【相談事例】夫との別居中に恋人ができた|慰謝料を支払わなければならないのか?

夫婦が理由なく別居することは、法律で定められている同居義務に違反しています。

別居は長期間にわたると「夫婦関係が破綻している」とみなされて、法律上の離婚事由になる可能性があります。

一方で配偶者以外の異性と肉体関係を結ぶことも法律上の離婚事由になります。

今回は夫と別居中に恋人ができた女性の体験談と見解を紹介していきたいと思います。

 

 

別居中に恋人ができたけど、これって不倫になるの?

 

主人公:倫子(32)

夫:駿(34)

倫子の恋人::大貴(25)

 

駿とは幼馴染で、高校1年生から付き合い始めました。

私の大学卒業と同時に籍を入れ、夫婦になりました。

喧嘩しながらも仲の良い夫婦であったと思います。

私たちの夫婦仲が壊れたきっかけは、駿の単身赴任です。

彼は食品を取り扱う専門商社なので、国内転勤や海外転勤があることは知っていました。

実際、結婚してから駿は2回転勤をしています。

とはいえ、すべて都内にある自宅から通える程度のものでしたので、「地方転勤はないだろうし、ましてや海外転勤なんてあるわけがない」と思っていました。

 

しかし、駿が30歳を迎える年に地方転勤の打診があったと聞かされました。

「ここで転勤を断ったら、昇進コースから外れるかもしれない。上に行けるなら挑戦してみたい」と駿はいいました。

彼が上昇志向の強い人間であること、また勤めている会社や仕事に対して愛着を持っていることは理解していました。

ただ私の仕事は公立中学校の教師であり、クラス担任です。

担任を持っている以上、責任を持ってその年の3月まではクラスを持ちたいですし、別の地方で教師をするならば、別途その地域の教員採用試験を受けなければなりません。

高校生から希望していた職を駿のためにやめることはできませんでした。

夫婦で話し合った結果、駿に単身赴任をしてもらうことにしました。

 

単身赴任をしても、羽を伸ばしすぎないようにお互い次のような約束を交わしました。

 

  • 1,2か月に1度は会うこと
  • 週に2,3回は電話で近況報告をすること
  • 仕事以外で異性とふたりで食事に行かないこと
  • 単身赴任先のマンションの合鍵は渡すこと
  • 趣味・娯楽費は月3万円以内で収めること

 

お互いガチガチに約束を固めるとかえって辟易してしまうので、最低限守れるラインで約束の内容を決めました。

実際、駿が転勤して2年間は、良好な夫婦関係を維持することができました。

問題は、その次の転勤先が海外になったことでした。

転勤先はオーストラリアのシドニーでした。

日本との時差は1時間ほどなので電話すること自体には問題ありませんが、会うとなると長期休みを利用するしかなくなりました。

 

駿は英語が得意というわけではなく、現地で語学スクールに通いながら仕事を続けていてかなり忙しい毎日を送っているようでした。

私の方も、受け持った学年でいじめが発覚し、さまざま対応に追われており余裕がなくなっていました。

お互いが余裕のない状態なので、電話のやりとりやLINEでのやりとりに喧嘩が増え、「大変なときに何で支えてくれないのか」と不満を持つようになりました。

電話してもLINEでも言い争いになってしまうのに疲れてしまい、次第に連絡を取り合う頻度が減っていきました。

駿がオーストラリアに転勤してから1年。

これまで頻繁だった電話もLINEも1か月に数回程度になりました。

内容も、日本の口座に給与が振り込まれたことの報告や、義両親などの親戚に関することといった最低限の連絡です。

会うこともお盆か正月休みくらいで、もはや夫婦とはいえないような状態です。

 

お互い、こんな状態なら離婚した方が良いのかもしれないと思い始めたとき、現在の恋人である大貴と関係を持つようになりました。

大貴は同じ都内で働く高校教師で、教科担当の研修会で知り合いました。

授業の進め方や学年内でのいじめなど仕事に関する悩みをお互い相談するうちに恋人関係になりました。

大貴と恋人になってからというもの、ますます駿に対する興味が薄れていきました。

「形式上夫婦であるだけで実態がない」と思った私は、駿に離婚したいと伝えました。

すると、彼は「離婚するのはいいけれど、君が不倫していたことは知っている。けじめとして慰謝料を支払ってほしい」といいました。

大貴との関係は駿の友人がラブホに入る私たちを目撃し、写真に撮ったことから判明したそうです。

慰謝料?性生活もないし、連絡もあまり取り合わない、お互いがお互い興味が薄れている状態で恋人を作ったとして仕方ないことではないでしょうか。

そもそも単身赴任に行かなければ、私は大貴と恋人関係にならなかったと思います。

駿の落ち度で、私が恋人を作ったのになぜ責められなくてはいけないのでしょうか。

長期間の別居は、離婚事由になると聞きました。

私が大貴と関係を持つ前に夫婦としての関係は破綻していると思います。

慰謝料は支払わず、早期に離婚を成立させる方法はありますでしょうか。

 

弁護士の見解

倫子さんは単身赴任で別居している駿さんに対して離婚を切り出しました。

対して駿さんは倫子さんの要求に、慰謝料を支払うのであれば離婚に同意するといいました。

慰謝料は有責行為によって精神的苦痛を受けたときに、請求できるお金です。

一方で、倫子さんは夫婦関係が破綻してから、大貴さんとは恋人となったので、慰謝料を支払う必要がないと考えています。

倫子さんと駿さんどちらの主張が認められる可能性が高いのでしょうか。

 

結論からいうと、倫子さんの主張は認められにくいと思います。

確かに、長期間にわたる別居は、法律で定められている「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるケースがあります。

しかし今回は、駿さんの仕事の都合によって別居しているのであり、離婚を前提として別居したわけではありません。

事実、国内で駿さんが単身赴任をしたときには、夫婦でルールを決めて、良好な関係を保っています。

赴任先がオーストラリアになり、距離が離れていたとしても、仕事上の都合で別居していることには変わりないので別居によって夫婦関係が破綻したという主張は難しいと思います。

というのも、倫子さんと駿さんの生活が忙しくなったことで、夫婦仲は悪化しましたが、1か月に数回は連絡をとっているからです。

さらに付け加えるのであれば、連絡内容から、駿さんが家計にお金を入れていることや倫子さんが親戚付き合いに関することなどを報告していることが伺えます。

おふたりの行動は、夫婦関係を維持しようという行動ともとれるので、夫婦関係が破綻状態にあるとはいえないでしょう。

倫子さんは大貴さんと性的行為を行ったため、不貞行為をしたということになります。

「恋人」と称していたとしても、夫婦関係が破綻して配偶者以外の異性と性的行為に及んだのであれば、それは不貞行為です。
不倫は罪?不倫して離婚した場合に被る不利益とは?財産編  
駿さんが倫子さんの不貞行為の証拠をどれだけ持っているのかは、現時点でわかりかねますが、頑なに「慰謝料を支払わない」という意思表示をしているとかえって不利益を被る可能性が高くなります。

そのため、まずは駿さんがどのような離婚条件を望んでいるのかを確認してみると良いかもしれません。

そのうえで、慰謝料の額が倫子さんの収入に対して高すぎるなどの不具合があった場合には、慰謝料の減額や財産分与で相殺するなどの提案をして交渉してみると良いと思います。

早期の離婚成立を望むのなら、夫婦の話し合いで解決を目指すことを考えてください。

離婚調停や離婚裁判となると解決するまでに年単位の時間がかかる可能性もあります。

当事者同士の話し合いでは、解決が難しいと感じた場合には、弁護士に状況を説明して交渉を依頼することも検討してみると良いと思います。
離婚するときは、必ず弁護士に相談した方が良いの?相談するべきタイミングとは?  

まとめ

今回は、単身赴任によって別居している夫婦の相談事例をもとに、別居や慰謝料などについて解説していきました。

夫婦関係の破綻は、「夫婦関係が修復できないほど壊れている」ことを指し、簡単に認められるものではありません。

配偶者に大きな不満を持っており、ご自身では夫婦関係が破綻していると思っていても、法律上認められないケースは少なくないです。

また今回紹介した夫婦関係の破綻が先なのか、不貞行為が先なのかという食い違いは、対応によって争いが激化し、長期化する可能性が高くなります。

そのため、「手に負えない」と思ったら、早い段階で弁護士に相談することを考えてみましょう。

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