意を得て離婚を成立させることを目指した方が良いでしょう。
私見にはなりますが、真央さんのお話を聞いている限り、ムギとの関係が築けておらず、愛着がないため、余計に猫を手放してほしいという気持ちが強いのではないかと思われます。
そのため、真央さんがムギに対して感じている気持ちを素直に伝えていても良いかもしれません。
玲央さんにご自身が持つ気持ちを伝えることで、折り合いがつくこともあるかもしれませんし、お互いの価値観のすり合わせをしてみても折り合いがつかないときには離婚も止むを得ない場合もあります。
離婚するにしても回避するにしても、夫婦がそれぞれ持っている認識を把握することがとても重要なので、一度話し合いをしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は子どもが後天性の猫アレルギーを発症し、それをめぐり価値観の違いを感じた女性の相談事例を紹介しました。
子どもが幼いと、病気やアレルギーなどに対して敏感に反応するのは仕方がないことです。
しかし、頭ごなしに相手の価値観を否定し、自分の意見を押し付けてしまうと、その場は離婚を回避したとしても、後に相手から離婚を切り出されることは少なくありません。
離婚するにしても話し合いするときに、お互いに対する悪感情が強いと、冷静に話し合いが出来ず、離婚が成立するまでに相応の時間がかかってしまうケースもあるので注意してください。
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