離婚するなら、離婚の取り決めを公正証書にするべきというフレーズを聞いたことがありませんか?
離婚を意識すると、公正証書にした方が良いって聞きますが、そもそも公正証書って一体何なんでしょう?
どうして自分たちで書いた離婚協議書じゃだめなんでしょうか?
今回は離婚協議書を公正証書にする意味と、メリットについて考えていきたいと思います。
自分で作成した離婚協議書と公正証書の違いとは?
離婚する場合、離婚協議書を公正証書にするべきと言うことを耳にすることがあります。
自分で作成した離婚協議書と公正証書にした離婚協議書の違いは私文書か公文書かの違いになります。
■私文書
私文書とは、私人が作成する文書のことを指します。
自分たちで作成した離婚協議書は、私人同士で結んだ契約となりますので、私文書扱いになります。
例えば、私文書でお金の貸し借りの契約を結んだとします。
支払う義務を負う側が、返済を怠った場合、私文書で結んだ契約に法律的な効力はありますが、強制的に給料を抑える等の手続きを行えるわけではありません。
つまり、養育費の支払いの契約を離婚協議書に盛り込み、その後支払いが滞った場合、私文書の離婚協議書だけでは強制的に取り立てることができないのです。
■公文書
公文書とは、国や地方自治体等の公的機関が作成し発行する文書のことを指します。
離婚の場合、次のような公文書が登場します。
- 離婚協議の内容を記した公正証書
- 家庭裁判所で離婚調停を行い、成立した場合の調停調書、和解調書
- 離婚の可否を裁判で争った場合の判決文等
これらの公文書と私文書の離婚協議書の大きな違いは、内容に養育費の支払いや、慰謝料の分割の支払いが明記されており、支払いが滞った場合、裁判所に強制執行の手続きを取ることができます。
強制執行の手続きとは、夫の勤務先や銀行口座から未払いの分を強制的に取り立てることを指します。
これはかなり大きな効果です。
なお、調停や裁判を経て離婚を成立させた場合には、調停調書や判決書等で強制執行の手続きを行うことができます。
とはいえ、日本の離婚の8割以上は、協議離婚です。
協議離婚の場合は、離婚協議書を公正証書にする手続きが必要となります。
離婚協議書を公正証書にする方法
離婚協議書を公正証書にする場合、公的機関である公証役場の公証人という役目のひとに、夫婦で取り決めたい内容を伝え、相談しつつ公正証書を作成します。
公正証書の作成までの簡単な流れは次の通りです。
- 夫婦で離婚協議書の内容を決める
- 離婚協議書の案を作成する
- 公証役場に連絡し、公正証書作成の申し込みをする
- 夫婦、もしくは代理人が公証役場に向かい公証人に公正証書を作成してもらう
①夫婦で離婚協議書の内容を決める
夫婦で話し合いができる状態であれば、離婚協議書の内容を決めます。
話し合いの内容は、子どもの有無や離婚理由によって異なりますが大体次のようなものになります。
- 財産分与
- 養育費
- 慰謝料
上記のような財産に関する取り決めは、離婚後も継続して支払いが発生する可能性があります。
養育費等離婚後にも支払いが発生するような場合には、リスクヘッジとして取り決めを行っておいた方が良いでしょう。
②離婚協議書の案を作成する
①で話し合ったことを書面にします。
ここで作成する離婚協議書の案は、公正証書を作成する上で大変重要なものとなります。
譲れない条件がある場合には、とことん話し合いましょう。
納得いかない内容で公正証書を作成すると、取り返しがつかなくなります。
③公証役場に連絡し、公正証書作成の申し込みをする
夫婦双方で合意が取れたら、公証役場に公正証書作成の申し込みを行います。
事前予約が必要かどうかは公証役場によって異なりますので、事前に管轄の公証役場のホームページ等を確認しておく必要があります。
公証役場は法務局と同じ管轄となるので、夫婦の住所地の都道府県内の公証役場を利用するようにしましょう。
④夫婦、もしくは代理人が公証役場に向かい公証人に公正証書を作成してもらう
予約した日時に公証役場へ向かい、公証人と面談を行います。
その際、②で作成した離婚協議書案があると、スムーズに面談が行えます。
なお、公証役場は調停等の裁判所と異なり、すでに離婚の合意が取れている場合に利用ができます。
面談時、離婚協議書案をめぐりケンカ等が起こったとしても、仲裁はありません。
争いがあると公正証書を完成させるまでの時間が長くなる可能性があるので、あらかじめしっかりと話し合いを行っておいてください。
また、夫婦の合意があっても、法律上無効な条項や、公序良俗に反する条項は載せることはできませんのでご注意ください。
公証人との面談から1週間から10日ほどで公正証書が作成されます。
公証役場から連絡が来ますので、来所してください。
離婚協議書の公正証書を引き渡すときに、公正証書の費用を渡すことになります。
離婚協議書の公正証書の費用は契約内容によって異なりますので、詳細を確認されたい方は公証役場のホームページを確認したり、事前に問い合わせしてみてください。
なお、止むを得ない事情があり、途中で公正証書の作成を中止した場合でも、面談等の事務手続きをすでに行っている場合には、手数料を支払わなければいけないケースがありますのでご留意ください。
離婚協議書を公正証書にしたほうが良いケース
離婚協議書の作成は、場合によって安くない手数料がかかります。
したがって、ご自身が離婚する場合、離婚協議書を公正証書にするべきなのかを確認する必要があります。
離婚協議書を公正証書にした方が良いケースとして、次のようなシチュエーションが考えられます。
- 離婚する夫婦に子どもがいる場合
- 慰謝料の支払いを分割で取り決めたとき
離婚する夫婦に子どもがいる場合
離婚する夫婦に子どもがいる場合、非親権者には、養育費の支払い義務が発生します。
養育費は、子どもの年齢によっては10年以上継続して支払われるものですので、離婚協議書を公正証書にしておいた方が良いです。
慰謝料の支払いを分割で取り決めたとき
夫婦の一方の行動によって離婚する場合、慰謝料の支払いが発生するケースがあります。
慰謝料は一括支払いのイメージが強いですが、分割で支払われることもあります。
慰謝料を分割での支払いにした場合には、離婚協議書を取り決めておいた方が良いでしょう。
離婚協議書を公正証書にする目安として、離婚後相手方から継続的に金銭の支払いがあるときと考えると良いと思います。
離婚協議書を公正証書にするときの注意点
離婚協議書を公正証書にする場合、次のような点に注意して取り決めをしておきましょう。
- 強制執行認諾文言付きで取り決めておく
- 通知義務を盛り込んでおく
強制執行認諾文言付きで取り決めておく
離婚協議書を公正証書にする場合には、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しましょう。
強制執行認諾文言とは、養育費等の継続したお金のやりとりが未払いになった場合、相手方の財産を強制的に差し押さえられる条項となります。
離婚協議書を公正証書にしたとしても、強制執行認諾文言が無ければ、強制執行をすることができませんのでご注意ください。
通知義務を盛り込んでおく
離婚協議書を公正証書にした場合、通知義務を押さえておきましょう。
通知義務とは、養育費等の支払い義務がある間、相手方の住所や勤務先、電話番号が変更された場合、通知するという義務になります。
養育費等で未払いが発生し、強制執行を行いたい場合、相手方の居住先と勤務先等がわからないと、泣き寝入りになったり、情報を得るまでにかなり手間がかかったりします。
したがって、万が一に備え通知義務を盛り込んでおくと良いと思います。
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まとめ
今回は、離婚協議書と公正証書の違いや、公正証書作成時の注意点を解説しました。
離婚協議書を公正証書にする場合、一番重要となるのが、離婚協議書の内容を夫婦で話し合って決めることです。
話し合いが難航すると、離婚するまでの時間がかかってしまいます。
したがって、条件に折り合いがつかない場合、家庭裁判所に調停の申し立てを行ったり、弁護士に交渉を依頼することを検討しましょう。
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