結婚前、プロポーズのときに「これから幸せにするからね」という約束する夫婦は少なくないと思います。
幸せと思うかたちはひとそれぞれなので、結婚後夫婦間でトラブルがあり離婚になった場合、「幸せにするっていったのに約束したのに破った」と思う方は多くいるかもしれませんが、「約束違反だから慰謝料をもらう」という方はいないと思います。
しかし、約束したものが「幸せ」のように抽象的なものではなく、具体的なものだったらどうでしょうか。
今回は結婚前の約束と実際の結婚生活が違うことを理由に離婚を考えている女性の相談事例と、弁護士の見解について紹介していきたいと思います。
【結婚前の約束を破った夫】婚活で嘘を吐いた夫と離婚したい!
相談者:みかこ(仮名)34歳
夫:まりお(仮名)38歳
私はもともと結婚願望が強い方でありませんでした。
というのも、23歳から32歳まで長く付き合っていた彼氏がおり、25歳から別れる直前までずっと同棲もしていました。
籍こそ入れていなくても、一緒に住んで生活費も折半、家事分担もしていたので夫婦と変わらないと思っていたからです。
夫婦のような生活をしていても、結婚はしていないので義両親との付き合いはそこまで多くなかったので、むしろ夫婦になるよりも快適とすら思っていました。
しかし、32歳のとき元彼の浮気で破局。
9年間も付き合って、夫婦同然だったのに終わるのは一瞬。
元彼は当時同棲していたマンションをさっさと出て、職場やスマホの番号、すべてを変えて音信不通状態に。
その時私は元彼慰謝料を貰いたいと思っていたのですが、音信不通状態でどこに住んでいるかもしれないひとに慰謝料を請求することはできず、泣き寝入りしました。
夫婦だったら「別れましょう」ではい、おしまいとならなかったに違いありません。
最低な別れ方をしたことで結婚したいという願望が生まれ、また元彼より良い男と結婚してやるという気持ちが強くなり、婚活を始めました。
とりあえず婚活アプリをいれて、手あたり次第たくさんの男のひとと会い、婚活パーティにも手あたり次第参加していました。
なかなかマッチングしない中、友達に「とりあえずおいしいごはん食べられるから来て!」と誘われたパーティで後の夫となるまりおに出会いました。
友達に誘われたパーティは、がっつり婚活パーティというよりも、友達とか恋人を探すようなライトなものでした。
年齢層もかなり20代前半から後半だったので、ノリについていけずととりあえず、ビュッフェ形式の料理とお酒を飲もう、壁の花よろしくやっていた時にまりおから話しかけられました。
まりおは当時37歳、私と同じく居心地の悪い思いをしていたようで、「のけ者同士飲もう」ということになり色々2人で話しました。
彼は、メディアコンサルタント会社を経営し年収が1,000万円以上あるそうで、結構リッチな生活を送っているとのことでした。
恋愛面に関しては、30代前半に長く付き合った彼女と大失恋をしたそうで、恋愛や結婚などを遠ざけていたようですが、最近になって改めて結婚したいと感じるようになり、婚活パーティに参加するようになったと話してくれました。
経緯は違えど、私も同じような経験をしていたので話が合い、話が弾みました。
話している中で私たちの結婚観が似通っていることに気付きました。
例えば結婚後すぐに子どもが欲しいこと、1日に一度は顔を合わせてご飯を食べること、育児は父親と母親、どちらも積極的に参加すること、家事は妻に押し付けすぎないことなどなど…。
上辺だけでなく本当に思っていることが伝わり、初めて会話するひとにこんなことを感じるのはおかしいかもしれませんが、「このひとと温かな家庭を作ってみたい」と思いました。
私はまりおと連絡先を聞き、デートに誘いました。
2回目のデートでまりおが結婚前提に付き合ってほしいといってくれたので喜んで了承しました。
その後半年付き合い、彼から「これから人生を共に歩んでいってほしい」とプロポーズされ、結婚しました。
結婚後、私は住んでいたマンションを引き払い、彼の住むマンションに引っ越し、結婚生活をスタートさせました。
引っ越し先のマンションは、思い描いていた広いマンションではなく、1DKのマンションでした。
「お金があるのにずいぶん質素だな」と感じましたが、お金目当てで結婚したと思われたくなくて黙っていました。
しかし、彼が結婚前に申告していたことは、ほとんど嘘だということが判明しました。
メディアコンサルタントの仕事をしているといっていましたが、実際はフリーランスのライターで、年収は1,000万なんて全然いかず、安定していませんでした。
しかもフリーで自宅にいる時間が多いのにも関わらず家事をしない。
子どもも作りたいといっていたのに、結婚後しばらくすると、「今仕事が忙しいから、子どもなんて考えられない」と冷たく突き放されました。
思い描いていた理想の結婚生活が崩れました。
いい方悪いですが結婚詐欺にあった気分です。
年収のことは、100歩譲って、お互い協力し合えばなんとかなるので、もう仕方がないことですが、子どもについては譲れません。
昔よりも、出産できる年齢が高くなっているとはいえ、出産にはタイムリミットがあります。妊活等して、努力し、出産できないのであれば、諦めもつくかもしれませんが、そもそも新婚なのに夜の生活すらほとんどありません。
限界です。できれば結婚を取り消したいですし、それが無理なら離婚したいです。
また結婚前の約束と違うのでできれば慰謝料も取りたいです。
弁護士の見解
今回の相談者であるみかこさんは、結婚前にした約束と違うことを理由に、結婚の取り消し、それが難しいようなら夫のまりおさんから慰謝料を取って離婚したいと考えています。
さっそくそれぞれ考えていきましょう。
結婚の取り消しは可能なのか
まず結婚の取り消しについて確認していきたいと思います。
結婚の取り消しをしたいと考えた場合、主に次のような条件に当てはまらなければいけません。
- 二親等以内、直系姻族、養親養子間など近親者と結婚していたとき(※)
- 夫婦のいずれか一方もしくは両方が結婚年齢の18歳に達していない場合
- 人違いで結婚したなどお互いに結婚の意思がないとき
- 女性の再婚禁止期間に結婚したとき
- 詐欺または無理強いによって結婚したとき
※離婚したとしても元配偶者の義両親とは結婚することはできません。また養親養子間についても養子縁組を解消したとしても結婚することはできません。
まりおさんは結婚したときにご自身がメディアコンサルタントの会社を経営しており、年収が1000万円あるとみかこさん虚偽の申告をしました。
職業と年収の虚偽申告は、一見すると結婚の取り消しができる条件のひとつ、「詐欺」にあたるのではないかと考えられそうです。
しかし、年収や職業の虚偽申告は「重大な虚偽申告」とは認められにくいです。
また、みかこさん自身年収に関する虚偽申告については、「お互い協力し合えばなんとかなる」とおっしゃっているのであまり重要視しているわけではないことが伺えます。
仮にみかこさんが年収や職業に関して結婚の取り消しを求める場合、「結婚前の重大な虚偽を知ってから3か月以内」に家庭裁判所へ婚姻無効の調停を申し立てる必要があります。
3か月を経過した場合、追認した、つまり事後承諾したとみなされて結婚の取り消しができなくなります。
このようにさまざまな条件をクリアしなければならないので、結婚の取り消しを目指すのは現実的ではないので離婚で夫婦関係の解消を目指すべきです。
慰謝料を得て離婚できる可能性はあるのか
みかこさんは嘘を吐いたまりおさんに慰謝料を貰い離婚することを望まれています。
離婚に関しては、みかこさんとまりおさんが話し合って、離婚に合意することさえできれば成立します。
離婚の合意を得るのが難しいのですが、そこさえクリアできれば離婚届を出して夫婦関係は終了になります。
一方で慰謝料はどうでしょう。
離婚の慰謝料は夫婦のうち一方の言動によってそのひとの持つ権利を侵害され、精神的苦痛を受けたときに請求できるお金をいいます。
今回の場合、まりおさんの言動がみかこさんの権利を侵害したということを証明するのは難しいと思われます。
みかこさんとしては、「精神的に傷ついているのにどうして」と思うかもしれません。
しかし、慰謝料は「精神的苦痛を受けた」と主張しただけでは認められにくく、みかこさんが感じた精神的苦痛はまりおさんがみかこさんの権利を侵害したからだということを客観的にみてわかるような証拠が必要となるのです。
そのため、現状では慰謝料を請求しても、認められない可能性が高いです。
慰謝料としてお金を得ることは難しいですが、離婚の話し合いの中でまりおさんと交渉し迷惑料のようなかたちでお金を得ること自体はできると思います。
ただしそのためには法的知識とともに高度な交渉術が必要なので、自力で行うのは難しいです。
そのため一度弁護士に相談することを検討してみても良いかもしれません。
まとめ
今回は、結婚前の約束を破った夫と結婚の取り消しや離婚を考えている女性の相談事例と弁護士の見解を紹介していきました。
離婚を考えた場合、夫婦が冷静に話し合って解決できれば良いのですが、なかなかうまく行きません。
そのため、自力で解決が難しいと感じた場合には、弁護士への相談することをお勧めします。
弁護士はあなたの代理人として相手と交渉したり、法的な手続きを代わりに行ったりしてくれます。
お困りの方は一度連絡してみてはいかがでしょうか。
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