夫婦になって同居生活を始めると今まで見えていなかった相手の生活リズムや価値観、性格がみえてきます。
相手を理解し、許容することができれば良いのですが、どうしても受け入れることができないケースもあるでしょう。
今回は相手に非がないけれど性格の不一致や価値観の違いによって離婚したいときの対応について考えていきたいと思います。
相手に非がないときは基本的に話し合いで離婚が成立する
離婚する方法は大きく3つに分けることができます。
①協議離婚…夫婦で話し合い双方の合意を得て離婚すること
②調停離婚…家庭裁判所が仲介役となって夫婦が話し合い離婚すること
③裁判離婚…夫婦のいずれかが訴訟の申立てを行って裁判を起こし離婚すること
相手に非がない離婚の場合、基本的には①の協議離婚、または②の調停離婚を目指すことになります。
③の裁判離婚は、離婚条件が合わないからといってすぐに裁判を起こせるわけではありません。
裁判を行うためには、法律で定められた裁判できる離婚事由があること、また訴訟を起こす前に調停で不成立になることが必要です。
そのため相手に非がないときに離婚したい場合、裁判できる離婚事由にあてはまる可能性が低いため、協議、または調停での話し合いによって離婚することになるでしょう。
相手に非がないけど離婚のしたいときは協議離婚を目指そう
相手に非がなくても、配偶者が持つ価値観の一部があなたの心情的にどうしても我慢ならなかったり、生活リズムが合わずすれ違いになっていたなどといった理由で離婚する夫婦は少なくありません。
このような場合には、相手を刺激しないように話し合いで離婚を成立させることを考えてください。
相手があなたに離婚の意思があることを受け入れられず、感情的になったとしても同じ土俵に上がらず、冷静な態度で接することを努めてください。
話し合いは双方が感情的になると、具体的な離婚条件の話し合いができず離婚成立までの期間が長くなるとともに、離婚条件をまとめるのが難しくなってしまいます。
離婚条件について譲れないものを主張するのは良いですが、その場の感情のまま相手を罵ることは避けるべきです。
とはいえ、あなたがいくら冷静に話し合おうとしても相手が離婚に関する話し合いを一切拒否するケースもあるかと思います。
このような場合には、争いが大きくなる前に弁護士に依頼することや離婚調停の申立てを検討してみてください。
離婚協議ができないなら調停離婚を考えよう
夫婦間で離婚協議がどうしてもうまくいかない場合、離婚調停という手段があります。
離婚調停は、あなたやあなたの配偶者が家庭裁判所に調停を申立てることによって行えます。
離婚調停では、基本的に調停委員という仲裁役が夫婦の事情をそれぞれに聞き、お互いの離婚条件などに折り合いをつけ離婚を目指します。
離婚調停は離婚したい理由が相手に非のない場合でも起こすことができます。
そのため、夫婦間での話し合いでは埒が明かないと感じた場合には調停を申立てることを検討してみてください。
調停委員が夫婦のあいだを仲裁することで、話し合いがスムーズに行くケースがあります。
ただし、調停であなたの希望である離婚条件を通したい場合、調停委員にあなたの主張は合理的で納得のいくものだという印象を持ってもらう必要があります。
そのためには、あなたの主張を裏付ける証拠書類が必要になります。
証拠を準備せずただやみくもに感情のまま自分の主張を通そうとするとかえって悪い心証を与えてしまい、調停を有利に進められなくなる可能性が高いので注意が必要です。
また、離婚調停はあくまでも話し合いの場です。
初回の調停で話がまとまって離婚が成立することは稀なケースで、多くの場合複数回調停を重ねます。
離婚の取り決めなどが多かったり、夫婦の主張の折り合いがなかなかつかなかったりしたときには、状況によって離婚が成立するまでに1年以上かかることもあるので注意が必要です。

離婚の話し合いがうまくいかないときは別居することを検討する
相手に非がないけれど、性格の不一致などによって離婚したい場合、別居という手段が考えられます。
同居していると、離婚の話し合い後、感情的になって言い争いになりストレスになったり、そもそもあなたの離婚の意思を本気にせず取り合ってくれなかったりということもあります。
また相手が「離婚の話し合いを避け続けていれば、そのうちうやむやになる」と考えているかもしれません。
このような場合には、別居することであなたの本気度を示せるとともに、物理的な距離を置くことによって冷静に離婚について話し合える可能性が高くなります。
更にいえば、相手がどうしても離婚に合意してくれない場合に備え、法律上裁判できる離婚事由の実績を作ることもできます。
というのも、夫婦には同居の義務があるため、長期間の別居は裁判できる離婚事由になり得るからです。
同居義務とは転勤や出産などのやむを得ない事情で別居している場合を除き、同居すべきという考えをいいます。
裁判になった場合、具体的にどれくらいの別居期間で離婚が認められるのかは婚姻期間や夫婦の状況などによって異なりますが、長引きそうな場合には備えておくのも良いと思います。
別居後であっても離婚が成立するまでは恋愛は慎重に
離婚を前提に別居した場合、夫婦関係が破綻しているので離婚前でも恋人を作っても問題ないと思う方もいらっしゃるかもしれません。
確かに単に好きな人を作ったり、恋愛したりすること自体は問題ありません。
デートやハグ、キスなどの行為も法律上問題になる可能性が低いといえるでしょう。
しかし、肉体関係を持ったり、別居先で同棲したりした場合には、法律上で裁判ができる理由のひとつ、「不貞行為」にあたり、有責配偶者になってしまう可能性があります。
有責配偶者になると最終的に裁判したいと考えた場合、自分から裁判を起こすことが基本的にできませんので、配偶者以外の方と恋愛関係になるのであれば慎重に行いましょう。
別居するときは婚姻費用についても考えておくべき
別居する場合、収入の高い方が収入の低い方に対して夫婦が同じくらいの水準の生活を送れるよう婚姻費用というお金の支払いが生じる可能性があります。
どれくらいの婚姻費用を支払う、または受け取れるのかは夫婦が合意すれば自由に決めることができます。
とはいえ、実際どれくらいの金額で取り決めればいいのかわからない方もいらっしゃると思います。
その場合には、裁判所から公表されている婚姻費用算定表を確認すると良いでしょう。
なお、夫婦のうち収入が高い方であっても、子どもを引き取った場合には教育などに関わる費用など一定の範囲内で婚姻費用を受け取れるケースもあります。
相手に非がないときに離婚前提で別居する場合、「勝手に離婚したいといって出ていったのだから婚姻費用は支払わない」ということもあるかもしれません。
このような場合には、婚姻費用分担請求調停を申立てると良いでしょう。
なお、別途離婚調停も考えている方は、一緒に申し立てることによって離婚調停と同時並行で婚姻費用についても話し合うことができます。

まとめ
今回は、相手に非がない場合離婚するにはどうすればいいのかについて考えていきました。
夫婦双方に原因がなく、性格の不一致などによって離婚の意思をかためた場合、まずは夫婦間の話し合いで離婚できるかを考えましょう。
相手が離婚を拒否する場合には、争いになってお互いに悪感情を覚える前に弁護士へ相談した方が良いでしょう。
争いが起きる前に弁護士へ相談することによって早期に離婚が成立する可能性が高くなります。
お子さんがいる場合には離婚後も元配偶者とある程度付き合っていくことなども想定されますので、早めに弁護士への相談を検討してみてください。

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