それは大体、こうふくにつながる~子どもの将来を左右する、養育費の取り決めとは…~

離婚をして5年経った。息子は今年で小学6年生。

離婚した元夫は、変わらず養育費を支払い続けてくれていることに感謝だ。

彼が言うには、「はじめは面倒だったけれど、公正証書を作っておいてよかった」という。

「ペナルティがなかったら、支払いがなあなあになってしまったかもしれない」と。

育児にかんして、価値観の合わない彼だったけれど、今では父親として付き合えている。

養育費の支払いがなければ、ここまで良好にはならなかったかもしれない…。

協議離婚とはどんなもの?

2019年に、離婚した夫婦はおよそ21万組と言われています。そのうち、約9割の方が協議離婚を選択しています。

協議離婚は、世界的にみて珍しい制度で、裁判所をかいさずに夫婦同士の話し合いで離婚することを指します。夫婦の合意があれば、緑の紙1枚で離婚することが可能です。

裁判離婚は、法定離婚事由がなければ、おこなうことが出来ませんが、協議離婚は裁判所をとおさず、夫婦同士で完結するので、法定離婚事由がなくても成立します。簡単な手続きで離婚が完了するため、便利といえば便利ですが、問題点もあります。

協議離婚の問題点とは…?

協議離婚の問題点として、以下のようなことが挙げられると思います。

  1. 離婚協議の内容を書面で残さないと、後々の争いにつながる可能性がある
  2. 夫婦で意思疎通が取れていないと話し合いが出来ない
  3. 感情的になってしまい、話し合いが進まない
  4. 勝手に離婚届を提出されてしまうことがある

 

1.離婚協議の内容を書面で残さないと、後々の争いにつながる可能性がある

離婚に向け、夫婦で取り決めしたことは、書面でなくても、口約束で契約が成立します。しかし、後々養育費や、慰謝料を分割払いで滞納が起きた場合に、口約束だけだと「言った」「言わない」の争いに発展することがあります。

2. 夫婦で意思疎通が取れていないと話し合いが出来ない

当然のことですが、夫婦のコミュニケーションが取れなければ、そもそも話し合いが成立しません。したがって離婚協議が出来ず、調停にもつれこんでしまう可能性があります。

3.感情的になってしまい、話し合いが進まない

可愛さあまって憎さ百倍。言葉のとおり男女関係のもつれは、強い感情を持っていることがほとんどなので、言い争いになることがあります。結果、感情的な言葉ばかりの応酬で建設的な話し合いが出来ないことがあります。

4.勝手に離婚届を提出されてしまうことがある

「サインもらうだけだから」と言って、安易にサインを書いてしまうと、そのまま役所にもっていかれ、離婚が成立してしまう可能性があります。もちろん調停や審判で無効にすることは出来ますが、結果が出るまで時間を要します。なお、勝手に妻のサインを偽造し、提出した場合には有印私文書偽造などで懲役や罰金を科せられることもあります。

以上が協議離婚のもつ問題点でした。①の場合には、離婚協議書の作成を行えば、防げる可能性が高まります。また、2や3のケースでは、見切りをつけ調停を申し立てるか、弁護士に依頼した方がスムーズに離婚できるかもしれません。4の対策としては、話し合いの途中で「サインや押印を絶対しないこと」に尽きると思います。更に付け加えると予防策として、離婚不受理を出せば、勝手に離婚届を出されても無効です。

気になる方はお住まいの役所に相談してみましょう。

離婚協議書を作成するってどういうこと?

前章では、協議離婚の手続きの簡単さや問題点をあげました。

協議離婚の問題点とは…?」の①であげたようなトラブルを回避するためにも、離婚協議書の作成は大切です。けれども、具体的にどのように作成すれば良いのでしょうか…。

離婚協議書には2種類ある

離婚協議書には2つの作成方法があります。

  • 夫婦、もしくは弁護士が作成する離婚協議書
  • 公証役場で公証人に作成してもらう離婚協議書

上記は両方とも、法律に反している取り決め以外は法的効力を持ちます。しかし、ふたつの書面の法的効力には違いがあります。どういうことなのでしょうか。

自分、もしくは弁護士が作成した離婚協議書

公証役場をとおさず作成した離婚協議書を、私署証書といいます。私署証書は、契約書と同じ効力が発揮することが出来ます。つまり、「言った」「言わない」の水掛け論を防ぐことが出来るのです。

しかし、取り決めた養育費などの延滞が生じた場合給料差し押さえといった強制執行をする効力はありません。養育費や慰謝料の分割支払いなど、金銭の支払いがないときには、夫婦で離婚協議書を作成しても良いかもしれないですね。

なお、離婚協議書は、特に決まった様式が無く、夫婦で自由に作成することが出来ます。そのため、後になって相手方から取り決め内容の無効を主張されることもあります。このようなことが起こらないように、日付や署名、押印などをおこなっておいた方がよいかもしれません。

また、取り決め内容が法律に反していないか、不安な方は公証役場へ行き、私署証書の認証をしても良いでしょう。私署証書の認証は、公証人が正しく成立したことを証明するとともに、無効や法律違反であることも確認してくれます。更に付け加えると、後述する公正証書よりも手数料が低く、 5500円~11000円程度です。

離婚協議書の公正証書

離婚協議書を公正証書にした場合、法的な効力があるとともに、養育費などが滞納した場合、強制執行ができる効力を付けることが出来ます。公証役場へ行き公証人が作成してくれるので、効力は折り紙付きといっても良いかもしれません。

離婚協議書を公正証書にした場合、金銭的な契約1つにつき、いくらかの手数料が引かれます。引かれる手数料は、設定した金額によって異なります。また、公正証書には、作成するために原則として夫婦二人で公証役場へ行かなければなりません

離婚する夫婦がふたりで公証役場へ行くハードルは意外と高そうです。しかし、そのハードルを超えさえすれば、養育費の不払いなどの確率を下げることが出来ます

以上が離婚協議書と公正証書の解説でした。

養育費の取り決めをしたなら公正証書で協議書を作成しよう

前章で、離婚の公正証書には、強制執行できる効力を付けることが出来ると言いました。正式名称は、強制執行認諾文言と言います。

ちょっととっつきにくい言葉ですが、養育費の取り決めを公正証書でした場合、とても大切になってきます。子供のいる夫婦が離婚にあたって、一番に取り決めをすべきことは、「養育費」の問題です。

養育費を貰う権利は親権者(もしくは監護者)の権利ではなく、子どもの権利です。親権者(もしくは監護者)は、子どもが未成年のため、権利の行使を代理しているにすぎません。したがって、本来であれば親の都合で、養育費の有無を決めてはならず、一番優先して取り決めをおこなうべきことです。

とはいえ、実際、シングルマザーで養育費を定期的に貰っている割合は、3割に届きません延滞もかなり高い割合で起きています。そのため、公正証書を利用して、養育費の取り決めをおこない、抑止力にしたり、強制執行を盛り込んだりするのです。

養育費の取り決めをおこなった場合の手数料とは…?

公正証書は公証人に作成してもらう公文書のため、手数料が比較的高いです。養育費の取り決めをおこないたいけれど、高額な手数料にならないか心配する方も多いかもしれません。養育費の取り決めを公正証書にしたい場合、かかる費用は養育費の金額によって異なります。日本公証人連合会では、1契約につき以下のような手数料の設定をしています。

目的の価額 手数料
100万円以下 5000円
100万円を超え200万円以下 7000円
200万円を超え500万円以下 11000円
500万円を超え1000万円以下 17000円
1000万円を超え3000万円以下 23000円
3000万円を超え5000万円以下 29000円
5000万円を超え1億円以下

 

43000円
1億円を超え3億円以下 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額

 

3億円を超え10億円以下 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額

※日本公証人連合会 手数料のページ参考

上記を見て、疑問がわいた方もいると思います。養育費は月々支払われるのが普通ですよね。月々の支払いで、養育費を100万円受け取る人は滅多にいません。

それならば、ほとんどのケースで5000円の手数料ではないかと考える方もいらっしゃるでしょう。その計算方法だと、ほとんどの人が手数料5000円になるので、魅力的ですが、現実は違います。養育費の支払いは、定期給付にあたるため、年額×支払い年数を合算して計算されます。

なお、支払い期間が10年を超える場合も最大で10年分の合算しかされません。ちょっとわかりにくいと思うので、以下の例を参考にしてみてください。

【例1】養育費のみの契約で、月々4万円の15年の支払いの場合

養育費の手数料=11000円(計算式:4万円×12か月×10年間=480万円)

例2】共同財産が150万円、養育費が月々6万円で7年間の支払い、慰謝料が250万円の場合

1契約(法律行為)ごとに手数料がかかるので、

共同財産の手数料=7000円、慰謝料の手数料=11000円

養育費の手数料=17000円(計算式:6万円×12か月×7年間=504万円

手数料総額=35000円

上記のように養育費以外の契約をすると、手数料が高額になります。お金に余裕がない方は、養育費のみで公正証書を作成しても良いかもしれませんね。

体験談

その決断はだいたい、幸福につながった

妻:あきこ(40)

夫:ゆめじ(41)

息子:しき(12)

 

元夫のゆめじは、高校時代に入部していた文芸部の先輩と後輩の関係でした。好きな作家が一緒。沈黙が続いても気づまりにならない、居心地のよさで自然と付き合うようになり、山も谷もなく結婚しました。平穏無事、幸せな結婚生活を送っていましたが、息子のしきが生まれてから、夫婦の共通認識がずれていきました。

私は、いわゆるスパルタ教育の家庭に育ってきたものですから、息子にはのびのびと育ってもらいたいと思い、取り立てて「勉強」ということはありませんでした。しかし、夫の考えは違うようで、勉強は将来大事になるといって、過剰に「勉強しろ」と言うようになりました。お互い、しきのことを考えての発言だったのですが、教育の方向性で揉めるようになり、夫婦仲がぎくしゃくしてしまったのです。

彼も私も、お互いのことを嫌いではなかったので、修復しようとしましたが、難しく、結局しきが2年生のときに離婚しました。親権は私。養育費は毎月6万円と取り決めをしました。共同財産は、貯金だけだったのできっちり半分に分けました。

離婚の話し合いはすんなりと言ったので、離婚協議書は必要ないと思っていたのですが、私の両親の強い奨めにより、公正証書にしてもらうことにしました。私たちは、公証役場へいき公証人というひとに、養育費や面会交流などを盛り込んだ強制執行文言付きの公正証書を作成してもらいました。

それから、5年。養育費の不払いはまだありませんこの前、元夫にしきとの面会のことで電話したところ、離婚時の話が話題になりました。私は、元夫が不払いをするはずのない人だと思っていたので、「公正証書にかかったお金が無駄になっちゃったね」と話しました。しかし、「抑止力として役に立っている」と言いました。

「養育費は親の務めだけれど、書面で残していなかったら、なあなあになっていたかもしれない。それに、今後しきが大人になるまではお金がかかる。まだ安心するのは早いよ」と。そういわれて合点がいきました。公正証書は、不払いになったときの強力な手段だけれど、不払いを未然に防ぐものでもあるのだと。確かに、しきも来年は中学生。これから高校受験や塾代などお金がかかる時期になります。

あの時、両親が奨めてくれたことに感謝しています。今後も夫からの養育費に不払いが無く、良好な関係を続けていきたいと思います。

まとめ

今回は離婚協議や、離婚の公正証書のメリットなどについて解説していきました。公正証書ときくと敷居が高く、なんとなくしり込みしてしまうかもしれません。また、手続きにハードルがあるので、「面倒くさい」と選択肢から外してしまう方もいるでしょう。

しかし、子どもがいる場合、成人するまでにかかる養育費は高額です。また、お金の問題で、子どもの将来をせばめてしまう可能性もあります。したがって、夫婦でしっかりと話し合って、離婚の取り決めを公正証書にするかどうかを検討してもらえればと思います。

 

 

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